- 更新日 : 2025年7月7日
遺品整理業で個人事業主になるには?開業準備や経費・インボイス対応について解説
遺品整理業は、高齢化社会の進展により年々需要が高まっている分野です。遺族に代わって故人の持ち物を整理・処分し、時には買取や供養、清掃なども行うこの仕事は、社会的意義が大きく、個人事業主としても開業しやすい特徴があります。
本記事では、遺品整理業の開業に必要な手続きやスキル、経費・税務処理の注意点、インボイス制度への対応など、実務に直結する情報を解説します。
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目次
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個人事業主が遺品整理業で開業するには
遺品整理業は、高齢化や核家族化によるニーズの高まりを受け、独立開業の選択肢として注目される分野の一つです。将来的にも安定した収益が見込める仕事と言われます。
事業として成立させるためには「個人事業の開業届」の提出や、買取を伴う場合の「古物商許可」、廃棄物処理の外部委託体制の整備などが求められる場面もあります。
遺品整理業の仕事内容
遺品整理の基本的な業務は、故人の遺品を整理し、残す品と処分する品に仕分けることです。不用品の撤去・処分に加えて、遺品の中でリユース可能な物を見つけて遺族に代わって売却するケースもあります。また、遺品整理後に簡易清掃や遺品の供養まで請け負う事業者があり、サービス内容は多岐にわたります。遺族にとって心身の負担が大きい作業を代行するため、思いやりのある対応と丁寧な作業が求められます。
必要なスキルと資格
遺品整理業を行うにあたって必須の国家資格はありませんが、業務の信頼性を高め、顧客対応を円滑に進めるためには身につけておきたいスキルや取得が望ましい民間資格があります。まず、遺族の心情に配慮しながら作業を進めるための「コミュニケーション能力」と「精神的な配慮力」は不可欠です。加えて、家具や家電の搬出、ゴミの分別、簡易清掃などの現場作業を効率よくこなすための「体力」や「作業スキル」も求められます。法律や行政サービスに関する基礎知識も備えておくと、遺族からの相談にも対応しやすくなります。
資格としては、「遺品整理士認定協会」が認定する「遺品整理士」や、家財整理に特化した「事件現場特殊清掃士」などがあります。これらの資格は業務に直接必要ではないものの、顧客からの信頼を得やすく、他社との差別化にもつながるため、開業前後に取得を検討するとよいでしょう。
事業モデル
遺品整理業の開業スタイルには、フランチャイズ加盟と独立開業の2つがあります。
フランチャイズに加盟する場合、親企業のブランド力やノウハウを活用でき、集客面で有利なのがメリットです。研修や経営サポートを受けられる安心感もあります。一方でロイヤリティ(加盟料)の支払いが発生し、運営の自由度が制限されるデメリットがあります。
独立開業の場合、フランチャイズ料が不要で売上を全て自分の利益にでき、運営の自由度が高いというメリットがあります。ただし無名の状態から自力で集客する必要があり、開業直後に依頼がゼロとなるリスクも抱えます。収入が安定するまで時間がかかる可能性があるため、計画的な営業努力が欠かせません。
遺品整理業の開業に必要な手続き
遺品整理業を始めるにあたり、事業を適切に運営するために必要な行政手続きを確認しましょう。開業に際して提出すべき届出や取得しておくべき許可があります。個人事業の開業届や古物商許可、必要に応じて廃棄物収集運搬に関する許可など、漏れなく準備することが大切です。
個人事業開業届の提出
まず、事業開始後には税務署に対し「個人事業の開業届出書(開業届)」を提出します。法律上提出しなくても罰則はありませんが、提出しておくことで事業開始の証明となり、青色申告を適用する際にも必要です。通常、開業から1ヶ月以内が提出の目安とされます。併せて「青色申告承認申請書」を開業届と同時に提出すれば、所定の要件を満たせば最大65万円の特別控除を受けられます。
古物商許可
遺品の中に貴重品やリユース可能な品物が含まれており、買い取って販売する可能性がある場合は、「古物商許可」を取得する必要があります。古物商許可とは警察署(生活安全課)に申請する公的許可で、所定の申請書と身分証明書、19,000円の手数料を納付して取得します。古物商許可を得ておけば、遺品を適切に買い取り再販できるため、遺族にとっても処分費用の軽減や収益化につながり、集客面でもメリットがあります。
一般廃棄物収集運搬業許可
家庭ごみを収集・運搬するには市区町村から「一般廃棄物収集運搬業」の許可が必要です。しかし、新規で取得するのは自治体から委託を受けない限り難しく、個人ではハードルが高いのが現状です。このため多くの業者は自社で一般廃棄物を運ばず、許可業者に委託するか自治体の粗大ごみ回収制度を案内する対応を取っています。なお、事業系廃棄物を扱う場合は別途産業廃棄物収集運搬業許可が必要ですが、一般家庭中心の遺品整理では優先度は低いでしょう。
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遺品整理業の集客方法
優れたサービスを提供しても、依頼者がいなければ事業は成り立ちません。開業後は積極的な集客と営業活動が欠かせません。ここでは、ホームページなどインターネットを活用した集客、ポータルサイトの活用、地域のネットワーク作り、チラシ配布など、効果的な集客方法と戦略について解説します。
ホームページとオンライン集客
開業したらまず自社のホームページを作成し、サービス内容や料金、実績、お客様の声などを掲載して遺族が安心できる情報を整備しましょう。地域名と「遺品整理」で検索された際に上位表示されるようSEO対策にも取り組みます。ホームページでブログを運営して現場での経験や役立つ情報を発信すれば、閲覧者からの信頼獲得につながります。実際、ブログを地道に更新し続けたことで、後にそれを読んだ方から問い合わせに繋がった例もあります。
また、Googleビジネスプロフィールに登録して口コミを蓄積したり、Facebook等のSNSで情報発信したりすることも地域での認知度向上に有効です。
ポータルサイトの活用
遺品整理業者を検索できるポータルサイトに登録することも有力な集客手段です。例えば「くらしのマーケット」は遺品整理を含む多数の生活サービスカテゴリを扱う国内最大級の集客サイトで、個人事業主でも無料で出店登録できます。初期費用や月額費用はかからず、仕事が成立した場合にのみ料金の手数料が差し引かれる成果報酬型の仕組みです。ポータルサイト上で利用者の口コミや評価が蓄積されれば、新規顧客も安心して依頼しやすくなるでしょう。
地域連携
地域に根ざしたネットワーク作りも大切です。葬儀社や不動産会社などと連携し、遺品整理の相談時に紹介してもらえる関係を築きましょう。空き家整理では、不動産業者が信頼できる遺品整理業者を求めています。地元の異業種交流会や商工会に参加して顔の見える関係を作り、紹介を増やす努力も有効です。
チラシや地域での広告
インターネット以外の従来型の宣伝も並行して行いましょう。対象地域にチラシをポスティングしたり、地域情報誌や新聞に折込広告を出すことで、地元の高齢者層にもアプローチできます。チラシにはサービス内容や料金の目安、お問い合わせ先を明記し、信頼感のあるデザインを心掛けます。反響が出るまで時間がかかるかもしれませんが、地道に続けることで地域での認知度向上につながります。
遺品整理業の経理と確定申告
個人事業主として開業した後は、日々の経理処理や確定申告も自分で行う必要があります。遺品整理業の収入にはサービス料金や買取品の販売代金などがあります。それらを含め売上と支出を正確に記帳しましょう。また、青色申告と白色申告の違いを理解して、有利な申告方法を選択することも重要です。
経費として認められる項目
遺品整理業で経費になり得る項目としては、作業現場までのガソリン代や車両の維持費、廃棄物の処理費用、梱包資材や清掃道具などの消耗品費、広告宣伝費、通信費などが挙げられます。許可申請費用や研修受講料、保険料、外注スタッフへの謝礼等も事業に必要であれば経費計上できます。家族に手伝いを依頼している場合は、青色申告の「青色事業専従者給与」の届出をすることで、支払った給与を経費に含めることも可能です。経費になるか迷った際は、それが事業遂行上必要かどうかを基準に判断します。
青色申告と白色申告の違い
青色申告は事前に申請が必要で正規の帳簿付けも求められますが、最大65万円の特別控除など税制上のメリットがあります。一方、白色申告は申請不要で手軽な反面、そうした控除が受けられません。一般に節税面では青色申告が有利なため、開業当初から青色申告を選ぶ人が多いです。なお、青色申告をするには原則として開業後2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出する必要がある点に注意しましょう。
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遺品整理業と消費税・インボイス制度の関係
遺品整理業では、消費税やインボイス制度への対応において、サービスの内容によって課税・非課税の区分に注意が必要です。
たとえば、遺品の仕分けや搬出、清掃といった役務提供は消費税の課税対象となりますが、故人の遺品を無償で引き取る場合や、供養代行など宗教性を帯びた業務については非課税または対象外となることもあります。
また、遺品の一部を買い取り再販する場合は物品販売となるため、仕入税額控除の適用を受けるにはインボイス対応が必須です。中古品の再販では古物商許可に基づく仕入が前提となるため、帳簿や伝票の整備が欠かせません。法人からの依頼が増えてきた場合には、インボイス発行事業者として登録することで信頼性を高め、取引機会を広げやすくなります。
課税事業者となる条件
消費税の課税事業者になるかどうかは、売上規模によって決まります。原則として、個人事業主の場合は前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌年は消費税の納税義務が生じます。逆に言えば、基準期間の売上が1,000万円以下であれば、その年は消費税が免除される「免税事業者」となります。開業当初の2年間は基準期間が存在しないため、多くの個人事業主は自動的に免税事業者としてスタートします。ただし、途中で課税事業者を選択して届け出ることも可能で、条件を満たせば任意に消費税を納める「課税事業者」となることもできます。
免税事業者の扱いとインボイス制度
免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けられず取引を敬遠される可能性があります。特に法人案件ではインボイス非対応だと不利になる場合があるので注意が必要です。一方、顧客が個人中心であれば当面大きな支障はないでしょう。将来的に法人取引が増える場合には、課税事業者となってインボイス発行事業者の登録を検討することになります。
遺品整理業の顧客対応
遺族は大切な遺品を託すにあたり不安や心労を抱えています。その気持ちに配慮した丁寧なコミュニケーションが何より重要です。また、料金や作業内容を巡るトラブルを避けるためには、事前の取り決めや書面の整備が欠かせません。顧客対応の留意点とトラブル防止策について確認しましょう。
見積書・契約書の整備
遺品整理の契約に際しては、見積書および契約書を必ず書面で交わしましょう。口頭の約束だけでは後々「聞いていない」といった行き違いが生じるリスクがあります。見積書には作業内容や部屋の間取りごとの品目、処分予定の物品量、料金の内訳をできるだけ具体的に記載します。「遺品整理一式」など曖昧な表現は避け、追加料金が発生し得る場合はその条件も明示しておきます。作業日程やキャンセル料の有無なども契約書に盛り込み、お互いに署名・押印して合意を取っておけば、後日のトラブル予防につながります。
遺族とのコミュニケーションの留意点
遺族の心情に寄り添ったコミュニケーションを心掛けましょう。初対面の際には、すぐに作業の話に入るのではなく、まず故人に関する思い出話や遺族のお気持ちに耳を傾けると良いでしょう。そうした時間を設けることで悲しみを共有し、信頼関係の構築につながります。作業内容や見積もりを説明する際には専門用語を避け、わかりやすい言葉で丁寧に説明します。遺族の不安を一つ一つ取り除く姿勢が大切です。
トラブル防止と対策
まず、作業前の打ち合わせで残す物と処分する物の基準を明確にしておきます。貴重品や思い出の品は可能であれば作業前に遺族自身で分別してもらいましょう。作業中に現金や貴金属などを発見した際は速やかに遺族に知らせてお渡しし、決して独断で処分しないことが鉄則です。現場では重要書類や貴重品を一箇所にまとめ、他の廃棄物と混ざらないよう管理します。買取サービスを行う場合も公正な査定に努め、遺族が希望しない品は無理に買い取らない姿勢が信頼に繋がります。万一トラブルが生じたら、感情的にならず誠意をもって説明・対応し、必要に応じて業界団体や消費生活センターに相談して解決を図りましょう。
遺品整理業で個人事業主として安定経営を目指すために
遺品整理業は高齢化社会の進行とともに需要が拡大しており、個人事業主として開業するには十分な可能性を秘めた業種です。開業届や古物商許可などの手続きを踏み、適切な集客や顧客対応を行うことで、地域に根差した信頼ある事業が築けます。また、確定申告や消費税、インボイス制度への理解も欠かせません。遺族の気持ちに寄り添い、丁寧なサービスを心がけることで、継続的な依頼や紹介にもつながります。しっかりとした準備と誠実な対応を積み重ね、長く信頼される個人事業主を目指しましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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