- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主は生計を一にしない家族への給与を経費計上できる?勘定科目や福利厚生も解説
個人事業主が生計を一にしない家族に支払った給与は、経費に計上できます。節税につながるため、忘れずに経費として申請しましょう。本記事では「生計を一にしない家族」とみなされる具体例や給与支払い時の注意点、経費計上以外のメリットなどを解説します。家族給与の支払いを検討中の個人事業主は、ぜひ参考にしてください。
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個人事業主が生計を一にしない家族へ給与を支払うと節税になる
個人事業主が生計を一にしない家族に給与を支払った場合、節税になります。なぜ、家族への給与支払いが節税対策になるのでしょうか。
ここでは、家族給与が個人事業主の節税につながる仕組みを解説します。
生計を一にしない家族への給与支払いは経費計上できる
個人事業主が生計を一にしない家族に支払った給与は、経費に計上することが可能です。
生計を一にしない家族に支払った給与を経費に含めれば、確定申告の際に報告する所得金額を低く抑えられます。所得税や住民税などの税金は所得金額をもとに課税されるため、所得金額を下げることは節税につながります。
税金額を抑えるためにも、生計を一にしない家族に給与を支払った個人事業主は、経費の申請を忘れずに行いましょう。
なお「生計を一にしない家族」は従業員と同様とみなされるため、特別な届出を提出することなく経費として計上可能です。一方、国税庁が定義する「生計を一にしている家族」への給与支払いの際は、青色事業専従者給与の届出が必要となります。
生計を一にしない家族の具体例
家族への給与支払いを経費計上できる「生計を一にしない家族」とは、どのような状況を指すのでしょうか。
ここでは、一般的に税務署から「生計を一にしない家族」と判断されやすい、以下の4つのケースについて解説します。
- 同じ住所に住んでいるが家計は別
- 正式な婚姻届を出していない
- 子供が自立し別の家で暮らしている
- 両親が年金生活をしている
同じ住所に住んでいるが家計は別
具体例の1つめは「家族が同じ家で暮らしていても、財布を分けて家計管理している」というケースです。
たとえば「二世帯住宅に住んでいる親子が、食費をはじめとする生活費を各自で管理している」という事例が挙げられます。親と子それぞれが経済的に独立しているため、税法上の「生計を一にしていない」とみなされやすいでしょう。
正式な婚姻届を出していない
生計を一にしない家族の例の2つめは「役所に婚姻届を提出しておらず、法的契約のない同棲や事実婚状態のカップル」です。
民法725条では親族を以下のように定義しており、同棲や事実婚のカップルは「税金関係における親族の範囲」には含まれません。
- 六親等内の血族
- 配偶者
- 三親等内の姻族
参考:e-Gov 法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
子供が自立し別の家で暮らしている
3つめは「独立した子供が離れた場所で生活していて、住民票上でも別世帯」というケースです。
たとえば「就職した子供が親元を離れ、自分の力で得た収入で生活している」など、子供が経済的に自立している状態が当てはまります。
ただし、「生活費や学資金などの仕送りを常に受けている」など、親からの経済的なサポートに大きく頼っている子供は、たとえ離れて暮らしていたとしても「生計を一にする家族」とみなされやすいでしょう。
両親が年金生活をしている
「年金生活の両親と子供で家計を分けている」という場合も、生計を一にしない家族とみなされます。
たとえば、両親が年金収入によって自分たちの生活費を賄っている状態が当てはまります。
一方、定期的な仕送りによって子供が両親を経済的にサポートしているのであれば、税務署から「生計を一にしている」と判断されやすいでしょう。
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生計を一にしない家族へ給与を支払う場合の勘定科目
「家族給与の仕訳作業では、具体的にどの勘定科目を使えばよいのだろう?」と悩む方もいることでしょう。
生計を一にしない家族給与の勘定科目は「給料賃金」「給与」です。なお、生計を一にする親族への給与は「専従者給与」という勘定科目を使用します。
生計を一にしない家族へ給与を支払う場合の注意点
個人事業主が生計を一にしない家族へ給与を支払う場合、注意点もしっかり押さえておきましょう。
労働内容や時間に見合わない高額な家族給与を支払っている場合、税務署の調査が入る可能性があります。税務署から「労働に対する適正な対価ではない」と判断されれば、経費として認められないため注意が必要です。
個人事業主が生計を一にしない家族へ給与を支払う際は「社会通念上、妥当な金額設定かどうか」というポイントを意識しましょう。
なお、生計を一にする家族への給与支払いとは異なり、生計を一にしない家族への給与支払いを経費計上するための特別な手続きは必要ありません。「手続きしていないから経費計上せず、税金が高くなってしまった」といった事態にならないよう気をつけましょう。
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経費の計上以外に、家族が生計を一にしないメリットはある?
個人事業主とその家族が生計を一にしないことには、給与を経費計上できる点以外にも、以下のメリットがあります。
自治体により国民健康保険料が安くなる
個人事業主が生計を一にしない家族に給与を支払うことで、国民健康保険料が安くなるケースがあります。
個人事業主が納める国民健康保険料は、年間の事業所得にもとづいて算出されます。そのため、生計を一にしない家族への給与を経費計上して所得金額を抑えることで、国民健康保険料が安くなる可能性があるでしょう。
また、個人事業主の親とその子供がそれぞれ独立して所得申請することで所得金額が分散され、世帯人数が減ります。結果として、国民健康保険料を構成する所得割・均等割・平等割それぞれの計算額が低くなりやすく、家族全体として支払う国民健康保険料を抑えられる可能性があります。
ただし、自治体によって国民健康保険料の算出方法が異なる点には注意が必要です。場合によっては、個人事業主とその家族が生計を一にしないことによるメリットを享受できないケースもあります。自治体が定める国民健康保険料の算出方法をチェックしておきましょう。
個人事業主が生計を一にしない家族を雇用したら福利厚生費は計上できる?
ほかの従業員が1人もいない状態で個人事業主が生計を一にしない家族を雇用した際、福利厚生費を経費として申請できるのでしょうか。
結論からいえば、生計を一にする・しないに関わらず、個人事業主の家族のみを従業員とするケースでは、福利厚生費として認められる可能性は低いでしょう。福利厚生費として認められるのは「一般従業員に対する待遇を目的とした支出」であるためです。
すべての従業員が平等に利用できる内容で、社会通念上妥当だと考えられる金額の範囲内の支出について、福利厚生費としての経費計上が可能となります。
一方、家族従業員だけでなく一般従業員も働いているケースで、両者に対して平等に提供する福利厚生に関する支出であれば、社会通念上妥当と考えられる金額の範囲において経費として認められる可能性が高いでしょう。
個人事業主は生計を一にしない家族給与によって節税できる
個人事業主が生計を一にしない家族に支払った給与は経費計上できるため、節税につながります。個人事業主とその家族が生計を一にしないことで、国民健康保険料が安くなることもあります。
一方、たとえ別居している家族であっても、状況によっては「生計を一にしない家族」とみなされないケースがあるため注意しましょう。家族給与を「社会通念上、妥当な金額」に設定しておくことも大切です。

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