- 更新日 : 2025年3月5日
うつ病でもらえる手当とは?個人事業主が働けない間のお金を解説
個人事業主は病気やケガなどで働けなくなると、仕事で収入を得ることができません。特に近年は、うつ病で働けなくなる個人事業主も増えています。
実は、個人事業主がうつ病で働けなくなった時に利用できる手当や補助金などもあります。ここでは、個人事業主がうつ病などで働けない間のお金について詳しく解説します。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
チェックリスト付きなので、情報収集だけでなく、書類作成・申告手続きを行う時にもお使いいただけます。
この記事を読む方におすすめ
税理士監修で、40ページ以上の情報がギュッと詰まったお得な1冊となっていますので、毎年使える保存版としてご活用ください。
目次
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら日々の取引入力→申告書の作成→申告作業が、オンラインで完結します。
取引明細の自動取得と仕訳の自動作成に対応しており、手入力を減らしてカンタンに記帳・書類を作成。来年の確定申告は余裕を持って対応できます。
PC(Windows/Mac)だけでなく、スマホアプリからも確定申告が可能です。

個人事業主がうつ病になったら手当はもらえる?
はじめに、個人事業主がうつ病になったら手当がもらえるのかどうかを見ていきましょう。
国民健康保険は傷病手当金を受け取れない
傷病手当金とは、会社員が病気やケガなどで一定期間会社を休み、勤務先から給料などが支払われなかった時に、健康保険から支給される手当金のことです。
傷病手当金は会社員が加入する健康保険から支給されます。国民健康保険には傷病手当金の制度はないので、個人事業主がうつ病で働けなくなっても、傷病手当金は支給されません。
国の障害年金を受け取れる場合がある
個人事業主がうつ病になったら、国の障害年金を受け取れる場合があります。
障害年金とは、病気やケガで働けなくなった時に受け取ることができる年金です。年金という名前ですが、現役世代であっても受け取ることができます。うつ病も対象となっていますが、障害の程度によっては受け取れない可能性もあるので注意しましょう。
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2つがありますが、国民健康保険に加入中にうつ病になった場合は、障害基礎年金の対象となります。
個人事業主が障害年金を申請する流れ
ここからは、個人事業主が障害年金を申請する流れを見ていきましょう。
個人事業主が障害年金を申請する場合の「対象者」「申請先と手続き」「受給額」は次のとおりです。
【対象者】
障害年金の対象者は、次の要件をすべて満たす人です。
- 障害の原因となった病気やケガの初診日が国民年金加入期間である、あるいは国民年金加入期間でなくても20歳前または60歳以上65歳未満(日本在住の必要あり)の期間にある
- 障害の状態が1級または2級である
- 次の保険料の納付要件を満たしている(20歳前が初診日であれば不要)
- 初診日の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間(保険料免除期間を含む)で、国民年金の保険料を納付している
- 初診日の年齢が65歳未満で、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がない
【申請先と手続き】
申請先は、お住まいの自治体の担当窓口です。必要書類は自治体によって異なりますが、次のような書類が必要となることが多いです。
- マイナンバーカード
- 預貯金通帳
- 病歴就労状況等申立書
- 診断書
- 初診日の証明書
申請を第三者に委託する場合は、上記に加えて、委任状と代理人の本人確認書類が必要です。必要書類はあくまで一般的なものです。申請をする前に、必ずどのような書類が必要かお住まいの自治体にお問い合わせください。
【受給額】※令和6年度年金額
受給額は障害の程度により、次のとおりです。
1級 | 2級 | |
---|---|---|
昭和31年4月2日以後生まれ | 1,020,000円+子の加算額 | 816,000円+子の加算額 |
昭和31年4月1日以前生まれ | 1,017,125円+子の加算額 | 813,700円+子の加算額 |
加算の対象となる子と加算額は、以下のとおりです。
- 対象者
受給者と同生計である18歳到達年度の末日(3月31日)までの子、または障害等級が1級、2級の20歳未満の子 - 加算額
第1子・第2子:各234,800円
第3子以降:各78,300円
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
個人事業主がうつ病で働けない間の収入を補う支援
個人事業主がうつ病で働けない間の収入を補う支援には、次のものがあります。
自立支援医療制度(医療費の軽減)
自立支援医療制度とは、心身の障害の症状を和らげたり治療したりするために、医療費の自己負担額を軽減する制度です。医療費の自己負担額が1割に抑えられるほか、世帯の所得に応じて負担額の上限(月額)もあります。
自立支援医療制度には精神通院医療、更生医療、育成医療の3つがあり、それぞれで障害の種類や程度などの条件が決まっています。自立支援医療制度の申請は、自治体によって異なりますが通常、お住まいの市役所などの担当窓口や保健福祉センターなどで受け付けています。また、必要書類も自治体や支援を受ける医療によって異なります。詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。
精神障がい者保健福祉手帳(税金優遇や公共料金の割引)
精神障がい者保健福祉手帳は、精神障がいにより長期的に日常生活や社会生活を送るのに制約がある人に交付される手帳です。障がいの程度により1級から3級まで分かれています。精神障がい者保健福祉手帳を持っていれば、税金の優遇や公共料金の割引、電車代の割引などを受けることができます。
精神障がい者保健福祉手帳の一般的な交付の流れは、以下のとおりです。
- 医師に診断書を作成してもらう
- 診断書や写真、申請書やマイナンバーカードなどの必要書類を持って、お住まいの市役所などの担当窓口で申請する
- 審査に通れば、手帳が発行される
就業不能保険(民間の保険)
就業不能保険は、病気やケガで一定期間働けなくなった時に給付を受けられる保険です。公的な保険ではなく民間の保険であるため、さまざまな種類があり、保険商品によってどの程度働けない期間があれば給付されるのかや給付金額、給付の形(一時金なのか月払いなのかなど)が異なります。
小規模企業共済
小規模企業共済は、毎月の掛け金を支払うことで、個人事業の廃業時に共済金を受け取ることができる、いわば事業主の退職金制度です。
個人事業主がうつ病で働けない時には、低金利で資金の借入ができるほか、途中解約などで資金を得ることができます。
参考:小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構
小規模企業共済については以下の記事でくわしく解説しているので、合わせて参考にしてください。
労災保険(特別加入している一人親方など)
通常、個人事業主は労災保険に加入できませんが、一人親方など特別に加入できる場合があります。労災保険に加入している場合は、うつ病が労災と認定されれば、加入プランなどにより一定の保証を受けることができます。
参考:令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました|厚生労働省
個人事業主の売上減少で活用できる補助金
個人事業主が、売上減少で活用できる補助金には、次のものがあります。
住居確保給付金
住居確保給付金とは、2年以内に離職や廃業をしている人や離職や廃業と同程度の収入となっている場合で、一定の条件を満たした場合に「実際の家賃額を原則3か月間」支給するというものです(上限あり、延長は2回まで可能・最大9か月間)。
住居確保給付金の申請は、最寄りの自立相談支援機関で行います。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や障害者の方の生活を支えるために、貸付を行う制度です。
生活福祉資金貸付制度には「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」「不動産担保型生活資金」の4つがあり、低所得世帯や障害者世帯など、世帯の状況などに応じた資金を貸し付けています。
マネーフォワード クラウド会社設立は、個人事業主が法人成りを検討したほうがよいタイミングをまとめた「法人化を検討すべき7つのタイミング」を無料で用意しております。
創業支援に強い税理士監修で、ポイントがまとまったお得な1冊となっていますので、ぜひ将来を見据えた情報収集でご活用ください。
うつ病による保険や手当、補助金を受け取った場合の確定申告
基本的に、心身障害などにより支給を受けた保険や手当、補助金は非課税のため、確定申告の必要はありません。支給を受けた年の確定申告では、営んでいる個人事業について、通常の確定申告をすればよいです。
ただし、手当や補助金などは、その種類ごとに税金がかかるかどうか法律で決めています。今後、新たに出てくる手当や補助金などは、その都度税金がかかるかどうか確認する必要があります。
個人事業主がうつ病で休業・廃業を検討するタイミング
ここでは、個人事業主がうつ病で休業・廃業を検討するタイミングを見ていきましょう。
休業を検討するタイミング
休業を検討するタイミングは、働けない期間が数か月間以上になる場合です。働けない期間が数か月間以上になる場合は、顧客や取引先に迷惑がかからないように、一時的な休みではなく、休業することを知らせるほうがよいでしょう。
では、休業した時の手続きはどうしたらよいでしょうか。税法上、個人事業に廃業という概念はありません。そのため、国に廃業届を提出する必要はありません。しかし、都道府県や市役所などの自治体は、廃業届の提出を求めていることが多いため、その場合は自治体が用意している廃業届を作成し提出します。
休業中であっても、例えば4月に休業し1~3月までは個人事業をしていた場合など、収入がある場合には原則、確定申告が必要です。休業後、保険金や手当、補助金など非課税の収入以外に課税の収入がなければ、確定申告は不要です。
廃業を検討するタイミング
症状の悪化などで、仕事の復帰が難しいと考えられる場合は、廃業を検討します。廃業の際は、税務署に廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。また、廃業年度には確定申告も必要なため、忘れないようにしましょう。
個人事業主がうつ病などで働けなくなる前に備えること
個人事業主はうつ病やケガなどで、いつ働けなくなるか分かりません。そこで働けなくなる前に、次のことを備えておきましょう。
事業用・生活用の貯蓄を確保する
個人事業主が働けなくなった場合、さまざまな公的支援がありますが、それだけで十分な生活が送れるとは限りません。そのため、普段から事業用や生活用の貯蓄を確保しておきましょう。
民間保険を検討する(就業不能保険や所得補償保険など)
就業不能保険や所得補償保険などの民間保険に、加入しておくことも重要です。民間保険に加入しておけば、いざ個人事業主が働けなくなった場合に、一定の資金の給付を受けることができて助かります。
民間保険の中には、毎月の掛け金を抑えた商品などもあるので、自分に合った無理のない保険商品に加入することができます。
外注できる業務は委託する
外注できる業務は外の会社などに委託し、個人事業主自身の作業量を減らしておくのもよいでしょう。個人事業主自身の作業量を減らしておけば、病気やケガがあったとしても、個人事業主の作業は少ないので、事業を続けていける可能性が出てきます。
会計・請求業務を自動化する
外注できる業務は委託するのと同様に、会計・請求業務を自動化することで、個人事業主自身の作業量を減らしておくのもよいでしょう。
会計・請求業務を自動化することで、病気やケガがあったとしても、個人事業主の作業は少ないので、事業を続けていける可能性が出てきます。また、自動化することで会計・請求業務が簡便化し、代わりに家族などが作業しやすくなります。
専門家や家族と連携し、いざという時に備える
個人事業主が働けなくなった場合の備えとして、税理士などの専門家や家族と連携しておくことも重要です。専門家と連携することで、補助金や手当などの手続きを依頼できます。また、家族と連携しておくことで、仕事を引き継ぐことが可能です。
うつ病で働けない時はさまざまな支援制度を利用しよう!
個人事業主がうつ病で働けなくなったら、収入がなくなり不安に思うかもしれません。しかし、公的な支援として、自立支援医療制度や住居確保給付金、生活福祉資金貸付制度などの支援制度が用意されています。
しかし、公的な支援だけで十分な生活が送れるとは限りません。公的な支援を受けることは前提として、うつ病になる前から貯蓄や民間保険の検討、会計・請求業務の自動化などできることは行っておきましょう。

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
個人事業主の廃業に関する給付金・補助金とは?手続きも解説
個人事業主の廃業給付金には、上限150万円までの補助金を申請できる「廃業・再チャレンジ事業」や、ポストコロナ時代に対応した新分野事業向けの「事業再構築補助金」など、さまざまな種類が存在します。 この記事では、個人事業主が廃業をした場合に申請…
詳しくみる賃上げ促進税制の個人事業主向けガイド!税金の控除や改正を解説
賃上げ促進税制とは、賃上げを実現した法人・個人事業主の法人税・所得税を優遇する制度です。2024年度の税制改正により要件などが見直されたため、この機会に理解を深めましょう。 この記事では個人事業主の方を対象とした、賃上げ促進税制の概要や控除…
詳しくみる個人事業主の所得税が0円になるのはどんなとき?所得税額の計算方法や確定申告について解説
事業の赤字が膨らんだ場合など、個人事業主の所得税が0円になることがあります。所得税が発生しない場合であっても、確定申告は必要になるのでしょうか。個人事業主の所得税や住民税、個人事業税、消費税が0円になるケースや確定申告の必要性について解説し…
詳しくみる個人事業主の住民票発行手数料で利用する勘定科目は?仕訳や注意点を解説
許認可の取得や車両の取得などで、個人事業主が市区町村から住民票を取得するケースがあります。事業に直接関係する住民票発行手数料は必要経費にできますが、今回は使用する勘定科目や仕訳の計上方法、計上する際の注意点などを解説します。 住民票とは は…
詳しくみる個人事業主に税務調査が入る確率は?入りやすい特徴や対応を解説
個人事業主の税務調査の確率は、それほど高いわけではありません。ただし、法人と比較すると確率が低いというだけで、リスクがまったくないわけではないため注意が必要です。 本記事では、個人事業主であっても税務調査が入りやすい業種や特徴、対策方法を詳…
詳しくみる個人事業主の個人再生とは?条件や必要書類、任意整理との違いを解説
個人事業主の個人再生とは、事業の継続や財産の維持を可能にするために、自分が抱えている借金を減額できる制度です。個人再生を行うには、裁判所を通じて所定の手続きを行う必要があります。 本記事では、個人事業主の個人再生とは何かを詳しく説明したうえ…
詳しくみる