- 更新日 : 2025年8月28日
特定商取引法に基づく表記とは?個人事業主が守るべき義務や対処法を解説
インターネット上で商品やサービスを販売する個人事業主にとって、「特定商取引法に基づく表記」は避けて通れない法的義務です。法人だけでなく、個人であっても継続的に通信販売を行う場合は対象となり、違反すれば行政処分や罰則のリスクもあります。
本記事では、特定商取引法の基本から、記載すべき項目、個人情報の保護方法、罰則などを解説します。
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目次
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特定商取引法に基づく表記とは?個人事業主にも必要?
ネットショップや通信販売を行う際、事業者には特定商取引法に基づく情報の表示義務があります。これは法人だけでなく、個人事業主にも適用されるものであり、消費者とのトラブルを未然に防ぐうえで重要な制度です。ここでは、概要と個人事業主にも義務がある理由を解説します。
特定商取引法に基づく表記の概要
特定商取引法は、通信販売・訪問販売・電話勧誘など、消費者との間でトラブルが発生しやすい取引に関して、事業者の行動を規律する法律です。中でも通信販売においては、販売者の情報や取引条件をあらかじめ明示する義務が課されています。
氏名(または法人名)、住所、電話番号、商品の価格、送料、支払方法、引渡時期、返品条件など、消費者が購入判断を行うために必要な情報を、広告やウェブサイト上にわかりやすく表示しなければなりません。
これは、購入前に事業者と直接やり取りをすることが難しいネット販売において、消費者の安全性と公平性を確保するための仕組みです。したがって、個人事業主であっても、通信販売を継続的に行っている場合はこの表記義務を免れることはできません。
個人事業主が対象となる範囲
特定商取引法における通信販売業者の定義は、「営利の意思をもって反復継続して通信販売を行う者」とされています。そのため、法人・個人を問わず、営利目的でネット販売を継続的に行っていれば、法律の対象となります。
たとえば、ハンドメイド商品やデジタルコンテンツをオンラインショップで販売している個人事業主、副業としてECサイトを運営している人などはすべて対象です。
一方、フリマアプリなどで不要品を単発で販売するだけで、事業として継続していない場合はこの法律の適用外となる可能性もあります。ただし、その判断はあくまで販売の反復性・継続性や収益性に基づくため、個人事業主として販売活動を行っている以上、原則として特定商取引法に基づく表記を行うべきと考えるのが確実です。
個人事業主が特定商取引法に基づく表記で明記すべき項目
個人事業主として通信販売を行う場合、「特定商取引法に基づく表記」に必要な情報を正確に掲載することが法律上求められます。ここでは、記載項目と注意点について整理します。
氏名・住所・電話番号などの事業者情報
まず明記すべきは、事業者を特定できる情報です。個人事業主は原則として本名を記載する必要があります。屋号があっても、それだけでは不十分で、正式な氏名または商号を併記することが求められます。
住所は番地まで正確に記し、郵便物が届く実在の所在地であることが必要です。自宅で事業をしている場合は自宅住所を記載します。電話番号も、実際に連絡が取れる番号を記載し、携帯電話でも問題ありませんが、顧客が安心して問い合わせできるようにすることが大切です。また、メールアドレスやURLなどのオンライン連絡先も併せて掲載しておくと信頼性が高まります。
価格や送料などの料金表示
商品の販売価格は税込でわかりやすく記載します。送料や振込手数料など、消費者が追加で負担する金額についても明記が必要です。たとえば、「送料全国一律500円」などの明確な表現が用いられます。
商品ごとに異なる価格や送料の場合は、「各商品ページに記載」などとし、リンク先の案内も明示しておく必要があります。総額が不明瞭だと消費者とのトラブルにつながるため、最終的な支払額を事前に把握できる表示が求められます。
支払方法・時期と商品の引渡時期
支払方法(例:クレジットカード、銀行振込、代引きなど)はすべて明示し、それぞれの支払時期も記載します。たとえば、「銀行振込:注文後7日以内に前払い」「クレジットカード:注文時に即時決済」といった具体的な表現が望まれます。
また、商品の引渡時期(発送時期)については、「ご入金確認後3営業日以内に発送」や「注文日から5営業日以内」など、消費者が受取時期を予測できるよう明確に記載しましょう。遅延が予想される場合には、その旨も記しておくと信頼につながります。
返品・キャンセルの可否と条件
通信販売にはクーリングオフ制度が原則として適用されないため、返品やキャンセルの可否を明確にしておく必要があります。たとえば、「お客様都合による返品は不可」「不良品のみ到着後7日以内に連絡のうえ返品可能(送料当方負担)」など、条件や期限、送料負担の有無を具体的に記載します。
また、セール品や限定商品の返品不可など、独自の特約を設ける場合には、その内容をわかりやすく表示しておくことが大切です。返品受付窓口の連絡先も明記することで、万が一のトラブル時にもスムーズな対応が可能になります。
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個人情報の開示をしたくない場合の対処方法
特定商取引法に基づく表記では、原則として氏名・住所・電話番号を公開する義務がありますが、個人事業主にとってプライバシーを守ることは大きな課題です。ここでは、個人情報の公開を最小限に抑えつつ法令に対応するための対処方法を紹介します。
住所・電話番号を非公開にする例外措置
特定商取引法では通常、事業者の氏名、住所、電話番号をウェブサイトなどに明記する必要があります。ただし、一定の条件を満たせば、これらをサイト上に直接表示せず、「請求があれば遅滞なく開示する」との文言を明記することで代替できる場合があります。
この例外措置を利用するには、購入申込前に消費者から請求があった際、速やかに情報を提供できる体制を整えておくことが前提です。たとえば、専用の問い合わせフォームを設けたり、迅速に対応できる連絡体制を用意したりする必要があります。
ただし、「遅滞なく」とは、購入の判断に間に合う範囲で開示することを意味するため、オークションのような即時性が求められる取引では現実的ではありません。また、連絡が取りにくい状態が続くと、表示義務違反とみなされる可能性もあるため注意が必要です。
バーチャルオフィスや通販プラットフォームの活用
自宅住所や個人の電話番号を直接公開したくない場合は、バーチャルオフィスの住所や電話番号を記載する方法があります。また、ECモールやハンドメイド販売サイトなど、プラットフォームが用意する「事業者情報の代行表示」を利用するのも効果的です。
消費者庁は、一定の条件を満たせばこれらの方法を認めています。たとえば、プラットフォーム事業者が実際の販売者情報を把握していること、緊急時には確実に連絡が取れること、消費者からの問い合わせが迅速に転送される体制が整っていることなどが条件となります。
ただし、郵便局が提供する私書箱(POボックス)は住所としての要件を満たさないとされており、表記には使えません。あくまでも、実在する営業拠点として機能し、連絡手段が確保されていることが求められます。
屋号(ビジネスネーム)の活用
個人名の記載を控えたい場合は、屋号を活用する方法もあります。たとえば、「販売業者:〇〇〇(屋号:△△)」のように表記すれば、ブランドイメージを保ちつつ個人名の目立ちを抑えられます。
また、サイト名やメールアドレスを屋号ベースで統一することで、法人のような印象を与えることも可能です。特定商取引法では、個人事業主は戸籍上の氏名を表示する義務があり、屋号のみの表示は認められていません。ただし、住所・電話番号の非公開に関する例外措置の条件を満たす場合は、ウェブサイト上での氏名の表示を省略し、請求があった際に開示する対応が可能です。この例外を適用しない限りは、氏名と屋号の併記が一般的です。
特定商取引法に基づく表記の記載例(個人事業主の場合)
個人事業主が特定商取引法に基づく表記を実際にどのように記載するか、参考例を紹介します。自身の事業内容に合わせて具体的な情報を書き換え、消費者にとってわかりやすい表記となるよう心がけましょう。
記載例:ハンドメイド雑貨オンラインショップ
例:個人事業主の山田太郎さんが「ハンドメイドYamada」という屋号で雑貨を販売する場合の表記例を示します。
- 販売業者:山田太郎(屋号:ハンドメイドYamada)
- 運営責任者:山田太郎
- 所在地:〒123-4567 東京都〇〇区〇〇1-2-3
- 電話番号:090-1234-5678(平日10時~17時)
- メールアドレス:[email protected]
- サイトURL:https://www.handmadeyamada.example.jp
- 販売価格:各商品ページに税込価格を表示
- 商品代金以外の必要料金:送料(全国一律500円、5,000円以上の注文で送料無料)、振込手数料(金融機関により異なる場合あり)
- 支払方法と支払時期:クレジットカード(ご注文時に即時決済)、銀行振込(ご注文後7日以内に前払い)、代金引換(商品配達時に支払い)
- 商品の引渡時期:入金確認後、5営業日以内に発送いたします。宅配便での発送後、地域により1~3日でお届けします。
- 返品・交換・キャンセル:商品に欠陥がある場合を除き、返品・交換・キャンセルには応じかねます。初期不良があった場合は商品到着後7日以内にご連絡ください。確認後、良品と交換いたします(この際の返品送料は当方で負担)。
上記は一例ですが、自身のショップの実態に即した内容を記載することが重要です。法律で定められた事項を漏れなく盛り込みつつ、消費者にとって読みやすく整理されたレイアウトにするとよいでしょう。実際のECサイトでは、サイトのフッターに「特定商取引法に基づく表記」ページへのリンクを用意し、いつでも閲覧できるようにするのが一般的です。
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特定商取引法違反時の罰則とリスク
行政上の措置(指示・業務停止命令など)
特定商取引法に違反すると、まず所管官庁(主に消費者庁)から行政指導や命令を受けることになります。たとえば、表示すべき事業者情報を省略していた場合や、虚偽または誇大な広告を掲載していた場合、業務改善の「指示」が出されます。改善が見られない場合や悪質と判断された場合には、一定期間通信販売業務を禁じる「業務停止命令」や、より重い「業務禁止命令」にまで発展する可能性があります。
行政処分が下されると、その内容は消費者庁などの公式サイトで公表されることが一般的です。これは事業者の信用低下に直結し、顧客離れや取引停止につながる大きなリスクとなります。
刑事上の罰則(罰金・拘禁)
特定商取引法違反には刑事罰も規定されています。たとえば、表示義務違反そのものに対しては、100万円以下の罰金が科されることがあります。さらに悪質なケースや行政からの業務停止命令に従わない場合等は、個人に対して「3年以下の拘禁または300万円以下の罰金、あるいはその両方」が科される可能性があります。
法人の場合はさらに重く、最高で3億円以下の罰金が設定されています。個人事業主が初回の違反でいきなり拘禁刑となるケースはまれですが、故意の違反や行政命令に従わなかった場合などは刑事告発や起訴に発展することもありえます。罰金の支払いに加えて、前科が付くという重大なリスクもあるため、表記義務の軽視は禁物です。
特定商取引法に基づく表記を正しく理解し、信頼される個人事業主になろう
特定商取引法に基づく表記は、ネット販売に携わるすべての事業者にとって不可欠な義務であり、個人事業主も例外ではありません。消費者に安心して購入してもらうためには、事業者情報や取引条件を正確に公開することが大前提です。適切な表記は法令遵守のためだけでなく、顧客からの信頼を築き、長く事業を続けていくための基盤になります。正しい知識を持ち、安心と信用を得られるショップ運営を目指しましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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