- 更新日 : 2025年2月27日
個人事業主でOEMをするのは難しい?始め方や会計の仕方を解説
個人事業主であっても、OEMをすることは可能です。しかしOEMには様々なメリットとデメリット、注意点があり、よく理解してからOEMを始めないと思わぬ失敗をしてしまうことがあります。
ここでは、個人事業主のOEMの始め方と流れ、メリット・デメリットや会計の仕方について詳しく解説します。
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目次
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個人事業主でOEMをするのは難しい?
個人事業主でも、OEMはできます。ただし、個人事業主がOEMを成功させるには、事前にOEMのことをよく知っておかなくてはなりません。まずは、OEMとはどのようなものかを見ていきます。
そもそもOEMとは?
そもそもOEM(Original Equipment Manufacturer)とは、メーカーが他社に自社ブランドの商品や製品の製造を委託することです。
OEMでは販売するメーカー(委託者)と製造するメーカーの2社間の取引が発生し、一般的に、両者の役割は決まっています。販売するメーカー(委託者)は、商品や製品の企画や設計、出来上がったもののチェックを行い、製造するメーカーは、商品や製品の製造のみを行います。ただし、場合によっては商品や製品の企画や設計まで、製造するメーカーが行うこともあります。
OEMの手法は、電化製品や自動車から化粧品、食品に至るまで、様々な分野で取り入れられています。例えば、自動車メーカーのダイハツは、トヨタから委託を受けてトヨタブランドの車を作っています。
個人事業主でOEMを始めるメリット
ここからは、個人事業主が委託元としてOEMを行うメリットを見ていきましょう。
オリジナル製品が作れる
個人事業主にとって、オリジナル製品が作れることは大きなメリットになります。自分が思い描く理想の製品を社内で企画し、委託先メーカーに作ってもらえば、競合他社との差別化につながります。
設備がなくとも商品を製造できる
個人事業主にとって、設備がなくとも製品を作れることは大きなメリットです。
製造設備を保有すると、購入代金だけでなく、定期的なメンテナンス費用など多くの資金が必要です。しかし、多くの個人事業主には、大がかりな設備を保有する体力がありません。OEMでは、個人事業主が設備を持つ必要がないので、コストを抑えて自社商品を製造できます。
在庫リスクが少ない
OEMを活用することで、委託元は在庫リスクを抑えることができます。
個人事業主や小規模事業者にとって、在庫を抑えることは重要な課題です。在庫過多は単に売上の低迷を意味するだけでなく、倉庫代など在庫管理コストの増大にもつながります。また、倉庫のスペースには限りがあるため、新しい商品を製造する場合は在庫を低価で販売したり、廃棄して損を出さなければならかったりします。
OEMでは、外部のメーカーに製品の製造を依頼することで生産量を調整できます。また、需要など外的要因の変化にも柔軟に対応できるため、在庫リスクを少なくできるのです。
小売価格を決められる
個人事業主が委託元になるOEMでは、個人事業主が自ら小売価格を決めることができます。需要の変化や利益率などを基に、適切な小売価格を決めることで、十分な利益を得ることが可能になります。
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個人事業主でOEMを始めるデメリット
次に、個人事業主でOEMを始めるデメリットを見ていきましょう。
製造のノウハウが蓄積しない
OEMでは委託先が製品を製造し、委託元は製造しません。そのため、委託元には製造のノウハウが蓄積しないというデメリットがあります。
製造のノウハウがないと、例えば、委託先がライバル会社に引き抜かれたら、たちまち製品の製造がストップしてしまいます。製品の企画力などが低下する可能性もあるでしょう。
社内の人材を委託先に出向させるなど、今後に向けた対策を講じておきましょう。1つの委託先に製造を委託できなくなった場合も代わりの委託先を見つけられるよう、日ごろから情報収集することも重要です。
委託先にアイデアを奪われるおそれ
OEMでは、委託元が商品や製品の企画や設計をし、それを基に委託先のメーカーが製造します。そのため、委託先にアイデアを奪われるリスクもあります。
委託先にアイデアを奪われないためには、委託先との契約書に製造を委託した商品や製品を第三者に販売しないことや、他の目的に使わないことなどを盛り込んでおきましょう。
商品の品質や納期への不安
OEMでは委託先が製品を製造するため、納期や製品の品質についての不安がどうしても付きまといます。商品の品質低下や納期遅延がないように、定期的に報告を受けるようにしましょう。
個人事業主がOEMを始める際の注意点
ここからは、個人事業主がOEMを始める際の注意点を見ていきましょう。
販売許可がある商品に注意する
製造・販売する商品の種類によって、許可が必要となるものがあります。製造に関する許可は委託先、販売に関する許可は販売者(委託元)がそれぞれ取ります。
例えば、販売に関する許可が必要となる製品として、下記のようなものが挙げられます。
製品名 | 許可名 |
---|---|
お菓子や食品 | 食品衛生法による営業許可 |
お酒 | 通信販売酒類小売業免許など |
化粧品 | 化粧品製造販売業許可証 |
医薬部外品 | 医薬部外品製造販売業許可証 |
上記以外にも、商品によって許可が必要なものがあります。OEMを始めるまでには、どのような許可が必要か事前に調べておきましょう。
類似商品がないかチェックする
商品の販売をする際には、すでに類似商品が販売されていないかチェックする必要があります。
商品には意匠権や特許権、商標権など様々な権利が付されています。特に、意匠権はデザインが似ている商品の販売を差し止められる権利です。また、意匠権がなくても、他の商品をコピーして販売したと認められると不正競争防止法の違反になってしまいます。
商品販売後のトラブルを防ぐためにも、商品販売時には入念なチェックを怠らないようにしましょう。
委託先との金額の取り決め
委託先との金額も、細かく取り決めておく必要があります。
商品や製品の製造や販売には、予想以上の工程がかかるなど当初予定していなかったことが起こりがちです。
委託先と金額を取り決める際には、どのようなイレギュラーなことが起こりそうなのか、また、起こったときの金額をどうするのかなどを、綿密に決めておきましょう。
OEM契約を交わす
外注先に商品や製品の製造を依頼する際には、OEM契約を交わします。OEM契約では、後述するOEM契約書を作成・保存しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
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個人事業主がOEMで商品開発する流れ
ここでは、OEMで商品を開発するおおよその流れについて解説します。
1.商品のコンセプトを検討する
まずは、販売する商品のコンセプトを検討します。
ターゲットを誰(年齢層や性別)にするのか、どのような商品を販売するのか、どこで(通販なのかスーパーマーケットなのか)販売するのかなどをあらかじめ決めることで、商品製造から販売までがスムーズに進みます。また、広告を出す場合にどのような媒体に広告を出すのか的確に決めることができます。
2.OEMメーカーを選ぶ
商品のコンセプトが決まったら、次はOEMメーカーを選びます。OEMメーカーは、インターネットで検索をして探す方法や、知人からの紹介により探す方法、業種ごとの展覧会などに参加して探す方法などがあります。
3.OEMメーカーとの打ち合わせ
依頼するOEMメーカーが決まったら、そのメーカーと打ち合わせします。製造してほしい商品の仕様や予算などの希望をOEMメーカーに伝えます。打ち合わせ時には、これまでの実績や、設備・人員などの製造体制、情報漏洩のための管理体制などについて確認しておきましょう。
4.サンプル品のチェックと改良
OEMメーカーは委託元の希望に沿って、サンプル品を作ってくれます。自分が思っているような商品かどうかを確認し、改良点があれば改良します。
5.見積金額や製品内容の確認
サンプル品を確認し、品質に問題がなければ、見積金額や製品内容の最終確認を行います。その後、OEM契約を締結しますが、契約を結ぶ際には納期や数量、金額、情報漏洩があった場合の対応など、後にトラブルにならないようにしっかりと両者で決めておきます。
6.問題が無ければ発注
製品内容の確認や契約内容の確認をし、問題がなければ発注をします。
個人事業主のOEMにおける会計のポイント
OEMの会計には、期中に仕掛品勘定を使うケースや使わないケースなど、さまざまなパターンがあります。しかし、個人事業主では、一般的に法人と同程度の難しい会計処理をすることはありません。ここでは、支出時に経費で処理する方法で勘定科目や仕訳を見ていきます。
すべてOEMメーカーに委託
すべてOEMメーカーに委託する場合は、OEMメーカーに支払った金額を「外注費」勘定を使って処理します。
例)OEMメーカーに製造費用として100万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
外注費 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,000,000円 |
材料を支給
材料を支給する場合は、材料購入時に「材料費」勘定で処理します。また、OEMメーカーに支払った金額は「外注費」勘定を使って処理します。
例)材料10万円を現金で購入し、OEMメーカーに支給した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
材料費 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
例)材料費とは別に、OEMメーカーに製造費用として50万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
外注費 | 500,000円 | 普通預金 | 500,000円 |
一部自社加工
一部自社で加工をした場合は、加工にかかった費用を経費にします。
例)OEMメーカーから商品が戻ってきたため、材料30万円を普通預金で購入し、自社で加工した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
材料費 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
期末には、製品や商品の棚卸処理が必要です。また、製造途中の製品がある場合は、製造途中の製品にかかった材料費や経費、労務費などの経費を「仕掛品」勘定に振り替える必要があります。
例)期末に仕掛品が生じた。仕掛品にかかった経費は、材料費20万円、外注費30万円の計50万円だった。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕掛品 | 500,000円 | 材料費 | 200,000円 |
外注費 | 300,000円 |
OEM契約書のテンプレート
OEM契約とは、自社の販売製品を他社に製造してもらうときに締結する契約のことです。契約を締結する時点は様々ですが、一般的に、サンプル品のチェックや見積金額や製品内容の確認が終わったら、OEM契約を締結し、契約書を作成します。
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個人事業主でもOEMを行い、事業を成長させよう!
OEMとは、他社に自社ブランドの商品や製品の製造を委託することです。OEMには、オリジナル製品が作れることや設備がなくとも商品を製造できることなどのメリットがあります。
個人事業主であっても、依頼先を見つけてOEMをすることは可能です。事業を成長させるためにも、積極的にOEMを行いましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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