- 更新日 : 2023年12月6日
白色申告における所得税率の計算の方法を解説!損しないためのボーダーラインは?
所得税の計算方法については、青色申告も白色申告も基本的には同じです。税率は、所得税の税率が適用されます。所得税の税率は所得金額に応じて7段階に分かれていますが、節税対策を講じることで税率を10%も下げることができます。
今回は事業所得者の白色申告の計算方法と、所得金額をどこまでに抑えればお得になるのかについて具体的な金額を計算しながら紹介していきます。
目次
白色申告における所得税額の計算方法
所得税は、1年間で得た収益に対して課税されるものなので、まず1年間の売上合計を計算します。そこから、その収益を得るのにかかった経費を差し引きます。経費を差し引いた額を税法上「所得金額」といいます。計算式で表すと次のようになります。
売上合計 − 経費 = 所得金額
1,000万円 − 400万円 = 600万円
所得金額は、事業での純粋な利益になりますが、政策上の理由から、その収入から控除してもよい金額が定められています。具体的には、誰でも控除することが認められている基礎控除(38万円)や生命保険料を支払っている場合に受けられる生命保険料控除などです。これらを税法上「所得控除」といい、所得から差し引くことができます。
一方で、所得控除を差し引かれた金額は「課税所得」と言われ、この数字を基準に税額が決まっていきます。ここまでを計算式で表すと次のようになります。
所得金額 − 所得控除 = 課税所得
600万円 − 43万円(内訳:38万円+5万円) = 557万円
課税される所得金額が計算できたら、それに税率を掛けて税額を計算します。税率は、累進課税といって、所得金額によって変わります。税率の算定の計算式は次の通りです。なお、課税所得金額は1,000円未満は切り捨てて考えます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参考:所得税の税率|国税庁
557万円 × 0.2 − 42万7,500円 = 68万6,500円
本件事例では、税額は68万6,500円と計算されました。では計算は、これで終わりなのかというとそうではありません。ここからさらに配当控除や寄付金控除といった税額控除をすることが認められています。これも政策的に決められているのですが、税金から直接控除が認められているため、この項目の金額が大きい場合、節税効果が高くなります。
課税される所得に対する税額 – 税額控除
68万6,500円 − 36,500円(内訳:6,500円+30,000円) = 65万円
税額控除をして求めたこの650,000円を「差引所得税額」といいます。さらに源泉徴収されている税額や予定納税している場合には、それを差し引きます。
差引所得税額 – 源泉徴収税額 – 予定納税額
65万円 − 10万円 − 20万円 = 35万円
この35万円が所得税の納税額となります。控除される金額はいろいろとあって、ここでは紹介しきれませんが、基本的な計算はこれですべてです。
ご紹介しきれなかった控除については、「確定申告の所得控除一覧」をご参照ください。
白色申告の税率 損をしないためのボーダーラインはどこ?
白色申告の納税額は所得税の税率が適用されるため、所得税の速算表で確認することができます。
所得税の速算表では課税される所得金額ごとに税率と控除額が一覧としてまとめられています。
この速算表で注目すべき点は、
- 税率が10%と20%のボーダーラインとなる330万円
- 税率が23%と33%のボーダーラインとなる900万円
です。
330万円と900万円を1円でも超えた部分について、一段上の+10%の税率が適用されることになってしまいます。
また所得金額が695万円を超えた場合においては、一段下の20%と比較すると上昇率は3%のみであることから、所得金額330万円と900万円が注目すべき金額となります。
所得金額330万円の場合で実際に計算してみると、
330万円×10%-97,500=232,500円
となりますが、所得金額350万円の場合は、
350万円×20%-427,500=272,500円
となり、所得金額が20万円上がるだけで、実際の税額に4万円もの差がつきます。
所得金額が900万円の場合は、
900万円×23%-636,000円=1,434,000円
となりますが、所得金額1,000万円の場合は、
1,000万円×33%-1,536,000円=1,764,000円
となり、所得金額が100万円上がるだけで33万円も納税額が増えます。
税率が10%から20%に上がってしまう所得金額330万円と、税率が23%から33%に上がってしまう所得金額900万円は、節税できるかどうかのボーダーライン上の金額だということができます。
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白色申告でも経費が多ければ青色申告と同じくらいお得
先ほどの白色申告では、所得金額が330万円を超えると税率が10%から20%に上がり、所得金額が900万円を超えると税率が23%から33%に上がることがわかりました。
もし所得金額350万円の白色申告者が青色申告に切り替えるのであれば、青色申告特別控除65万円(※)が適用されることになるため、所得金額を350万円-65万円(※)=285万円まで引き下げることが可能となるため、適用される税率は20%から10%になります。
しかし、白色申告であったとしても、事業内容が小売業や卸売業であり、経費のほとんどが仕入である場合や扶養人数が多い場合は、青色申告特別控除65万円と同じかそれ以上の経費がかかることになるため、税率を下げることは十分可能となります。
特に扶養人数が多ければ多いほど、国民年金保険料や国民健康保険料、介護保険料などの社会保険料がかかり、所得控除の一つである社会保険料控除の額が大きくなります。また、70歳以上の親族を扶養していれば扶養控除の控除額が増額されます。
一般の扶養親族の控除額が38万円であるのに対し、同居している70歳以上の扶養親族の控除額は58万円となるため、青色申告特別控除額65万円(※)に匹敵する控除額を適用することができます。扶養人数が多ければ多いほど治療などで通院や入院する可能性も高くなるため、医療費控除として最高200万円を控除額とすることもできます。また、平成29年以後においては、セルフメディケーション税制により、市販の薬を購入した場合でも一定の条件を満たすと所得控除の適用を受けることができます。
したがって、サービス業などで仕入などにかかる経費を計上することができなかったり、核家族で扶養人数が少なかったりする場合は、青色申告に切り替えることによって税率を一段下に引き下げる節税対策が必要となります。
同じ収入金額であったとしても白色申告のままでは税金を多く納めることになる場合は、青色申告に変更するための手続きが必要となります。その年から青色申告に変更する場合は、3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
もし3月15日を過ぎてしまった場合は、翌年から青色申告の適用を受けますが、新たに事業を開始した場合は、業務開始日より2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
※2020年分以降の青色申告特別控除額は55万円となりますが、これまでの要件に加えて、e-Taxによる電子申告あるいは電子帳簿保存のいずれかを行うことで、控除額65万円を受けることができます。
白色申告の税率について理解できましたか?
以上のとおり、順番を追って計算していけば税額の計算は決して難しいものではありません。白色申告であってもきちんと計算して、正しく記入することを心がけましょう。
また、白色申告の事業内容や扶養内容によっては、青色申告に切り替えなくても十分な節税効果を見込むことができます。
適用できるのに申告していない控除がないかどうか確認するだけでなく、別居している両親を扶養に加えるなどすることによって、青色申告に切り替えなくてもできる節税対策があるかもしれません。本当に青色申告にする必要があるのか、実際にシミュレートしてみてはいかがでしょうか。

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よくある質問
白色申告の所得金額の計算方法は?
まず1年間の売上合計を計算し、そこから収益を得るのにかかった経費を差し引きます。詳しくはこちらをご覧ください。
白色申告の税率で損をしないためのボーダーラインは?
税率が10%から20%に上がる所得金額330万円と、税率が23%から33%に上がる所得金額900万円です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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