• 更新日 : 2024年11月7日

帳票とは?発行を電子化するメリットや方法、注意点を解説

帳票は日々の業務に欠かせないビジネスツールです。業務の進捗管理やデータ集計、法的な書類作成まで、多様な場面で活用されています。しかし、紙や手作業での帳票管理はミスや遅れを招きやすく、生産性向上を阻害する大きな課題の1つです。本記事では、帳票作成の効率化を実現するための具体的な方法を解説します。

帳票とは?

帳票とは「帳簿」と「伝票」のことで、ビジネスに欠かせないツールです。日常的に利用している帳票について、あらためてその内容と役割を見直してみましょう。

帳票の定義

帳票とは、事業者において発生する情報や取引内容を整理して記録・伝達・分析するための文書やデータ形式(フォーマット)を指します。

帳票の役割

企業や個人事業主において、帳票は経営状況を把握したり、取引の証跡として利用したりする重要な役割を果たします。さらに、企業の業務プロセスに組み込まれる基幹情報システムにおいては、帳票がデータの入力や出力の基礎資料です。

その他にも帳票がもつさまざまな役割を、以下に紹介しましょう。

<帳票の役割>

  •    情報の記録:取引や業務活動に関する情報を記録するための手段
  •    データの伝達:関係者間で情報を共有するためのツール
  •    分析と管理: データ分析の基礎資料や意思決定の根拠として保存される資料
  •    業務プロセスの標準化:属人化を排除する業務プロセス標準化の手段
  •    法的要件への対応:法律によって提出が義務付けられる資料
  •    内部統制:内部統制システムの一部としての機能

帳票と証憑の違い

ビジネスにおいて、帳票と同じくらい耳にする機会の多い書類が証憑です。証憑とは取引の成立を証明するための書類で、取引時のタイミングでその都度作成されます。証憑は、特定の取引の事実を証明するために不可欠な書類であり、取引の過程や結果を記録する役割があります。

一方、帳票は日々の取引を記録するための書類で、おもに取引発生後に作成され、経営状況を把握するために必要です。たとえば、請求書見積書領収書などの帳票の一部は、経理処理において証憑として扱われるケースも多くあります。

ここまで見てきたように、帳票と証憑はビジネスにおいて重要な書類であり、それぞれ異なる役割と特性をもちながらも密接に関連しています。

帳票の種類は2つ

帳票をさらに深掘りしていくと、おもに「帳簿」と「伝票」に大別されます。以下で、具体例を見ていきましょう。

帳簿

帳簿とは、社内外で発生した取引や経営状況を記録した書類です。

税務署への提出書類としても利用される帳簿は、会計や経理の分野に馴染みが深く、以下のような種類があります。

<帳簿の具体例>

伝票

伝票とは、日々のお金の動きを記録した書類です。伝票の中には、請求書や領収書のように証憑としての機能を併せもつものも存在するため、ビジネスにおいて馴染みの深い書類といえます。

以下のような伝票の種類は、誰でも一度は目にしたことがあるでしょう。

<伝票の具体例>

  • 入金伝票、出金伝票
  • 売上伝票、仕入伝票
  • 振替伝票
  • 請求書
  • 領収書
  • 注文書
  • 納品書、レシート
  • 受領書 など

帳票の保存期間は法律で定められている

帳票は、法人税法会社法所得税法などの法律によって保存期間が定められています。注意が必要なのは、法律によって保存期間の定めが異なる点です。

以下に、それぞれのケースにおける帳票の保存期間を解説していきましょう。

法人税法上では5〜10年間

法人税法の規定では、すべての帳票類を事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から、7年間保存しなければならないこととされています。

正しい理解が必要なポイントは、保存期間の開始時点が、当該事業年度の確定申告提出期限の翌日となる点です。

例外として、以下のケースでは10年間(平成30(2018)年4月1日前に開始した事業年度の場合は9年間)の保存義務が課せられるため、注意しましょう。

<法人税法で帳票類の保存期間が10年となるケース>

  • 青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合
  • 青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた場合

参考:e-Gov 法人税法施行規則第六十七条二項

参考:国税庁 タックスアンサー No.5930帳簿書類等の保存期間

会社法上では10年間

会社法では、会計帳簿やその事業に関する重要な資料は、締め日から10年間保存することが求められています。保存が必要な帳票には、決算書や総勘定元帳などが含まれます。

参考:e-Gov 会社法第四百三十二条二項

個人の場合

個人事業主の場合、青色申告か白色申告のどちらかで帳票の保存期間が異なります。まず、青色申告を行う個人事業主は、所得税法において以下のように規定されています。

  • 決算関係書類や現金預金取引等関係書類……7年間
  • 取引の際に作成または受領した書類  ……5年間

一方、白色申告の場合は以下の通りです。

  • 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)……7年間
  • 上記以外の帳簿、書類            ……5年間

以上のように、帳票の保存期間は法律によって厳格に定められており、法要件に沿った管理が必要です。税務調査などで過去の帳票の提出を求められるケースが考えられるため、正確な記録と適切な保管が重要です。

参考:国税庁 記帳や帳簿等保存・青色申告

電子帳簿保存法の改正による帳票の保存方法への影響

2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法は、宥恕期間を経て2024年1月から本格スタートしました。紙から電子データへの移行を促進する改正電子帳簿保存法は、帳票の保存方法に大きな影響を与えます。

具体的な影響を以下で解説していきます。

影響1:電子取引データの保存義務化

すべての事業者に対して、電子的にやり取りされた請求書や領収書を電子データとして保存する義務が課せられています。電子データで受け取った帳簿を紙に印刷する必要がないため、業務効率化が期待できます。

一方、これまで認められていた紙での保存が不可となるため、電子データの保管方法を整備しなければなりません。

影響2:スキャナ保存の要件緩和

スキャナで読み取った紙の帳票保存や、自ら作成した書類の写しをスキャナ保存する際のタイムスタンプ付与期限が延長されました。従来は3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありましたが、改正後は最長約2ヶ月とおおむね7営業日以内へと緩和されています。

さらに、訂正・削除記録が残り、入力期間内の内容が確認できるクラウドシステム等を利用している場合、タイムスタンプの付与は不要とされました。

影響3:事前承認手続きの廃止

2022年1月以降、電子帳簿保存を行うための税務署長による事前承認が不要になりました。

税務署への事前手続きが不要になったため、事業者はすぐに帳票の電子化へ移行できる体制が整ったのです。

改正電子帳簿保存法では、従来よりも電子化ルールが緩和されました。今後は、これまで以上に紙から電子データへのシフトが加速していくことでしょう。

改正電子帳簿保存法の詳細については、以下の記事をご覧ください。

帳票発行を紙ベースで行う場合の課題

改正電子帳簿保存法により、帳票発行の電子化を推進しやすい環境が整ったといえます。一方で、すでに定着している紙の帳票発行を電子に切り替えることに躊躇する企業も少なくありません。

そこで、帳票発行の電子化を後押しするために、あらためて紙による帳票発行の課題について見直してみましょう。

帳票の作成・発送に工数や費用がかかる

紙で帳票を発行する場合、作成から印刷までの一連のプロセスが欠かせません。発行件数が多ければ多いほど、人件費や印刷費などのコストは膨れ上がっていきます。とくに負担が大きいのは、法要件に対応した帳票発行が求められる場合です。

たとえば、インボイス制度への対応が求められる適格請求書のように、法要件を順守するためのプロセスが増えるほど、発行作業の負担は大きくなります。紙の発送が必要となる場合は、封入作業のコスト・発送費・保管場所のコストといった付随的な費用が必要になる点も大きな課題です。

ヒューマンエラーが発生しやすい

紙の帳票発行には、ヒューマンエラーのリスクが付きまといます。たとえば、作成時にExcelやWordのフォーマットを利用しているならば、フォーム崩れや記載項目の記入漏れ、金額集計ミスといった不備は少なくないでしょう。

保管時には、誤ってファイリングするおそれや、紙の紛失といったリスクも想定されます。さらに、発送時には封筒の入れ間違えや送付先の宛名違いなど、重大ミスが発生するリスクがあります。

セキュリティ面のリスクが大きい

紙の帳票は、閲覧可否の権限管理が難しく、盗難などのセキュリティリスクが高い点も大きな課題です。紙で保管される帳票は、情報が盗まれやすい上、流出しても発覚までに時間がかかることが多いでしょう。

それだけでなく、紛失や長期保管による摩耗・破損のおそれも否定できません。帳票には機密情報が含まれているケースが多く、セキュリティリスクは自社だけでなく取引先等に対しても影響を与えるおそれがあります。

帳票発行を電子化するメリット

帳票発行の電子化とは、帳票自体をデジタルで作成し発行することを意味します。リモートワークの拡大や改正電子帳簿保存法の開始が後押しとなり、近年では帳票の電子化を進める企業が増加しています。

本章では、帳票発行を電子化するメリットを3つ紹介していきましょう。

業務の効率化・迅速化

帳票を電子化すれば定型テンプレートをあらかじめ用意できるため、作成ミスを減らし作業効率が向上します。

さらに電子データは、データを一元管理しやすく検索が容易であるため、必要な情報を迅速に取得できます。保管や検索にかかる時間短縮は、労働生産性を大きく向上させるのです。

他にも、クラウドサービスを活用すれば、承認作業などもウェブ上で行えるため、承認時間の短縮にもつながるでしょう。

ペーパレス化によるセキュリティの向上

電子化された帳票は、アクセス権限を設定できるため、情報漏えいや紛失のリスクを低減します。データの暗号化やシステム認証の強化、アクセスログ管理ができるシステムを導入すれば、セキュリティはより強固になるでしょう。

電子データはバックアップも容易であるため、長期保管による摩耗や災害によるデータ損失リスクにも対応可能です。

コスト削減

帳票を電子化することで、印刷代や郵送費用、保管スペースの賃料などのコストを削減できます。さらに、電子化により帳票発行や紙の管理にかかる手間が大幅に削減されるため、人件費の軽減にもつながります。

帳票発行の電子化を実現することで、全社的なコスト効率向上という大きなメリットを受けられるのです。

帳票発行を電子化する方法

帳票発行を電子化する方法として挙げられるのは、以下の2つです。

  • 電子帳票発行システムを利用する
  • Excelなどで作成した帳票をPDFで出力する

上記2つの方法におけるメリットとデメリットをそれぞれご紹介しましょう。

電子帳票発行システムを利用する

帳票発行を電子化する方法として、近年注目を浴びているのが電子帳票発行システムです。電子帳票発行システムによる、帳票電子化のメリットとデメリットは以下の通りです。

<メリット>

  • 帳票作成専用のシステムやツールを使用することで、効率的な帳票の作成・管理が可能
  • 電子帳票発行システムは、多くの場合、電子帳簿保存法に対応しており、法的要件を満たした形でデータを保存可能
  • ワークフロー機能により、適切な承認ルートの設定が可能、かつ、アクセス権限も厳格に管理できるため、内部統制の面でも有効

<デメリット>

  • 電子帳票発行システムを導入する場合、初期費用や月額費用などのコストが発生
  • 独自のカスタマイズが難しい場合、自社の運用ルールの変更を余儀なくされるため、業務フローの見直しが必要
  • ITに不慣れな社員にとっては利用のハードルが高く、システム定着化のためのトレーニングが不可欠

Excelなどで作成した帳票をPDFで出力する

電子帳票発行システムの導入以外の方法としては、Excelで作成した帳票をPDFとして出力する方法があります。PDFによる帳票電子化のメリットとデメリットは、以下の通りです。

<メリット>

  • ビジネスにおいて、一般的に導入されているWordやExcelで作成した帳票をPDF形式で出力し、そのまま保存するため難しい操作が不要
  • WordやExcelの帳票はカスタマイズ自由度が高く、自社の運用に合わせてフォーマットを簡単に設計・変更可能
  • 電子帳票発行システムと比較して、低コストで帳票の電子化が可能

<デメリット>

  • 作成元のフォーマットがWordやExcelであるため、表示崩れや記入項目の不備など、作業ミスの発生
  • 電子帳簿保存法の要件を満たすためには、追加の手続きが必要
  • 保管時における閲覧可否の権限管理が難しく、セキュリティ面が脆弱

帳票発行を電子化する注意点

帳票の電子化は、業務効率化につながる多くのメリットが存在する一方、新たな課題も考慮する必要があります。以下に、帳票発行を電子化する際に事前に確認すべき注意点を解説していきます。

導入コスト

帳票発行を電子化するためには、システムやソフトウェアの導入が必要です。これには導入コストが必要となり、場合によっては新しいハードウェア(パソコンやタブレット、スキャナなど)の購入も必要になるでしょう。

導入後も運用コストが発生するため、長期的な視点によるコストの評価が重要です。

業務フローの再構築

帳票発行の電子化に伴い、従来の業務フローの再構築が必要となるケースがあります。電子化に適した業務フローへ変更する際には、目的とゴールを社内関係者へ丁寧に説明し、理解を得る必要があります。もし電子帳票発行システムを導入したとすれば、マニュアルの整備や従業員への教育が必要でしょう。

また、電子化が進む中で、紙の書類と電子データが混在することがあり、書類の保管や管理が煩雑になる可能性もあります。完全な電子化が達成されるまでの間は、紙と電子データの両方に対応できる体制を整えることも重要です。

取引先との調整

帳票発行を電子化する前に、取引先に対する説明と理解を得るための準備が欠かせません。取引先から電子化の同意を得られたならば、実際に電子発行へ切り替えるための手続きも必要です。

取引先によっては、電子化に対応できない場合もあるため、段階的な移行を求められることもあります。

電子帳簿保存法への対応

帳票を電子化する際には、先述した電子帳簿保存法への対応が義務付けられます。とくに保管の際には、法要件に従った適切なデータ保管が必要です。

電子帳簿保存法では、データの真実性や可視性を確保するための要件が定められており、これらに従った運用が求められます。

帳票発行の効率化には電子帳票発行システムの導入がオススメ

紙による帳票発行の負担とコストを削減するためには、電子化の推進が不可欠です。一方、帳票の電子化には電子帳簿保存法に対応した適切な運用の構築が必要です。効率的に電子化の効果を最大化させるためには、電子帳票発行システムを導入するのがオススメです。

日常的に発生する帳票発行業務を効率化することは、生産性向上に直結する重要な取り組みといえるでしょう。


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