• 更新日 : 2024年10月1日

税別表記が違法に!総額表示のルールや書き方、罰則について解説

2021年4月1日から、消費者向けの商品やサービスの価格は消費税を含めた「総額表示(税込価格)」が義務づけられました。つまり、「税別表記(税抜き価格)」だけの価格表示は違法です。

本記事では、価格表示方法のルール改正について解説します。総額表示が必要なケースと税別表記が認められるケース、違反した場合の罰則なども紹介しますので、正しい価格表示方法を確認しておきましょう。

2021年4月1日から税別表記は消費税法違反に

2021年3月末に「消費税転嫁対策特別措置法」が終了し、4月1日から消費者向けの商品やサービスの価格の「税別表記」は消費税法違反になります。最初に、価格の表示方法とその変遷について確認しておきましょう。

税別表記と総額表示

商品やサービスの価格表示の方法は、税別表記と総額表示の2種類です。消費税を含まない価格表示が税別表記、含んだ価格表示が総額表示です。それぞれの表示方法には、メリットとデメリットがあります。

税別表記については、販売者にとって「消費税が変わっても価格表示を変えなくていい」「価格を安く見せられる」という点がメリットです。一方、消費者からすると「支払う金額がわかりにくい」「価格の比較がしにくい」などのデメリットがあります。

総額表示は、「実際に支払う金額が明確」「価格を比較しやすい」など、主に消費者にメリットのある表示方法です。しかし、消費者が高いと感じて買い控えするなど、販売者にとってはデメリットになる可能性もあります。

税別表記の禁止と総額表示の完全義務化

2021年4月1日より総額表示が完全義務化され、税別表記だけの価格表示は禁止されました。消費税導入により税別表記と総額表示の2種類の価格が併存することになり、消費者が誤解しないように法律で価格の表示方法が定められています。

総額表示の義務化は2004年4月1日です。しかし、消費税の引上げ(3%→5%→8%→10%)が続き、その度に表示価格を変更する手間やコストが想定されました。対策として、2013年10月1日から2021年3月31日の間、総額表示しないことを認める「消費税転嫁対策特別措置法」が生まれました。

ただし、総額表示しない場合は「表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」が取られていることが条件です。

2021年4月1日に特別措置法が終了して総額表示の完全義務化が実現し、同時に税別表記のみの価格表示は法律違反となりました。

企業間取引(BtoB)の場合は税別表記でも問題ない

企業間取引(BtoB)については、価格を税別で記載しても法律違反とはなりません。総額表示の完全義務化の対象は「不特定かつ多数の者(消費者)に対する価格表示」であり、企業(事業者)に対する価格表示には適用されないためです。

企業間取引に関する価格表示について確認しておきましょう。

企業間取引で税別表記で問題のないケース

企業間取引において税別表記して問題がないのは、次に記載する価格などです。

  • 事業者向けの商品やサービスの販売価格の値札や広告
  • 事業者向けに作成・配布したカタログ
  • 商品カタログや商品パッケージなどに表示している「希望小売価格」

希望小売価格は、製造メーカーなどが小売店に対して行う価格表示です。消費者に対する価格表示ではないため、総額表示の義務はありません。

そのほかの税別表記で問題のないケース

事業者や消費者に対する見積書や契約書、請求書なども、税別表記で問題ありません。見積書などは、特定の事業者や消費者に対するものであるためです。

会員制の店舗などにおける価格表示は要注意

会員制の店舗などにおける価格表示には注意が必要です。税別表記で問題のないケースと法律違反になるケースがあるためです。

会員制の店舗では商品やサービスを提供する対象は会員に限定されているため、一見「不特定かつ多数の者」に該当しないように思われます。しかし、会員制の商業施設など、会員の募集が広く一般消費者を対象に行われている場合については、総額表示が必要となるため注意しましょう。

違法となる税別表記の例

総額表示義務の対象となる値札などに、税別表記すると違法となります。総額表示義務の対象と違法な税別表記の例を紹介します。

総額表示義務の対象となるのは、商品やサービスの価格が記載されている以下の書面や映像です。消費者に価格表示するすべての媒体が対象になります。

  • 商品の値札
  • 看板やポスター、店内のPOP
  • チラシやカタログ
  • メニュー表
  • ダイレクトメール
  • 新聞や雑誌、ホームページなどの広告
  • ECサイト など

次に、違法となる税別表記の具体例を紹介します。商品価格が1万円、消費税1,000円、総額(税込価格)が1万1,000円とします。

  • 1万円(税別)
  • 1万円(税別価格)
  • 1万円(本体価格)
  • 1万円+税金
  • 1万円+消費税額 など

上記の例では本体価格のほかに消費税が必要になることはわかりますが、総額(税込価格)である「1万1,000円」という記載がありません。総額を具体的に記載しなければ違法です。

違法とならない総額表示のルール

違法とならないように価格表示するには、消費税額を加えた総額(税込価格)を消費者にわかるように表示しなければなりません。違法とならない具体的な記載方法は次の通りです。商品価格が1万円、消費税1,000円とします。

  • 1万1,000円
  • 1万1,000円(税込)
  • 1万1,000円(税別価格1万円)
  • 1万1,000円(うち消費税額等1,000円)
  • 1万1,000円(税抜価格1万円、消費税額等1,000円)
  • 1万1,000円(税抜価格1万円、消費税率10%) など

「1万1,000円」という消費者が支払う総額を表示していれば、「消費税額」や「税別価格」は表示しても、しなくても問題ありません。また、値引き販売に使う「1,000円引き」などの表示や「時価」など価格変動がある商品の価格表示には、総額表示は不要です。

値ごろ感を出したい場合の書き方

消費者に対して値ごろ感を出したい場合は、税別価格を目立つように表示するという方法があります。たとえば、次のような価格表示です。

  • 1万円(税込価格1万1,000円)

総額(税込価格)を明確に表示していれば、総額表示したことになります。ただし、税別価格を強調するために、総額の文字を極端に小さくするなどして消費者に誤解を与えれば、明確に表示したことにはなりません。

税別表記した場合、罰則はある?

税別表記した場合、法律違反として罰則があるのでしょうか。法律上の取り扱いと、法律違反による影響について解説します。

税別表記しても消費税法上の罰則はない

総額表示義務の対象に価格を税別表記すると消費税法違反になりますが、法律では罰則が設けられていません。ただし、総額を表示せずに消費者が「税別表記の金額=支払い総額」だと誤認した場合、景品表示法違反になるリスクがあります。

景品表示法違反に対しては、消費者庁や都道府県知事による調査や措置命令が行われます。措置命令に従わなければ、罰則が科される恐れもあるため正しい価格表示が必要です。

税別表記すると消費者からの信頼を失う

消費やサービスの価格を安く見せるために税別表記しても、支払い時には総額表示していないことが判明します。消費税がプラスされていることに気づかない人や気づいても諦める人もいますが、消費者からクレームを受けたり、キャンセルされたりする可能性もあります。

被害を受けた消費者の信頼をなくすだけでなく、悪い評判が広がれば経営が揺らぐリスクもあるため注意しましょう。

税別表記が認められるケースと認められないケースを理解して正しい価格表示を

2021年4月1日から総額表示が完全義務化され「税別表記」は違法です。総額表示によって、消費者は実際に支払う金額がすぐにわかり価格比較もしやすくなりました。

総額表示義務を守らないと、消費者が実際に支払う金額を誤認する可能性があります。違法となったり、消費者の信頼を失ったりするリスクがあるため、価格表示のルールを理解して、正しく価格表示するようにしましょう。


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