- 更新日 : 2025年2月21日
エクセルのデータ一覧から関数だけで請求書を作成する方法は?
請求書を作成する際に、エクセルを利用することはよく行われています。特にインボイスには盛り込む項目も多いため、気を付ける箇所は多々ありますが、請求書やその明細書などの作成には小回りの利くエクセルの利用をよく見かけます。
この記事では、極力手入力をせずにエクセルの関数によって請求書を作る場合のノウハウをご紹介します。
目次
エクセルのデータ一覧から請求書を作成する方法は?
エクセルは、意図した書類を細かいところまで作り上げるのに適したツールと言えます。バックオフィスで新たに書類が必要になった場合に、最もよく使われているツールはエクセルではないでしょうか?
エクセルでの書類作成方法をできるだけ自動化する場合、大きく分けると「関数」を利用する方法と、マクロ(VBA)を利用する方法があります。業務の内容に応じて、どちらかを選択したり、両者を組み合わせたりして使用することでより効率的な結果が得られます。
それぞれには長所と短所があるため、それらを踏まえて設計しましょう。
エクセル関数を使用する方法
請求書作成に利用する場合、具体的には先にエクセルで請求書フォーマットを作成し、必要なセルに関数を埋め込んでおいて、別途データを参照する使い方などが利用されます。
エクセルの関数利用における主な長所や短所としては、次のものが挙げられます。
【長所】
簡単 | 関数を使用するのにプログラミングの知識は不要であり、簡単に利用することができる。 |
---|---|
リアルタイムで反映 | データを入力・変更すると即時結果が更新される。 |
透明性 | セル内に関数が直接記述されているため、ロジックが見やすく理解しやすい。 |
互換性 | Google スプレッドシートやApple Numbersなど、他の表計算と互換性のある関数が多い。 |
【短所】
複雑な関数はメンテナンスに限界あり | 関数を数多く組み合わせて利用すると計算が複雑になるため、メンテナンスが難しい。 |
---|---|
パフォーマンス低下 | 大量のデータや多すぎるシート数、多すぎる関数などにより、エクセルの動作が遅くなることがある。 |
バージョンによる違い | エクセルのバージョンによって利用できる関数に差があるため、異なるバージョン間での共有は難しい時がある。 |
マクロを使用する方法
マクロを利用する場合には、マクロと呼ばれるプログラムを実行することになります。予めマクロを記録しておき、自動処理を実行します。
エクセルのマクロ機能についての主な長所や短所には、次のものが挙げられます。
【長所】
簡単な自動化処理 | 簡単なマクロ処理であれば、実行したい操作を順番に行って記録するだけなので、プログラミング知識はほとんど必要ない。 |
---|---|
作業の効率化 | 手作業では時間のかかる処理を短時間で実行することができる。 |
外部データ利用 | 外部データとの連携が可能である。 |
【短所】
複雑な自動処理 | 高度なマクロやメンテナンスを考えている場合には、Visual Basic for Applications(VBA)というプログラミング言語を使用するため、プログラミング知識が必要となる。 |
---|---|
メンテナンスの難しさ | 複雑なマクロ、冗長なロジックは理解や修正が難しく、バグの原因となることがある。 |
環境やバージョンによる違い | エクセルのバージョンや環境によって、動作が異なる場合があるため、ファイル共有が難しい時がある。 |
エクセルのデータ一覧から請求書を作成するために覚えるべき関数は?
エクセル関数の初心者向けに、簡単なエクセル関数について概要をご紹介します。どれも請求書を作成するにあたっては大変便利な関数です。
実際の利用には、エクセルを開いて「∱x」のボタンを押すと、「関数の挿入」ウィンドウが開きます。そこで、利用したい関数を選択することができます。
SUM関数
SUM関数は、指定範囲の数値を合計するための基本的な関数で、簡単で効率的な集計に役立ちます。英語の「sum(合計)」から来ているようで、覚えやすい関数です。請求書作成で、合計金額を求める際によく使用します。
例えば、「=SUM(A2:A10)」と入力すると、A2セルからA10セルまでの範囲内の金額を合計し、総額を求めることができます。
IF関数
IF関数は、指定した条件に基づいて異なる結果を表示するために使います。請求書作成では、条件に応じて異なった計算や表示をする際などに非常によく使います。
例えば、「=IF(A2>5000,”キャンペーン割引適用”,””)」と入力すると、A2セルが5,000を超えた場合に「キャンペーン割引適用」という文字列が表示されます。
VLOOKUP関数
VLOOKUP関数は、指定した値を元にして、別の表からその指定値に対応するデータを検索して表示する関数です。Vは英語の「Vertical(垂直)」であり、「look up(調べる)」と合わせると、縦方向にデータを調べる(検索する)という意味です。
請求書作成でこの関数を使うと、商品コードを検索値として、その価格や商品名を検索範囲から探しあてるなどの使い方ができます。
例えば、「=VLOOKUP(検索値,検索範囲,検索範囲のうち結果を返す列番号,完全一致検索かどうか)」などのパラメータにより、検索値から対象となる値を表示できます。
XLOOKUP関数
VLOOKUP関数では「左から右」の方向で検索をしていましたが、XLOOKUP関数では、これが改良され、任意の方向で検索値を返す関数として生まれました。VLOOKUPとは異なり、検索する列の順序を気にする必要がなく、デフォルトで完全一致検索となったため、より柔軟にデータ検索を行えるようになっています。
(XLOOKUP関数はExcel2019以降のバージョンで使用できる関数です。)
例えば、上記のVLOOKUP関数をXLOOKUP関数にすると、「=XLOOKUP(検索値,検索範囲,返す値の範囲)」となります。
エクセルのデータ一覧から関数だけで請求書を作成する方法は?
請求書をエクセルで作成する場合に、手入力をせずにデータ一覧と関数だけで完結する方法を考えてみましょう。
原則的な項目だけならエクセル関数だけで請求書ができる
エクセルの関数だけで請求書を作成する方法の一例として、次の3ステップによる方法が考えられます。
① 請求書フォーマットの必要項目に関数を入れておく。
② データを別のシートに置く。
③ 請求書フォーマットの関数に沿ってデータが反映されます。
【簡単な具体例】
①関数をセットした請求書を作成します。(色付きセルはわかりやすくするためです。)
例えば、お支払期日には、発行日を元にした「EOMONTH」という関数を入れており、発行日が入力されていたら、翌月末をセットするようになっています。
また、左上の宛先のところには、VLOOKUP関数を入れており、検索値(得意先CD)をもとに得意先テーブルから検索した値をセットするようになっています。
②この例では、「請求データ」と「得意先テーブル」という2種類のデータを作成しました。得意先テーブルなどは、販売システムなどからデータをダウンロードして作成するとよいでしょう。左が請求データで、右が得意先テーブルです。
上記①のVLOOKUP関数では請求データの赤枠部分が検索範囲となっています。
③請求書にデータが反映された状態です。
この例では、請求書上に記載された得意先コードを変えることによって、次々と請求データの内容が反映され、請求書ができるしくみとなっています。関数だけでなくマクロなどを組み合わせると、得意先コードのどこからどこまでを順次セットして処理を続けることもできます。
しかしながら、取引明細が多い、複数税率がある等の込み入ったものはエクセル関数だけでは難しいと言えます。
エクセルのデータ一覧から関数を利用して請求書を作成するときの注意点は?
エクセル関数を使った請求書は非常に便利ですが、請求書を作成するときの注意点をご紹介します。
作成後の確認が大切
得意先によって、特別値引きがあったり、立替金も合わせて請求したりと、請求書に多くの機能を持たせる場合には、別途特別な書式を作成して対応したほうがよいでしょう。その際、印刷やPDFファイルを作成した時点で、文字が切れていないか、新たに設定しなおした関数は機能しているかなど、目視確認する必要があります。
また、関数を複数組み合わせて計算が複雑になった場合などには、念のため手計算で確認したほうがよい場合もあります。
このように、他のデータと大きく違うものが含まれている時にはよく確認しなければなりません。
マネーフォワード クラウドなら請求書の作成が簡単に
エクセル関数で請求書を作成するのは、請求データに目立った例外はなく、文字数などもほぼ揃っているような請求データが適していると言えます。請求データのばらつきが大きい場合には、専用ソフトの利用を検討してみましょう。
クラウド型請求書作成ソフトであるマネーフォワード クラウド請求書は、次のような特徴を持ち、業務効率化に大きく貢献します。
- 請求書テンプレートの簡単作成
項目ごとに表示・非表示など柔軟にカスタマイズもできます。
- インボイス要件を満たす請求書作成
適格請求書発行事業者登録番号を設定し、インボイス制度の要件を満たします。
- 郵送やメール送付がワンクリックで完了
作成した請求書の送付はワンクリックで完了。PDFによる保管や印刷も可能です。
- 既存の販売管理システムとの簡単連携
既存のシステムとAPI連携し、業務フローを大幅に変更せずに導入が可能です。
エクセル関数は便利だが、過信は禁物!
請求書作成にエクセル関数を利用している会社は少なくありません。インボイス制度の対応ができ、請求データに大きな変更がなければ、今後もエクセルでの請求書作成は続けられるでしょう。
しかし、新たな商品やサービス、新たな料金体系、イレギュラー取引など、業務に新たな動きがあった場合には、エクセル請求書に影響があるかどうかは考えなければなりません。
エクセルはとても便利なツールではありますが、過信は禁物です。請求書提出前のチェックは続けましょう。
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