- 更新日 : 2024年10月21日
電子請求書の受け取り側がすべきことは?メリット・デメリットや保存方法を解説
電子請求書は、メールやオンライン上で受け取れるため、郵送を待つ必要がなく、紛失の心配もありません。また、データとして保存できるので、検索や整理も簡単に行えます。本記事では、電子請求書を受け取る側の具体的な対応や、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
電子請求書とは?
電子請求書とは、紙ではなくデータでやり取りする請求書のことです。
メールにPDFファイルを添付して送付するのが一般的ですが、近年では、ウェブサイトやクラウドサービス上で発行・受領する企業も増えています。
電子請求書は、郵送や保管の手間を省き、コスト削減や業務効率化につながることがメリットです。しかし、インターネット環境やシステムの知識、セキュリティ対策が必要になるため、ITシステムに詳しい人材が必要になる点では、デメリットになる場合があります。
電子請求書の受取側が対応すべきこと
電子請求書を受け取る際には、法律で定められたルールに沿って保存する必要があります。
本章では、電子請求書の適切な保存方法や印刷時の注意点について詳しく説明します。
電子取引要件に基づいて電子データを保存する
電子請求書を受け取った場合、2022年1月施行の電子帳簿保存法により、受領側は電子データのまま保存することが義務化されています。2024年1月からは完全義務化となり、データそのものを破棄し、電子データを紙に出力した書類のみの保存は原則できません。
また、電子取引のデータについては、ただ保存すればよいわけではなく、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 真実性の確保:電子データが正確かつ完全に記録され、改ざんや紛失が防止されることが目的
- 可視性の確保: 保存したデータをいつでも必要に応じて閲覧できるようにすることが目的
詳細は後記の「 受け取った電子請求書の保存方法」で解説します。
印刷する場合は電子データの保存を確認してから行う
電子帳簿保存法では、電子取引で授受した請求書は電子データのまま保存しなければなりません。しかし、2024年1月から、電子取引データの保存要件が緩和され、保存要件を満たせない場合には、紙での保存も認められるようになりました。
以下の3つの条件すべてを満たした場合、紙での保存が可能です。
- 元のデータを保存していること
- 税務調査等の際に、電子取引データおよび印刷した書面をすみやかに提示できること
- 所轄税務署長が相当の理由があると認める場合
人手不足や資金繰りの悪化など、所轄税務署長が相当な理由を認めた場合には、電子で受け取った請求書を紙に印刷して保存できます。
しかし、電子請求書を印刷後に紙の保存が適切にできていても、元のデータは削除してはいけません。
また、印刷した請求書は税務調査の際にすぐに提示できるよう、適切に整理し、保存しておくことが大切です。
受け取った電子請求書の保存方法
電子請求書を受け取った後には、法律に基づいた正しい方法で保存する必要があります。
本章では、受け取った電子請求書の保存方法を詳しく解説します。
データにタイムスタンプを付与する
電子請求書を保存する際には、データが特定の日時に存在していたことや、改ざんされていないことを照明できるようにする必要があります。
真実性の確保を満たすためには、次のいずれかの措置を行うことが一般的です。
- タイムスタンプが付されたあとの授受
- 授受後のタイムスタンプ付与
- データの訂正・削除の記録が残るシステムまたは、訂正削除ができないシステムを利用
- 訂正削除を防止する事務処理規程の制定
システムを導入できない場合は、国税庁の公式サイトで、訂正削除の防止に関する事務処理規定のサンプルが紹介されているため、参考にしてみてください。
タイムスタンプ付与時には、以下のポイントがあります。
- 取引先から電子データを受け取ったあと、約2ヶ月と7営業日以内に付与する
- 訂正や削除を確認できるシステムを利用する場合、タイムスタンプの付与は不要
データの変更や削除が変更されていないことを証明するタイムスタンプは「真実性の確保」につながり、電子請求書の保存において、重要な役割となります。
操作マニュアルを作成・保存する
電子請求書を保存する際には「可視性の確保」を満たすため、以下の要件が指定されています。
- 電子計算機(パソコンやモニターなど)などに操作マニュアルを備え付けて、すみやかにデータを出力できるようにする
操作マニュアルを備え付ける目的は、税務調査の際に調査官がスムーズにデータを探すためです。
つまり、電子帳簿保存法のために操作マニュアルを作成する必要はなく、購入時に付属するメーカーの説明書を保管しておくことで対応可能となります。
システムの概要書を保存する
自社開発のシステムを使用している場合、データのやり取りや保存方法を把握するためにシステムの概要書を保存する必要があります。
一般的なシステムでは、製品マニュアルで確認できますが、自社開発やカスタマイズされたシステムの場合は、その仕組みを外部の人が判断できないことがあるためです。
システム概要書には、データの保存方法や検索機能、操作手順などを詳細に記載します。
電子データを検索できる状態にする
必要なときにすぐデータを確認できるように、電子データを検索できる状態にしておくことが必要です。
電子帳簿保存法で対応必須の検索項目は以下のとおりです。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先名
電子帳簿保存法に対応したシステムを導入している場合、該当する項目で検索できる機能が一般的に備わっています。
PDFやエクセルでデータを管理する場合は、ファイル名に「日付・金額・取引先名」と入れて管理したり、エクセルで一覧表を作成したりと、検索できる状態で保管する必要があります。
国税庁では、エクセルを使用した索引簿の作成例を公開していますのでぜひ、参考にしてみてください。
定められた期間で保存する
請求書は、紙媒体も電子データも法律で定められた期間に従い、保存する必要があります。原則として、個人事業主は5年、法人は7年の保存が必要です。
帳簿や書類を保存していないと、税務調査時に申告の根拠資料を提示できず、罰金や再申告のリスクが生じる可能性があります。
また、状況によっても保存期間が異なるため、詳細は国税庁の公式サイトから確認してみてください。
電子請求書を受け取る方法
本章では、電子請求書を受け取る3つの方法について紹介します。
請求書を受け取る方法に応じて対応や注意点が異なるため、理解しておきましょう。
メールで受け取る
メールの場合、企業が送信するメールに、請求書がPDFなどのファイル形式で添付されているのが一般的です。
ただし、電子帳簿保存法では、請求書送付の際にやり取りした電子メールも保存対象です。取引に関する情報が失われないよう、わかりやすく整理したり、検索できるようにしたりなど、必要なときにすぐに確認できる状態で保存してください。
メール自体に検索機能がついていない場合は、メールの内容をPDFに変換して保存することも認められています。
Webサイトからダウンロードする
専用のWebサイトにログインして請求書をダウンロードする方法です。インターネット上でいつでも請求書を確認でき、過去の請求書も簡単に確認できるのがメリットです。
ただし、電子請求書をダウンロードした後は、保存が必要になります。保存は、元のデータそのものではなく、取引内容が変わっていなければ、エクセル形式やPDFなどで編集したものでも可能です。
クラウドサービスで電子請求書を受け取る
最近では、クラウドサービスを利用して請求書を受け取る方法も増えています。クラウドサービスは、請求書を一元管理できるため、複数の請求書の管理に最適です。
クラウド上でやり取りされる請求書データは、XML形式(文字の羅列)で保存されることがあります。電子帳簿保存法上では、請求書のフォーマットや一覧表形式で視覚的に確認・出力できれば、XML形式のままで保存可能です。
エクセル形式やPDFなどで取引データを整理して保存する場合は、取引内容が変わっていなければ、適切に編集されたものとみなされ、保存が認められます。
また、クラウドサービスで保存する場合、真実性の確保の要件を満たすため、以下の条件を満たす必要があります。
- 利用者側で訂正・削除ができない
- 訂正・削除の履歴がすべて残る
電子請求書の受取側のメリット
本章では、電子請求書を受け取るメリットについて解説します。
請求書の確認のために移動する必要がなくなる
電子請求書を利用することで、請求書を受け取る場所に制約されることなく、どこからでも簡単に確認可能です。電子データとして受け取るため、メールやインターネットで簡単に確認できます。
たとえば、請求書が本社や事務所に届いてしまい、支店で請求書を確認できないといった問題が解消されます。遠隔地でもスムーズに請求書の確認や処理ができ、業務の効率化につながるでしょう。
紙で保管するための作業・スペースを削減できる
請求書を紙で保管する場合、やり取りする数が多くなるほど資料も膨大になります。
一方で、請求書をデジタル化することで、書類の保管スペースは必要なくなり、過去の請求書を探す作業も大幅に削減できるでしょう。
さらに、請求書をファイルにまとめて保管したり、探しやすいように整理したりする作業が不要になり、従業員はコア業務に使える時間が増加します。
電子請求書の受取側のデメリット
電子請求書は利便性がある一方で、デメリットもあります。
本章では、電子請求書を受け取る際のデメリットについて解説します。
電子帳簿保存法への対応が必要になる
取引先が請求書を電子化した場合、受取側は電子帳簿保存法への対応やシステムの整備が必要です。たとえば、電子請求書を適切に保存するためには、データの改ざん防止機能や検索機能の確保などが必要です。
電子帳簿保存法への対応が不十分だと、法律に抵触する恐れがあります。
電子請求書の受取が急に発生することも考えられるため、急な対応に追われることがないよう、事前に準備しておくことが大切です。
従業員への周知が必要になる
電子請求書をいつでも受け取れるようにするため、従業員が使用方法や取り扱い方を理解できるよう、周知や教育が必要です。社内のすべての従業員がPCやデータの取り扱いに慣れているわけではありません。電子請求書に慣れるまで、根気強く研修を行いましょう。
また、社内で電子請求書に関するルールを整備し、作成や保管の手順を明確にして、全員が扱いやすいフローを作っておくことが大切です。
電子請求書と紙の請求書を受け取ったらどうすればいい?
電子帳簿保存法では、電子データでやり取りした取引情報は、電子データのまま保存しなければなりません。
一方、紙の書類については、現時点では電子化して保存する義務はありません。紙の請求書をスキャンして電子データとして保存することも可能ですが、電子帳簿保存法のルールに従って適切に管理する必要があります。
どちらかひとつだけを保管する場合は、電子データを保管する方が手間が少なく、確実と言えるでしょう。
電子請求書の受け取りには、クラウドサービスの活用がおすすめ
本記事では、電子請求書の基本的な内容から、受け取り側としての対応方法、メリット・デメリットまでを解説しました。
電子請求書は、郵送や保管の手間を省き、業務効率化に貢献しますが、一方で、電子帳簿保存法への対応や従業員への周知徹底といった新たな業務が発生する可能性もあります。
電子請求書の受け取りには、受領から保存まで一元管理できるクラウドサービスが便利です。ぜひ、この機会にクラウドサービスの導入をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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