- 更新日 : 2024年10月17日
Web請求書システムとは?利用のメリットや活用法を解説
取引先や取引件数が多い企業では、請求書の発行や送付は大変な作業です。作業量に応じてコストもかかるため、課題感を持っている企業も多いでしょう。煩雑になりがちな作業を効率化できるのが、請求書を電子化するWeb請求書システムです。
ここでは、電子請求書システムとも呼ばれるWeb請求書システムの概要とメリット、選ぶときのポイントなどを解説します。
目次
Web請求書システムを使って請求書を発行してもよい?
ビジネスにおいて請求書などの書類は、確かな取引のための「証拠」の意味もある重要なものです。しかし紙で管理していると、取引のたびに請求書が増えていくため、保管や検索しやすくするためのファイリングに手間がかかります。
そうした点では、請求書をデータとして保管、運用するWeb請求書システムにはさまざまなメリットがあると言えます。ここではWeb請求書システムの概要と必要性を解説し、ビジネスにおける有用性を法的な観点から確認しておきましょう。
Web請求書システムとは
Web請求書システムとは、電子データとして作成した請求書を作成・送信・受領できるシステムのことで、電子請求書システムと呼ばれることもあります。
昔は宛名や金額、明細などが空白の請求書書式に手書きで作成するのが普通でした。近年においてもパソコンの表計算ソフトを使った効率化が進む一方で、最終的に紙に印刷して押印し、封筒に入れて郵送する企業も多いでしょう。
Web請求書システムならより作業の効率化が見込めます。作成はもちろん、送付も電磁的なデータとして行うため、印刷や郵送の手間を削減できるのです。物理的なスペースも要らず、保管が容易になります。取引先も同じように受領・保管して会計書類として利用できるため、同様の手間を省けます。
Web請求書システムの必要性
もともとWeb請求書システムは、IT技術やインターネットの発展によってペーパレス化や書類の電子化が促進されたことから広まりました。書類の電子化にはさまざまなメリットがあり、なかでもコストの改善はわかりやすい例だといえるでしょう。
たとえば請求書を電子化し、データのまま送付・保管できれば、紙媒体では当たり前だった以下のような手間やコストを改善できます。
- 印刷の手間やコスト(プリンタやインク・トナー、用紙、作業のための人件費など)が抑えられる
- 郵送コスト(郵送に使う封筒の代金や切手代)が不要になる
- 保存に必要なスペースがPCや外付けの記録媒体などで済む
また紙の請求書で記入ミスを訂正する際には、最初から書き直すか、新たに印刷し直さなくてはいけません。しかしデータであれば、修正して保存しなおすだけのため、手間も少なくて済みます。
このようにWeb請求書システムは、ビジネスに必要なコストを抑え、取引先とのやり取りをより効率化にしてくれる技術といえるのです。
請求書の電子化は法律で認められている
Web請求書システムで扱う電子化された請求書は、電子帳簿保存法によって認められています。電子帳簿保存法とは国税関係書類の電子化に関する法律です。請求書に限らず、見積書や支払い明細書、納品書、領収書などを電子化しても、紙の請求書と有効性は変わらないと規定されています。
電子化に際し「押印がない」ことを疑問視されることもあるようですが、そもそも書類への押印は法律上の義務ではありません。とはいえなかには社内規定で「押印のない書類は受け付けない」という企業もあるため、その際は電子データに社印の画像を貼り付ける、電子印鑑で押印するといった方法で対応することが可能です。
Web請求書システムでできること
実際にWeb請求書システムでは、電子化した請求書を次のような方法で送信・送付できます。
- 電子メールに添付して送付する:請求書データをメールなどに添付、送信する方法で、特別なシステムがなくてもインターネット接続とパソコンがあれば利用できる
- クラウドからダウンロードしてもらう:請求書データをWeb請求書システムのクラウドにアップロードし、必要に応じて取引先がログインしてダウンロードする方法で、発行ごとにこちらから送付する手間がかからない
- データをクラウド上で作成・保管し、それぞれにダウンロードしてもらう:データ自体をWeb請求書システムのクラウド上で作成するため、アップロードする手間がかからない
特にクラウド上でデータを作成できるシステムであれば、見積書から請求書、納品書、請求書と明細データをそのまま活用した変換も可能です。手間がかからず、社内の必要な部署との共有もしやすいため、業務効率のアップが期待できます。
Web請求書システムを利用するメリット
Web請求書システムの導入によって、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、Web請求書システムの導入によるメリットを3つご紹介します。
業務の効率化
Web請求書システムを利用すると、請求書に関するさまざまな業務の効率化が可能です。
請求書を含めた紙の書類には、まず印刷など作成の手間がかかります。ここでプリンタのトラブルやトナー切れ、ネットワークの不具合などがあると、印刷できず送付が遅れ、取引先への到着も遅れてしまいます。また一文字間違えただけでも、印刷し直して押印しなくてはいけません。
他にも、請求書の紙をできるだけキレイな状態で送付するには、別の工程が必要です。クリアファイルや封筒による保護、宛名を間違わないよう記載すること、切手を貼り付けるといった作業が発生します。
しかしWeb請求書システムであれば、データで内容をチェックすることが可能なうえに、ミスがあっても印刷しなおす必要がありません。送付もインターネット経由のため、封筒やクリアファイル、切手も不要です。
人件費を含むコストの削減
請求書に関する業務の効率化は、そのままコストの削減にもつながります。
わかりやすい事例としては、印刷するためのプリンタやトナー、インク、コピー用紙を買う必要がありません。郵送しないため、封筒代やクリアファイル代、切手代も不要です。これら請求書の作成・送付にかかるコストは、取引先や取引件数が多い企業ほど高額になるため、Web請求書システム導入によるコスト削減効果も大きくなることは容易に想像できます。
また、業務に携わるスタッフの人件費への削減効果も見逃せません。印刷や印刷のトラブル対応、消耗品の確保や管理にも少なからず手間や時間がかかっています。Web請求書システムを導入すれば、これらの人的資源を、別の効果的な業務に使うことも可能です。
受け取る取引先にもメリットはある
請求書の電子化は、取引先にもメリットがあります。まず請求書データを適切に管理しておけば、過去の膨大な請求書の検索もごく簡単です。ファイル名にルールを設け、適切に変更することによって、指定した取引先だけや、一定金額以上のものだけなど条件に合致する請求書を絞り込むこともできます。
また、発行当日でも請求書を受け取れることもメリットです。紙の請求書であれば最低でも1日、場合によっては数日かかりますが、請求書データなら電話するだけですぐに手に入ります。請求書の訂正や発行忘れなどは特に急いで届けることが重要です。
Web請求書システム利用上のリスク
さまざまなメリットのあるWeb請求書システムですが、導入すると起こり得るリスクについてもしっかり把握しておく必要があります。
Web請求書システムはインターネットを利用しているため、取引先にもインターネット環境があることが必須です。また、接続トラブルが発生すると閲覧やダウンロードができなくなってしまいます。
さらに取引先によっては、請求書を含めた書類に特定の書式での発行を求められることもあるでしょう。その場合は、書式を自由に設定できるシステムを選ばなくてはなりません。
そもそも、紙の請求書でなければ取引できない企業もあります。その場合は、Web請求書システムの他に、従前の紙による運用も並行できるような仕組みやルール作りが必要です。
そして、Web請求書を利用する際には、情報の漏えいや改ざんされるリスクにも注意しなくてはいけません。
Web請求書システムで解決できる課題
Web請求書システムで解決できる課題はさまざまですが、大切なのは現状ある課題を効果的に解決することです。そのためには、解決すべき課題を絞り込み、解決できる手法を的確に定めておく必要があります。
解決したい課題は企業ごとに違うため、ここでは代表的な3つの課題に対してどのような解決法があるかを見ていきましょう。
取引先が比較的少なく作成を効率化したい場合
取引先が数十社程度で、取引件数的にも手作業で処理できないほどではないようなら、特に高機能のWeb請求書システムである必要はないでしょう。
請求書の作成と発行ができ、印刷せずにメールで送信するだけでもコスト削減や業務の効率化ができます。
取引先が多く作成だけでなく送付も効率化したい場合
取引先が100社を超え、会社ごとにメールと郵送を使い分ける、請求書を個別送信するといった業務の煩雑さを解決したい場合は、効率よく送付する機能を備えたタイプのWeb請求書システムが便利です。
今ある販売管理システムや営業支援システムなどと連携して、請求先ごとに設定した方法で送付できればより効率化できます。
請求後の入金確認や督促などの業務も効率化したい場合
Web請求書システムに、請求書と連動して設定した期日に入金されているかどうか自動的にチェックする機能が必要です。また、金融機関から送られる入金データを自動的に取得して金額に間違いがないか照合する機能や、未入金の取引先へ自動的に督促してくれる機能があるかどうかも確認しましょう。
代表的なWeb請求書システム5選
Web請求書システムは機能や書式、データの保存の方法などサービスごとにさまざまな違いがあります。代表的なものとして挙げられるのは、次のようなサービスです。
- マネーフォワード クラウド請求書
- freee請求書
- 楽楽明細
- ナビエクスプレス
- BtoBプラットフォーム 請求書
画面を見ただけでしくみや操作方法がわかるものや、さまざまなニーズに答えられる柔軟性を持ったものなどそれぞれ特徴があります。そのため、自社の求める機能をできるだけ詳細に絞り、必要なものが提供されているかどうかを見極めることが大切です。
Web請求書システムを選ぶ際のポイント
ここでは、Web請求書システムを選ぶときに、押さえておきたいポイントを解説します。
事業への導入効果
Web請求書システムを選ぶ際に重視したいのは、自社の事業に対してどのような効果が見込めるかです。たとえば、1つの取引先との取引が多い企業であれば、取引先の名称や住所などを参照し、自動的に入力してくれるWeb請求書システムを導入すれば、大きなメリットが期待できます。
とくに請求書を考えると、まず効率化したいのが請求書の発行なのか送付なのかを明確にすると必要な機能を絞りこみやすくなります。不必要な機能が多いシステムの場合、コストがかかる割にあまり効果がないといったことにもなりかねません。
必要な機能を備えている最小限のシステムを選び、コストを適切な範囲内にとどめられるよう努めましょう。
他システムとのデータ連携
現状から業務を効率化するなら、今ある他システムとうまくデータ連携できるものであることも重要です。連携ができないとシステム間のやり取りに手作業が必要になり、効率化しにくくなります。
たとえば、会計システムと販売管理システムが連携すれば、請求金額を自動的に入力でき、2つのシステムでそれぞれ入力していた手間を1つに絞れます。Web請求書システムの中には、これらのシステムと連携できるものも多いのですが、自社のシステムと連携できるとは限りません。導入する際には、事前に連携できるかどうかを確認しましょう。
取引先の数や取引の規模
企業によって取引先の数や取引の規模、件数は違うため、効率化や自動化をしたい業務の種類や必要な機能も企業ごとに異なります。
たとえば取引先が数十件の個人事業主と数万件の大企業では、求める機能にも違いがあるはずです。機能が多いほどコストも上がる傾向があります。ムダなコストをかけないためにも、Web請求システムは自社のニーズを正確に把握し、慎重に選ぶことが大切です。
サポート体制の充実度
とくに初めてWeb請求書システムを導入するときは、操作がわからない、突発的なトラブルが発生するといったサポートが必要な事態が起こりがちです。Web請求書システムにはそのような事態にも適切に対応してもらえるよう、サポート体制の高い充実度が求められます。
サポート体制を確認するには、次のような項目を確認すると効果的です。
- ヘルプデスクの受付時間帯
- 休業日の数や配分
- 電話のかかりやすさ
- メールの返信にかかる時間
- 対応するスタッフの技術レベル など
セキュリティ対策
ビジネスにおいて請求書は、製品名や金額、数量など取引のすべてが記載されている機密性の高い書類です。そのような書類を取引先ごとにまとめて保存するWeb請求書システムには、情報漏えいや改ざんなどが発生しない高度なセキュリティ機能も求められます。
確認するべき項目は、データセンターの立地やサーバーの監視体制、SSLの暗号化対策などです。自社だけでなく取引先のためにも、しっかり対策しているシステムを選ぶ必要があります。
Web請求書システムは自社の取引内容や規模で選ぼう
紙による請求書のやり取りを効率化するWeb請求書システムには、さまざまなメリットがあります。今あるだけでも種類は多く、備えている機能や使い方が違うため、自社が求めるシステムかどうかを慎重に検討して選ぶことが重要です。
そのため検討する際には、Web請求書システムを導入することによって、自社がどの業務を効率化したいのか、どのような課題を解消したいのかを明確にしておく必要があります。
Web請求書システムを検討するときは、自社の業務形態や取引内容、規模に見合った、適切な機能の備わったものを選びましょう。
よくある質問
Web請求書ソフトとは何ですか?
請求書をWeb上で作成・発行し、取引先に送信したり受領したりできるシステムです。詳しくはこちらをご覧ください。
Web請求書ソフトを利用するメリットは何ですか?
請求書の作成や送付にかかる人件費を含むコストの削減や業務の効率化などです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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