• 更新日 : 2024年10月17日

立替金の領収書の書き方は?

領収書は受け取った金銭等についてその領収の事実を証明する書類ですが、その内容が「立替金」の場合はどのような領収書を作成すればよいのでしょうか?

「立替金」は、一般的に払うべき人に代わって一時的に代金を支払うとき、会計で使用される勘定科目でもあります。この記事では、会社側が立替金領収書を発行する場合について、いろいろな角度から解説します。

立替金とは?

立替金は、もともと会社の費用とならない支払を一時的に負担する(立て替える)場合に発生します。立替金を計上する場合には、支払理由、金額、関係資料などから、一時的な支払が適切なものであることを確認します。自社ものではない支払のため、極力迅速に処理しましょう。

立替金と似たものに「仮払金」があります。仮払金は会社の費用と見込まれるものの、概算払いや、費用となる勘定科目が未確定の場合などに使用される勘定科目です。

また、「預り金」は、基本的に会社から見ると「入金」となります。預り金は、一時的に他者から預かったお金であり、会社の収益ではないものを指します。

また、立替金の種類が多い場合には、「従業員立替金」など他と区分して管理することもあります。

立替金が発生するシーン

立替金が発生するシーンとしては次のような例などが考えられます。これらは通常起こりうることで特に珍しいことではありません。

  • 取引先が負担すべき送料などを会社が一時的に支払った場合
    本来、取引先が支払う費用を会社が代わって負担することがあります。立替金の請求によって入金してもらいます。
  • 従業員負担のある社員旅行の費用などで、会社が従業員分を一時的に支払った場合
    従業員に社員旅行費用の一部負担を求める場合、先に会社が全額支払っておくこともあり得ます。その場合、従業員の負担分については立替金として計上し、後日従業員から徴収します。

立替金の領収書が必要なシーン

会社が発行する立替金の領収書は、「確かに現金を受領した」証拠を相手方が求める場合に必要です。

得意先に立替金を請求し、その得意先が銀行振り込みで入金した場合には、金融機関の振込明細書がエビデンスとなりますので、領収書を求められることはあまりありません。

しかし、立替金を現金で受領した場合には、相手先、受領日、受領金額、ただし書き等を記載した領収書を発行して、現金の授受を明確にしておくことは大切です。

立替金の領収書の正しい書き方

立替金の領収書について、具体的な書き方のポイントを挙げておきます。

領収書の宛名を正しく書く

当たり前のことなのですが、領収書の宛名は「その支払を負担すべき会社や個人の名称」にします。宛名を空欄にしたり、「上様」にしたりするのは避けましょう。

また、領収書の請求時に立替金精算書が必要となるケースもありますが、これについては後述します。

受領タイミング・金額を正確に書く

会計上では、勘定科目が正しくても起票のタイミングや金額がずれていると、取引が正しく反映されません。受領した日付、受領金額を正しく記載しましょう。

同様の立替金が頻繁に起こる場合など、立替金の発生日など他と区別できる記載をするとともに、受領日は正しく記載しましょう。

ただし書きをわかりやすく書く

立替金の入金の際の領収書は、原則として通常の領収書の書き方と同様です。ただし書きで「〇月〇日の〇〇立替金の支払として」などと、支払内容を明らかにしておきましょう。

立替金の仕訳方法

立替金が頻繁に発生したり、さまざまな種類の立替金が発生したりする場合があります。その場合は個々の立替金の摘要を正しく記載したり、立替金に補助科目を設けたりするなど工夫します。ここでは一般的な立替金の仕訳について説明します。

立替金の発生

立替金が発生した場合には費用とせず、会計上は流動資産に「立替金」として計上します。

借方貸方摘要
立替金11,000円現金11,000円役員Aへの立替

立替金は会計上、金銭の給付を目的とする「金銭債権」に該当するため、決算における貸倒引当金の対象となります。決算時には立替金についての確認もしましょう。

また、立替金は「一時的な」ものであるため、書面などで返済期日を明らかにしない運用が一般的です。

立替金の消込

立替金について、会社に入金があったときは発生時と反対の仕訳で立替金を消し込みます。

借方貸方摘要
現金11,000円立替金11,000円役員Aのより立替金返金

会社において、立替金の領収書が発生するのは後者の立替金が戻ってきたタイミングです。

上の例では、役員Aに対して「確かに立替金を受け取りました」という意味で立替金を消し込むとともに領収書を発行します。

ただし、立替金の消し込み時において次のようなケースも考えられます。上記のケースにおいて、立替金として処理した後に会社と役員Aとの話合いにより、支払については会社負担になったような場合です。(税抜処理とします。)

借方貸方摘要
旅費10,000円立替金11,000円役員Aのより立替金返金
仮払消費税1,000円

この場合は、会社の費用として消費税を認識します。なお、立替金が会社の経費となった経緯については証拠として残しておきましょう。

立替金とインボイス制度の関係

消費税が出てきたところで、消費税のインボイス制度と立替金の関係について考えてみましょう。

取引先の立替金に消費税は不要

一般に当社が取引先等の立て替えをした場合には、消費税は発生しません。

消費税を考えなければならないのは、本来、その費用を負担すべき取引先です。消費税を負担すべき側で「不課税」「非課税」又は「8%、10%」などの消費税の区分や、「適格請求書」「区分記載請求書」などを考慮する必要があります。

したがって、立替金が発生し、消し込み処理をする会社側では、それらの取引において消費税の影響はありません。仕訳をする際、会計ソフトにもよりますが、税区分等を求められた場合には、「不課税」とします。

立替えをした場合の請求書について

少し複雑になりますが、取引上よく起こるケースをご紹介します。立替金の支払先がインボイス発行事業者であると仮定して、次の①~④の取引を見ていきましょう。

立替えをした場合の請求書について

参考:インボイス制度に関するQ&A(問94ご参照)|国税庁(立替金)

① 支払先は当社宛に請求書(インボイス)を交付する
② 当社は取引先の代金につき、請求書(インボイス)に基づき支払いをする(立替金の発生)
③ 当社は、取引先に立替金を請求する
④ 取引先から立替金の入金がある(精算、立替金の消し込み)

上記①~④の後、当社は取引先に対して必要であれば領収書を発行します。

上記③の赤枠で囲ったところが重要な部分で、支払先からのインボイスの宛先が「当社」になっているため、支払先からのインボイスだけでは取引先は仕入税額控除ができません。

そこで当社は支払先からのインボイスだけでなく、「立替金精算書」を作成し、交付する必要があります。

取引先は赤枠内の「インボイスと立替金精算書」を保存することで仕入税額控除ができます。立替精算書の例については上記国税庁サイトでご確認をお願いします。

立替金は早期解決すること!

社内外から受領する請求書や領収書類の中には、立替金となるものも多くあります。

立替金は会計上の債権として位置づけられ立替先からの「入金」を待っている存在です。しかしながら、その待ち時間が長く、立替金の回収が遅れると、監査や調査などで立替金でなく「貸付金」とみなされ、税務上の問題が生じる可能性もでてきます。立替金は早期回収に心がけましょう。


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