- 更新日 : 2023年4月14日
請求書に印鑑は必要?請求書の役割や押印の種類、脱ハンコについて解説
業務を行う上で欠かせない請求書に、押印は必要なのでしょうか。この記事では請求書における印鑑の必要性の可否、そして押印するのであればどのような印鑑を選べばいいのかをご紹介します。個人事業主の方が押印する場合の印鑑の選び方と押印の仕方、そして電子請求書のケースについても解説しますので、ぜひご覧ください。
目次
請求書には印鑑がなくても良い
請求書は、サービスや商品の代金を請求するために使われる書類です。しかし、「請求」行為は必ず書面で行う必要はなく、双方の合意があれば口頭で行うことも可能です。また、請求書を提出する場合は、印鑑の押印義務はありません。つまり、印鑑がない請求書を取引先に渡しても法律的には何の問題もないということです。
請求書に記載が必要な項目
請求書の印鑑は法律で義務づけられているわけではないため、「いらない」と判断する取引先であれば、押さずに提出しても構いません。
しかし、もし提出するのであれば、請求書に記載する項目について押さえておきましょう。以下は2023年10月から導入される適格請求書(インボイス)に必ず記載しないといけない項目です。取引先から適格請求書を求められたら発行する義務がありますので、こちらは確実に記載してください。
- 発行事業者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
- 請求書受領者の氏名または名称
請求書の書き方、送り方などの詳細は、こちらの記事をご覧ください。
請求書にあえて印鑑を押す意味は?
請求書への押印は義務ではありません。とはいえ、多くの場合に印鑑が押された請求書が使われます。それは、余計なトラブルを避けるためです。
会社の印鑑を押すことで、その会社が請求書を発行したことが法律上推定されます。そのため、印鑑のない請求書よりも信頼度が増します。
あくまで推定ですので印鑑が偽造された場合は無効となりますが、印鑑が押されている請求書を偽造した場合は、有印私文書偽造で3ヶ月以上5年以下の懲役となります。他方、印鑑のない請求書を偽造した場合は、無印私文書偽造で1年以下の懲役または10万円以下の罰金となります。印鑑が押されている請求書の偽造の方が厳しく罰せられるため、印鑑を用いた不正は行われにくく、信頼度が増すといえます。
また、請求書への押印は長く行われている慣習のため、会社によっては印鑑の押印がない請求書は受け付けないなどの規定が設定されている場合もあります。
よって法律上の義務ではありませんが、トラブル防止のため、また、印鑑がない請求書を受け付けない会社への対応として、請求書に押印を行うことがあります。
請求書に押印する場合はどの種類の印鑑が適切?
では、請求書に押印する印鑑はどのようなものを使用すれば良いのでしょうか。ここでは、会社で使われる主な印鑑の種類について説明します。
請求書に押印する場合は角印を使うことが一般的
角印とは、会社の名前が入った印です。登録の必要はありませんが、書類の発行者が会社の書類と認める際に使われる認め印としての役割があります。そのため、請求書の印鑑として使われるのがこの角印です。
上記の丸印、銀行印は、重要な場合のみ使われる印のため、印章の摩耗防止のためにも請求書に押印するのは避けるようにしましょう。なお、請求書は業務上頻繁に発行されるため、角印はゴム印やインク浸透印を使用する場合もあります。
印刷された印鑑を使用するケースもある
日々多数の請求書を発行する会社は、印鑑の押印の代わりに印鑑の画像データを請求書に直接印刷している場合があります。前述の通り、請求書における印鑑は法律で定められていないため、印刷でも請求書の法的な効力には違いがありません。しかし、会社ごとの取り決めにより、印刷された印鑑は不可としている場合もあります。そのため、印鑑ではなく画像データの印刷を使用する際には、請求書を渡す相手方に確認してから行うと良いでしょう。
丸印や銀行印は請求書には押印しない
一方、丸印や銀行印を請求書に使うことは一般的ではありません。
丸印とは代表者印とも呼ばれ、法人設立時に法務局に登録された実印のことです。一般的には、真ん中に「代表取締役印」といった役職が入り、役職の周囲に社名が入っています。契約書、手続き申請の際に捺印し、印鑑登録証明書と併せて提出します。このように重要な書類に使用するため、普段の請求書作成の際に使われることはありません。
また、銀行印は口座を開設する際に金融機関に届け出る印を指し、金銭の出納や手形・小切手の発行に使われます。こちらも金融機関に関する重要な場合のみに使用されるため、請求書の作成には使われません。
個人事業主・フリーランスに必要な印鑑
法人ではなく、個人事業主やフリーランスの場合、印鑑は認印があれば十分だと考える方もいるかもしれません。
しかしながら、認印はあくまでプライベート用の印鑑であり、ビジネス用に別途、印鑑は持っていたほうがよいでしょう。
具体的には、個人事業で屋号がある場合は、事業用の丸印、角印、銀行印の3つになります。
まず、事業用の丸印は、法人の場合と同様に内側の円内に代表者名、外側の円内に屋号を刻印した二重書きの印鑑がよく使用されます。
個人事業でも官公庁などの業務を受託し、正式な契約書を交わすような場合、信頼度という点からは重要な意味があります。
角印は、領収書や請求書などの帳票に押印する場合に必要になります。
銀行印は、法人・個人事業を問わず、ビジネスで金融機関の預貯金口座の開設や金銭の出納があるため、不可欠な印鑑です。屋号がある場合には法人と同様にこちらも二重書きの印鑑が使用されます。
屋号がない個人事業やフリーランスの場合は、以上の3つの印鑑のうち、角印は作る必要はありません。事業用の丸印と銀行印の2つで十分でしょう。いずれも個人名が刻印されたものです。
請求書に押印する際の注意点
前述の説明の通り、法人の場合、請求書には角印が使われます。押印の際は以下の点に気をつけましょう。
押印の位置に注意
請求書で印鑑を押す位置は、請求書を発行する会社名の部分です。なお、社名を完全に隠さず、一部だけかぶらせて押印します。その際には、右に寄せて角印を押すようにしましょう。
押印の仕方に注意
印鑑がかすれたり、ズレたりしないように押印することも重要です。見栄えの問題だけでなく、問題が起こった際に証拠資料として使えなくなる可能性があるためです。
頻繁に作成する請求書の印鑑について、その必要性や、使用する印鑑の種類などについてまとめました。法律上、請求書に押印は不要ですが、トラブルを避けるためにも押すようにしましょう。その際、正しい印鑑を正しい位置に押印できるように、適切な方法を確認しましょう。
請求書における脱ハンコの取り組み
契約書や請求書、稟議書、行政サービスなどで必要とされる押印をなくす「脱ハンコ」の動きが進みつつあります。
脱ハンコには、どのようなメリットがあるのでしょうか。そのデメリットとともに見ていきましょう。
脱ハンコのメリット
押印作業には、朱肉を用意し、プリントアウトした用紙にインクを付けた印鑑を押印する一連の工程があります。書類が1枚であればそれほどの作業時間は要しませんが、実際の事務処理の現場では、大量の書類に押印が必要な場合もあります。
脱ハンコによって押印が不要となれば、これらの工程がなくなり、大きな業務効率化につながります。生産性の向上も期待できるでしょう。
また、印鑑は紛失する可能性があります。現状では印鑑はさまざまな場面で重要な役割を担っており、他人に悪用される可能性も否定できません。ハンコが不要であれば、こうしたリスクは排除できます。
脱ハンコは、柔軟な働き方を推進する動きにも適合しています。押印は印鑑の持ち主だけが行うことが基本です。新型コロナの影響でテレワークや在宅勤務を導入する企業が増えていますが、押印するためだけに出社しなければならないケースもあります。
脱ハンコは、柔軟な働き方のボトルネックの解消にもつながります。
脱ハンコのデメリット
ハンコ文化が浸透している日本では、決裁や承認にハンコ以外の方法が考えられない、という方も少なくないでしょう。業務フローを変更することは大変な労力を伴うケースもあります。
こうした傾向は、電子印鑑を含めてIT化が遅れている業界や組織では、より顕著と言えるでしょう。
電子印鑑の導入で請求書を業務効率化する
2001年に「電子署名法」が施行されました。この法律では、電子署名に手書きによる署名や印鑑の押印と同じ法的効力を認めています。
これによって、印影画像をデータ化した電子印鑑をWordやPDFなどの電子文書に押印する企業が増えてきました。
電子印鑑を導入する具体的なメリットについてみていきましょう。
業務効率の向上
まず、業務効率の向上を挙げることができます。旧来の方式では、作成した文書をプリントアウトし、朱肉を使用して印鑑を押印します。この作業工程だけでも一定の時間がかかります。
電子印鑑は、データ化した電子印鑑を押印するため、前述の脱ハンコとはまったく同じとは言えませんが、朱肉と用紙を使用する工程がないため、脱ハンコと同様に業務効率が向上するというわけです。
ペーパーレス化によるコスト削減
電子印鑑の脱ハンコと最も大きな違いは、請求書などの用紙のプリントアウトが不要なことです。ペーパーレスであるため、用紙代やインク代などのランニングコストを大幅に抑えることができます。
また、書類に不備があった場合でも、パソコン上で修正することができ、プリントアウトする手間がかかりません。
請求書に電子印鑑を押印して送付する場合、データ上で承認や契約が完結するため、切手を貼付したり、郵送する作業が不要になります。
管理方法も大きく変わります。紙媒体では、オフィスにキャビネットを設置するなど保存スペースが必要ですが、そもそもペーパーレスであるため、キャビネット自体が不要です。
請求書を電子的に発行する場合はどうする?
請求書を郵送ではなく、メールで送ってほしいという取引先も多いでしょう。その際も紙の請求書のときと同じく、印鑑は必須ではありません。しかし、中には押印したものが欲しいという取引先もいるでしょう。このような場合、「電子印鑑」で対応することになります。電子印鑑の種類と作り方についても押さえておきましょう。
印影から作った電子印鑑
角印や認印の印影を画像に変換し、その背景を透過処理したものを電子印鑑として使うことができます。簡単に作成することが可能ですが、第三者でも作れてしまう、改ざんが簡単にできるといった点がデメリットです。
フリーソフトで作成した電子印鑑
電子印鑑を作成できるフリーソフトもあります。デザインを決め、その中に名字・社名などの文字を入力すれば簡単に作成ができます。ただし、印影から作る場合と同様に、第三者でも作れてしまうというデメリットがあります。
識別情報が含まれた電子印鑑
オンライン上の印鑑作成サービスを利用すると、識別情報(タイムスタンプなど)が含まれた電子印鑑が作成できます。「いつ、誰が押印したか」が判別できるため、請求書や印鑑の偽造防止には非常に有効です。ただし、有料で提供されるサービスとなっていますので、作成の際は各社のサービスを比較検討しましょう。
なお、電子印鑑については下記の記事で詳しく説明しています。
電子印鑑で脱ハンコすれば業務効率化が可能!
請求書における役割と印鑑の必要性、そして脱ハンコと電子印鑑のメリットなどについて解説してきました。
ハンコ文化から脱するには、まだ時間がかかりそうな日本ですが、すでに脱ハンコ、電子印鑑の導入は進みつつあります。
業務の効率化などのメリットを考慮した場合、請求書などについて電子印鑑の導入を検討する価値は大いにあるでしょう。
よくある質問
請求書には印鑑を押す必要がありますか?
法律で決められているわけではないため、必須ではありません。詳しくはこちらをご覧ください。
請求書に押印する場合、どの種類の印鑑を用いるべきですか?
法人の場合は「角印」、個人事業主の場合は「認印」「シャチハタ」です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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