• 更新日 : 2025年2月4日

請求書の電子化・ペーパーレス化のメリットとは?保存要件や注意点も解説

最近では、請求書を紙に印刷したものを取引先に郵送せず、電子化された請求書でやり取りを行う企業が増えています。

また、e-文書法電子帳簿保存法の施行により、電子化(電子データ)による保存が認められた書類の中に請求書も含まれています。そのため、要件を満たす場合は紙での保存ではなく、電子化して保存する方法も有効です。

この記事では、請求書の電子化・ペーパーレス化のメリットについて解説します。また、請求書を電子化・ペーパーレス化する場合の保存要件や注意点についても紹介します。

請求書の電子化・ペーパーレス化とは

請求書の電子化には、請求書の発行と保存のそれぞれの電子化があります。

請求書発行の電子化

請求書発行の電子化とは、紙の請求書を発行せずに電子文書(電子ファイル)として請求書を作成し、メールに添付するなどをして相手企業に送付することです。すでにパソコンで請求書を作成している場合であれば、作成から送付までをワンストップででき、請求業務を簡便化できます。

請求書保存の電子化

請求書保存の電子化とは、請求書を電子データとして保存することです。メールで受け取り、そのままパソコン内のファイルボックスに保存できるため、パソコン1つで請求書確認と保存の業務が完了します。

請求書の電子化・ペーパーレス化が推奨されている背景

請求書をペーパーレス化(電子化)する企業が増えています。請求書のペーパーレス化とは、請求書発行システムなどを用いてオンライン上で請求書を発行し、電子データとして取引先に送付することを指します。改ざんなどを防ぐために、PDFファイルとして送る方法などがあります。

請求書のペーパーレス化が進んだ背景としては、特定の要件を満たせば電子データによる請求書の保存が認められるようになったことがあります。例えば、e-文書法や電子帳簿保存法では、それが認められるための要件を規定しています。

e-文書法による規定

e-文書法とは、紙媒体での保存が義務付けられていた文書について電子データによる保存を認める法律です。e-文書法は通称であり、正確には2005年4月に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の二つの法律から成り立っています。

e-文書法により、会社法や商法、証券取引法法人税法などで保管が義務付けられている文書は、いずれも紙媒体だけでなく、電子データでも保存できるようになりました。e-文書法では多くの法律を対象としていますが、e-文書法施行後に制定された法律に関する文書は対象外となっている点に注意が必要です。

電子帳簿保存法による規定

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類について電子データによる保存を認める法律です。令和3年の税制改正において大幅な見直しが実施され、2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行されました。

国税関係帳簿書類とは、請求書や納品書などの取引関係の書類や、損益計算書などの決算関係の書類などを指します。いずれも電子データとしての保存が可能になっただけでなく、2022年1月からは所轄税務署長の承認も不要になりました。

インボイス制度による規定

インボイス制度とは、2023年10月から施行される消費税の仕入税額控除の方式のことです。インボイス制度が開始された後は、適格請求書なしには仕入税額控除を受けられなくなります。

適格請求書は、紙書類で発行することも可能ですが、電子帳簿保存法の要件を満たす電子データによる発行も可能です。適格請求書は従来の区分記載請求書よりも必要記載事項が多いため、電子データとして発行することで、請求書作成にかかる負担軽減を図る企業も少なくありません。

法律的に有効な請求書の電子データ保存要件

請求書は、要件を満たせば電子データでの保存が可能です。請求書は多くの会社で頻繁に利用するものであり、5~7年の保存義務期間が定められています。そのため、紙での保存は業務効率化やコスト面での課題になっており、請求書の保存を電子データで行う会社も多くなっています。

請求書を電子化・ペーパーレス化するメリット

請求書を電子化するメリットとして、以下のことが挙げられます。

請求書発行のコストを削減できる

紙の請求書を発行するときは、紙代だけでなくインク代や封筒代、送料などのさまざまな費用が発生します。電子請求書にすればこれらの費用はかかりません。

また、請求書だけでなく領収書も電子化すれば、さらに紙代や送料などを削減できます。5万円以上の取引については、紙の領収書には収入印紙を貼付する必要がありますが、電子領収書ならば収入印紙は不要です。高額な取引が多い場合は、領収書の電子化により大幅な印紙税の削減も実現できます。

参考:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書

請求書の管理がしやすくなる

紙の請求書で苦労するのが、請求書の管理です。請求書を会社ごとや年度ごとなどにファイリングして保管しなければならず、そのための場所が必要になります。

また、請求書の数が多くなると、取引先から問い合わせがあった場合の調査に時間がかかるほか、請求書を紛失・破損する恐れもあります。

しかし、請求書を電子化すれば、取引先から問い合わせがあった際に検索機能などですぐに請求書を見つけることが可能です。さらに、請求書の紛失・破損の心配もなく、保管場所も不要で管理しやすくなります。

テレワークや在宅勤務に対応できる

請求書を電子化することで、テレワークや在宅勤務にも対応できます。

紙ベースの請求書であれば、出社して郵送準備を行う必要があります。しかし、請求書を電子化すれば在宅勤務でもパソコンひとつで請求書を発行することができます。

請求書の再発行・修正も簡単

紙の請求書では、請求書の再発行や修正の依頼が来た場合に請求書を探すことから始める必要があります。しかし、請求書を電子化すれば検索機能などで該当の請求書をすぐに見つけることができ、修正も簡単にできます。

また、紙の請求書に誤りがあったときは、取引先から請求書を回収あるいは取引先に請求書破棄を依頼し、修正した請求書を再発行・再送付しなくてはいけません。一方、電子請求書であれば、修正した請求書をメールで送信するため、即日対応が可能です。

請求書を電子化・ペーパーレス化するデメリット

請求書の電子化には次のデメリットもあります。

導入・運用コストがかかる

請求書の電子化には、特別なシステムは必要ありません。エクセルでフォーマットを作成し、PDFファイルとして保存し、相手企業にメールで送信すれば完了です。しかし、既存の顧客データと連動したり、帳簿や注文請書など他の書類と連動したりするためには、専用システムの導入が必要です。

システム導入費用や月々の利用料などのコストがかかり、請求業務全体のコストが増える可能性もあります。電子化により削減できるコストと、システム導入により増えるコストとどちらが大きいのか事前に比較しておきましょう。

なお、コストを比較するときは、人件費や労力にも注目してください。システム導入費用のほうが削減できる紙代や印紙代よりも高額でも、残業代などの人件費が減ることでトータルではマイナスになる可能性もあります。

電子帳簿保存の要件を満たす必要がある

請求書の電子化には、電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。

電子帳簿保存の要件を満たすには、電子帳簿保存法の規定に従って社内の体制を構築しなければなりません。

たとえば、

  • 社内規定の整備を行う
  • タイムスタンプの付与ができるシステムを導入する

などです。

紙での郵送を希望する取引先もいる

請求書の電子化は、取引先にとっても業務の簡便化につながります。しかし、取引先によっては電子請求書に対応しておらず、紙の請求書を求められるかもしれません。

特定の取引先だけ別途対応が必要になるときは、電子化することでかえって手間が増えてしまいます。電子化を実施する前に、取引先に対応可能か確認しておきましょう。

請求書を電子化・ペーパーレス化する方法と注意点

ここからは、請求書を電子化する方法と注意点を見ていきましょう。

1.社内体制を構築する

まずは社内体制の構築です。業務手順が変わることもあるため、誰がどの業務をどの順番で行うのか、担当者に周知しておきましょう。

また、ペーパーレス化により取引先とトラブルが生じる可能性があります。例えば、次のような事柄が起こり、取引先から早急な対応を求められることもあるでしょう。

  • 電子データが開かない
  • ファイル名が文字化けしている
  • 電子データが添付されたメールを消去してしまった

ペーパーレス化を実施する前に、想定される質問をリストアップし、対応方法をマニュアル化しておくことをおすすめします。担当者によって対応が異なると、取引先に不信感を抱かせることになりかねません。

また、電子データの扱い方については、スクリーンショット画像なども入れた取引先用のマニュアルを作成し、事前に配布しておくこともおすすめです。スムーズにペーパーレス化を進めるためにも、取引先に混乱を与えないことを第一義としましょう。

2.取引先から了承を得る

請求書をペーパーレス化する前に、取引先から了承を得る必要があります。ペーパーレス化によって何が変わるか説明する案内文を送付し、了承可否の回答をして欲しい旨を伝えましょう。

紙以外の領収書を受け取れないと回答する取引先が多い場合には、請求書発行システムの導入を断念することにもなりかねません。請求書のペーパーレス化を検討するときは、できるだけ早い段階で取引先から了承を得るようにしましょう。

ペーパーレス化を案内するメールには、電子データとして受け取ることのメリットも含めることがおすすめです。例えば、「書類保管のスペースが不要になる」「帳票を検索で探せるようになる」など、取引先にとって好ましいと思えるポイントをまとめて紹介しましょう。

3.段階的に電子データに移行する

取引先から了承を得た後は、請求書発行システムを導入・運用していきます。また、できれば過去の帳票もデータ化して管理しましょう。すべて同じ法則でファイル名をつけると、検索しやすくなります。

ただし、請求書の電子化を一度にすべて行うと、会社の状況によっては大きな負担になることもあります。そこで、段階的に電子データに移行することも考えるといいでしょう。

電子化は企業にとって大きなメリットがあります。すぐに電子データに移行できなくても「今年は社内規定を策定する」「システムの導入をする」など範囲を決めて、段階的に電子データへ移行する方法を検討しましょう。

請求書を電子化・ペーパーレス化するシステムの選び方

請求書の電子化は、システムを利用することがおすすめです。エクセルで作成して取引先に送付することも可能ですが、作業に手間がかかるだけでなく、二重発行・請求をするリスクもあります。

どのシステムを選ぶか迷ったときは、次のポイントに注目してみましょう。

希望する業務に対応しているか

請求業務だけに対応しているシステムもありますが、請求業務以外の業務に対応しているシステムもあります。たとえば、消込処理や督促、与信管理など、請求前後に必要となる業務に対応しているシステムでは、業務の簡便化を実現できます。

まずは候補となるシステムをいくつかピックアップしてください。次に希望する業務を書き出し、希望業務に対応しているシステムかチェックしてみましょう。

既存システムとの連携が可能か

取引先の情報を、エクセルなどのファイルや特定のシステムで管理している事業者も少なくないでしょう。既存のファイルやシステムと連携できる請求システムなら、取引先の情報を一から入力する手間がなくなり、導入までの時間を短縮できます。また、取引先情報の入力ミスも避けられ、よりスムーズな電子請求書の発行が可能になります。

トラブル時の対応は充実・迅速か

優れたシステムでも、トラブルが生じることがあります。万が一のときのためにも、トラブル対応時のサポート内容が充実しているか、また迅速にサポート対応を受けられるかチェックしておきましょう。

メールやチャットサービスだけでなく、電話での対応窓口があると安心です。また、請求書を受領した側も相談できる窓口があれば、取引先にも安心を提供できます。

マネーフォワード クラウドなら簡単に請求書を電子化・ペーパーレス化できる

請求書の電子化をすすめるには、社内規定の整備や専用のシステムを導入する必要があります。特に、システム選びは重要です。使用するシステムによって、請求書の電子化の手間やコストが大きく異なるためです。

請求書の電子化でおすすめなのが、「マネーフォワード クラウド請求書」です。「マネーフォワード クラウド請求書」なら「マネーフォワード クラウドBox」との連携で、簡単に2020年10月施行の改正電子帳簿保存法に対応し、請求書のペーパーレス化ができます。

「マネーフォワード クラウドBox」は電子帳簿保存法の要件を満たしているため、自社で真実性の確保や可視性の確保などを気にする必要がありません。また、マネーフォワード クラウドBoxには別料金がかからないので、コスト面でも有利です。

請求書を電子化・ペーパーレス化して業務を効率化しましょう

電子化したデータで保存する場合の要件は厳しいですが、請求書を電子化することで場所的にも作業効率的にも多くのメリットを享受できます。場所や経費の節約のため、可能な範囲で導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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