- 更新日 : 2026年5月29日
インボイス制度における軽減措置とは?2割特例終了後の8割控除、3割特例と7・5・3割控除の変更点も解説
インボイス制度には、事業者の負担を軽減するため、売り手と買い手それぞれに向けた特例や経過措置が設けられています。
- 売り手は売上税額の2割(または3割)で納税できる特例がある
- 買い手は免税事業者からの仕入も一定割合を控除できる経過措置がある
- 特例や経過措置の適用期間と割合は税制改正により段階的に見直されるく
2割特例が終了した後は、令和8年度税制改正により、個人事業主を対象に、2割特例の終了後(令和9年分・10年分)は納税額を売上税額の3割とする「3割特例」が適用されます。
インボイス制度では税負担や事務負担の軽減を目的として、いくつかの特例措置が設けられています。また、令和8年度税制改正により、2割特例の終了後の経過措置として「3割特例」が新設されたほか、8割控除についても適用期限の延長と控除可能割合の見直し(7・5・3割控除)が行われました。
本記事では、インボイス制度の特例や対象者、適用方法に加えて、令和8年度税制改正による変更点についても解説します。他の経過措置についても解説しているため、経理処理業務に役立ててください。
目次
インボイス制度における特例とは?
インボイス制度とは、複数税率への対応を目的とした仕入税額控除の方式のことです。「適格請求書等保存方式」とも呼ばれています。インボイス制度の導入により、課税事業者(買い手)が消費税の「仕入税額控除」を適用するためには、売り手からインボイス(適格請求書)の交付を受けて保存する必要があります。
しかし、免税事業者がインボイス発行事業者となる場合は、税負担や事務負担が大きくなると懸念されています。従って、簡易課税制度、2割特例、3割特例、少額特例など、一定の場合にはインボイスの保存がなくても仕入税額控除や税額計算が認められる措置があります 。
インボイス制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
インボイス制度の2割特例とは?
インボイス制度の2割特例とは、消費税の納税額を売上税額の2割に軽減できる制度のことです。通常であれば「一般課税」または「簡易課税」により、納付税額を計算します。

しかし、2割特例の適用を受けることにより、売上に係る消費税額から売上税額の80%を差し引いて納付税額が計算できるようになるのです。すると、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が行えるようになるため、事業者の税負担・事務負担が軽減されます。
対象期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。
個人事業主は令和8年分の確定申告まで、法人は令和8年9月30日が属する課税期間の確定申告までが、2割特例の対象となります。
※出典:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁
なお、令和8年度税制改正により、2割特例の終了後について、納税額を売上税額の「3割」とする「3割特例」が新設されました。詳細は次のセクションをご覧ください。
2割特例の対象
2割特例の対象は、免税事業者からインボイス発行事業者になった人(売り手)です。ただし基準期間(2年前)の課税売上が1,000万円以下等の要件を満たす必要があります。
2割特例の対象外となる事業者は、以下の通りです。
- インボイス発行事業者でない課税事業者
- 課税事業者がインボイス発行事業者となった場合(※)
- 資本金1,000万円以上の新設法人
- 課税期間短縮の特例を受ける場合
※基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者となる場合は、原則として2割特例の対象外です。また、資本金1,000万円以上の新設法人、課税期間を短縮している事業者、調整対象固定資産・高額特定資産の取得により免税事業者とならない事業者なども、適用対象外となる場合があります。
なお、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になった場合でも、2割特例の適用を受けられます。ただし令和5年分の確定申告では、2割特例の適用を受けられません。
2割特例を適用する方法
2割特例の適用を受けるためには、確定申告書に「2割特例を受ける旨」を付記する必要があります。適用にあたっての事前届出は不要で、2年間の継続適用などの縛りはありません。
申告書における付記のイメージは以下の通りです。
引用:2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き|国税庁
インボイス制度の3割特例とは?
インボイス制度の3割特例とは、消費税の納税額を売上税額の3割に軽減できる制度のことです。令和8年9月30日に2割特例の対象期間が終了することに伴い、その後継となる経過措置として、令和8年度税制改正で創設されました。
3割特例の適用を受けることにより、売上に係る消費税額から売上税額の70%を差し引いて納付税額が計算できるようになります。2割特例と同様、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が行えるため、事業者の事務負担の軽減につながります。
対象期間は、個人事業者の令和9年分・令和10年分の消費税申告となります。
3割特例の対象
3割特例の対象は、免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業者です。法人は対象外となります。
- 3割特例の適用を受けるための主な要件は、以下のとおりです。
- 個人事業者であること(法人は対象外)
- インボイス発行事業者の登録を受けたこと
- 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること
なお、2割特例と同様に、課税期間を短縮している場合や、調整対象固定資産・高額特定資産の取得により免税事業者にならないこととされている場合などは、3割特例の対象外となります。 また、または課税事業者選択届出書を提出したことにより、事業者免税点制度の適用を受けられない課税期間に限り適用できます。
3割特例を適用する方法
3割特例の適用を受けるためには、確定申告書に「3割特例を受ける旨」を付記する必要があります。
適用にあたっての事前届出は不要で、年ごとに適用するかどうかを選択できます(確定申告書に3割特例の適用を受ける旨を付記することで適用可能)。 また、3割特例の適用を受けた個人事業者が、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、簡易課税制度選択届出書の提出期限について特例が設けられています。
通常は適用を受けようとする課税期間の前日までに届出書を提出する必要がありますが、3割特例の適用を受けた翌課税期間については、その課税期間の申告期限までに届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用できます。
インボイス制度の8割控除と7・5・3割控除とは?
インボイス制度の8割控除とは、買い手である課税事業者への経過措置です。
インボイス制度の導入後は原則として、課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、適格請求書発行事業者からインボイスの交付を受けて保存する必要があります。そのため、適格請求書発行事業者でない免税事業者等からの課税仕入れでは、支払った消費税額が控除対象外になるのです。
インボイス制度の導入から一定期間は経過措置が設けられており、当初3年間(令和5年10月1日〜令和8年9月30日)は、仕入税額相当額の80%が仕入税額とみなされ、課税仕入れ額から控除できる仕組みとなっています。
令和8年度税制改正により 、「令和8年10月1日以後の経過措置について、適用期限を2年間延長したうえで、控除可能割合を以下のとおり見直す」こととなりました。これは「7・5・3割控除」と呼ばれます。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 〜令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日〜 | 0%(控除不可) |
あわせて、一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年又は事業年度で1億円(改正前:10億円)を超える場合は、その超えた部分の課税仕入れについて7・5・3割控除を適用できません。
なお、この上限額の見直しは令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
8割控除の対象
8割控除の対象は、買い手側の課税事業者です。経過措置を適用できる期間内は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについても仕入税額控除の対象となるため、インボイス制度の導入による税負担が軽減されます。
なおここでいうインボイス発行事業者以外の者には、免税事業者だけでなく、消費者や登録を受けていない課税事業者も含まれます。
8割控除を適用する方法
8割控除を適用するためには、次の事項が記載された帳簿および請求書等の保存が必要です。
- 区分記載請求書等と同様の事項が記載された帳簿
- 経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨(80%控除対象など)が記載された帳簿
- 区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等
インボイス制度に関連した支援と事務負担の軽減
他のインボイス制度に関連した支援措置と事務負担の軽減措置には、以下のようなものがあります。
| 経過措置の内容 | 対象となる事業者の区分 | 対象者 |
|---|---|---|
| 持続化補助金の加算 | 免税事業者がインボイス発行事業者になった場合 | 売り手 |
| 会計ソフトの導入に
対する補助金 |
免税事業者および、課税事業者がインボイス発行事業者になった場合 | 売り手
買い手 |
| インボイス保存の少額特例
(事務負担の軽減措置) |
免税事業者および、課税事業者がインボイス発行事業者になった場合 | 売り手
買い手 |
持続化補助金の加算
免税事業者がインボイス発行事業者になった場合は、小規模事業者持続化補助金の補助上限額が一律50万円加算されます。この特例は、インボイス発行事業者に転換した場合の事業環境変化への対応を支援する目的があるようです。通常であれば補助上限額は200万円ですが、特例として50万円が加算され、250万円が補助上限額となります。
補助上限額や対象者は公募回・制度年度により異なるため、実際に利用を検討する際は、最新の公募要領を確認してください。
会計ソフトの導入に対する補助金
IT導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)では、インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトの導入に必要な費用の補助が受けられます。
IT導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)の概要は以下の通りです。
| 補助対象 | 補助額 | 補助率 | |
|---|---|---|---|
| ITツール
(ソフトウェア等) |
〜350万円 | 内、50万円以下 | 中小企業:3/4以内
小規模事業者:4/5以内 |
| 内、50万円超350万円以下 | 2/3以内 | ||
| PC・タブレット等 | 〜10万円 | 1/2以内 | |
| レジ・券売機等 | 〜20万円 | 1/2以内 | |
また、補助対象経費は以下の通りです。
- インボイス制度に対応したソフトウェア購入費
- インボイス制度に対応したクラウド利用費(最大2年分)
- インボイス制度の導入関連費
- ハードウェア購入費(PCやタブレット、レジ・券売機等)
IT導入補助金については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、補助対象、補助率、補助上限額は年度・公募回により変更されるため、記事内に掲載する数値は最新の公募要領に基づいて確認する必要があります。
インボイス保存の少額特例
インボイス制度では原則として、少額な取引でもインボイス(適格請求書)の保存が必要と定められています。しかし一定規模以下の事業者が行う1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくとも帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。対象期間は、令和11年9月30日までです。
一定規模以下の事業者とは、下記のいずれかに該当する者のことを指します。
- 基準期間(2年前)の課税売上高が1億円以下の事業者
- 特定期間(前年の上半期)における課税売上高が5千万円
特例と控除は適用対象者が異なる
本記事では、インボイス制度の「2割特例」と「8割控除」について解説しました。これらの制度は同様のものと思われがちですが、適用対象者が異なります。
2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった人(売り手)が対象です。8割控除は、インボイス発行事業者でない者から課税仕入れを行う課税事業者(買い手)が対象となります。
なお、令和8年度税制改正により、2割特例の終了後の経過措置として、個人事業者を対象とする「3割特例」が令和9年分・令和10年分の確定申告に適用されます。また、買い手側の8割控除についても、適用期限が2年間延長されたうえで控除可能割合が見直され、令和8年10月1日以降は「7・5・3割控除」として段階的に縮小されていきます。今回の記事を参考にして、インボイス制度への対応を進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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