• 更新日 : 2024年2月29日

インボイス制度における特例とは?知ってきたい2割特例と8割控除を解説

企業の経理担当者は、2割特例と8割控除の違いについて知りたいのではないでしょうか。インボイス制度では税負担や事務負担の軽減を目的として、いくつかの特例措置が設けられています。

本記事では、インボイス制度の特例や対象者、適用方法について解説します。他の経過措置についても解説しているため、経理処理業務に役立ててください。

インボイス制度における特例とは

インボイス制度とは、複数税率への対応を目的とした仕入税額控除の方式のことです。「適格請求書等保存方式」とも呼ばれています。インボイス制度の導入により、課税事業者(買い手)が消費税の「仕入税額控除」を適用するためには、売り手からインボイス(適格請求書)の交付を受けて保存する必要があります。

インボイス制度①

引用:インボイス制度とは|国税庁

しかし、免税事業者がインボイス発行事業者となる場合は、税負担や事務負担が大きくなると懸念されています。そこで政府は、インボイス制度の支援措置としてさまざまな特例を設けました。

インボイス制度については、以下の記事で詳しく解説しています。

インボイス制度の2割特例とは?

インボイス制度の2割特例とは、消費税の納税額を売上税額の2割に軽減できる制度のことです。通常であれば「一般課税」または「簡易課税」により、納付税額を計算します。

インボイス制度の2割特例

しかし、2割特例の適用を受けることにより、売上に係る消費税額から売上税額の80%を差し引いて納付税額が計算できるようになるのです。すると、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が行えるようになるため、事業者の税負担・事務負担が軽減されます。

対象期間は、令和5年10月1日から3年間(令和8年9月30日まで)です。

インボイス制度の2割特例 対象期間

※出典:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁

2割特例の対象

2割特例の対象は、免税事業者からインボイス発行事業者になった人(売り手)です。ただし基準期間(2年前)の課税売上が1,000万円以下等の要件を満たす必要があります。

2割特例の対象外となる事業者は、以下の通りです。

  • インボイス発行事業者でない課税事業者
  • 課税事業者がインボイス発行事業者となった場合
  • 資本金1,000万円以上の新設法人
  • 課税期間短縮の特例を受ける場合

なお。「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になった場合でも、2割特例の適用を受けられます。ただし令和5年分の確定申告では、2割特例の適用を受けられません。

2割特例を適用する方法

2割特例の適用を受けるためには、確定申告書に「2割特例を受ける旨」を付記する必要があります。適用にあたっての事前届出は不要で、2年間の継続適用などの縛りはありません。

申告書における付記のイメージは以下の通りです。

インボイスの2割特例 確定申告書に「2割特例を受ける旨」を付記する

引用:2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き|国税庁

インボイス制度の8割控除とは?

インボイス制度の8割控除とは、買い手である課税事業者への経過措置です。

インボイス制度の導入後は原則として、課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、適格請求書発行事業者からインボイスの交付を受けて保存する必要があります。そのため、適格請求書発行事業者でない免税事業者等からの課税仕入れでは、支払った消費税額が控除対象外になるのです。

ただし、インボイス制度の導入から一定期間は経過措置が設けられています。当初3年間は仕入税額相当額の80%、その後3年間は仕入税額相当額の50%が仕入税額とみなされ、課税仕入れ額から控除できます。

インボイス制度の8割控除

8割控除の対象

8割控除の対象は、買い手側の課税事業者です。経過措置を適用できる期間内は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについても仕入税額控除の対象となるため、インボイス制度の導入による税負担が軽減されます。

8割控除を適用する方法

8割控除を適用するためには、次の事項が記載された帳簿および請求書等の保存が必要です。

  • 区分記載請求書等と同様の事項が記載された帳簿
  • 経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨(80%控除対象など)が記載された帳簿
  • 区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等

他にも知っておきたいインボイス制度の経過措置

他のインボイス制度の経過措置には、以下のようなものがあります。

経過措置の内容対象となる事業者の区分対象者
持続化補助金の加算免税事業者がインボイス発行事業者になった場合売り手
会計ソフトの導入に
対する補助金
免税事業者および、課税事業者がインボイス発行事業者になった場合 売り手
買い手
インボイス保存の少額特例
(事務負担の軽減措置)
免税事業者および、課税事業者がインボイス発行事業者になった場合 売り手
買い手

持続化補助金の加算

免税事業者がインボイス発行事業者になった場合は、小規模事業者持続化補助金の補助上限額が一律50万円加算されます。この特例は、インボイス発行事業者に転換した場合の事業環境変化への対応を支援する目的があるようです。通常であれば補助上限額は200万円ですが、特例として50万円が加算され、250万円が補助上限額となります。

会計ソフトの導入に対する補助金

IT導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)では、インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトの導入に必要な費用の補助が受けられます。

IT導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)の概要は以下の通りです。

補助対象補助額補助率
ITツール
(ソフトウェア等)
〜350万円内、50万円以下中小企業:3/4以内
小規模事業者:4/5以内
内、50万円超350万円以下2/3以内
PC・タブレット等〜10万円1/2以内
レジ・券売機等〜20万円1/2以内

また、補助対象経費は以下の通りです。

  • インボイス制度に対応したソフトウェア購入費
  • インボイス制度に対応したクラウド利用費(最大2年分)
  • インボイス制度の導入関連費
  • ハードウェア購入費(PCやタブレット、レジ・券売機等)

IT導入補助金については、以下の記事で詳しく解説しています。

インボイス保存の少額特例

インボイス制度では原則として、少額な取引でもインボイス(適格請求書)の保存が必要と定められています。しかし一定規模以下の事業者が行う1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくとも帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。対象期間は、令和11年9月30日までです。

一定規模以下の事業者とは、下記のいずれかに該当する者のことを指します。

  • 基準期間(2年前)の課税売上高が1億円以下の事業者
  • 特定期間(前年の上半期)における課税売上高が5千万円

2割特例と8割控除は適用対象者が異なる

本記事では、インボイス制度の「2割特例」と「8割控除」について解説しました。これらの制度は同様のものと思われがちですが、適用対象者が異なります。

2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった人(売り手)が対象。8割控除は、インボイス発行事業者でない者から課税仕入れを行う課税事業者(買い手)が対象です。今回の記事を参考にして、インボイス制度への対応を進めていきましょう。


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