- 更新日 : 2024年10月17日
請求書での端数処理の方法は?インボイスにおける処理の注意点まで解説
請求書の消費税に1円以下の端数が生じることは、良くあります。端数処理の方法は「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」のいずれかで、どの方法を選択しても問題ありません。
また、インボイス制度の導入により、インボイス(適格請求書)を発行する事業者の消費税の端数処理の方法に変化がありました。インボイスとインボイスではない請求書、それぞれの端数処理の方法と注意点を解説していきます。
目次
請求書に記載する消費税の端数処理の方法
請求書(インボイスを含む)の消費税に1円未満の端数が出た場合、処理方法には次の3種類があります。
- 切り捨て
- 切り上げ
- 四捨五入
国税庁の指針によると、上記の3種類の処理方法のうちどの方法を採用するかは事業者ごとの判断とされています。つまり、どの方法で処理してもよいことになりますが、処理方法によっては請求書の数字が変わってきます。
具体例を見ていきましょう。例えば商品の代金が1,525円で消費税が10%の場合は、下記のようになります。
例:1,525円×10%=152.5円
上記のように1円未満の端数が出てしまいます。このような場合に、それぞれの処理方法による計算は下記のようになります。
- 切り捨て:1円未満(0.5円)を切り捨て、152円
- 切り上げ:1円未満(0.5円)を切り上げ、153円
- 四捨五入:1円未満(0.5円)を四捨五入して、153円
このように処理方法によって、1円の差が出ていることが分かります。1円といえども取引件数が多くなってくると大きな差になるため、端数の処理方法が重要であることが分かるでしょう。
インボイスにおける消費税額の端数処理の方法
インボイス制度の要件を満たしたインボイス(適格請求書)では、消費税額の端数処理は1つのインボイスに対し税率ごとに行う必要があります。また、消費税額の計算方式は、割り戻し方式と積上げ方式のいずれかを選択できます。
これら2点について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
なお、インボイス制度とは要件を満たした適格請求書(インボイス)を発行・保存することで、消費税の仕入控除が受けられる制度です。インボイス制度の詳細は、下記で詳しく説明しています。
請求書1つに対し税率ごとに端数処理を行う
インボイス制度では、ひとつのインボイス(適格請求書)で異なる税率ごとに端数処理を行い、それぞれを合計して消費税を算出することが必要です。ただし、端数処理の方法についてはこれまで通り、四捨五入、切り捨て、切り上げのいずれかを任意で決めてよいことになっています。
積上げ計算と割り戻し計算から方法を選択
インボイス制度導入以前の消費税の計算では、1年間の課税売上、または課税仕入れの総額に対して計算する「割り戻し方式」しか認められていませんでした。インボイス導入後は、都度消費税を計算する「積上げ方式」も選択できるよう変更されています。
小売店や個人向けサービス業のように一般消費者を相手にしている業種の場合は、「積上げ方式」のほうが消費税は安くなる傾向にあります。このように有利な計算方法を選べるようになる点も、インボイス制度の影響のひとつです。
免税事業者の請求書における消費税額の端数処理は?
インボイス制度導入の影響を受けたのは、課税事業者が発行するインボイスのみです。免税事業者が発行する請求書は、端数処理の面では制度導入前から変化がありません。
しかし、買い手が課税事業者である場合、インボイスを受け取れなければ仕入税額控除を受けられません。インボイスを発行できない免税事業者との取引を見直す可能性もあるため、状況に応じた対応が必要です。免税事業者も、インボイス制度の概要を押さえて、必要に応じた対応をするようにしましょう。
消費税を端数処理する際の注意点
請求書で端数処理する際の注意点を、請求書を発行する事業者全般とインボイス発行事業者に分けて紹介します。
請求書を発行する事業者の注意点
請求書を発行する事業者全般の注意点を2つ取り上げます。
売上額の端数処理
売上の端数処理の方法は自由に決めてよいことになっていますが、受注側が勝手に判断しないようにしましょう。端数の処理方法については、必ず取引先と事前に確認しておく必要があります。お互いが処理方法について共通認識を持っていないと、思わぬことでトラブルに発展してしまう可能性があるため、注意が必要です。
端数処理方法は社内で統一すること
端数処理に関するルールは、社内で統一するようにしましょう。担当者によって端数処理の方法が違っていては、請求書によって端数処理が違うことになるため、取引先とのトラブルに繋がります。端数処理の方法は社内で統一することで、無用なトラブルを防げます。
インボイス発行事業者の注意点
インボイス発行事業者が請求書を発行する際の注意点を2つ取り上げます。
端数処理の回数
従来の制度では、消費税の端数処理の回数に関するルールは定められていませんでした。しかし、インボイス制度では、1つの請求書の中で税率の異なる品目ごとに1回端数処理を行うことに変更されています。1つの請求書に8%と10%の税率がある場合は、それぞれに端数処理を行って合計します。
割り戻し計算か積上げ計算かは統一する
インボイス制度以降、消費税額の計算は、総額によって消費税額を計算する「割り戻し計算」か、請求書の発行または受領の都度消費税額を計算する「積上げ計算」かを選択できるようになりました。
しかし、売上税額を割り戻し計算にして、仕入税額を積上げ計算にするなど、2つの方法を同時に取り入れることはできません。売上税額または仕入税額の計算を割り戻し計算にする場合は、もう一方の売上税額または仕入税額も割り戻し計算にしなければなりません。積上げ計算を選択するときは、両方とも積上げ計算にする必要があります。
課税事業者の納付税額の端数処理はどうする?
消費税を納税する際の端数は、100円未満を切り捨てます。これまで請求書などでは1円未満と説明してきたので分かりにくいかもしれませんが、税額の計算では100円未満を切り捨てと決められています。下記に消費税の計算タイミング別の、処理方法を記載しているので整理しましょう。
消費税の計算タイミング | 端数処理の単位 | 端数処理の方法 |
---|---|---|
売上に係る消費税 | 1円未満 | 切り捨て・切り上げ・四捨五入 |
仕入れに係る消費税 | 1円未満 | 切り捨て・切り上げ・四捨五入 |
納税時の消費税 | 100円未満 | 切り捨てのみ |
仕入れや売上に関する消費税は、1円未満の端数を事業者が任意の方法で処理します。消費税の実額を計算する際は、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を引いて計算します。そのため計算過程では1円未満で処理して、納税の際には100円未満を切り捨てると考えると覚えやすいでしょう。
課税事業者は請求書での消費税の端数処理の変化をおさえておこう
請求書の消費税の端数処理は、「切り捨て」「切り上げ」「四捨五入」を任意で選択できます。インボイス制度以前は回数の決まりはなく、商品ごとに消費税の端数処理ができました。しかし、2023年10月以降のインボイス制度導入後は、インボイス(適格請求書)の端数処理の回数は1つの請求書の税率ごとに計算することに変更されています。納付する消費税額の計算についても、割り戻し計算に加え、積上げ計算を選択できるようになりました。請求書の受領、または発行の際は条件を満たしているか確認しましょう。
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