• 更新日 : 2024年4月2日

インボイス制度での消費税申告書の作り方は?確定申告のフローを紹介

インボイス制度での消費税申告書の作り方は?確定申告のフローを紹介

2023年10月1日からインボイス制度がスタートし、消費税申告の方法が変わった部分があります。そこでこの記事では、インボイス制度施行後の消費税申告について詳しく解説します。始めて消費税申告をする方、これまでとの違いをしっかり理解したい方はぜひ参考にしてください。

インボイス制度施行による消費税申告の変化

インボイス制度導入に伴い、消費税申告の方法が変更になった部分があります。具体的には以下のような点です。

  • 仕入税額控除対象・対象外を把握する必要がある
  • 消費税額の端数処理の方法
  • 消費税の積み上げ計算も可能に

なお、インボイス制度についての詳細は以下をご覧ください。

それぞれの変更点について、詳しく見ていきましょう。

仕入税額控除対象・対象外を把握する必要がある

仕入税額控除を使えるのはインボイス登録事業者との取引のみとなりました。そのため、インボイス登録事業者と登録していない事業者の取引を分けて消費税納税額を算出する必要があります。

さらに、仕入税額控除適用のためには「適格請求書」の発行をしてもらう必要があります。必要な項目が抜けていた場合、正しい請求書の再発行を依頼しなくてはなりません。

消費税額の端数処理の方法

消費税を算出すると、1円未満の端数が出る場合があります。インボイス制度導入前は端数処理を商品ごとに行っていました。しかし、導入後は1つの請求書で税率ごとに端数処理を行わなければなりません。

なお、端数処理の方法は「四捨五入」「切り上げ」「切り捨て」がありますが、どの方法で行うかは事業者が決めて構いません。

消費税の積み上げ計算も可能に

インボイス制度導入前は1年間の売上をもとに消費税額を計算する「割戻し計算」が使われていました。しかし、導入後は売上ごとに計算した消費税額を合算する「積み上げ計算」も使えるようになりました。

インボイス制度における消費税の確定申告のフロー

インボイス制度施行後の消費税の確定申告までの流れは以下のとおりです。

①取引関連資料を準備する

制度開始をきっかけに免税事業者から消費税課税事業者となった場合は2023年10月1日以降の取引について消費税納税義務が生じます。請求書、納品書などの取引関連資料を「2023年9月30日以前」「2023年10月1日以降」に分けて準備してください。

以前から消費税納税業事業者の法人は今年度の取引全てに対し、消費税納税義務があります。

②消費税額を算出する

税率は10%、8%の2通りのため、それぞれで消費税額を算出します。

③消費税申告書の作成

算出した消費税額をもとに消費税申告書を作成します。

④消費税申告書の提出と納税

作成した消費税申告書を所轄の税務署に提出し納税します。法人の場合、申告書の提出期限および消費税の納付期限は「課税期間の終了日から2ヵ月以内」です。例えば、3月決算の法人の場合、提出と納付期限は5月31日ということになります。

なお、前年の消費税額が48万円(国税)を超える法人の場合、消費税の中間申告がマストとなります。

中間申告書を提出すべき事業者が、その中間申告書をその提出期限までに提出しない場合には、中間申告書の提出があったものとみなされ、直前の課税期間の実績による中間申告により計算した消費税額が直ちに確定することになります。

中間申告の回数は以下をご覧ください。

  • 消費税額48万円超400万円以下:年1回
  • 消費税額400万円超4,800万円以下:年3回
  • 消費税額4,800超:年11回

※消費税額は国税部分のみです。

インボイス制度における消費税申告書の作り方

消費税申告をするためには消費税申告書が必要です。なお、消費税の課税方法は「簡易課税」「本則課税」がありますので、選択した方で作成しましょう。

以下の例をもとに簡易課税、本則課税それぞれの消費税額を計算します。

例)売上高5,000万円(税別の場合、課税売上高は5,500万円)、仕入高:2,000万円(税別の場合、課税仕入高は2,200万円)の小売業の場合

消費税率は10%
みなし仕入率は80%

簡易課税

簡易課税は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の事業者が利用できる制度です。業種ごとに決められた「みなし仕入率」を売上分の消費税にかけることで仕入税額を算出するというものです。

簡易課税を選択する際は事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に届け出る必要があります。

簡易課税の際の消費税(国税)算出方法は以下のとおりです。

売上にかかる消費税:5,000万円×7.8%=390万円

仕入にかかる消費税:5,000万円×7.8%×80%=312万円

390万円-312万円=78万円(国税)

78万円×22/78=22万円(地方消費税)

合計100万円を消費税として納めることになります。

本則課税

本則課税の際の消費税の算出方法は以下のとおりです。

5,500万円×100/110=5000万円

預かり消費税額:5,000万円×7.8%=390万円

仕入分の消費税も計算します。

2,200万円×7.8/110=156万円

預かり消費税から仕入分の消費税を引くと消費税額(国税)が出ます。

390万円-156万円=234万円(国税)

地方消費税は以下のとおりです。

234万円×22/78=66万円

国税、地方消費税を足します。

234万円+66万円=300万円

合計300万円を消費税として納税することになります。

複雑な消費税計算を会計ソフトで効率化

今回、単純な取引での例を挙げましたが、実際の取引はさらに複雑になることもあります。これらの計算を手計算で行うのは非常に難しいといえるでしょう。

実際の取引で消費税額を算出したいのならば、金額等を入力するだけでさまざまな計算ができる会計ソフトの利用をおすすめします。

消費税の確定申告に影響する特例

インボイス制度で登録した事業者の中には、売上高1,000万円以下など、本来ならば免税事業者でよかったという方々もいるでしょう。これらの方々の負担を軽減するための特例がありますので押さえておいてください。

2割特例

インボイス制度の2割特例とは、以下の計算で消費税納税額を計算できるというものです。

預かり消費税額-預かり消費税×80%

つまり、納税額を預かり消費税額の2割に抑えることができるという制度になります。

この2割特例が使える事業者は限られていますのでチェックしておきましょう。

  • インボイス制度開始をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者なった事業者
  • 基準期間の売上高と特定期間の課税売上高が1,000万円を越えない事業者

なお、2割特例が適用できるのは2023年10月1日~2026年9月30日の間のみです。また、適用する際の事前申込は不要です。ただし、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記してください。

インボイス制度を理解し、スムーズに確定申告を進めよう

インボイス制度が始まったことで、消費税申告の方法も変わっています。これまで消費税を納税していた事業者でも迷うことがあるかと思われますので、申告前に確認しておきましょう。

また、スムーズな申告のためにインボイス制度全体について把握することも重要です。仕入税額控除や申告書の作成など不明点があれば早めに調べておくことをおすすめします。


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