• 作成日 : 2023年1月20日

見積書での法定福利費の書き方を建設業向けに解説

見積書での法定福利費の書き方を建設業向けに解説

会社の福利厚生費の中で、社会保険や労働保険に関する経費のことを「法定福利費」と呼びます。法人または特定の業種を除く従業員5名以上の個人事業主には社会保険や労働保険への加入義務があるため、これらの経費を削ってはいけません。

この法定福利費を建設業者が見積書に入れる場合、どのように記載すればよいのでしょうか。今回は、建設業者のための法定福利費の計算方法や記載例についてご紹介します。

建設業においては見積書に法定福利費の記載が義務

法人または特定の業種を除く従業員5名以上の個人事業主は、社会保険や労働保険への加入が義務となっています。しかし法定福利費の支払いは一定の経済的な負担になるため、規模が小さい下請業者が多い建設業では、これらの保険への加入をしないまま事業を行う事業者も多く存在しました。

建設業における作業は危険な現場で実施されるものが多く、他の業種に比べてケガをしやすい業務が多く含まれています。そのため事業者は従業員の負傷に備えるべく、社会保険や労働保険に加入し、労働者の保障を確保する必要があると考えられています。

そこで、国は2013年より下請の建設業者に対し、元請業者に見積書を作成・提出する際は、法定福利費も含めて計算するよう義務付けました。これにより、法定福利費を支払っていない=社会保険や労働保険に加入していない建設業者は工事などの事業を行ってはいけないというルールが定められたのです。

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そもそも見積書の法定福利費とは?

先述のとおり、建設業者が工事の下請を担う際に作成する見積書には「法定福利費」を含める必要があります。

法定福利費とは労働基準法や健康保険法などの法律で決められた福利厚生費です。業種に関わらず、正社員や一定の条件を満たしたパート・アルバイトであれば企業は支払う義務があります。

法定福利費に含める社会保険・労働保険には、以下の保険が該当します。

健康保険・厚生年金保険など

健康保険は労働者・労働者の扶養家族に疾病・ケガなどが発生した場合に適用されます。「協会けんぽ(全国健康保険協会)」「健康保険組合」など、事業者が所属する保険者によって保険料は次のように決まります。

  • 協会けんぽ標準報酬月額で定められた等級ごとに保険料が決定する。各等級の保険料率は都道府県ごとに決まっている。
    ※保険料率の例(1等級:標準報酬月額5万8,000円、介護保険第2号被保険者に該当しない場合)
    東京都:9.81%
    大阪府:10.22%
  • 健康保険組合:各保険組合が独自で保険料率を決定する。

協会けんぽ・健康保険組合は個人事業主が加入する「国民健康保険」とは保険料率が異なります。

厚生年金保険は、企業に勤める人が加入する公的年金制度です。適用事業所に加入する企業に常時使用される70歳未満の人はすべて加入義務があり、加入していると、原則65歳から年金が生涯受け取れます。

厚生年金保険の保険料は下記の計算式で算出します。

標準報酬月額×18.3%(厚生年金保険料率)

ちなみに、健康保険および厚生年金保険どちらも保険料をすべて労働者が負担するわけではありません。保険料の総額を使用者と労働者が半額ずつ(労使折半)負担します。

介護保険(公的介護保険)は、40歳以上の人が全員加入しなければならない保険です。介護が必要になった場合、要介護度によって所定の介護サービスが受けられます。被保険者は年齢で以下のよう区分されています。

区分受給要件保険料の徴収方法
第1号被保険者65歳以上の人市区町村が年金から天引き
第2号被保険者40歳以上65歳未満の医療保険(※)加入者

※協会けんぽ、健保組合など

医療保険料と一体で徴収
※協会けんぽ、健保組合加入者の保険料は労使折半

雇用保険

雇用保険は労働者の生活や雇用の安定を目的とした保険です。雇用保険に加入していると、失業時に基本手当(失業保険)や再就職手当が支給されます。また、失業の予防や雇用機会の増大を目指した労働者の能力開発として教育訓練を受けられます。

雇用保険は従業員を1人でも雇っている事業者は必ず加入しなければなりません。適用基準は以下のとおりです。

  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

保険料は従業員・事業主双方で負担しますが、事業主側の負担割合が大きく設定されています。

労災保険

労災保険(労働者災害補償保険)とは、業務中もしくは通勤時に発生した労働者の傷病に対し、保険給付を行う制度です。また被災した労働者本人または被災労働者に遺族を対象に、被災後の社会復帰促進サポートも行っています。労災に係る保険料は事業主側のみが負担します。

労災保険も雇用保険同様に、従業員を1人でも雇っている事業者には加入の義務があります。雇用形態も正社員に限らず、パートやアルバイトも補償の対象です。

法定福利費の記入例

建設業者が工事を請け負う際、元請業者に提出する見積書には法定福利費を明示しなければなりません。見積書の中にどのように法定福利費を記載すればいいのかについて、記入例を挙げていますので確認しておきましょう。下記は見積書の内訳部分の記載例です。

(内訳)

項目数量歩掛単価金額
A工事費材料費A円
労務費B円
経費(法定福利費を除く)C円
小計D円(A+B+C円)
法定福利費詳細は以下に記載E円
小計D円+E円

(法定福利費詳細)

法定福利費事業主負担額対象金額料率金額
雇用保険料B円aB×a円
健康保険料B円bB×b円
介護保険料B円cB×c円
厚生年金保険料

(児童手当拠出金含む)

B円dB×d円
合計B円eE円(B×e円)

※歩掛(ぶがかり):工事費用の積算において、作業ごとにかかる手間などを数値化したもの。

法定福利費は別途記載しますので、「A工事費」内の「労務費」には法定福利費は含まれていません。

また、この見積書に記載する法定福利費は事業主が負担する分のみです。もし、事業主負担分以外の法定福利費を入れるのであればその事実を記載し、労務費から該当する金額を除いておきましょう。

法定福利費の計算方法

建設業の法定福利費は、一般的に以下の計算式で算出します。

労務費総額×法定保険料率=法定福利費

法定保険料率は保険の種類によって異なります。各保険の料率は「協会けんぽ」「日本年金機構」「厚生労働省」などの公式サイトで確認可能です。

なお、工事費の増減等が労務費と比例する場合には、次のような法定福利費の計算方法もあります。

  • 工事費×工事費当たりの平均的な法定福利費の割合
  • 工事数量×数量当たりの平均的な法定福利費

建設業における見積書の注意点

下請の建設業者が元請業者に工事の見積書を提出する際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。元請業者が注意すべきポイントとあわせて把握しておきましょう。

元請業者が注意すべきこと

下請業者に発注する場合、まずは見積書を出してもらうことになるでしょう。その際、下請業者に「法定福利費を明記した見積書を出してください」と必ず伝えてください。見積書が提出されたら、その金額に誤りがなく妥当なものかを確認しましょう。

元請業者が一方的に法定福利費分を減額、もしくは法定福利費はそのままでも労務費や材料費などを勝手に減額してはなりません。

下請業者が注意すべきこと

下請業者が工事の見積書を作成する場合は、必ず法定福利費を明示してください。法定福利費や材料費、労務費などを「請負額」などとして大まかにまとめた見積書を提出することは認められていません。

また、法定福利費を算出する際は各保険の「法定保険料率」を用いてください。妥当性のない金額で見積書を提出しないようにしましょう。

法定福利費は見積書へ明記することが必須

建設業の下請業者が元請業者に見積もりを提出する際には、法定福利費を明記する必要があります。法定福利費や工事費・労務費を分けて記載せず「工事請負料」などとまとめて記載した見積書は認められていません。内訳を明確に記載した見積書を提出しましょう。

また、見積書に明記する法定福利費は事業主の負担分のみです。それ以外の法定福利費を入れるのであれば、その事実の記載と、労務費から該当する金額を除きます。

なお、法定福利費の計算には各保険の保険料率を用いることも覚えておきましょう。

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よくある質問

建設業界における見積書に記載しなくてはならない法定福利費とは何ですか?

社会保険や労働保険に関する経費のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

見積書に記載する法定福利費はどのように計算すればよいですか?

一般的には「労務費総額×法定保険料率」で計算します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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