- 更新日 : 2024年10月21日
見積書に印鑑は必要ない!それでも押印を求められたら?
見積書に印鑑を押すべきか否か、迷われる方もいるでしょう。多くの企業では見積書にも印鑑が押されていますが、契約書ではないため押印までは必要ないと捉える方もいます。そこで今回は見積書の印鑑の必要性について考えてみましょう。
目次
見積書には印鑑がなくても良い
見積書はあくまでも取引の上流で取り交わされる商品などの価格やサービスの範囲を提示する書面として発行されるため、様式や印鑑の有無でその効力が変わることはありません。結論としては、押印をしてもしなくても、どちらでも良いのです。
そもそも見積書は、受注者が発注者に対して商品やサービスの金額、数量、納期、支払条件などを伝えるための書類です。発注者は見積書をもとに発注するかどうかを判断します。あらかじめ、価格や納品日などを明確化することによりトラブルを防止につながるという側面もあります。
見積書に記載が必要な項目
見積書には主に以下の項目を記載します。
- 宛名(発注者の会社名や部署名、担当者名)
- 差出人の名前(社名や部署名、担当者名)
- 見積書の通し番号
- 発行日
- 見積の明細金額
- 見積の内容(品目、単価、数量、価格など)
- 各項目の小計、消費税、合計金額
- 備考
見積書の各項目についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
見積書にあえて印鑑を押す意味は?
見積書に押印は不要ですが、それでもあえて印鑑を押す理由としては信頼性や安心感につながることが挙げられます。発注者は見積書の内容をもとに発注するかどうかを判断します。場合によっては社内での稟議、上司や経営者の決裁も必要です。
押印は承認の意思を示す目的で行われます。見積書に押印があると、「その内容は発注先の会社が認めた正式なものである」という印象を与えることができ、信頼感が増します。そのため、見積書にもあえて印鑑を押しているケースが多いと考えられます。
見積書に押印する場合はどの種類の印鑑が適切?
会社で使う印鑑には主に「実印(代表印および丸印)」「角印(社印、社判)」「銀行印」「担当印」「ゴム印」があります。見積書は会社として発行する書類であるため、会社の印鑑である「角印」を押印し、さらに担当者個人の印鑑を押すのが一般的です。
角印も含め、会社で使用する印鑑の種類について見ていきましょう。
角印(社印、社判)
見積書や領収書等の対外的な取引において会社として発行した事実を証明する用途では、角印が使用されることが一般的です。印影は「○○株式会社の印」であり、四角の印鑑であるため「角印」と呼ばれています。重要な書類の作成にあたっては、代表印と共に角印が押印されます。
担当者印
担当者が職務上使用する印鑑です。誰がその書類を発行したかを明らかにする趣旨で押印がなされる場合が多いです。ただ、認印であるため、担当者本人の印鑑であるかどうか別途確認となる可能性があります。
ゴム印
ゴム印は、本店所在地、会社名、代表者名、電話番号などの印鑑ですが、いわゆる印鑑として活用するというより、手書きを効率化するために用いられるものです。ただ、ゴム印といえども、会社が発行したものと扱われることがあるので、ある程度の管理は必要になります。
実印(代表印および丸印)や銀行印は使わないことが多い
一方で、実印や銀行印は見積書への押印に実印や銀行印を使うことは一般的ではありません。
会社を設立するためには、法人登記をしなければなりませんが、同時に代表取締役の印鑑も登録しなければなりません。この法務局で登録した印鑑が実印(代表者印)になります。なお、実印である証明として法務局で印鑑証明書を作成してもらえます。重要な契約(金銭消費貸借等)の場合には、印鑑証明書の添付と実印による押印が求められます。
印影は「代表取締役の印」となっており、丸い印鑑であることが多いので、「丸印」とも呼ばれています。実印を押すことを要求される場合は、書類に明記された内容をリスクも含め承諾したことを証明する場合と考えておけば良いでしょう。つまり、特に指定される場合を除き、基本的には見積書や請求書に実印を押すことはありません。
銀行印は、預金取引をする際に必要となる印鑑です。銀行などに印鑑を届けることによって、その印鑑が銀行印になります。印影は、一般的に会社名の他に「銀行の印」となっています。
押印で推定されることを押さえておこう
法律上、書面に印鑑が押してあった場合には、押印した人の意思で作成されたと推定されます。印鑑は他人が所持するものではないからです。そして、本人の意思に基づいて押印されたものは、民事訴訟法第228条第4項の規定により、文書が真正に成り立ったものと推定されます。
以上、印鑑の種類や印鑑の効力、見積書での印鑑の扱いについて検討してきました。印鑑の使い方を間違えると思わぬトラブルに巻き込まれることもありますので、印鑑の性質を理解した上で、慎重に取り扱うようにしてください。
見積書を電子的に発行する場合はどうする?
見積書のPDFファイルをメールで送るよう発注者から依頼されるケースもあるかと思います。書面上に直接押印したものをPDF化することもできますが、パソコンで書類を作成した場合は物理的に印鑑を押すことはできません。一度印刷して押印し、再度電子化するのも二度手間になってしまいます。物理的な押印に代わる手段として、電子印鑑を利用しても良いでしょう。
電子印鑑とは印影(印鑑を押したときにできる朱肉の跡)を模した画像ファイルです。これをWordやExcelにペーストしてPDFファイルに変換します。また、Adobe Acrobat、Adobe Acrobat Reader DCの「スタンプ」機能を使うことで、電子印鑑をPDFファイルに直接付与することも可能です。
なお、電子印鑑について詳しくは下記記事で説明しています。
見積書に押印を求められたら対応できるようにしておこう
一般的には、見積書には押印は不要です。ただ、押印をしていない場合、発注先から「押印をしてほしい」と依頼されたり、「印鑑がないんだけど」と指摘されたりする可能性もあります。そうした際には速やかに対応できるようにしておきましょう。
また、角印や担当者印を押すことで、見積書の信頼性が増します。見積書には最初から押印しておくと良いかもしれません。
よくある質問
見積書への押印はどの種類の印鑑が適切ですか?
見積書は会社として発行する書類であるため、会社の印鑑である「角印」を押印し、さらに担当者個人の印鑑を押すのが一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。
見積書に押印を求められた時の対応について
発注先から押印を求められた場合は、速やかに対応できるようにしておきましょう。角印や担当者印を押すことで、見積書の信頼性が増します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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