- 更新日 : 2024年10月17日
取引ごとに請求書を発行しないケースではインボイス制度にどう対応すべき?
インボイス制度導入では、定められた項目が記載された「適格請求書」が必要になります。しかし、中には取引ごとに請求書や領収書が発行されないケースもあるのではないでしょうか。
請求書や領収書が発行されない取引とはどのようなものか、発行されない取引でインボイス制度に対応した手続きを行うにはどうしたらよいのか、きちんと把握しておきましょう。
目次
取引ごとに請求書や領収書を発行しない主なケース
通常、物品やサービスの購入、仕入などで金銭をやり取りする場合、請求書や領収書が発行されます。しかし、中には取引ごとに請求書・領収書を発行しないパターンもあります。
家賃など継続取引の場合
家賃支払い、機器のリース料支払いなどの継続取引の場合、銀行振込・引落で支払うこともあり、別途請求書や領収書が発行されないケースが多くあります。
バス・電車運賃を支払った場合
バス・電車など公共交通機関を利用する場合、乗降時に運賃を支払っても領収書が発行されません。
自動販売機で支払った場合
ジュースなどを自動販売機で購入した場合も領収書が発行されません。
割り勘の場合
飲食店などで複数人数分の飲食代を割り勘して支払っても、個別に領収書が発行されない場合があります。
請求書が発行されない取引でインボイス制度対応を行うには?
前述のように、請求書・領収書が発行されない取引は多くあります。では、本来必要になるはずのインボイス制度に応じた適格請求書とはどのようなものか、そして請求書・領収書がない場合の仕入税額控除を行うための方法について解説します。
インボイス制度において必要な適格請求書とは
インボイス制度導入に伴い、仕入税額控除を利用するためには「適格請求書」の発行が必要になりました。適格請求書とは、以下の内容が記載された請求書です。
- 適格請求書発行事業者の名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率(8%・10%)ごとに区分した消費税額など
- 書類の交付を受ける事業者の名称
なお、適格請求書を発行できるのはインボイス登録事業者のみです。免税事業者や課税事業者であってもインボイス登録していない事業者は適格請求書が発行できません。
インボイス制度については以下の記事をご覧ください。
インボイス制度に則って仕入税額控除を行う方法
「取引ごとに請求書や領収書を発行しない主なケース」で紹介したように、請求書・領収書を発行しない取引も多くあります。そのような場合でも仕入税額控除を利用する方法を解説します。
継続取引の場合
インボイス制度では、継続取引であっても適格請求書を交付することが定められていますが、都度交付するのではなく、一定期間分をまとめて交付することも可能です。例えば、契約書等に適格請求書に入れる項目を記載して対応することもできます。この場合、「契約書自体の再締結」「適格請求書に関する部分のみ追加で交付」どちらでも構いません。また、契約書はそのままで、「6ヶ月分」など一定期間ごとに適格請求書を発行する方法も可能です。
新たな契約書を締結(もしくは追加部分を交付)した後は、取引の履歴を残すため、以下の書類を保管しましょう。
- 契約書
- 通帳
- (契約書を再締結していない場合)一定期間分の適格請求書もしくは契約書の追記部分
【口座振込】
- 契約書
- 振込明細書
- (契約書を再締結していない場合)一定期間分の適格請求書もしくは契約書の追記部分
バス・電車運賃を支払った場合
バスや電車運賃などの公共交通機関では領収書が出ませんが、1取引あたり「3万円未満」であればインボイスの交付義務が免除されています。利用した際は一定の事項を帳簿に記載していれば仕入税額控除が受けられます。
以下は領収書なしで仕入税額控除が認められる交通費の例です。反対に認められない交通費もありますので気を付けてください。
認められるもの | 認められないもの(インボイス制度に対応した領収書が必要) |
---|---|
3万円未満の下記料金
|
|
自動販売機で支払った場合
自動販売機でお金を支払う場合は「自動販売機特例」が適用されますので、3万円未満であれば請求書は不要です。ただし、一定の事項を帳簿に記載する必要があります。
自動販売機特例の対象になるものの例は以下のとおりです。
- ジュースなどの自動販売機
- コインランドリー
- コインロッカー
- 金融機関のATM利用手数料
自動販売機特例の対象となるのは「その機器だけで代金受領・資産譲渡が可能なもの」に限られます。スーパーのセルフレジ、コインパーキングの精算機などは「精算に使用されているのみ」とみなされるため、自動販売機特例の対象にはなりません。
割り勘の場合
割り勘で支払いを行い領収書がもらえない場合、その費用は仕入税額控除が受けられません。必ず1人ずつ支払った金額のインボイス対応領収書をもらってください。ただし発行者によっては「割り勘分のインボイス対応領収書は発行不可」としている場合もあるため、事前によく確認しましょう。
また、飲食店によっては免税事業者のままであるケースも考えられます。免税事業者の場合、インボイス対応領収書が発行できません。
契約書の記載を変更してインボイス対応を行う際のフロー
前述したように、家賃などの継続取引の場合、その都度適格請求書を発行しなくても構いません。ただし、契約書で以下の適格請求書に入れる項目を記載しておく必要があります。
- 適格請求書発行事業者の名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率(8%・10%)ごとに区分した消費税額など
- 書類の交付を受ける事業者の名称
なお、契約書では取引年月日を入れることができませんが、振込明細書や通帳と一緒に保管することで取引年月日を確認することができます。
また、契約書の再締結をせずに以前から締結している契約書をそのまま使うことも可能です。その際は、上記の項目を記載したものを交付し、契約書と共に保管します。
インボイス制度を理解し、請求書が発行されない取引にもスムーズに対応しよう
インボイス制度が導入されたことで、今までの経費精算とは異なる部分が多く発生しています。特に、公共交通機関の運賃や自動販売機、割り勘の精算などは経理部門の従業員だけでなく、一般の従業員も関係するため、混乱が生じることが予想されます。
スムーズな対応のためには、経理部門の社員だけでなく、全ての従業員がインボイスを理解しておくことが重要です。この機会に、経費精算について改めて社内で周知徹底することをおすすめします。
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