• 更新日 : 2023年5月19日

飲食店での領収書のルールや書き方、よくある質問を解説

飲食店での領収書のルールや書き方、よくある質問を解説

ビジネス上、取引先との打ち合わせや自社の社員の親睦を深めるといった目的で、飲食店を利用することがよくあります。かかった費用は、ビジネスとして必要なものであれば経費として計上できますが、そのときに欠かせないものが領収書です。

この記事では、飲食店が適切に領収書を発行するために、領収書の概要や書き方、注意点などを解説します。

飲食店で領収書を発行しなくてはならないケース

領収書とは、代金の受取者が支払者に対して「〇〇円(記載されている金額)を間違いなく受け取った」ことを証明するための書類です。領収書は代金の受取者が支払者に発行する義務があり、原則として発行を拒否できません。これは民法486条にも明記されています。

領収書と同じ役割を持つレシートでも、経費計上は可能できます。レシートは明細が細かく記され、かつ機械が自動的に発行するため、領収書よりむしろ信頼できるという考え方もあるようです。

しかし、感熱紙に印字されたレシートは、時間が経つと文字が見づらくなるため、証明書類として紙で保存する場合はあまり好ましくありません。

なお店舗側は、レシートをきちんと渡せば領収書を発行する義務はありませんが、お願いされた場合には領収書を発行できるようにしておくと良いでしょう。上記のような理由から、社内規定で経費計上の際に領収書を求める会社もあるからです。

飲食店における領収書の書き方

飲食店の領収書には、必ず記載しなくてはならない項目があります。それぞれの書く位置や文字の大きさは違っても構いませんが、そのうち1つでも欠けていると領収書として認められない場合もあるため注意が必要です。

ここでは領収書に書く項目を、1つずつ詳しく解説します。

領収書の日付

記入する日付は、代金を受け取った日付です。通常は領収書を発行した日と同じですが、後日領収書を発行した場合も代金の受取日を記入しなくてはなりません。これは「代金をいつ受け取ったか」が重視されるためです。

そのため、支払者から日付を空欄にして欲しいと頼まれても、空欄にはできません。もし誤った日付を記入されてしまうと、代金受取者の記録と異なるため、どちらの日付が本当なのかが問題になります。あらぬ疑いをかけられないよう、必ず記入して渡すようにしましょう。

領収書の宛名

領収書の宛名も必ず記入しなくてはなりません。個人名であれば苗字だけ、法人の場合は企業名や店舗名の場合もあります。「上様」とすることも認められています。

企業名を記入する場合は、「株式会社」や「有限会社」といった運営形態の名称も、省略せずに表記しましょう。

領収金額

領収金額は領収書において重要な項目の1つです。不正利用を防ぐため、こちらも空欄では発行しないようにしましょう。

また金額変更の不正を防止するため、金額の頭に「¥」をつけ、3桁ごとに「,」を打ち、金額の直後に「-」を記入します。

金額が大きい場合は、10万円ではなく「拾萬円」といったように漢数字または大字で書くことも不正防止につながります。領収金額を漢数字で書く方法は、下記記事で解説しています。

領収書の但し書き

但し書きとは、受け取った金額が何の代価であったかを明確にするための項目です。飲食店の場合、但し書きは「食事代として」または「飲食代として」とすることがほとんどでしょう。テイクアウトであれば「お品物代として」とすれば問題ありません。

ここでも重要なのは、空欄にしないことです。文字を記入できるスペースを空けて「代として」だけ書くことを求められた場合、不正に利用される可能性があるので注意しましょう。例として挙げた3つのうち、最も近いものを記載するようにしましょう。

領収書の発行者

領収書の発行者は、代金の受取者です。代金を受け取ったのはどこの誰なのかが明確にわかるよう、お店の屋号や支店名、住所、電話番号、代表者名などをできるだけ詳細に記載しましょう。

しかし、これらの情報を1枚ずつ手書きするのは大変です。そのような場合は、これらの情報を1つにまとめてスタンプできる、ゴム印の使用をおすすめします。ゴム印は、個人事業の場合でも作ることは可能です。

手書きであれば、個人印を押印することによって、より公式な書類に近づけられます。

収入印紙が必要な場合

領収書は、受け取った金額が5万円以上の場合は収入印紙の貼り付けが義務付けられています。5万円未満の場合は必要ありません。

収入印紙とは、税金や手数料、その他の収納金徴収のために政府が発行する証票です。領収書に記載された金額によって収入印紙の金額が決められており、5万円以上100万円以下なら200円分、100万円超200万円以下なら400円分の収入印紙を貼り付けます。

また、貼り付けただけでは剥がして流用される恐れがあるため、割り印を押すのが通例です。収入印紙は、割り印を押して初めて支払ったと認められます。

よく使う200円の収入印紙はコンビニでも販売しているため、不足しそうな場合は、できるだけ早めに補充しましょう。売上の傾向などから判断し、常に多めに用意しておく必要があります。

領収書に貼る収入印紙について、詳しくは下記記事で紹介しています。

飲食店での領収書に関する注意点

飲食店で領収書の発行が求められるのは、多くが企業や個人事業における経費として計上するためです。そう考えると領収書には、不正使用を招くような発行や、誤った発行をしないような注意が求められます。

ここでは、重要書類としての領収書の発行に関わる注意点を確認しておきましょう。なお、領収書についてより詳細に知りたい、書き方がわからないといった場合は、下記の記事を参考にしてください。

領収書とレシートを両方発行してはいけない

飲食店を利用する顧客の中には、領収書とレシートどちらも受け取りたいと希望する方もいます。しかし領収書とレシートはどちらも同じ「受け取り(支払い)金額の証明書」です。両方渡してしまうと金額を二重に受け取ったと捉えられかねないため、どちらか片方だけ渡すようにしましょう。

1つの取引に対して領収書とレシートを渡したことが明らかであれば、最悪の場合、有印私文書偽造に抵触する可能性もあります。なかには「他のお店では両方もらえた」とクレームをつける顧客もいるかもしれません。その場合は、法に触れる可能性があることを示し、丁寧にお断りしましょう。

領収書の再発行をする義務はない

飲食店は、顧客から求められた場合に、領収書を発行する義務があります。しかし、一度発行した領収書について、なんらかの理由によって再発行を求められても、応じる義務はありません。紛失したり損傷したりといった理由があった場合でも、一度発行していれば二重発行に該当します。不正使用のリスクもあるため、再発行は断るのが賢明です。

しかし飲食店の場合、サービス業でもあるため顧客に求められるとなかなか断りづらく、結局は再発行する場合もあります。その場合、不正使用されないよう領収書に「再発行」と明記しましょう。

クレジットカード払いは領収書を発行しなくてもよい

クレジットカード払いに対する領収書は発行する必要がありません。理由は次の通りです。

顧客にとっては、現金でもクレジットカードでも支払った事実は同じですが、飲食店にとっては大きな違いがあります。現金払いの場合、代金を間違いなく目の前の顧客から受け取りますが、クレジットカード払いではクレジットカード会社から受け取ります。つまり、直接代金を受け取っていない以上、領収書を発行する必要がないわけです。

しかし、それでも領収書の発行を求められるときはあります。どうしてもというときは、但し書きに「クレジットカードでお支払い」と明記してお渡ししましょう。ここで注意が必要なのは、クレジットカード払いに際して発行する領収書は、税法上の領収書とみなされないことです。そのため、5万円以上の金額でも収入印紙を貼り付ける必要はありません。

一方、チャージ式電子マネーは現金と同じと扱われるため、領収書の発行は義務です。現金と同じように取り扱う必要があります。

項目を空欄のまま発行しない

繰り返しになりますが、領収書は項目の一部を空欄のまま発行しないよう注意が必要です。たとえば金額が空白の領収書は、実際に支払った金額以上の費用計上ができます。日付も、決算直前に支払った金額を遅らせ、翌期の費用にするという不正使用が可能です。他にも但し書きが変われば費用の科目を誤り、受取者が変われば支払い先が事実と違ってしまいます。

飲食店では顧客からさまざまな要求をされることがありますが、領収書についていえば白紙、または一部項目が空白の領収書を発行する義務はありません。万が一不正使用された場合には、店舗側が疑われる可能性もあります。空欄のある領収書は、発行しないことが大切です。

飲食代が5万円以上の領収書は収入印紙が必要

飲食代として受け取る金額が5万円以上の場合は、領収書に収入印紙を貼り付け、割り印を押して渡さなくてはなりません。もし貼らずに渡してしまうと、印紙税法第20条に抵触し「過怠税」が課せられます。

過怠税は納めるべき税金を納めなかったときに課せられる税金で、本来納めなくてはならなかった金額の3倍を納めなくてはなりません(最低額は1,000円)。これは故意ではなく過失であっても同様です。

さらに、収入印紙には割り印を押して初めて支払ったと認められるため、正しく割り印が押されていない場合も同様である点に注意しなくてはいけません。

割り印として、収入印紙の端に斜めに二本線を入れる方もいますが、これは正しい割り印ではありません。割り印は収入印紙と領収書の両方にまたがった、かつ企業名または担当者名がわかる形による押印が必要です。印鑑がない場合はボールペンなどでの直筆でも構いません。

また収入印紙と割り印は、レシートにも必要であることも覚えておきましょう。

参考:国税庁 印紙を貼り付けなかった場合の過怠税

領収書の控えは一定期間保管すること

領収書は企業の決算書や個人事業の確定申告の資料となる重要な書類です。会計内容を詳しく調査するときは、すべてを取引先の情報と照合して整合性を確認するため、決算や確定申告が終わっても一定期間保管するよう定められています。

保存期間は法人で7年間、青色申告個人事業主が7年間(前年の所得が300万円以下の場合は5年間)、白色申告の個人事業主でも5年間です。ただし、これらは領収書の発行日からの期間ではなく、決算書または確定申告書の提出期限の翌日からの期間なので注意しましょう。

また、領収書は電子帳簿保存法により電子データでの保存も認められています。いざ税務署が調査に来る際に慌てないよう、日頃から意識して管理することが大切です。

領収書の内容に不備があった場合

飲食店は忙しさに波のある業種です。忙しいときほど領収書の発行が求められることも多く、慌てて発行したため内容に不備のある領収書を渡してしまうことも十分あり得ます。

もしそのような指摘を受けても、安易に二重線で書き直したり、修正液や修正テープで訂正してはいけません。このような方法で訂正された領収書は、正式な書類と認められないためです。不備のある領収書は、再発行で対応します。

このとき不備のある領収書を捨ててはいけません。きちんと回収し、連番が同じ控えとセットにして、わかりやすく大きく「X」をつけ保管しましょう。

金額が5万円以上の領収書なら、不備のある領収書にも収入印紙と割り印もあるはずですが、再発行する金額も5万円以上なら新たに収入印紙を貼り付け、割り印を押して渡します。

領収書の発行に関して対応すべきこと、すべきでないこと

飲食店はさまざまなお客様が利用するため、領収書についてもとっさに理解できない変わったことを要求される場合があります。しかしどのような要求に対しても、領収書にまつわる原則に則って判断することが大切です。

ここでは、領収書の発行に関して対応すべきこととすべきでないことの例を解説します。

領収書を後日発行して欲しい

なんらかの事情で、支払いは今日でも領収書を後日発行して欲しいという場合、領収書は要望に沿って発行できます。

ただし、領収書の日付はあくまで代金を受け取った日であって、発行した後日などそれ以外の日付にはできません。これは領収書が、代金の支払いの事実を証明する書類であるためです。

代金を受け取ったスタッフとは違うスタッフが発行する場合は、間違いなく受け取ったことを確認し、但し書きに後日発行したことを記載しておきましょう。

飲食代を割り勘して領収書を発行して欲しい

領収書では原則として、分割しての発行が可能です。たとえば3万円を6人で支払う場合、1人が2万円支払って残り5人が2,000円ずつでも、全員で5,000円の6等分でも構いません。

つまり、誰からいくら受け取ったのかが重要なポイントです。どちらの場合でも6人全員にそれぞれ支払った金額が間違いない以上、それぞれ割り勘した金額で領収書を発行できます。上記のうちの2万円だけの領収書も、間違いなく支払った金額であることから発行は可能です。

また「収入印紙が必要な5万円以上の食事代を分割すると違法になるのでは」と思う方もいるかもしれませんが、とくに飲食店が発行する領収書であればその可能性はほとんどないでしょう。

領収書の分割が違法になるケースは、もともと固定資産とすべき支払いを分割し、費用として計上しようとする場合です。一般に飲食店では、固定資産を売買することはありません。違法となる可能性はほぼないといってよいでしょう。

日付や但し書きを空欄にして欲しい

領収書を発行するときよくあるケースが、日付や但し書きを「空欄にして欲しい」というものです。しかし、これは法律違反になりかねないため、実施してはいけません。もし顧客に頼まれても、丁寧にお断りしましょう。

飲食店でも領収書は適切に発行することが大切

飲食店は、食事と共に会話や雰囲気を楽しめる憩いの場です。雰囲気にまかせて一部の顧客は、領収書の金額を空欄にして欲しい、領収書とレシートの両方を発行して欲しいなどと要求してくるかもしれません。飲食店としては、都度できることとできないことを適切に判断することが大切です。

領収書が不正利用されれば、発行した側も罪に問われる可能性があります。割り勘や支払額未満の金額の領収書を発行できることから、どのような場合に発行してよいかは法律に則って判断しなくてはなりません。求められる頻度が高いからこそ、飲食店の領収書は適切に発行することが大切です。

よくある質問

領収書は必ず発行しなければならないの?

民法486条に定められた代金を受け取った側の義務とされているため、要求があれば必ず発行する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

飲食代を割り勘で領収書発行はできる?

代金を分割し複数の領収書として発行できます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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