- 更新日 : 2024年10月17日
請求書をメールで送付する際の文例や郵送時の送付状の書き方を解説
ビジネスを進める上で不可欠な文書の1つに、請求書があります。請求書の形式や送付方法、管理方法にはさまざまなものが考えられます。そのため、請求書はメールで送付しても良いのか、原本も郵送する必要があるのかなど、疑問も多数出てくるでしょう。
この記事では、請求書をメールで送る際の法律上の扱いや送付方法などについて解説します。
目次
請求書はメールで送付しても良い?
基本的に請求書をメールで送付することは法的に問題ありません。そもそも請求書とは、金額や振込先等の必要事項について記載した、代金等の支払いを求める書面です。法的には、取引先と紛争が生じた際に取引関係の存在を証明する書面になり得ます。
しかし、請求書について直接的に規律する、あるいは義務付ける法律はありません。そのため、請求書をメールで送付することも法的な問題はないと言えます。
もっとも、請求書をメールで送付する際には、以下のとおり留意すべき点があります。
メールで送る前に取引先の承諾を得るべき
請求書をメールで送付する際には、送付前に取引先に承諾を得ましょう。
法律上、請求書は発行が直接的に義務付けられているわけではなく、送付方法も基本的には自由です。しかし、後述する電子帳簿保存法との関係で、取引先においては請求書を一定の方法で保存する義務があります。そのため、取引先への配慮もしくはビジネスマナーとして事前に承諾を得ましょう。
押印形式も確認する
法的には請求書に押印は必要ありません。しかし、紛争時に取引関係の証明に請求書を用いる際には、発行元の押印によって証明力が高まることがあります。
そのため、メール送付の場合は押印形式について確認する必要があります。1つには紙の請求書に実際に押印し、スキャナなどでPDFデータにする方法があります。しかし、手間やコストを考慮すると、メール送付の場合、データに押印できる電子印鑑の方が便利でしょう。
メール以外での請求書の送付方法
請求書はメール以外にも様々な方法で送付できます。郵送やFAXで送るときのマナーや、各手段のメリット・デメリットについて説明します。
郵送で送付
請求書を郵送するときは、送付状をつけると丁寧な印象を与えられるでしょう。請求書は「信書」にあたるため、封書やレターパックなど信書の郵送に用いても良い方法で送付しましょう。
内容がわかるように封筒の表に「請求書在中」と記載しておくと親切です。また、表には送り先の住所と氏名、裏には自社の住所・氏名を明記しておきます。
郵送のメリットとして、改ざんしづらいことが挙げられます。社印を押し、控えを手元に残しておけば、改ざんはより難しくなります。
デメリットとしては、手間や送料がかかること、送り先に到着するまでに数日かかることが挙げられます。即時に送りたいときは、FAXやメール添付のいずれかの手段を用いると良いでしょう。
FAXで送付
郵送では請求書の原本を送付できますが、FAXではコピーしたものを送ることになります。そのため、郵送と比べると簡易的な印象を与える点に注意が必要です。取引先から「今すぐ送付してほしい」「FAXで送ってほしい」とリクエストがあったときのみ、FAXを利用するほうがよいでしょう。
即時に送付できることはFAXのメリットですが、送付先のFAX機の状態によっては文字がかすれたり、一部が消えたりするリスクがあります。
また、FAX番号を間違うと取引先に届かないだけでなく、機密情報を外部に漏らしてしまうことにもなりかねません。FAX送信後に電話などで、受け取ったか確認するようにしましょう。
送付状は必要?
送付状はなくても問題ありませんが、あると丁寧な印象を与えます。請求書を郵送・FAXするときは、送付状も添付するようにしましょう。手書きでもよいですが、パソコンで作成することが一般的です。
送付状に「請求書1枚」のように一緒に送る書類の種類や枚数を記載すれば、書類の抜け漏れを確認しやすくなります。請求書などの重要な書類を送るときは、送付状を忘れずに添付しましょう。
送付状のテンプレート
送付状には、凝った文章を記載する必要はありません。あいさつの定型文と同封する書類の種類・枚数、取引先の住所と名称、自社の住所・社名を記載すれば完成します。
送付状の無料テンプレートは、以下からダウンロードしてお使いください。自社の住所・社名を入力した状態で保存しておくと、さらに便利にご利用いただけます。
請求書をメールで送付する場合に必要な項目は?
請求書を作成する際には、PDF形式など改変が難しいファイル形式にして、一定の事項について記載します。
まずは、以下の内容について記載しましょう。
- 請求者の名前
- 取引年月日
- 取引内容
- 取引金額
- 請求書の交付を受ける事業者名
以上の事項は、取引先が支払いにあたって確認したい内容であるのみならず、後から取引を特定するのにも有用なものです。各項目の具体的な書き方は、下記記事で解説しています。
また、新たに始まるインボイス制度において適格請求書(インボイス)を発行する場合、上記事項に加えて、以下の記載が求められます。
- インボイス発行事業者の登録番号
- 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
- 消費税額等
インボイス制度について詳しくは下記記事を参考ください。
請求書をメールで送付する際の件名・本文の例
請求書をメールで送付する場合には、件名や本文が重要です。これは、郵送の場合に送付状もあわせて送付するのに対し、メールの場合は件名や本文に送付状の役割を持たせるためです。
件名には「請求書」という文言といつの取引か判別できる情報を入れます。本文は、原本送付の有無に合わせて以下のとおり使い分けましょう。
請求書をPDFでメール添付し原本は送らない場合
請求書をメールで送付し原本を送らない場合には、請求書のPDFファイルをメール添付して送付することが重要です。支払いトラブルのリスクヘッジや法的な観点から、請求書はPDFファイルとして送付するとよいでしょう。この点の詳細については後述します。
請求書をメールで送付し原本は送らない場合の本文の文例は以下のとおりです。
【メール本文の文例】
件名:【請求書】◯月分請求書送付のご案内(●●株式会社)
○○株式会社 ××部
△△△△様
平素より格別のお引き立てをいただき、御礼申し上げます。
●●株式会社■■部の▲▲▲▲と申します。
XXのお取引に関して、○月分請求書をメールにて送付させていただきます。
ご査収の程、よろしくお願いいたします。
【添付内容】
- ご請求書(No.●●-●●).pdf 1通
なお、誠に勝手ながら、振込手数料はお客様にてご負担いただきますようお願いいたします。
添付ファイルが開封できないなど不都合な点やご不明な点がございましたら、お手数をおかけいたしますが、ご一報いただきたく存じます。
また、請求書原本郵送の必要がございましたらご連絡ください。
何卒よろしくお願いいたします。
請求書の原本も郵送で送る場合
取引先企業の中には、保管方法の関係や商習慣などから原本を必要とする場合があります。そのため、取引先企業が希望する場合には、請求書をメールで送付した後に原本も郵送しましょう。
請求書をメールで送付し原本も郵送する場合のメール本文の文例は以下のとおりです。
【メール本文の文例】
件名:◯月分請求書送付のご案内(●●株式会社)
○○株式会社 ××部
△△△△様
いつもお世話になっております。
●●株式会社■■部の▲▲▲▲と申します。
XXのお取引に関して請求書を添付しております。ご査収のほどよろしくお願いいたします。
【添付内容】
- ご請求書(No.●●-●●).pdf 1通
なお、請求書原本もあわせて郵送させていただきました。
本請求書中に記載の振込先へ、●年●月●日までにお振込みくださいますようよろしくお願い申し上げます。
また、添付ファイルが開封できないなど不都合な点やご不明な点がございましたら、お手数をおかけいたしますが、ご一報いただきたく存じます。
何卒よろしくお願いいたします。
請求書をメールで送付する際の注意点
請求書をメールで送付する場合には、法律上の観点に加え、データとしての取り扱いかたや送付方法について、いくつか注意すべき点があります。
電子帳簿保存法改正への対応
法的な観点から、電子帳簿保存法の2022年改正に注意する必要があります。これまで国税関連帳簿・書類については「紙保存」が原則、「電子データ保存」が例外とされてきましたが、同改正では「電子データ保存」を重視しています。
実務的に重要な内容としては以下の項目が挙げられます。
- 電子帳簿保存の事前承認手続の廃止
- スキャナ保存時のタイムスタンプおよび検索要件の緩和
- 適正事務処理要件の廃止
- 電子取引における書面保存の廃止
詳細は以下の記事を参照してください。
請求書はPDFファイルとして送る
請求書をメールで送付する際は、送付データをPDFにしましょう。
請求書データはWordやExcelで作成するケースが多いでしょう。しかし、WordファイルまたはExcelファイルをそのまま送付すると、相手が添付ファイルの開封時に誤って編集してしまうなど、トラブルにつながりかねません。
請求書データをメールで送付する際には、簡単に編集ができないように設定したPDFデータを添付するとよいでしょう。
メールで送る場合は送付状の添付はいらない
メールで請求書を送付するときは、本文中にあいさつや添付書類名を記載するため、送付状を添付する必要はありません。
メールの件名に【請求書】のように添付書類名を記載しておくと、メールを開封する前から内容がわかり、より親切です。
PDF化した請求書のファイル名はどう書く?
請求書も国税関係書類に該当します。したがって、各税法上、受領者には一定期間の保存義務があります。たとえば、消費税課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、請求書を7年間保存する必要があります(消費税法施行規則50条)。
そのため、請求書データを送付する際は、取引先も管理・保存しやすいようにファイル名に配慮が必要です。たとえば、電子帳簿保存法の保存要件 に合わせて「取引年月日」「取引金額」「自社名」を含むと良いでしょう。請求書をメールなどで送信する際のファイル名については、下記記事で詳しく解説しています。
PDF化した請求書の管理・保存方法
請求書は取引関係を証明する書類であり、各税法上、一定期間の保存が義務付けられています。適切に管理されていないと、仕入税額控除が受けられないなどの問題が生じます。
そのため、検索しやすい状態で管理・保存しておくことが重要です。
たとえば以下のような方法があります。
- 月ごとにフォルダを作成する
- 取引先ごとにフォルダを作成する
- 請求書管理システムを利用する
請求書の管理・保存方法の詳細については、以下のページをご参考ください。
請求書をメールで送るメリット
請求書をメールで送付することには、次のようなメリットがあります。
- 紙媒体の請求書にかかる紙、インク、郵送コストのカット
- 取引相手から請求書の再発行や修正を求められた場合に迅速な対応が可能
- 電子印鑑を用いることで押印・承認のための出社が不要
- 社内のペーパーレス化の推進
請求書管理システムを用いることで、定期的な請求書送付を自動化することも可能です。
請求書の電子化・ペーパーレス化のメリットについては以下のページをご参考ください。
請求書のメール送付では保管の仕方に注意
請求書をメールで送付することは、法的に問題はありません。ただし、送付する際には、法令上の保存要件と、取引先とのスムーズなビジネス遂行などでいくらか注意が必要です。
請求書は国税関係書類の一種ですから、法令上、事業者に管理・保存が義務付けられています。とくに、2022年電子帳簿保存法改正との関係で、メール送付の場合には請求書データを電子データのままの状態で保存しなければなりません。
今後は請求書管理システムの活用なども重要となるでしょう。
よくある質問
請求書はメールで送付しても良い?
請求書はメールで送付しても法律上問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
請求書をメールで送付する際の注意点は?
請求書をメールで送付する際には、メールの件名・本文の内容を適切な形にし、編集できない形のPDFファイルで送付することに注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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