- 更新日 : 2024年10月17日
リバースチャージ方式とは?消費税法改正で課税方式が変わった!
平成27年(2015年)4月の消費税法改正では新しく「リバースチャージ方式」という課税方式が一部の取引に適用されることになりました。
ここではこのリバースチャージ方式の仕組みを解説するとともに、消費税法改正などの他の内容についても簡単に説明します。
目次
リバースチャージ方式とは?
取引 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
(1) | 国外取引:不課税 | 国内取引:課税 |
(2) | 国内取引:課税 | 国外取引:不課税 |
(3) | 国内取引:課税 | 国外取引:不課税 |
(4) | 国外取引:不課税 | 国内取引:課税 |
(5) | 国内取引:課税 | 国内取引:課税 |
参考:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について|国税庁
リバースチャージ方式が適用される取引
リバースチャージ方式が適用される取引は「国外事業者が行う国内事業者向け電気通信利用役務の提供」とされています。平成27年4月の消費税法改正ではこの「国外事業者」の定義にも変更が加えられました。
リバース(reverse:逆)、チャージ(charege:支払)は、本来と逆の立場の人が支払うという意味になります。本来は、国外事業者が国内事業者から受けた消費税を申告納税するべきところですが、逆の立場であるサービスの提供を受けた国内事業者が消費税の申告納税をするという意味になります。
上図は判断基準の変更により生じた課税関係とその変化の一覧です。
「事業者向け」とは企業間で取引されることを示し、「電気通信利用役務」とはインターネットを通じて提供されるサービスを指します。
例えば電子書籍や音楽配信サービスのほか、クラウドサービスやネット広告の配信などです。「国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供」には広告の配信などのほか、芸能・スポーツ等の配信などの役務の提供も含まれます。
リバースチャージ方式の課税方法
リバースチャージ方式では納税義務者が、「国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供」を受ける国内事業者となります。
本来消費税は「売った側」が消費税を受け取って、その消費税について納税義務を負います。しかし当該役務の提供の場合は、「買った側」すなわち国内事業者が申告・納税の義務を負うのです。対して国外事業者は当該役務の提供を受ける国内事業者に当該取引が「リバースチャージ方式」の対象である旨の表示をしておかなくてはなりません。
リバースチャージ方式「以外」の課税方法
「国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供」以外の取引(電子書籍や音楽配信サービス)については「国外事業者申告納税方式」が取られます。
つまり国内事業者間の取引、国内事業者と消費者の取引、国外事業者と国内事業者の間で行われる、消費者向け電気通信利用役務の取引で適用されるのは「国外事業者申告納税方式」です。
この課税方式での納税義務者は「電気通信利用役務の提供」を行った国外事業者。国外事業者は日本の税務署に申告・納税する義務を負うとともに、事業者免税点制度(前々年または前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下の場合は非課税)の対象にもなります。
リバースチャージ方式の「経過措置」
リバースチャージ方式はしばらくの間、一般課税による申告で課税売上割合が95%以上である場合、簡易課税制度が適用される事業者は、経過措置が取られています。したがって多くの中小事業者にとっては、しばらくの間影響がありませんが、該当する場合や今後本格的に適用された場合に備えて、理解を深めておく必要があります。
消費税法などその他の改正内容等
- 消費税及び地方消費税率の引き上げやインボイス制度等
- 輸出物品販売場(免税店)制度
- 登録国外事業者制度のインボイス制度への移行とプラットフォーム課税
- 芸能・スポーツ等の役務の提供の課税方法
消費税及び地方消費税率の引き上げやインボイス制度等
消費税及び地方消費税率が8%から10%へと引き上げられた時期は平成31年(2019年)10月1日であり、軽減税率の導入もなされ複数税率化されました。
また、令和5年10月1日からは消費税のインボイス制度が開始されました。正しく消費税を計算し、適正な課税の確保に向けた本格的な仕組みが始まっています。
輸出物品販売場(免税店)制度等
ショッピングセンターなどの特定の商業施設内に免税手続きカウンターを設置する事業者に免税販売手続きを代理させることができる「手続委託型輸出物品販売場」制度があります。承認免税手続事業者とは所轄税務署長の許可または承認を受けた業者のことです。
輸出物品販売場で免税対象品を購入した外国人旅行者の中には、購入後、国外に持ち出すことなく国内で横流しをするなどの不正も見られました。そこで令和7年度税制改正において、国内での横流し等の不正に対応する方針となっています。
登録国外事業者制度のインボイス制度への移行とプラットフォーム課税
「国外事業者が行う電気通信利用役務の提供」のうち「消費者向けの電気通信利用役務の提供」を行っているものに関しては、国税庁に登録された国外事業者から提供される当該役務のみが仕入税額控除の対象となっていました(登録国外事業者制度)。
この登録国外事業者制度は、令和5年10月以降、消費税のインボイス制度に移行されました。(登録国外事業者制度の廃止)これにより、従前の登録国外事業者においてはインボイス制度における登録番号を請求書に付すことになりました。
参考:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について|国税庁
また、令和6年度税制改正により、国外事業者が「消費者向け」の電気通信役務の提供を行った場合は、デジタルプラットフォームを介するプラットフォーム業者が国外事業者に代わって消費税を納めることになりました。これは、「プラットフォーム課税」と呼ばれる課税方式です。対象となるプラットフォーム業者は、指定要件を満たした場合に届出書が必要となります。この改正は令和7年4月1日以後に行われる電気通信役務の提供について適用されます。
参考:消費税のプラットフォーム課税について|国税庁、「消費税のプラットフォーム課税について」
芸能・スポーツ等の役務の提供の課税方法
国外事業者が国内において行う映画や演劇の俳優、音楽家などによる役務の提供を「特定役務の提供」と呼ぶことになっています。前述の通り、この「特定役務の提供」についてはリバースチャージ方式が適用されます。
参考:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について|国税庁、
「国外事業者が行う芸能・スポーツ等に係る消費税の課税方式の見直しについて」
消費税の改正にはご注意を!
リバースチャージ方式、プラットフォーム課税などとあまり聞きなれない用語が多い消費税の制度ですが、いずれも適正に消費税が納税されるために導入されたものです。
令和6年度においても、リバースチャージ方式の経過措置は継続中であり、多くの企業が関係するものではありません。しかし、グローバル化が進み、国境をまたぐ取引が増え続ける中で消費税を正しく徴収する仕組みも理解しておきましょう。
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