- 更新日 : 2024年10月17日
領収書発行後に返金が発生したらどうする?対応や書き方を解説
ビジネスでの取引では、領収書を発行した後、さまざまな理由から返金しなくてはならない場合があります。そのとき問題になるのが、その後の対応と領収書の書き方です。
返金には全額返金だけでなく、相殺後の差額のみの返金もあります。ここでは、それぞれのケースに必要な対応や領収書の書き方を見ていきましょう。
目次
領収書発行後に返金が発生するケースとは?
領収書を発行した後、さまざまな事情によって返金しなくてはならなくなることがあります。その際、問題になるのが領収書の取り扱いです。
ここでは、返金が発生したときの領収書の、2種類の取り扱い方法を解説します。
取引を取り消して返金するケース
1つ目は、取引自体を一旦取り消し、受け取ったお金を払い戻しする方法です。この場合、誤りのある売上をゼロに戻すため、先に発行した領収書を回収し、利用金額の全額を返金します。
これは、買った商品が正常品ではなかったが、代わりに渡せる同じ商品がないためやむを得ず元の商品の返品を受け、売上を取り消す場合などに用いられる手続きです。元の売上は取り消されますが、その証拠として領収書は、手元にある控えと合わせて保管しなくてはなりません。回収した領収書が「返金の証拠」になるためです。
もし、あらためて金額の異なる別商品を買う場合は、別の売上として計上し、新しい領収書を発行して渡します。
金額の誤りを訂正するため相殺した差額だけ払い戻すケース
もう1つは、領収書の金額が本来の金額より多かった場合の措置で、これらの金額を相殺した差額分だけを払い戻す方法です。
たとえば4万円で売り渡した商品が、本来は3万円だった場合を考えてみましょう。一度は4万円で売り上げているため、4万円の領収書を発行しました。1万円を返金しなくてはなりませんが、この場合は逆に、売り渡した相手から差額1万円の領収書を受け取る必要があります。
相手が業者または企業であれば領収書を発行できるかもしれませんが、一般的な消費者としての顧客だった場合、通常領収書を持ち歩いているケースは少ないでしょう。
相殺した差額だけを返金する方がスマートに思えるかもしれませんが、領収書発行の観点でいえば、一旦全額を返金し、改めて正しい金額を支払ってもらう方がシンプルかつスマートといえるでしょう。
領収書がない場合は原則として返金はできません。しかしビジネス上、そういうわけにはいかないケースも多いでしょう。その際は、別途「返金受理書」に記入してもらえば、返金できます。これは返金受理書が、領収書などと同様、返金をしたことを証明できる会計上の証憑となるためです。
返金が発生した際の領収書の書き方
領収書は「記載している金額を間違いなく受け取った」という証明書です。全額返金であれば、領収書を回収すれば問題ありません。しかし、一部返金の場合は受け取った金額が変わってしまうため、領収書を何らかの方法で修正する必要があります。
ただし、領収書はビジネス上非常に重要な書類の1つであるため、金額の訂正は認められません。ここでは返金する際の領収書の書き方、取り扱い方法を解説します。
領収書の金額は訂正できないため再発行で対応する
たとえ金額が間違っていたとしても、一度発行した領収書の金額は、ビジネス上のマナーや不正防止の観点から、二重線や訂正印を使った訂正や、修正ペン、修正テープを使った修正をしてはならないとされています。
これは訂正または修正された領収書を受け取る立場で考えるとわかりやすいでしょう。認められるなら、受け取った側が修正し、金額を水増ししやすくなります。発行元と突き合わせれば金額が違うとすぐにわかりますが、問題はそれまで不正がまかり通る可能性が高まる点です。
領収書はこのような不正防止のためにも、訂正や修正ではなく、一旦回収し再発行で対応する必要があります。
領収書を回収し全額払い戻すとわかりやすい
返金など現実の処理としても、領収書を回収した後の全額払い戻しはとてもわかりやすく、簡単な方法です。返金する金額は領収書と同じであるため、確認する際にも金額が「同じかどうか」を判断するだけで済みます。余計な計算など必要ありません。
一方相殺後の差額を返金する場合は、相殺する計算と計算結果が間違いないことを確認してもらった後、さらに返金金額分の領収書を相手から受け取ることになります。通常、一般的な消費者は領収書を発行する準備はしていません。手続きを速やかに済ませたければ、こちらで白紙の領収書を用意し金額と日付、受け取る人の住所や氏名を記入してもらうといったさまざまな手間がかかります。
わかりやすくシンプルに済ませられるのは、領収書回収による全額返金でしょう。
差額返金では返金受理書を発行する
差額を返金する場合、「返金受理書」を作成し、返金の証明書として保管するのが一般的です。領収書とは種類の異なる書類にすることで、仕入や経費などの領収書と区別しやすくなります。
返金受理書に記載する項目は次の通りです。
- 発行日:返金した日と同じ日付
- 発行者情報:返金元の名前や企業・店舗名、住所、連絡先など
- 受取人情報:返金先の名前や住所、連絡先など
- 金額:返金した金額
- 但し書き:返金した理由や対象の商品・サービスと金額の内訳など
返金受理書は、領収書や請求書などと同様、お金の動きを証明する会計上重要な書類です。破損や紛失などないよう、きちんと保管しましょう。
一般顧客への返金の書類に収入印紙は不要
通常、50,000円以上の売上(税抜き)で発行する領収書には、収入印紙を貼り、割り印が押されていなくてはなりません。
では、差額返金の場合にこちらの受け取る金額が50,000円以上だった場合、先方の負担による収入印紙の貼り付けが必要なのでしょうか。
結論としては必要ありません。収入印紙の貼り付けが必要なのは、該当する取引を事業として行っている場合に限られます。ここでいう返金は営業活動ではないため、印紙税は非課税、つまり収入印紙の貼り付けは必要ありません。
領収書がない場合の返金はできる?
なかには商品に不備があり返金を求められるとき、領収書がないケースもあり得ます。領収書がなければ正確な金額を証明できず、原則として返金はできません。しかし実際のビジネスの現場では、それで済まない場合もあります。ここでは領収書がない場合の返金の可否とその理由を解説します。
返金は領収書と引き換えが原則
領収書がなければ、支払った金額は証明できません。店舗での販売価格も状況証拠にすぎず、別の店舗で買った商品である可能性もあります。そのため、返品する商品現物があったとしても、返金はやはり領収書と引き換えが原則です。
なかには「ここでしか売っていない商品なのだから」と買ったことを主張される場合があるかもしれません。そうなると問題は「いくら受け取ったのか」です。価格が変わっていなければ状況でいえば受け取った金額は推定できます。しかし「確たる証拠」がないのは同じです。
返金はやはり、領収書の回収がなければ難しいでしょう。
返金される側が領収書を発行すれば返金は可能
返金を断った結果、SNSなどで風評被害を被るのも避けたいところです。したがって、状況から判断して金額も買った日付も間違いないだろうと考えられる場合は、返金するのが得策でしょう。
ただし、返金した事実の証拠は必要です。相手に返金金額分の領収書を発行してもらう、またはこちらが用意した返金受理書に記入してもらうことで返金には応じることもできます。
返金は領収書との引き換えが原則
領収書を発行した後の返金には、2つの方法があります。1つは取引を一旦ゼロに戻すため領収書を回収して記載されている金額を返金する方法、もう1つは本来の金額との差額だけを返金する方法です。どちらにするかは自由ですが、どちらかといえば前者の方が、処理が簡単でわかりやすいというメリットがあります。
返品は領収書との引き換えが原則です。ただしビジネス上、断ることが難しければ、相手から領収書または返金受理書を受け取り、証拠として残せば返金はできます。
ビジネス上の取引と会計の原則を両立するのは、ときに簡単ではありません。どちらか一方に執着するのではなく、状況を見てそのときの最善の方法を採用する必要があるでしょう。
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