- 更新日 : 2025年2月5日
適格請求書とは?標準税率10%のみのフォーマットは?書き方や注意点も解説
インボイス制度対応には、適格請求書が必要です。では、標準税率10%のみでも適格請求書は必要なのでしょうか?
標準税率10%のみの適格請求書のフォーマットが知りたいという方に向けて、本記事では標準税率10%のみの場合のフォーマットや書き方、書く際の注意点について解説します。
目次
適格請求書とは?
まずは、適格請求書についておさらいしておきましょう。
インボイス制度対応には適格請求書が必要
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の方式です。インボイス制度に対応するには、適格請求書を発行する必要があります。
適格請求書とは、適用税率や消費税額などが記された請求書や納品書のことです。必要項目がすべて記載されていれば、適格請求書として交付できるようになります(手書き/電子問わず)。正しい方式で作成されていない場合、仕入税額控除が原則受けられなくなるため注意しましょう。
適格請求書と区分記載請求書の違い
区分記載請求書とは、インボイス制度導入までの経過措置として採用された請求書です。それぞれ、交付義務や記載項目や、交付可能な事業者などに違いがあります。
適格請求書と適格簡易請求書の違い
適格簡易請求書(簡易インボイス)とは、インボイス制度において仕入税額控除を受けるために保存が義務付けられている書類のことです。適格請求書の記載内容を簡略化したものを指します。
適格請求書と適格簡易請求書の違いは、次のとおりです。
- 適格請求書:受領者氏名や名称の記載はマスト。適用税率・消費税額両方の記載が必要
- 適格簡易請求書:受領者氏名や名称の記載は不要。適用税率・消費税額は、どちらか1つでOK
標準税率10%のみでも適格請求書は必要
適格請求書は、標準税率10%のみでも必要なのでしょうか?消費税率が10%のみの場合でも、取引先から求められた場合は交付義務があります。その場合、合計額の記載は不要です。
次項で標準税率10%のみの適格請求書のフォーマットについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
標準税率10%のみの適格請求書のフォーマット
適格請求書のフォーマット(様式)自体は決まっていません。そのため、自社のフォーマットで発行することが可能です。ただし、記載項目に不備があった場合、適格請求書として認められないため注意しましょう。
経理担当者であれば誰でも発行できるように、社内でフォーマットを統一しておくとスムーズな運用を行えるでしょう。以下は、標準税率10%のみの適格請求書のフォーマットです。こちらを参考に作成してみましょう。
請求書
請求書No.○○○○○○○○○
○○株式会社 御中
○年○月○日
○○○○株式会社
住所 ○○○○○○○○○○○○
電話番号 03-○○○○-○○○○○
登録番号 T○○○○○○○○○○○○○
ご請求額(税込) 22,000円
取引年月日 | 品名 | 単価 | 数量 | 金額 |
---|---|---|---|---|
○月○日 | △△ | 11,000 | 1 | 11,000 |
○月○日 | ×××× | 5,500 | 1 | 5,500 |
○月○日 | ■■■■■ | 5,500 | 1 | 5,500 |
合計 | 22,000 | |||
10%対象 | 20,000 | 消費税2,000 |
支払先:○○銀行△支店 普通預金○○ ……
支払期日:○月○日
標準税率10%のみの適格請求書の書き方
あわせて、標準税率10%のみの適格請求書の書き方についても理解しておきましょう。適格請求書には、以下の項目を入れます。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称
- 登録番号
- 取引内容
- 取引年月日
- 税率別に分けて合計した対価の額および適用税率
- 税率別の消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
最後は、項目漏れがないようにしっかりチェックしましょう。
適格請求書を発行するときの注意点
最後に、適格請求書を発行するときの注意点を紹介します。注意したいケースとしては、次のようなものがあります。
- 標準税率の10%と軽減税率の8%が混在しているとき
- 単一税率のみを請求するとき
標準税率の10%と軽減税率の8%が混在しているとき
税率の違いを明確に示す必要があるため、注意が必要です。その際、違いがわかるように、税率別に請求書を分けることも検討しましょう。もし1枚の請求書に両方を含めるのであれば、税率別に違いがわかるようにすることが重要です。
単一税率のみを請求するとき
消費税が標準税率の10%のみ、軽減税率の8%のみのケースでは、書き方が異なってくるため、違いを理解しておきましょう。
- 標準税率のみ:品名やサービスごとに金額を記載、10%対象の合計額として書く。この場合、軽減税率8%対象の合計額が0円である旨の記載はなくてよい
- 軽減税率のみ:品名やサービスごとに金額を記載、8%対象の合計額として書く。8%対象のみである旨を明記する必要がある
それぞれの注意点を理解して、ミスのない請求書を作成しましょう。
標準税率10%のみの場合は適格請求書のフォーマットを利用すると便利
消費税率が10%のみの場合でも、取引先から求められた場合は適格請求書の交付義務があります。また、対象品目が標準税率10%のみの場合、軽減税率8%のみの場合で、それぞれ適格請求書への記載事項が異なるため注意しましょう。
そのため、標準税率10%のみの適格請求書を発行するときは、フォーマットを利用すると便利です。本記事で紹介したようなフォーマットを参考に、社内で統一のフォーマットを作成しておけば、スムーズに運用できるようになるでしょう。
適格請求書についてもう少し詳しく!
適格請求書とは、取引で生じた消費税に関する情報を記載した請求書のことです。売り手が買い手に対して提出し、取引において適用された消費税率や発生した消費税額を詳細に知らせます。
適格請求書は「インボイス(invoice)」と呼ばれることもあります。消費税が適用される取引に関する書類であれば、請求書だけでなく納品書なども適格請求書の一つとみなされることが一般的です。
適格請求書に記載する項目
適格請求書には、以下の内容が含まれている必要があります。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である場合は、その旨がわかるように記載)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等(1つの適格請求書につき税率ごとに1回の端数処理)
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
なお、適格請求書には「簡易適格請求書」と呼ばれるものもあります。例えば、レシートなどの機械的に発行される請求書は、簡易適格請求書として扱うことが可能です。簡易適格請求書には、次の内容が含まれていることが必要とされます。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である場合は、その旨がわかるように記載)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
- 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは
適格請求書等保存方式とは、適格請求書の発行により売り手が買い手に対して適用された消費税率や消費税額を知らせることで、「インボイス制度」とも呼ばれます。
2023年10月1日から始まった制度で、該当する事業者(適格請求書発行事業者)は、適格請求書の作成と発行、また、それに準じた帳簿の保存を行うことが必要です。また、条件を満たした適格請求書を発行することで、買い手側は仕入税額控除の適用を受けられるようになります。
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そもそも適格請求書発行事業者とは
適格請求書発行事業者とは、インボイス制度を通して仕入税額控除の適用を受ける事業者のことです。適格請求書発行事業者になるためには、次の2点を満たしていることが条件となります。
- 課税事業者であること
- 登録申請書を税務署に提出し「適格請求書発行事業者」として登録を受けること
適格請求書発行事業者登録制度とは
適格請求書発行事業者として税務署に登録する制度が「適格請求書発行事業者登録制度」です。制度に登録して適格請求書発行事業者になると、登録番号が発行されます。
登録番号は、法人・個人を問わずローマ字のTと13桁の数字から成り立ちます。適格請求書には必ず登録番号を記載することになりますが、この際、Tや数字は全角・半角を問われません。
ただし、以下のいずれかに該当するときは、適格請求書発行事業者として登録できない、あるいは登録を取り消されることがあります。
- 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた場合
- 1年以上所在不明である場合
- 事業を廃止したと認められる場合
- 合併により消滅したと認められる場合(法人の場合)
なお、適格請求書発行事業者についての情報は、インターネットで公開されています。事業者名や登録番号だけでなく、登録年月日、法人の場合は本店などの所在地などの情報もすべて公開されるので、変更が生じたときは速やかに税務署に届け出るようにしましょう。
適格請求書発行事業者の義務
適格請求書発行事業者になると、仕入税額控除が適用され、税制上のメリットを受けることができます。その一方で、適格請求書発行事業者が果たすべき義務もあるので注意しましょう。主な義務は以下の3つです。
- 適格請求書あるいは簡易適格請求書を発行する
- 適格請求書の内容を記した帳簿を作成・保管する
- 消費税の申告・納税をする
適格請求書交付義務が免除されるケース
消費税が発生する取引であっても、適格請求書の交付義務が免除されることがあります。例えば、公共交通機関の運賃や自動販売機などで販売されるケースなどに関しては、税込3万円未満の取引であれば適格請求書を発行する必要はありません。
また、卸売市場などで生鮮食料品などを譲渡する場合、農協などに委託して農産物などを譲渡する場合も、適格請求書の交付義務が免除されます。
交付方法の特例
適格請求書発行事業者の請求書発行の義務は免除されないものの、買い手側は帳簿のみ保存で仕入税額控除を受けられる特例があります。この特例を利用する場合、買い手側は通常必要な記載事項に加え、以下の事項を帳簿に記載し、保管しておくことが必要です。
- 仕入相手の住所又は所在地
- 特例の対象である旨
買い手側の帳簿保存で仕入税額控除を受けられる特例は、主に次の3つの取引において適用されます。
- 入場券などが回収されるもの
- 古物商や質屋が仕入れるもの
- 従業員などに支給する出張費など
それぞれの取引について、具体的に見ていきましょう。
入場券などが回収されるもの
入場券の中には、売り手側に回収されるものがあります。例えば、水族館や映画館などの施設では、入場時や出場時に入場券が回収されることがあり、買い手側は支払った証拠を手元に残すことができません。
しかし、特例が適用されるため、適切な帳簿を作成することで、買い手側は仕入税額控除の適用を受けられます。
古物商や質屋が仕入れるもの
古物商や質屋が仕入れを行う際、相手が個人であることも多いため、適格請求書を受け取れないことがあります。しかし、この場合も特例が適用されるので、買い手側は適切な帳簿作成で仕入税額控除の適用を受けることが可能です。
従業員などに支給する出張費など
従業員に支払う出張費や旅費も、適格請求書がなくても仕入税額控除の適用を受けることが可能です。
なおいずれの状況においても、売り手側は適格請求書の発行義務は免除されません。買い手側のみ、適格請求書を受け取っていなくても、適切な帳簿作成によって仕入税額控除の適用を受けることができます。
税額計算の方法
適格請求書等保存方式における消費税を算出する方法には、次の2つがあります。
- 割戻し計算
- 積上げ計算
それぞれの方法で売上税額と仕入税額を算出する方法を紹介します。売上税額を割戻し計算で出した場合は、仕入税額は積上げ計算(原則)又は割戻し計算(特例)のいずれかを選択することができます。売上税額を積上げ計算でした場合は、仕入税額も積上げ計算で算出することが必要です。
割戻し計算
基本的には、売上税額も仕入税額も割戻し計算で求めます。
軽減税率が適用される売上税額は、以下の順に算出しましょう。
- 税込売上額×100/108=課税標準額
- 課税標準額×6.24%=売上税額
標準税率が適用される場合の売上税額は、以下の順に算出しましょう。
- 税込売上額×100/110=課税標準額
- 課税標準額×7.8%=売上税額
上記で求めた各税率が適用される売上税額を合算し、全体の売上税額を算出します。
仕入税額は以下の順に算出しましょう。
- 軽減税率対象の課税仕入額×6.24/108=軽減税率対象の仕入税額
- 標準税率対象の課税仕入額×7.8/110=標準税率対象の仕入税額
- 1+2=全体の仕入税額
積上げ計算
積上げ計算では、以下のように売上税額を算出します。
- 適格請求書に表記した消費税額などの合計額=78/100=売上税額の合計額
仕入税額は以下の計算式で求めます。
- 請求書などに表記の消費税額のうち課税仕入額の合計額×78/100=仕入税額の合計額
なお、売上税額の算出においては、割戻し計算が基本の計算方法となります。一方、仕入税額に関しては積上げ計算が基本です。いずれを利用するときも、同じ方法で仕入・売上の各税額を算出するようにしましょう。また、申告や納税の時期を守ることも、業務継続の上で大切なポイントです。
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