- 更新日 : 2024年10月18日
領収書に印鑑がなくても経費処理できる!もし押印をする場合は?
領収書には印鑑が押されることが多いですが、領収書への押印や捺印は税務処理の観点からは基本的には必要ではありません。押印のない領収書でも経理処理はできます。
今回は、行政での押印廃止の取り組み、収入印紙を貼付する場合の消印、領収書に押印するケースなどについて解説していきます。
目次
押印がない領収書は経理上問題ない
結論からいうと、基本的には印鑑やサインがない領収書でも経費処理ができます。つまり、税務処理の観点では領収書に押印は不要です。
慣習としての押印を廃止する流れは、税務調査に関わる国税庁にも変化を及ぼしています。これまで、確定申告書など税務署長に提出する申告書は押印が必要とされていましたが、2021年4月1日から一部を除き押印不要となりました。
税務上の経費計上や損金算入などが適切かについて調査できる税務署や国税局においても書類への押印廃止が進められています。
領収書には押印が必要ない理由
領収書に必要な項目については消費税法で定められています。国税庁のホームページには領収書(取引の相手方から交付を受ける請求書、納品書等)の記載項目として、以下5つが記載されています。
- 書類作成者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
この中に「押印」は含まれていません。故に、領収書に押印がなくても問題はないのです。
参考:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁
経理処理の際に必要な領収書の項目
上記のように、国税庁は領収書に必須となる項目を挙げており、これらが記載されていないものは証拠として認められません。一般的に領収書には以下の内容を記載します。
タイトル
その書類には何が記載されているのかを示すものです。上部に「領収書」と大きく目立つように記載します。
日付
支払いが行われた年と月、日を記載します。
金額
取引金額を記載しましょう。購入した商品が軽減税率の対象品目である場合は、その旨も記載しなければなりません。軽減税率の対象品とそれ以外のものが混在している場合は、税率ごとに合計した税込の金額を記載します。
但し書き
取引した商品やサービスの品目を記載しましょう。例えば、ペンやノートなどの文房具は「事務用品代」、レストランや居酒屋などで飲食した場合は「飲食代」、ホテルの宿泊費やタクシーの運賃などは「旅費交通費」と記載します。
宛名
誰宛に発行した領収書なのかがわかるように記載しましょう。発行を受ける者(商品やサービスの購入者)の名前や会社名を記載します。
収入印紙
5万円以上の取引で領収書を発行する場合は印紙税を納めなければなりません。収入印紙を貼付する欄を設け、印紙税の対象取引で領収書を発行する場合はそこに収入印紙を貼ります。
発行者
領収書を発行する者(商品やサービスの販売者)の名前や会社名を記載しましょう。
領収書に必要な項目の内容や書き方については、こちらの記事でさらに詳しくご紹介しています。
請求書等への押印を廃止する取り組みも
経理処理上、領収書の押印がなくても問題がないと説明しました。これまで慣習として押印が行われていたほか、行政手続きで押印を求められるケースもありましたが、税務署窓口をはじめ、現在では自治体でも請求書や領収書などの重要書類の押印廃止が進められています。
例えば目黒区では、手続きの簡素化や事務手続きの効率化のため、2022年2月1日から次の文書について押印が不要となりました。
- 見積書
- 請求書
- 領収書
- 請書兼請求書兼検査証
- 債務者登録申請書
- 委任状
- 口座振替依頼書
押印見直しの一環として、目黒区ではこれまで内部事務手続きをはじめ多くの手続きで押印廃止の取り組みを進めています。
北九州市も押印廃止を進めている自治体のひとつです。2022年4月1日からは請求書兼領収書の押印を不要としました。北九州市では、押印の代わりに本人確認として電話連絡や運転免許証などの提示を求めることもあるとしており、押印に代わる本人確認の手段を明示しています。
ここでは2つの自治体の押印廃止の例を取り上げましたが、全国のさまざまな自治体で同じような取り組みが進められています。今後、領収書に限らず、行政では押印不要になる書類の種類も増えていくものと予想されます。
参考:契約手続等の押印を見直します|目黒区
請求書兼領収書の押印廃止・様式の変更|北九州市
収入印紙を貼付する場合は消印が必要
基本的には領収書に押印をする必要はありませんが、領収書に収入印紙を貼付する場合は異なります。収入印紙を貼付するときは、領収書の書面の部分と収入印紙の両方に印鑑がかかるように押印、または署名をしなくてはなりません。これを消印といいます。
領収書は印紙税法上「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」に該当し、5万円未満は非課税とされますが、5万円以上は印紙税を納めなくてはなりません。領収書の額面金額5万円以上のとき、または金額の記載がないときは収入印紙を貼付する必要があるので、領収書自体に押印が必要なくても、印鑑やサインによる消印は必要になります。
領収書に押印をする場合
領収書に押すための印鑑を領収印といいます。税務上、収入印紙の消印を除き、領収書の押印は求められていませんが、かといって押印することにも問題はありません。領収書を受領する相手から求められた場合や社内で印鑑を使用するルールを設けている場合は、領収書に押印することもあるでしょう。
ここでは領収書に押印をする場合、印鑑を押す場所や印鑑の種類について紹介します。
どこに押印すべき?
領収書に押印する場合、印鑑をどこに押すべきかの決まりは特にありません。
ただし、印鑑は領収書の発行者が押すものですので、発行事業者の名称や住所などが記載されている場所の近くに押すのが無難です。通常は、発行事業者の名称などが記載されている右横の空白部分に押印します。
別の場所に押印しても問題はありませんが、文字と印鑑が被って記載内容がわからなくなる押し方は避けましょう。
印鑑の種類は?シャチハタでも良い?
領収書に押印する際の印鑑の種類についても特に規定はなく、スタンプ式浸透印(シャチハタ)でも問題ありません。
印鑑には主に角印と丸印がありますが、一般的には認印としての役割を持つ角印が使用されるケースが多いです。ちなみに、シャチハタの角印タイプも存在します。
領収書の記載事項
領収書を作成するときは、一般的に次のような事項を記載します。
- タイトル(「領収書」と記載)
- 受領年月日
- 受領金額
- 但し書き
- 宛名(受領者)
- 発行者(必要に応じて押印)
- 収入印紙(必要に応じて貼付)
領収書の書き方については、以下の記事を参照ください。
領収書の押印は必須ではない
領収書の押印は、経理処理上必須ではありません。押印がなくても認められ、行政でも領収書などの押印廃止の流れがあります。しかし、自社で発行したことを証明するためなど社内で押印のルールを設けているケースもあります。
社内ルールがある場合や受領者から求められた場合は柔軟に対応すると良いでしょう。
よくある質問
経理処理上、領収書に押印は必要ですか?
領収書に押印がなくても経理処理上の問題はありません。詳しくはこちらをご覧ください。
領収書に押印が必要な場合はありますか?
領収書の受領者から押印を求められた場合、社内でルールがある場合は領収書に押印することもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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