- 更新日 : 2024年11月7日
適格請求書は再発行できる?修正方法や保存について解説
適格請求書(インボイス)は、再発行可能です。記載内容に誤りがある場合、修正インボイスとして再発行できますが保存方法などいくつか注意するべきポイントもあります。
本記事では、修正インボイスの対応方法や保存方法について、詳しく解説します。また、国税庁のインボイス登録通知の再発行についても見ていきましょう。
目次
適格請求書は再発行できる?
適格請求書は、再発行が可能です。発行した請求書にミスが発見された場合、修正インボイスとして再発行することが認められています。この際、元の請求書と混同しないように「修正版」や「再発行」といった名称を付け加え、内容が修正された請求書であることを明確に示す必要があります。
再発行は、適格請求書に限らず、適格簡易請求書や適格返還請求書でも同様に対応可能です。最も重要なのは、修正後の書類が適格請求書としての基準をしっかりと満たしていることです。
修正インボイスとは?
修正インボイスとは、すでに発行済みの適格請求書に誤りがあった場合に、その内容を訂正する目的で発行される請求書のことです。誤記や漏れがあった情報を訂正して再発行するケースや、既存の請求書を訂正し、その修正内容を明確に示す書類を作成するケースが該当します。
ここでは、修正インボイスを発行する際の責任が売り手と買い手のどちらにあるか、またよく混同される「適格返還請求書」との相違点についても詳しく解説します。
修正インボイスの対応は原則として売り手が行う
修正インボイスの発行は、原則として売り手側が行います。売り手は誤りに気づいた時点で速やかに適切な修正を実施し、買い手に通知する義務があります。
売り手が誤りを訂正し、新しいインボイスを作成して買い手に送付しなければなりません。また、再発行する場合は修正版であることを明示したうえで、新しい請求書番号を付与するなどして元の文書との関連性を明確にします。これによって取引の透明性と信頼性が確保されます。
随時更新される国税庁のインボイス制度に関するFAQによれば、買い手による修正も一定条件下で認められるようになりました。ただしその場合でも売り手の確認が必要であり、勝手に記
載内容を修正することはできません。
修正インボイスと適格返還請求書の違い
修正インボイスと適格返還請求書は、その目的が異なります。修正インボイスは、すでに発行された適格請求書や返還請求書に誤りがあった場合、その内容を修正するために使用されます。
一方、適格返還請求書(返還インボイス)は、請求書の誤りを修正するものではなく、返品や値引きによって支払いが不要になった金額の一部または全額を返還するために発行される書類です。
また、適格返還請求書には、返金が1万円未満の取引において発行が免除される規定がありますが、修正インボイスにはそのような免除規定はありません。適格請求書に記載された金額にかかわらず、誤りがあった場合には必ず修正インボイスを発行しなければなりません。発行しない場合、仕入税額控除が受けられないリスクがあります。
この2つの文書の違いを理解し、取引の状況に応じて正しい文書を使い分けることが重要です。
修正インボイスの対応方法
修正インボイスの対応方法には、再発行する方法と、既存のインボイスに修正内容を追記する方法の2パターンがあります。
それぞれの方法について、解説します。
再発行する
複数の記載にりがあおいて誤るなど、重大な誤りの場合は再発行が適しています。再発行で対応する場合は新しい請求書番号を付与し、「修正版」など元の請求書と区別がつくよう明記します。
この手続きによって取引先との間で誤解が生じることなく、正しい取引内容が確認できるようになります。
修正内容を追記する
軽微な誤りの場合は、元の文書への追記という形で対応できます。この方法では元の文書上で訂正箇所を明確化し、その横または上下部に修正日および修正の理由を書き加えます。
なお、修正インボイスは原則としては元の文書の発行元である売り手側が対応するものではありますが、前述のとおり買い手側による適格請求書の修正も認められるようになりました。買い手が売り手の確認のうえで記載内容を修正する場合も、この修正方法に従い買い手側の確認済みの文言を追加する必要があります。
電子帳簿保存法に則った修正インボイスの保存
電子取引の場合、電子帳簿保存法に基づいて修正インボイスを保存する必要があります。買い手側と売り手側、それぞれの保存対象について解説します。
買い手側が保存するデータ
買い手側には、修正前の誤った内容のインボイスの保存は必要ありません。修正インボイスのデータのみ保存義務があります。
経緯を把握するために一定期間修正前インボイスを保管しておく場合は、取り違えや二重請求などのミスが起こらないように注意しましょう。
売り手側が保存するデータ
売り手側は、原本と修正版の両方を保存する義務があります。これは取引経緯証明として重要であり、いずれも法定期間である7年間保持しなければなりません。
原本を破棄すると修正の経緯が証明できず、変更点が不明確になり、税務調査等の際に説明に困る可能性があります。売り手側は修正インボイスだけではなく、原本も確実に保管するようにしましょう。
受領したインボイスに誤りを見つけた場合の対応方法
受領したインボイスに誤りがある場合は、迅速な対応が必要です。以下ではその具体的な流れについて解説します。
修正インボイス発行を依頼する流れ
受領したインボイスに誤りを発見した場合の対応手順は、以下の流れが一般的です。
- 誤りの発見:受領したインボイスの内容を確認し、誤りを特定
- 発行者への連絡:誤りの内容を具体的に説明し、修正を依頼
- 修正インボイスの受領:発行者から送付された修正インボイスを受領
- 内容の確認:修正された内容が正確であるか、慎重に確認
- 保管:確認後、修正インボイスを適切に保管
誤りを発見しだい速やかに発行事業者に連絡し、修正してもらうよう依頼しましょう。
令和6年4月の改訂版Q&Aで買い手による修正が認められた
従来、買い手が受領したインボイスに誤りを見つけた場合は売り手に連絡し、修正インボイスの発行を依頼するのが原則でした。しかし、国税庁のインボイス制度に関するQ&A令和6年4月改訂版では、一定の条件下で買い手自身による修正も認められるようになっています。
買い手側が修正する場合の手順は、以下のとおりです。
- 買い手が自ら修正を行う
- 修正した事項について売り手に確認を求める
- 売り手の確認を得る
- 確認を得た修正内容を記録した修正版を保存する
この方法で対応したものも、仕入税額控除の適用のために保存が必要な請求書等に該当します。ただし、重要な点は、必ず売り手の確認を得ることです。確認のない修正は有効とは認められません。
買い手側で修正できるとインボイスのやり取りは減って手間は省けますが、この点には注意しましょう。
国税庁のインボイス登録通知は再発行できる?
税務署から発行される書面のインボイスの登録通知は、原則として再発行されません。
なお、インボイスの登録通知は電子データでの受領も可能です。電子データは紛失リスクがないため、可能であれば電子データでの通知の受領が安心でしょう。電子データを受領するには、郵送ではなくe-Taxで登録申請する必要があります。
登録通知を紛失したときの対処法
法人の場合、登録通知をなくしてもすぐに調べられます。国税庁の「法人番号公表サイト」で、名称や所在地を入力すれば検索できます。
ただし、個人の場合は個人情報保護の観点から番号以外での検索はできない仕様になっているため、検索できません。個人のインボイス登録番号を調べたい場合は、国税庁インボイス登録センターに電話で問い合わせるといいでしょう。
登録通知のコピーが必要な場合は、再交付依頼書に身分証明書などを添えて再交付申請をしなければならず、かなり手間がかかります。紙の登録通知の管理には、細心の注意を払いましょう。
適格請求書の再発行や修正の流れを把握しておこう
適格請求書(インボイス)は再発行や修正が可能ですが、正しい理解のもとに適切な方法で対応することが求められます。
売り手側と買い手側、立場によってそれぞれ対応方法や保管の対象になる文書が異なるため、修正インボイスの対応ポイントや流れを押さえてどちらの立場になってもスムーズに処理できるようにしておきましょう。
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