• 更新日 : 2024年8月30日

合計請求書をインボイス制度に対応させる方法は?種類や作り方を解説

合計請求書とは、一定期間内における複数の取引をまとめて請求するための書類です。ここでは、合計請求書の概要や種類、具体的な作成方法、インボイス制度に対応するための方法について詳しく解説します。インボイス制度に対応する際のポイントや注意点を正しく理解し、効率的な請求業務を目指しましょう。

合計請求書とは?

合計請求書とは、一定期間内に発生した複数の取引をひとつの書面にまとめて発行する請求書のことです。

たとえば、取引の都度、請求書を発行する場合において、同じ相手先に対して立て続けに取引が発生した場合には、請求書の枚数が増え、合計の請求金額がわかりにくくなってしまいます。

また、複数の営業部や支店などから別々に請求書を発行する場合にも、同一の取引先に対して複数の請求書が送付されることとなるため、取引先が支払額を把握しづらく、支払い漏れが発生するリスクも高まるでしょう。

このようなケースにおいて、合計請求書を発行することで、取引先にとっては全体の請求金額をまとめて確認できるため、スムーズな決済手続きを促進できます。

さらに、自社にとっても請求漏れのチェックや入金確認を行いやすくなるため、請求業務の健全化にもつながります。特に取引が頻繁に発生する企業においては、業務効率化を追求するために、合計請求書の発行は有効な手段といえるでしょう。

合計請求書の種類

合計請求書には、主に「総額表示型」と「明細情報表示型」の2種類があります。それぞれの特徴を正しく理解し、自社に合ったフォーマットを選択しましょう。

総額表示型

総額表示型の合計請求書は、一定期間内に発生した取引を集計し、簡単な取引内容や請求金額の総額のみを記載する形式です。

この形式は、合計請求書の記載内容がシンプルになるため、経理担当者の作業負担を軽減しやすいだけでなく、取引先にとっても請求情報を確認しやすい点が特徴です。

ただし、総額表示型の場合には、商品の単価や数量など、取引ごとの詳細な内容が省略されるため、個々の取引内容や請求金額の整合性を確認しづらいというデメリットもあります。

したがって、総額表示型の合計請求書を発行する場合、個々の取引の詳細については、他の書類で確認できるように、納品書や請求明細書を別途発行するケースが一般的です。

明細情報表示型

明細情報表示型の合計請求書は、提供した商品やサービスなど、各取引の詳細内容を個別に記載したうえで、それらの合計金額を表示する形式です。

各取引の日付や内容、金額などが個々に明示されるため、取引先が請求内容を確認しやすいというメリットが挙げられます。また、このような形式の場合、取引の詳細な内容を記載することから、インボイス制度にも対応しやすいという利点もあります。

その一方で、取引明細を省略せずに記載することから、総額表示型に比べて請求書の情報量が増えやすいという特徴もあります。取引先ごとの取引頻度が多い企業の場合には、合計請求書の記載内容が複雑化し、請求書自体の明瞭性が損なわれるケースもあるでしょう。

合計請求書を作成する方法

合計請求書を作成する場合には、以下の手順にしたがって行います。

なお、表計算ソフトや請求システムによって作成するケースが一般的ですが、企業ごとに業務フローや社内ルールが異なる場合も珍しくありません。自社の業務体制を踏まえたうえで、効率的な請求書の作成方法を追求しましょう。

請求情報を収集する

最初のステップは、一定期間内に発生したすべての取引情報を収集することです。

取引情報には、取引ごとの日付や取引先、取引内容、金額、消費税額などが含まれます。正確な取引情報を収集することで、合計請求書の作成手続きをスムーズに進めることが可能です。

この段階で集計漏れが発生した場合には、最終的には請求漏れにつながるリスクも高まるため、担当者が細心の注意を払って業務にあたるとともに、組織としてヒューマンエラーを防ぐための仕組みづくりが必要不可欠です。

合計請求書のフォーマットに変換する

次に、収集した取引情報を合計請求書のフォーマットに変換します。

個別の取引を合計請求書へ集約する場合には、総額表示型や明細情報表示型などのフォーマットを用いるケースが一般的です。総額表示型の場合には、取引の詳細については省略し、請求金額の合計や消費税額などの必須項目のみを記載します。

この段階では、合計請求書の基となるデータを作成するため、改めて請求漏れがないかどうか慎重に確認しましょう。

合計請求書を発行する

個別の取引情報を合計請求書のフォーマットへ変換したら、最終的に合計請求書を取引先に発行します。

送付する際には、書面による郵送だけでなく、PDFデータなどをメールに添付することや、Webサイト上でダウンロードする方法もあるため、自社や取引先のニーズを踏まえて送付方法を選択しましょう。

合計請求書は単体ではインボイス制度に対応しにくい

2023年10月1日からインボイス制度が導入され、仕入税額控除を最大限に適用するためには、原則として適格請求書の保存が求められるようになりました。

したがって、取引先に対して請求書を発行する場合には、それが適格請求書に該当するかどうかによって、取引先の仕入税額控除に影響を及ぼす可能性があるため、請求書の発行者としても慎重な対応が求められます。

結論としては、インボイス制度開始前における合計請求書のフォーマットのままでは、適格請求書として求められる以下の記載要件を満たすことは難しいと考えられます。

適格請求書としての具体的な記載項目は次の通りです。

  1. 発行者の氏名や名称
  2. 発行者のインボイス登録番号
  3. 取引年月日
  4. 取引内容(軽減税率の対象となる場合はその旨を記載すること)
  5. 税率ごとの税抜または税込価額の合計とその適用税率
  6. 税率ごとの消費税額等
  7. 取引先の氏名や名称

合計請求書であっても、自社や取引先の名称などは元々記載されており、自社のインボイス登録番号を既存のフォーマットへ追記することはさほど難しくないでしょう。

ただし、個々の取引年月日や取引内容、消費税率ごとの取引金額や消費税額については、合計請求書では省略されているケースが大半であり、合計請求書をインボイス仕様に変更するためには、抜本的なフォーマット変更が必要となる場合が一般的です。

このような背景によって、合計請求書のみでインボイス制度に対応することは難しく、合計請求書以外の書類を活用することで、適格請求書の記載要件をクリアする企業が多いです。

合計請求書を発行する企業がインボイス制度に対応する方法

合計請求書を発行する企業がインボイス制度に対して適切に対応するためには、以下のいずれかの方法によって、適格請求書としての記載要件を満たすケースが一般的です。

インボイス制度への対応方法を検討する際には、社内における請求業務のプロセスを踏まえたうえで、正確かつ効率的なやり方を検討しましょう。

合計請求書以外で対応する方法

合計請求書ではなく、別の書類によって適格請求書としての要件を満たす方法です。

適格請求書については、必ずしも「請求書」の名称で発行する必要はないため、請求書以外の書類であっても、必要な記載要件を満たしていれば、適格請求書として取り扱うことが可能です。

具体的には、取引の都度発行する「納品書」や合計請求書に添付する「請求明細書」の記載内容を拡充することによって、インボイス制度への対応を行うケースが多いです。

この場合、合計請求書については適格請求書には該当せず、あくまでスムーズな決済手続きのための補足資料として位置づけられます。

このような対応方法であれば、インボイス対応を行う納品書や請求明細書のフォーマット変更は必要となるものの、合計請求書については変更不要となるため、合計請求書の様式を変えたくない場合には最適の方法といえるでしょう。

合計請求書を含む複数書類で対応する方法

次に、合計請求書と他の書類を組み合わせることで、インボイス制度に対応する方法です。

適格請求書の記載要件については、必ずしもひとつの書類で網羅する必要はなく、複数の書類で要件をクリアすることも認められています。したがって、「合計請求書+納品書」や「合計請求書+請求明細書」などの形でインボイス対応を行うことも可能です。

たとえば、合計請求書には自社のインボイス登録番号などを記載し、合計請求書には書き切れない各取引の内容や詳細な消費税額などを納品書に記載することで、複合的に適格請求書の要件を満たすことができます。

ただし、複数の書類で適格請求書の記載要件を満たす場合には、書類間の関連性が明確でなければならないため、対応する納品書番号を合計請求書内に明記するなど、書類同士の紐づけができるように工夫しましょう。

合計請求書のみで対応する方法

他の書類でインボイス対応を行うのではなく、フォーマットを変更することで、合計請求書単体で適格請求書としての記載要件を満たす方法も考えられます。

特に明細情報表示型の合計請求書を使用している場合には、元々詳細な取引内容が記載されているため、総額表示型に比べるとインボイス制度への対応もしやすいです。

その一方で、総額表示型の場合には、合計請求書の大掛かりなフォーマット変更が必要となることや、合計請求書内で取引の内容や金額、消費税などを細かく記載する必要があるため、社内の請求業務の負担が増加しやすい点に注意しましょう。

インボイス制度に合わせた合計請求書の活用を進めよう

取引頻度の多い事業を営む場合には、個々の取引について請求書を発行するのではなく、一定期間内におけるすべての取引を集約した合計請求書を発行する企業も少なくありません。

合計請求書では、期間内の取引に関する合計金額をまとめて表示できるため、自社と取引先の双方にとってシンプルでわかりやすい請求書を発行することが可能です。

しかし、インボイス制度が開始したことで、従来の合計請求書のフォーマットのままでは、適格請求書の記載要件を網羅することは難しく、合計請求書の様式を変更したり、納品書や請求明細書で補完したりするなど、柔軟な対応が求められます。

自社の請求業務のプロセスを踏まえ、インボイス制度に合わせた合計請求書の活用方法を検討しましょう。


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