• 更新日 : 2023年7月19日

インボイス制度がフリーランスエンジニアに与える影響まとめ

インボイス制度がフリーランスエンジニアに与える影響まとめ

インボイス制度の導入は、フリーランスのシステムエンジニアにも影響を与えます。免税事業者のままでいる場合インボイスの発行ができず、取引先は仕入税額控除を受けることができません。取引先側ではコストが増えるため、取引を中止されてしまう可能性が考えられます。

本記事ではインボイス制度の内容やフリーランスのエンジニアに与える影響などを紹介します。

フリーランスエンジニアが知っておきたいインボイス制度

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は消費税の仕入税額控除の方式として、2023年10月1日から導入される制度です。

ここではインボイス制度の概要と、インボイス制度の理解で必要になる課税事業者・免税事業者の違いを説明します。

インボイス制度とは?

インボイスとは​​適格請求書のことで、正しい消費税率や消費税の金額などを伝えるために売り手が買い手に交付するものです。インボイス制度は、消費税の仕入税額控除を受けるにはインボイスの保存が必要になる制度です。2023年10月1日から導入される制度で、売り手は買い手からインボイスの発行を請求された場合は交付しなければなりません。

ただし、適格請求書を発行できるのは「適格請求書発行事業者」でなければならず、登録できるのは消費税の課税事業者のみです。

そのため、フリーランスのシステムエンジニアなど売り手側は、取引先にインボイスを発行したい場合、課税事業者であることが必須です。

インボイス制度の詳細は、以下の記事で説明しています。ぜひ参考にしてください。

参考:インボイス制度の概要|国税庁

課税事業者と免税事業者の違いは?

インボイス制度の「適格請求書発行事業者」であるためには課税事業者でなければなりません。課税事業者とは、所定期間における年間の課税売上高が1,000万円を超え、消費税の納付義務がある法人や個人事業主のことです。

一方の免税事業者とは、所定期間における年間の課税売上高が1,000万円以下で納税していない事業者です。フリーランスエンジニアの多くが免税事業者ですが、そのままでは適格請求書発行事業者になれず、買主に求められてもインボイスを発行できません。適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者になる必要があります。

課税事業者については、以下の記事も合わせてご覧ください。

フリーランスエンジニアが受けるインボイス制度の影響

フリーランスのシステムエンジニアが免税事業者の場合、インボイスを発行できません。これまでは年商1,000万円以下の免税事業者でも取引に支障はなかったものの、制度が導入されたあとも免税事業者のままではデメリットが発生する可能性があります。

ここではフリーランスエンジニアがインボイス制度でどのような影響を受けるのか、紹介しましょう。

消費税の申告が必要な場合

フリーランスのエンジニアが以下のどれかに該当する場合、課税事業者となり消費税の申告が必要です。

  • 前々年度の課税売上高が1,000万円を超えた場合
  • 前年の1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超え、かつ給与等支払額が1,000万円を超えている場合

該当しない場合は免税事業者となり、消費税の申告・納付は必要ありません。

課税事業者が納税する消費税の計算では、仕入税額控除が適用されます。仕入税額控除とは、売上にかかる消費税の金額から仕入れなどにかかる消費税の金額を差し引くことです。

これまでは免税事業者との取引でも、仕入税額控除を受けることができました。しかし、2023年10月からは、仕入税額控除を受けるためにインボイスの交付と保存が必要になります。

現在は免税事業者のフリーランスのエンジニアも、取引先にインボイスを発行するためには課税事業者にならなければなりません。その場合、これまでは支払いが免れていた消費税の支払い義務が発生します。

免税事業者が不利になる可能性も

インボイス制度が導入されると、免税事業者のままでは取引に影響する可能性があります。
取引するフリーランスエンジニアが課税事業者(適格請求書発行事業者)でない場合、買い手は仕入税額控除が受けられないため負担が大きくなります。

買い手は値引きの交渉を持ちかけたり、取引を中止してインボイスを発行できる他のフリーランスエンジニアに発注したりする可能性も考えられます。

ただし、インボイス制度には経過措置があり、導入から6年間は仕入税額相当額の一定割合を控除することができます。具体的には、以下の割合で控除が可能です。

  • 2023年10月の導入から3年以内:80%
  • 2026年10月から3年以内:50%

ただし、2029年10月以降は経過措置が終了し、控除は不可となります。

フリーランスエンジニアに求められるインボイス制度への対応

フリーランスのエンジニアは、インボイス制度の導入に向けて対応を考えなければなりません。求められる対応は、課税事業者と免税事業者で異なります。

それぞれ、詳しくみていきましょう。

課税事業者の場合

フリーランスエンジニアが課税事業者の場合、そのままではインボイスを発行できません。インボイスを発行できる事業者になるには登録申請書を税務署に提出する必要があります。

インボイス制度がスタートする2023年10月1日の時点で適格請求書発行事業者であるためには、2023年9月30日までに登録申請書を提出しなければなりません。

登録申請書の受付はすでに始まっています。インボイス発行事業者となるためにも、早めに提出しておくとよいでしょう。

免税事業者の場合

フリーランスエンジニアが免税事業者の場合、インボイス制度がスタートしたあとの取引先との関係などを考慮して課税事業者になるか判断しなければなりません。
適格請求書発行事業者になるのであれば「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者になる必要があります。※2029年9月30日までは、適格請求書発行事業者の登録申請書の提出のみで可。

課税事業者になると、年間の売上高が1,000万円以下であっても受け取った消費税を申告して納付しなければなりません。ただし、簡易課税制度が適用される場合もあります。簡易課税制度とは、個人事業者は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の事業者につき、納税事務の負担を軽減するための制度です。受け取った消費税額にみなし仕入率という一定の割合を乗じて計算することで、消費税の計算などの手間が軽減されます。

ただし、消費税の納付義務があることには変わりありません。

また、免税事業者がインボイス発行事業者を選択した場合には、3年間売上にかかる消費税額の2割のみを納めればよい特例措置(2割特例)もあります。こちらも、免税事業者のままでいるべきかどうかの検討材料になります。

参考:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁

免税事業者は、インボイス制度がスタートする2023年中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、登録を受けた日から課税事業者となることができます。登録とは別に届出を行う必要はありません。

フリーランスエンジニアはインボイス制度の対策を行おう

免税事業者であるフリーランスエンジニアは、インボイス制度の導入前に対策を講じる必要があります。免税事業者のままではインボイスの発行ができず、取引先との契約が減少する可能性があるためです。

仕入税額控除は経過措置がありますが、いずれは適格請求書発行事業者が発行するインボイスの交付がなければ控除を受けられなくなります。取引に影響する前に、早めの対応を検討しましょう。

よくある質問

フリーランスエンジニアはインボイス制度の影響を受けますか?

インボイス制度導入後も適格請求書発行事業者にならない場合、値引き交渉を持ちかけられたり取引が打ち切られたりする可能性が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。

フリーランスエンジニアはインボイス制度に備えてどのような対応をすべきですか?

課税事業者の場合は適格請求書発行事業者に登録する必要があります。免税事業者の場合は課税事業者になるかどうかを検討しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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