- 更新日 : 2023年7月25日
インボイス制度がフリーのクリエイターに与える影響まとめ
2023年10月から始まるインボイス制度は、フリーランスや個人事業主も対応が求められます。本記事では、フリーランスで活動するクリエイターに注目し、インボイス制度から受ける影響や、その対策について解説していきます。インボイス制度の基礎知識を知るためにお役立てください。
目次
フリーのクリエイターが知っておきたいインボイス制度
クリエイターと呼ばれる業種には様々な業態がありますが、その多くが売上高1,000万円以下の個人事業主・フリーランスであると考えられます。インボイス制度が始まると、フリーのクリエイターは収入が減るなどの影響を受ける可能性があるため、決して他人事ではありません。まずはインボイス制度の基本から確認していきましょう。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、適用税率や税額の記載が義務付けられた請求書を用いて消費税を正確に計算し、適切な納税を促す制度です。
インボイス制度は、免税事業者であるさまざまな事業者たちに影響を与える制度として取り上げられることが多いです。それは、インボイス制度開始後、得意先は免税事業者からの仕入については仕入税額控除を適用できなくなるためです。免税事業者のままではインボイス制度の登録番号を取得できないため、適格請求書を発行できないのです。
得意先としては、制度開始後も免税事業者と同じ条件で取引を続けると、仕入税額控除がきかなくなる分だけ消費税の納税額が増えてしまいます。
現在免税事業者である場合は、インボイス制度開始後に仕入価格の値下げ交渉を打診されたり、課税事業者に取引を切り替えられたりする懸念があることを知っておきましょう。制度開始までに対策方法を検討しておくことも大切です。
インボイス制度について詳しく知りたい人はこちらの記事も参考にしてください。
課税事業者と免税事業者の違いは?
インボイス制度を理解するためには、課税事業者と免税事業者の違いを理解する必要があります。
免税事業者とは、消費税の確定申告と納税義務が免除された事業者のことです。免税事業者の対象は個人事業主などをはじめとした小規模事業者で基準期間における課税売上高が1,000万円以下などの条件があります。これに対して課税事業者とは、消費税の納税義務がある事業者のことです。免税事業者でない場合は、原則的に課税事業者となります。
免税事業者が取引先へ消費税を請求すると、消費税部分は免税事業者の利益になり、このことを「益税」といいますが、免税事業者が預かった消費税については納付しなくても特に問題はありません。
益税があることを考慮すると、免税か課税かを選べる場合には免税事業者の方が手元に残る金額が大きいことになります(ただしインボイス制度導入後は実質的に益税が難しいと言えます)。
消費税の納税額だけ見ると免税事業者が有利に見えますが、消費税の還付が受けられる場合には課税事業者のほうがメリットは大きいケースもあります。
免税事業者と課税事業者について詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてください。
フリーのクリエイターが受けるインボイス制度の影響
個人事業主などフリーランスで活動するクリエイターは、インボイス制度が始まると具体的にどのような影響を受けるのでしょうか。ここからは、デザイナー、イラストレーター、YouTuber、ライターなどとして活動するクリエイターに注目して、インボイス制度の影響を深堀りしていきたいと思います。具体的な対策方法も紹介するので、参考にしてください。
課税事業者に求められること
すでに課税事業者である場合は、インボイス制度が始まっても大きな影響はありません。インボイスの発行が必要な場合は税務署にインボイス発行事業者の登録を行い、インボイス制度の要件を満たした請求書を発行するだけです。当面は事務的な対応だけで済むでしょう。
ただし、課税売上高が1,000万円前後で時々課税事業者になる程度であれば、顧客がインボイスを求めない限り、適格請求書発行事業者にならないほうが手続きがラクだと言えます。
なぜなら、一旦、インボイス発行事業者になると、売上高に関係なく消費税の申告納付が義務付けられます。さらに、顧客の中にはインボイスの発行継続を期待する取引先も想定できますし、インボイス発行事業者をやめる時には別の申請が必要となるからです。
なお、反対に仕入先に免税事業者がいる場合は、これまでの仕入税額控除が段階的に行えなくなります。値下げを相談するか、課税事業者への切り替えを検討してもらうなどの対策が必要です。
仕入税額控除のハードルが高くなる
今までは、免税事業者からの仕入(消費税を納税していないクリエイターなど)も仕入税額控除の対象でした。しかし、インボイス制度開始後は免税事業者からの仕入については、原則として仕入税額控除が認められなくなります。控除ができずに納税額が増えてしまうため、それ相応の値下げ交渉を打診されることも覚悟する必要があるでしょう。
インボイス制度開始後、免税事業者は取引の面で不利になる可能性が高いと言えます。現時点で免税事業者のクリエイターは対策を考えておく必要があります。
免税事業者が不利になることも
デザイナーやイラストレーター、YouTuber、ライター、アフィリエイトなどの仕事をしているクリエイターの多くが、現時点では免税事業者だと思われます。インボイス制度においては、免税事業者は適格請求書の発行ができず、得意先では仕入税額控除ができなくなります。そのため、得意先は従来と同じ金額で報酬を支払えば、依頼者側の消費税納税額が増えてしまいます。
基準期間における売上高が1,000万円以下で免税事業者のクリエイターは、今後は報酬を消費税額分安くするよう相談されるか、課税事業者になって適格請求書を発行するように求められる可能性があるでしょう。その際、今まであった益税分はなくなります。
一方、クリエイターの中でも副業などで収入が少額の場合は、インボイス制度の影響は少ないともいえるでしょう(税額分報酬が下がったとしても金額が小さいため)。
免税事業者と課税事業者のどちらを選ぶべきか
フリーランスや個人事業主のクリエイターは、免税事業者と課税事業者のどちらを選んだほうがメリットは大きいのでしょうか。ここでは、免税事業者と課税事業者それぞれを選んだ場合によって得られるメリットや注意点について解説します。収入金額によっては免税事業者のほうがよいケースもあるため、自分はどちらがよいか考える際の参考にしてください。
免税事業者でいるほうがよいクリエイター
課税期間の基準期間における売上が1,000万円未満のクリエイターは、現時点で免税事業者の人がほとんどと思われます。
そもそも副業なので売上が少ないなどの理由で、報酬が10%程度減っても影響が少ない人は、免税事業者のままでいるほうがおすすめです。
課税事業者になると、確かに取引や契約金額への影響は少なく済みます。その一方で、新たに消費税を意識した帳簿の記録や消費税の確定申告などで今までになかった事務的な手間が増えてしまいます。
よってインボイスの発行を求められない場合には、売上金額が少ない人は、納税の手間も考えれば免税事業者を続けたほうがメリットは大きいと考えられます。
課税事業者になったほうがよいクリエイター
クリエイターとしての仕事が多い人は、課税事業者になることも検討する必要があるでしょう。インボイス制度導入後は免税事業者とは取引しない取引先が出てくる可能性があるため、取引を維持するためにはインボイス発行事業者になるのが安心です。
インボイス発行事業者は必ず課税事業者ですが、逆に課税事業者であってもインボイス発行事業者でない場合もありますのでご注意ください。次の表で確認しておきましょう。
ケース | 対応など |
---|---|
課税事業者ではあるが、インボイス発行事業者ではない場合 |
|
インボイス発行事業者であり、課税事業者である場合 |
|
なお、免税事業者が2023年10月1日から2029年9月30日までの日が属する課税期間において、インボイス発行事業者の登録を受ける場合には、課税事業者選択届出書は提出不要となります。
参考:インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁
消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A(問8参照)
ただし、課税事業者になれば課税売上高(消費税が課税される売上高)に基づいて消費税を計算し、納税する義務が発生します。免税事業者の時に得られた益税効果はなくなるので注意してください。
クリエイターもインボイス制度の影響は避けられない
インボイス制度は、現在免税事業者である自営業やフリーランスに与える影響が多い制度です。デザイナーやイラストレーター、ライターなどのクリエイティブな仕事をしている人にとって、避けては通れない問題となるでしょう。場合によっては課税事業者に切り替えるほうがよいケースもあります。
インボイス制度開始後、仕入税額控除については6年間の経過措置もありますが、どのような対応を取るのか検討しておくことが大切です。
よくある質問
フリーのクリエイターが受けるインボイス制度の影響は?
現在免税事業者のクリエイターは、今後は仕入税額控除が適用されない分だけ報酬を下げるか、課税事業者になって適格請求書を発行するように相談される可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。
フリーのクリエイターは免税事業者と課税事業者のどちらを選ぶべき?
課税事業者になれば取引上の不利はなくなりますが、消費税を計算し納税する手間がかかるため、売上が少ない場合は免税事業者がよいケースもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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