• 更新日 : 2023年7月18日

インボイス制度が整体院や整骨院に与える影響まとめ

インボイス制度が整体院や整骨院に与える影響まとめ

2023年10月から導入されるインボイス制度とは、所定の要件を満たした適格請求書を交付することで、受領した側において仕入税額控除が受けられる制度です。インボイス制度の導入は、さまざまな事業者に影響を与えます。

整体院や整骨院、鍼灸院なども影響を受ける場合があり、制度導入に向けて検討が必要です。

本記事では免税事業者と課税事業者について紹介するとともに、整体院や整骨院の収益にどのような影響があるかについて解説します。

整体院や整骨院とインボイス制度の関わり

インボイス制度は、正式名称を適格請求書保存方式といいます。所定の記載要件を満たした適格請求書(インボイス)の発行を支払先から受けて保存することにより、消費税の仕入税額控除を受けることができる制度です。取引における消費税額を正確に把握することを目的としています。

制度は売主と買主の双方に関係し、インボイス発行業者である売主は買主からインボイスを求められた場合には交付しなければなりません。買主は、原則として売主から交付を受けたインボイスの保存が必要です。

インボイス制度の開始とともにインボイスを発行するためには、制度が始まるまで(2023年9月30日まで)に「適格請求書発行事業者」の登録を受けなければなりません。

従来は整骨院においては、原則として保険適用外の施術収入(課税売上)が1,000万円を超えれば消費税の課税義務者となりました。これに加えて、インボイス制度の導入後においては取引先との関係から「インボイスの発行が必要か」どうかについて考える必要があります。

参考:インボイス制度の概要|国税庁

整体院や整骨院にはどんな影響があるのか

インボイス制度によって影響を受けるのは、取引の相手が課税事業者の場合です。そのため、整体院や整骨院の顧客のほとんどが個人客の場合はあまり影響を受けません。免税事業者のままでも問題がないともいえるでしょう。

しかし、課税事業者である法人客などを持つ整体院や整骨院は、インボイス発行事業者の登録を検討する必要があります。

整体院や整骨院はどんな対応をしなくてはならないのか

課税事業者の顧客がいる整体院や整骨院は、施術料を支払った顧客からインボイスの発行を請求されることになります。インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者(以下、インボイス発行事業者という)にならなければなりません。

インボイス発行事業者になるには、登録申請書を提出する必要があります。

登録手続きは申請書を管轄の税務署に提出し、審査を受けるという流れです。審査を通過して手続きが完了してから、登録番号が通知されます。

申請の受付は2021年10月1日から開始されており、制度が導入される2023年10月1日から登録を受けるには、原則として2023年9月30日までに登録申請が必要です。

参考:インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁
   消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A(問7参照)

国税庁における登録日から登録の効力が生じるため、インボイスの発行が可能となります。また、免税事業者がインボイス発行事業者になる場合には、インボイスの登録申請だけでよく、一定期間については「課税事業者選択届出書」の提出は不要です。

参考:インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁
   消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A(問8参照)

インボイス制度については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

課税事業者と免税事業者のおさらい

インボイス制度の影響を受けるのは課税事業者と、課税事業者と取引のある免税事業者です。インボイス制度が始まる前に、課税事業者と免税事業者について確認しておきましょう。

それぞれの概要を紹介します。

課税事業者とは

課税事業者とは基準期間等の課税売上が1,000万円を超え、消費税の納税義務がある法人や個人事業主のことです。

基準期間とは、法人は前々事業年度を、個人事業主は課税期間の前々年を指します。
課税事業者においても、インボイス発行事業者になるか否かはその事業者の任意とされます。インボイス発行申請をしなかった場合には、課税事業者であってもインボイスは発行できません。

インボイス発行事業者として登録されて初めて、取引先の求めに応じたインボイスの交付ができます。

免税事業者とは

免税事業者とは基準期間等の課税売上が1,000万円以下の事業者で、多くの個人事業主やフリーランスが該当します。

免税事業者のままではインボイス発行事業者登録ができず、インボイスの交付ができません。取引先である課税事業者はインボイスを受け取れないと、取引で支払った消費税につき仕入税額控除を受けることができなくなり、不利となります。

そのため、免税事業者は課税事業者から取引について見直しを相談されることがあるでしょう。インボイス発行事業者の登録をしなければ取引先が減り、収入が減少するという可能性も出てきます。

参考:No.6501 納税義務の免除|国税庁

整体院や整骨院の収益はどうなる?パターン別に整理

インボイス制度導入後、整体院や整骨院の収益は変わる場合と変わらない場合があります。まず、免税事業者でも顧客が個人客だけの場合は変わらないと考えられます。

しかし、免税事業者がインボイス発行事業者に変更した場合は消費税を納付する義務があり、これまでよりも収益が減ります。また、免税事業者のままでも収益が減る可能性があるでしょう。

それぞれ、ケース別に紹介します。

収益が変わらないケース

整体院や整骨院の収益が変わらないのは、以下のようなケースです。

  • 免税事業者で、顧客が個人客である場合
  • もともと課税事業者で、今回、インボイス発行事業者登録をした場合

免税事業者で顧客が完全に個人客である場合は、インボイスの交付が必要ありません。これまでどおり、受領した消費税は収益となります。

さらに、顧客が課税事業者であっても簡易課税制度を採用している場合には、仕入税額控除にインボイスの保管が不要となりますので、インボイス対応なしでも収益が変わらないといえます。

一方、整骨院などでインボイス発行事業者登録をした場合は法人客が顧客でもインボイスの交付ができるため、顧客を減らすことなく収益も変わらないでしょう。

収益が下がってしまうケース

一方、インボイス制度が施行されると収益が下がるのは、整骨院等が免税事業者で、かつ、顧客に法人客が多い場合です。

インボイスを発行できない免税事業者との取引は仕入税額控除が認められないため、ほかの整体院や整骨院に移動する可能性があるでしょう。そのため、売上が減ることになります。

取引先を減らさないためにインボイス発行事業者登録をして取引は継続できますが、消費税の納付により手取りは減ります。これまで、免税事業者は消費税を納付する義務を免れていたためです。

しかし、課税事業者になれば消費税を納付しなければならず、これまでの収益はなくなります。

整体院や整骨院はインボイス制度の影響について考えよう

インボイス制度の施行にあたり、取引先との関係によってこれまで免税事業者であった整体院や整骨院は収益が下がる可能性があります。顧客に法人客が多い場合は、インボイス発行事業者の登録も検討しなければなりません。

マネーフォワード クラウドの「インボイス制度の登録申請」なら、フォームに沿って入力するだけで、インボイス発行事業者の登録申請書を簡単に作成できます。

「インボイス制度の登録申請」なら、適格請求書発行事業者の登録申請書をフォームに沿って入力するだけで簡単に作成できます。

登録申請書の受付は既に開始していますが、インボイス制度が施行される2023年10月1日から登録を受けるには、2023年9月30日までに申請を済ませる必要があります。

よくある質問

インボイス制度とは?

消費税率と消費税額を販売先に正しく伝えるために適格請求書(インボイス)を発行・保存する制度で、仕入れ側は消費税の仕入税額控除を受けることができます。詳しくはこちらをご覧ください。

インボイス制度の導入で整骨院や整体院の収益はどうなる?

顧客が個人か課税事業者であるかで異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


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