- 更新日 : 2025年2月5日
請求書は原本で保管すべき?保存方法や電子帳簿保存法の電子化の要件も解説
請求書には保管義務があり、紙の原本のまま保管する方法とPDF化する方法、さらに電子データをそのまま保管する方法が認められています。電子化の際には電子帳簿保存法が定める要件を満たす必要があり、要件を満たせば紙の原本は不要です。
今回は、請求書の保管方法や電子化した請求書原本の破棄について解説します。
目次
請求書は紙の原本のまま保存する必要がある?
そもそも請求書とは証憑書類であり、取引が実際に行われたことを示す重要な書類です。そのため請求書を勝手に破棄することはできず、所得税法や法人税法により一定期間(法人および消費税の納税対象である個人事業主であれば原則7年、消費税免税対象である個人事業主であれば原則5年)保存する義務が定められています。
請求書の保存については、原則として紙の原本を保管・保存する必要があります。コピーや写しを利用してしまうと、請求書が改ざんされてしまうリスクや、不正会計の恐れがあるためです。
ただし、電子データで請求書を受け取ることもあるでしょう。この場合は、どのように保管すればよいのでしょうか。ここでは、請求書の受け取り方別に保存方法を解説します。
紙で受け取った請求書の保存方法
手渡しや郵送など紙で受け取った請求書については、原則として紙の原本を保存・保管することが定められています。会計処理が終わった後、タグ付けやファイリングなどの作業を行い、書類庫に保管してください。
また、紙の請求書をスキャンし、電子データとして保存する方法もあります。これは電子帳簿保存法におけるスキャナ保存方式であり、以下のような手順で保存しましょう。
- 請求書の原本をスキャナーで読み込むか、スマートフォンで撮影する
- データをシステムにアップロードする
- 2ヶ月以内に画像データにタイムスタンプを付与する(訂正削除の記録が残るシステムの場合、タイムスタンプ付与は不要)
- 定められた期間内システム上で保存する
書類は整理して保存する必要があり、保存方法を混在させることは、原則認められていません。しかし、普段電子データで請求書を受け取っている取引先から、紙で請求書の発行を受ける場合もあるでしょう。この場合、その請求書のみ書面で保存することは保存方法の混在には該当しません。
電子的に受け取った請求書の保存方法
2005年の「e-文書法」により、請求書を紙媒体以外の電磁的記録で保存することが認められました。
PDFデータのように、電子的に受け取った請求書については電子データのまま保存することが定められています。その際は、電子帳簿保存法における真実性確保と可視性確保に関する要件を満たさなければなりません。具体的な要件については、次の章で解説します。
なお、PDFをコピーして紙で保存するなど、電子データを紙に出力して保存することは、電子帳簿保存法の改正によって認められなくなりました。
参考:
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十六年法律第百四十九号)|e-Gov法令検索
電子帳簿保存法が改正されました|国税庁
請求書を電子化して保管するには電子帳簿保存法の対応が必要
請求書の紙原本をスキャンしてPDFにする、あるいは電子データを電子データのまま保管するなど、電子データを保管する場合は、電子帳簿保存法における真実性と可視性を確保しなければなりません。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
保存要件 | 優良 | そのほか | |
---|---|---|---|
データの訂正削除を行った場合に、その記録が残るシステムを利用すること | ◯ | – | |
通常の業務処理期間を経過した後に入力した場合、その事実を確認できるシステムを利用すること | ◯ | – | |
電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連するそのほかの帳簿の記録事項について、相互に関連性を確認できること | ◯ | – | |
システム関係書類を備え付けること | ◯ | ◯ | |
保存場所にパソコンやディスプレイなどを操作マニュアルとともに備え付け、速やかに出力できるようにすること | ◯ | ◯ | |
検索要件 | 1.取引年月日、取引金額、取引先で検索できること | ◯ | – |
2.日付または金額の範囲指定により検索できること | ◯ ※1 | – | |
3.2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること | ◯ ※1 | – | |
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じられるようにすること | – ※1 | ◯ ※2 |
※1 税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合、検索要件の2と3は不要。
※2 優良の要件をすべて満たしているときは不要。
必ず満たさなければならないのは「そのほか」で◯となっている要件です。
優良な電子帳簿の要件を満たして請求書の保存を行う場合、事前に所轄税務署長に届出を行うと、所得税の⻘⾊申告特別控除(65万円)が適用されます。また、優良な電子帳簿に記録された事項に関して申告漏れがあった際、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されるという優遇措置も適用されます。
参考:
Ⅱ適用要件【基本的事項】|国税庁
電子帳簿保存法が改正されました|国税庁
請求書の紙の原本をスキャンして電子化する場合は、スキャナ保存制度の要件を満たすことが必要です。国税関係帳簿書類のスキャナ保存の区分では、請求書は資金や物の流れに直結 ・連動する書類であるとして、重要書類に位置付けられます。重要書類のスキャナ保存要件は、以下のとおりです。
要件 | 重要書類 |
---|---|
入力期間の制限 | ◯ |
200dpi以上の解像度での読み取り | ◯ |
赤・緑・青各256階調での読み取り | ◯ |
タイムスタンプ付与 | △(代用可) |
解像度・階調情報の保存 | ◯ |
大きさ情報の保存 | △(受領したA4以下の書類は不要) |
ヴァージョン管理 | ◯ |
入力者等情報の確認 | ◯ |
スキャン書類と帳簿の相互関連の保持 | ◯ |
見読可能装置の備付け(ディスプレイなど) | ◯ |
整然・明瞭出力 | ◯ |
検索機能の確保 | ◯ |
電子計算機処理システム開発関連書類の備付け | ◯ |
事務手続きを明らかにした書類の備付け | – |
適用届出書の提出 | – |
電子請求書について、詳しくは以下をご覧ください。
請求書を電子化したら原本は破棄してもいい?
紙の請求書をPDFにして電子化して保管する場合、電子帳簿保存法の要件を満たせば、紙の原本はいらないと定められており、破棄できます。
破棄する場合は、電子帳簿保存法が定める真実性確保と、可視性確保の要件を満たす必要があります。具体的には、以下のポイントを押さえましょう。
- 解像度要件を満たして電子化できるか
- データを一定期間保存し続けられるか
- 要件を満たすための機能が、利用するシステムに備わっているか
- 改ざんや不正会計のリスクを防止できるか
特に原本をスキャンする場合は、以下の解像度要件を満たした状態で電子データ化できるかが重要です。
- 解像度は200dpi相当以上
- 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)
請求書の原本は要件を満たして保管・電子化しよう
今回は、請求書の保管や電子化して保管する方法などについて解説しました。
紙で受け取った請求書は、原則として原本のまま保管する必要があります。要件を満たせば、スキャンして電子データとして保管することも可能です。また請求書を電子データとして受け取った場合も、電子帳簿保存法が定める真実性確保と可視性確保の要件を満たせば、データのまま保管できます。
請求書を効率的に保管したいなら、電子化がおすすめです。要件を理解し、適切に保管しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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