• 更新日 : 2024年10月1日

請求漏れや支払い拒否が発生した!対応方法や時効、防止策について解説

請求漏れや支払い拒否が発生した場合、代金は未回収の状態です。請求が漏れていても支払い義務は存在し、回収に向けた対応をとらなければなりません。請求漏れは資金繰りの悪化につながるだけでなく、売掛債権が時効で消滅する可能性もあります。

本記事では、請求漏れや支払い拒否が発生する原因や対応方法、防止策を解説します。

請求漏れ・支払い拒否は代金の未回収になる

請求漏れや先方の支払い拒否は、代金の未回収にあたります。未回収とは、売上が発生したにもかかわらず、約束した期日までに現金が振り込まれていない状態です。売掛金は計上されているのに入金がなく、売掛金の債権が残ったままとなります。

代金の未回収は資金繰りの悪化につながり、他への支払いに影響する可能性もあります。未回収の状態は、早期に解決しなければなりません。

請求漏れ・支払い拒否がもたらすリスク

請求漏れ・支払い拒否があることで、キャッシュ・フローの悪化や信用の低下といったリスクがあります。

詳しくみていきましょう。

キャッシュ・フローの悪化

請求漏れや支払い拒否は代金の未回収になるため、自社のキャッシュ・フローが悪化する可能性があります。手元の現金や預金が減少して企業活動に必要な資金が不足し、他の支払いができなくなる可能性もあるでしょう。

代金を早期に回収しなければ、営業活動の継続が難しくなります。売上は立っているため帳簿上は黒字でも、手元の現預金が不足するために黒字倒産に至るケースもあります。

対外信用の低下

請求漏れ・支払い拒否があると資金繰りが悪くなり、他の支払いができないという事態にもなります。そのため、対外的な信用の低下につながるでしょう。

また、未回収の売掛金があると、金融機関からの評価が低下して資金調達が難しくなる可能性もあります。融資を申し込んだとき、金融機関は企業の経営状態や財務状況を審査しますが、売掛金の回収状況も審査の対象です。売掛金が予定通りに回収できていない場合、「資金管理ができていない」と判断される可能性があるでしょう。

請求漏れ・支払い拒否が発生する原因

請求漏れ・支払い拒否が発生する原因は、自社と取引先の双方でいくつかのケースが考えられます。

自社起因の原因

自社側の原因には、次のようなケースが考えられます。

  • 請求書の作成をしていなかった
  • 請求書は作成したが投函を忘れた
  • 請求書の宛先を間違えて送った
  • メールに請求書を添付していなかった
  • 取引内容や金額などの情報が間違っていた

何らかの理由で自社の請求業務に間違いがあり、請求書を発行できていない、もしくは正しく請求できていない場合に請求漏れが発生します。

また、請求書は正しく送付したものの、宛先の間違いや郵送事故で届いていないというケースもあるでしょう。

取引先起因の原因

取引先に起因する原因は、支払い拒否がある場合です。

支払い拒否には、次の2つが考えられます。

  • 支払えるけれど支払いたくないケース
  • 支払いたくても支払えないケース

自社に請求漏れがある場合、すぐに気づいて請求書を発行するなどの対応をすれば、支払ってもらえるのが一般的です。

しかし、宛先違いや郵送事故などで請求書が未着の場合、請求漏れに気づかない可能性があります。その状態が放置されていると、それが原因となって支払い拒否が起きることもあるでしょう。

たとえば、請求書が届いていないことに気づかないまま支払いの催促をしてしまうと、取引先は請求書を受け取っていないことを理由に支払いを拒否することが考えられます。よく確認せずに催促してきたことに不信感をもたれ、関係性が悪くなってしまうかもしれません。

取引先が財政的に苦しく、支払いたくても支払えないケースもあります。その場合はいつ支払いができるのかを話し合い、どうしても支払いをしてもらえないときは法的手段の検討も必要になるでしょう。

請求漏れに支払い義務はある

請求書の発行を忘れて請求漏れがあっても、先方には支払い義務があります。ただし、債権は時効で消滅するため、注意しなければなりません。

詳しくみていきましょう。

請求書の送付漏れがあっても支払い義務は存在する

請求書の発行がなくても、取引をしたという事実が明らかであれば、支払い義務が発生します。請求書は取引内容について確認し、金額や支払期日について認識の相違を防止するために発行するもので、発行する義務はありません。

売買契約をし、取引をした時点で支払義務は発生しています。請求書の発行の有無にかかわらず、すでに支払義務は存在するため、取引先は代金を支払わなければなりません。

未払い債権として支払期日の翌日から5年で消滅時効になる

請求漏れがあっても先方には支払い義務がありますが、請求漏れに気づかないまま5年が経過すると、民法166条により売掛債権は時効消滅します。

また、請求漏れに気づいて請求書を発行しても、支払期限を過ぎてそのまま5年間経過すれば債権は消滅します。

債権を消滅させないためには、「時効の完成猶予」もしくは「時効の更新」が必要です。

時効の完成猶予とは、請求漏れとなっている売掛債権に一定の完成猶予事由が生じた場合に、一定期間のみ時効の完成が先延ばしになる制度です。

時効の更新とは、一定の更新事由が生じた場合に、時効の進行を一度リセットできる制度であり、更新事由には「裁判上の請求を行う」「強制執行を行う」「相手が債務を承認する」のいずれかが必要になります。

請求漏れで取引先に支払い拒否された場合の対応方法

請求漏れに気づいて請求書を発行したものの、支払いを拒否された場合には、支払いをしてもらうための対応が必要です。

対応方法をステップごとにみていきましょう。

早急な連絡と支払い依頼

請求漏れに気づいたら、早急に事実確認を行いましょう。取引内容や請求すべき事項を確認するとともに、入金の有無も調べます。取引先との関係や取引内容によっては請求書がなくても支払いをしている場合もあり、すでに入金済みの代金を催促してしまわないよう注意してください。

さらに請求漏れを起こした原因も確認し、先方への連絡を行いましょう。請求漏れについて説明して謝罪を行い、早急に請求書を作成・送付してください。

書面での督促

支払いをお願いしても履行がない場合は、督促状を作成して書面による督促を行います。督促状の発送には支払いを強制する法的効力はありませんが、「支払われなければ法的手段を検討する」などの文言で履行を強く促す効果があります。

また、督促状の発送は時効の完成猶予事由にあたり、時効期間の進行を6ヶ月間止めることが可能です。6ヶ月以内に裁判上の請求を行えば、売掛金の時効は更新されます。

法的手段の検討

督促状を送っても支払いがない場合、郵送の事実を証明する内容証明郵便で催告書を送ります。催告書は債務の履行を促す最終通告であり、支払期限内の履行がなければ法的措置をとることを明記して履行を強く促す書類です。

催告書を送付しても履行がない場合は、法的手段の検討に入りましょう。法的手段としては、裁判所から金銭の支払いを命じてもらう支払督促の申し立てを行うのが一般的です。

請求漏れの発生防止策

請求漏れを防ぐためには、請求書のナンバリングやチェックリストの作成など、人的ミスの防止対策が必要です。

請求漏れの発生防止策について、詳しく解説します。

請求書にナンバリングする

請求書にはすべてナンバリングを行い、取引と請求をセットで管理するようにしましょう。

取引では、請求書を作成する前に見積書や注文書、納品書などを発行するのが一般的です。これらの書類も同じ番号を付与することで、すべての書類を紐づけた一括管理ができます。データ管理を徹底できるとともに、業務を効率化できるでしょう。

ナンバリングによる書類の一括管理は請求漏れを防ぐだけでなく、取引先とのやり取りをスムーズにすることができます。取引先から請求書の内容に関する問い合わせがあった場合、請求書の番号をもとにすぐ見積書や納品書を確認でき、正確な情報を伝えられるでしょう。

チェックリストを作る

請求書の発行までには、売上データの入力や請求書の作成・印刷、発送作業など、さまざまな業務があります。

これらの業務を一つひとつ抽出し、チェックリストにしましょう。リストで作業に抜け漏れがないかチェックすれば、ミスの防止につながります。チェックリストは複数の人・部署と共有しておくと、より防止効果を高められるでしょう。

複数人によるチェック体制を整える

請求作業は1人で行わず、複数人でチェックする体制を整えましょう。業務が属人化して1人の社員が一連の作業を行っていると、請求漏れが起きやすく、漏れていることにも気づかない可能性があります。

属人化は、担当者が急に欠勤や退職した場合に業務が滞るリスクがあるため、解消が必要です。

請求業務では属人化を防止するため、作業の各段階で複数人がチェックするフローを作り、ミスが起こりにくい体制を整えましょう。

システムを導入する

手作業による請求業務が請求漏れにつながる場合は、請求管理システムの導入も検討してみるとよいでしょう。請求管理システムとは、請求書の作成から発行、入金管理などを電子化するシステムです。手作業による入力や金額計算などの作業を自動化し、自動で締め日ごとの請求データを作成できます。

システムの導入により請求業務を大幅に効率化できるとともに、人的ミスを削減し、請求漏れを防げるでしょう。

請求漏れ・支払い拒否への早期対応と防止策を検討しよう

請求漏れや支払い拒否はキャッシュ・フローの悪化につながるため、早急に対応が必要です。請求漏れに気づいたら事実を確認し、原因を特定して先方に連絡しましょう。すぐに請求書を発行し、支払いを依頼します。

再発を防止するためには、ナンバリングや複数人でのチェックなど、ミスが起こらない体制を整えましょう。請求管理システムを導入すれば、請求漏れを防止できるとともに業務効率化にも役立ちます。


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