- 更新日 : 2023年8月4日
納品書があれば経費にできる?確定申告で必要な書類とは
請求書や領収書がない場合、納品書を領収書として扱い、経費の証憑に活用できるのでしょうか。納品書だけでは原則、経費にできません。あくまで取引の事実があったことを表すに過ぎず、支払いの証明にはならないからです。今回は確定申告の際に納品書を領収書として扱えない理由や、代用できるレシートや書類の種類について解説します。
目次
納品書のみで経費計上はできる?
結論からいうと、納品書だけでの経費計上は不可です。つまり、納品書は確定申告の内容を証明する証憑には使用できません。
ただし、領収書も兼ねる納品書兼領収書であれば、経費計上の際に証拠書類として扱うことが可能です。料金の支払いが完了したときに発行される書類で、領収証の代わりになるためです。ここでは、納品書や納品書兼領収書と経費計上の関係について解説します。
納品書だけでは経費計上ができない
領収書は確定申告の際に税務署に提出する書類ではありませんが、正確な申告には欠かせない書類です。個人事業主の場合、白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は7年間の保管義務があります。
納品書は領収書の代わりとして扱えません。なぜなら、納品書はあくまで商品を受け取った事実の証明にとどまり、支払いが完了したことを表さないからです。
記帳内容を正しいと主張する根拠にはならず、確定申告時に経費を支払った証明には使えません。
納品書は商品の納品と同時に取引先に対して送付する書類です。商品の到着と同時に相手方がその場で確認できるように同封します。納品書の記載項目は日付や番号、納品先の情報、自社の連絡先、商品名、数量、金額などです。金額は必ずしも納品書に記載しなくてもかまいません。
納品書に金額の記載があったとしても、単体では領収書の代わりとして扱うのは不可なので留意が必要です。
納品書自体には発行義務がなく、形のないサービスの提供時をはじめ、発行されない場合も珍しくありません。ただし、現物のやり取り時に内容に間違いがないか確認できるため、発行が望ましい書類であります。
納品書兼領収書であれば経費計上が可能
納品書兼領収書はその名のとおり納品書を領収書として扱うのを認めた書類です。聞き馴染みはないかもしれませんが、主に前払い式の契約において利用されます。
納品書兼領収書を発行する場合、領収書である旨と「料金を領収しました」との文言を入れるのが一般的です。
納品物の入金が完了した後に送付する書類で、支払いを行った証明に活用できます。つまり、領収書の代わりとして経費計上に使うことが可能です。
納品書と領収書は役割や発行のタイミングが異なります。繰り返しにはなりますが、納品書は商品の納品時に取引先に対して発行する書類で、領収書は代金の支払い時に送付する書類です。
納品書は注文内容と納品の内容に相違がないか確認に要する書類であるのに対して、領収書は支払いが完了し、契約内容が無事履行されたことを表します。
領収書は確定申告の証憑の一種です。個人事業主の場合は白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は7年間の保管義務があります。
確定申告で経費の証明となる書類
確定申告の経費の証明になる代表的な書類には、領収書やレシートが挙げられます。
領収書が出ないときや、紛失・廃棄してしまったときはどうすればよいのでしょうか。必要な情報を明記した書類があれば、経費計上に活用できるとされています。
紙の領収書が無くても、クレジットカードの利用明細や電子マネーの支払履歴など電子データが残っていれば経費計上は可能です。確定申告で経費の計上に使える証憑の種類や、条件について詳しく解説します。
領収書・レシート
確定申告で経費の証明となる代表的な書類は、領収書やレシートが代表的です。他の書類も使える場合がありますが、経費計上の際は、原則として以下の項目の記載がないと証拠書類には認められません。
- 取引年月日
- 支払金額
- 支出目的
- 発行元
- 宛名
- 収入印紙の有無(電子は省略可)
領収書の宛名が空欄でもとくに問題ありません。ただし、受取人が誰なのか事実確認が取れないため、税務調査が入ったときに証憑として認められない可能性があります。確実に経費計上を行うためには、相手方の屋号や名称を正しく記載するのがポイントです。
紙の領収書の場合、記載金額が5万円以上だと申告の際に収入印紙の添付が必要です。
記載金額 | 税額 |
---|---|
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 600円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
参考:「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」|国税庁
コンビニやスーパーなどで買い物時に渡されるレシートも経費計上に使用できます。発行元の名称や発行日、金額、明細など必要な情報の記載があれば問題ありません。
考え方によっては領収書よりレシートのほうが記載内容の信憑性が高いともいえます。具体的には「上様」や「お品代」のように、記載内容を省略する場合が該当します。レシートにも宛名はありませんが、必要な項目が機械で印字されており、改ざんの可能性がないと捉えられるためです。
感熱紙タイプのレシートは印字が消える恐れがあるため、保管には十分な注意が必要です。劣化する前に普通紙にコピーを取るか、スキャンして電子保存するのを推奨します。
領収書やレシートが無い場合
領収書やレシートが無くても、確定申告の証明書類として使えるものは多くあります。
たとえばクレジットカードの明細、電子マネーの支払履歴、SUICAやICOCAなど公共交通機関のICカードの履歴、ETCの明細、ATMの明細などです。
クレジットカードや電子マネーの利用明細はWebサイトで簡単に確認できるので、プリントアウトして簡単に証憑に活用できます。
事業用とプライベートの買い物が混在していても、マーカーや黒ぬりなどで経費に該当するのかどうか示しておけば問題ありません。
領収書の代わりとなる上記の明細がなければ、以下記載の伝票を準備することで経費計上が可能です。
- 日付
- 支払先
- 金額
- 摘要(支払いの目的や内容)
文房具店で専用の出金伝票を準備するのがおすすめです。金額のみの記載、使途が不明などのように記載内容に不備がある場合、証憑としての信憑性が担保できません。出金伝票であれば、フォーマットに沿って漏れなく記載すれば、レシートや領収書と同等の存在になります。
たとえば業務の一貫で、取引先の関係者の冠婚葬祭に出席したときのご祝儀や香典を経費計上したいときに出金伝票は便利な存在です。
個人事業主は受領した納品書を保管すべき?
個人事業主は取引先から仕入れ時に受け取った納品書を、5年間保管する義務があります。
法人税法や会社法では納品書の保存期間を7年や10年と定めていますが、個人事業主は法人ではないため上記の適用は受けません。ただし所得税法のルールが適用されます。
※「第六十条第一項(決算)に規定する青色申告者は、次に掲げる帳簿及び書類を整理し、起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)、これをその者の住所地若しくは居所地又はその営む事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。」
引用:「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」|国税庁
申告方法にかかわらず、納品書をはじめとする確定申告の証拠書類はすべて5年間の保管義務があります。(領収書の保管期間は、白色申告の場合5年間、青色申告の場合7年)
納品書は紙での保管が基本です。原則として他に細かな保管ルールはなく、ファイリングやボックス、台紙など管理しやすい方法で対応しても問題ありません。
2022年1月に施行された電子帳簿保存法の改正によって、納品書の電子保存が推奨されています。メールやオンライン通販など電子取引で受け取った納品書は原則、電子保存が義務化されました。
従来どおり紙の保管も禁止ではありませんが、書類の管理や保管コストも踏まえると、法改正に合わせて電子保存の運用体制を取り入れるのが賢い選択だといえます。
納品書だけでは経費を証明できない!確定申告に使える書類を把握しよう
納品書はあくまで契約通りに納品が行われたことを示しているにとどまり、支払金額の証明には使えません。入金完了時に取引先へ送付する納品書兼領収書を発行していれば、確定申告関係書類の証明に使用可能です。
領収書やレシートが経費計上の証明書類の代表例ですが、他にも使用可能な書類はいくつかあります。クレジットカード払いやECサイトでの決済など電子データで請求金額が履歴として残っている場合、紙がなくても証憑になり得ます。
経費計上を証明できる書類には何があるか正確に理解し、同時に保管義務を満たすことが重要です。
納品書は個人事業主の場合、原則として5年間の保管義務があります。電子帳簿保存法の施行により、電子データの形式で受け取った領収書はオンライン上での保管が義務付けられたことにも注意が必要です。
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