• 更新日 : 2023年7月3日

請求書に源泉徴収税額を記載すべき?インボイス制度開始後は?

請求書に源泉徴収税額を記載すべき?インボイス制度開始後は?

源泉徴収」という文字を目にしたことはあっても、源泉徴収という制度についてどれだけ具体的に知っているでしょうか?源泉徴収は、給与所得者のみならず、個人事業主やフリーランスの方に関わってきます。

今回は、源泉徴収が担っている役割といった基本的な知識から計算方法、および注意が必要な消費税の扱いまで、個人事業主やフリーランスが理解しておきたい請求書における源泉徴収の扱いについて解説します。

源泉徴収制度について

所得税は、所得を得ている者、自らが税額を計算して自主的に申告して納付する「申告納税制度」が建前とされています。しかし特定の所得では、所得を支払う時に支払う側が所得税を回収して納める「源泉徴収制度」が導入されています。

この源泉徴収制度は、給与や利子、税理士報酬、配当などの所得を支払う側が、その所得を支払う時に決まった方法で所得税額を計算し、支給額より所得税額を徴収し、国に納める制度です。

また、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生じる所得のうち、所得税の源泉徴収の対象なる所得については、「復興特別所得税」を併せて徴収し、所得税とともに納付すると定められています。

この制度により徴収された所得税は、利子所得等の源泉分離税を除き、確定申告により精算されます。ただし、給与に対する源泉徴収税額は、通常は年末調整で精算されるため、原則として確定申告は不要です。

起業したばかりの個人事業主やフリーランスで源泉徴収制度を知らない人は、請求した金額よりも少ない金額が支払われることに戸惑うかもしれません。しかし、源泉徴収は報酬を支払う側に義務づけられているため、源泉徴収額分は報酬から差し引かれています。

源泉徴収の対象

源泉徴収税額を請求書に書く、書かないに関わらず、支払う側は報酬等から源泉徴収して国に納付する義務があるのです。

給与所得以外で源泉徴収の対象になる報酬・料金、契約金、賞金等報酬・料金等は以下の通りです。

  • 原稿料、デザイン料、講演料、放送謝金、工業所有権の使用料、技芸・スポーツ・知識等の 教授・指導料など
  • 弁護士、公認会計士、税理士等の報酬・料金
  • 社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬
  • 外交員、集金人、電力量計の検針人、プロ野球の選手、プロサッカーの選手等の報酬・料金
  • 芸能、ラジオ放送及びテレビジョン放送の出演、演出等の報酬・料金並びに芸能人の役務提 供事業を行う者が支払を受けるその役務の提供に関する報酬・料金
  • バー・キャバレー等のホステス、バンケット ホステス・コンパニオン等の報酬・料金
  • 使用人を雇用するための支度金等の契約金
  • 事業の広告宣伝のための賞金及び馬主が受ける競馬の賞金

引用:令和4年版 源泉徴収のあらまし|国税庁、第1 源泉徴収制度について

源泉徴収税額の算出方法

徴収する源泉徴収税額の計算は報酬等の種類によって異なりますが、原稿料や講演料などの場合は以下の計算式によって導き出されます。

100万円以下の場合

源泉徴収税額 = 支払金額 × 10.21%

 

100万円を超える場合の算出方法

源泉徴収税額 =(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円

 

源泉徴収税額は、所得税および復興特別所得税の合算です。100万円以下の場合は源泉徴収税額のうち、10%は所得税額で、0.21%は復興特別所得税額に該当。100万円以上の場合には20%が所得税額、0.42%が復興特別所得税額に該当します。

源泉徴収税額を請求書に書くべきか?

個人事業主やフリーランスが請求書を発行する場合、徴収される源泉徴収税額をあらかじめ請求書に書くべきなのでしょうか?

取引相手が個人事業主やフリーランスの場合には源泉徴収義務者には該当しないため、請求書に源泉徴収税額を記入する必要はありません。

取引先が法人である場合、請求書に源泉徴収税額が記載されていなくても法人側には源泉徴収の義務が生まれるため、振込額は源泉徴収後の金額になります。取引先が源泉徴収税額を計算する手間を省くという観点から、請求書に源泉徴収税額を記載するほうがよいでしょう。

支払調書について

源泉徴収税額は確定申告前に「支払調書」が送られてくるので自分で控える必要はないのでは?と思う方がいるかもしれません。しかし、残念ながら支払調書は全ての企業が必ず送ってくれるとは限りません。

「支払調書」とは、支払者が支払った報酬と税務署に納めた源泉徴収税額を記した書類ですが、企業側に発行義務はありません。そのため、発行してもらえたなら参考にする程度とし、取引の詳細は自分で一つひとつ帳簿に記載しておく必要があります。

源泉徴収税額と消費税の関係

内税の場合、源泉徴収は消費税も含めた報酬・料金が対象になります。しかし、外税の場合(報酬金額と消費税が分けられている場合)は、消費税額を除く報酬のみが源泉徴収の範囲となります。

例えば、請求書に原稿料154,000円と記載があるだけの場合、源泉徴収税額は、154,000円×10.21%=15,723円(1円未満切り捨て)です。

一方、請求書に原稿料140,000円、消費税14,000円と区別をして記載されている場合は、原稿料のみが源泉徴収の対象となりますので、140,000円×10.21%=14,294円(1円未満切り捨て)となります。

請求書で明記しておくと、報酬額にのみ源泉徴収をかけられるわけです。

インボイス制度開始後の対応

2023年(令和5年)10月1日から、インボイス(適格請求書)制度が始まります。インボイス制度は、消費税の仕入税額控除の方式で、消費税の適用税率や消費税額等、適格請求書発行事業の登録番号などを記載して請求書を発行、または発行を受けることで仕入税額控除に対応できる制度になります。

インボイス制度の詳細は、こちらの記事をご覧ください。

インボイス制度は消費税に関する制度であるため、所得税に関連する源泉徴収税額の記載には影響がありません。インボイス制度後も、請求書への源泉徴収税額の記載方法は従来通りの取り扱いのまま行えます。

請求書への源泉徴収税額の記載は消費税が関係してくる

支払元の源泉徴収義務の有無に関わらず、請求書には源泉徴収税額の記載義務はありません。しかし、支払元が法人である場合、源泉徴収対象の事業・サービスへの報酬等からは源泉徴収税額を控除する義務があるため、請求書にはあらかじめ源泉徴収税額を記載しておくと親切でしょう。

源泉徴収税額は、請求書上における消費税の扱いによって計算方法が変わります。報酬等が内税である場合には、消費税を含めた報酬の総額に対し源泉徴収が行われますが、報酬等と消費税が分離している外税では、報酬等のみが源泉徴収の対象となります。

なお、2023年10月1日から始まるインボイス制度では、消費税の納税に関する取り決めが大きく変わります。しかし、源泉徴収税額の計算方法には影響はありませんので、従来通りのルールのまま源泉徴収を行いましょう。

よくある質問

源泉徴収制度とは?

給与や利子、税理士報酬、配当などの所得を支払う側が、その所得を支払う時に決まった方法で所得税額を計算し、支給額より所得税額を徴収し国に納める制度です。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。

源泉徴収額を請求書に書くべきか?

請求書の発行者が源泉徴収の対象になる場合であっても、請求書に源泉徴収税額を記載する義務はありません。インボイス制度適用後も、請求書への源泉徴収税額の記載ルールは従来通りです。詳しくはこちらをご覧ください。

源泉徴収額と消費税の関係は?

内税の場合、源泉徴収は消費税も含めた報酬・料金が対象になりますが、外税の場合は消費税額を除く報酬のみが源泉徴収の範囲となります。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。


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