• 更新日 : 2025年11月4日

個人事業主・フリーランスの請求書の書き方ガイド|インボイス制度や消費税、源泉徴収税の注意点も解説

個人事業主(フリーランス)にとって、取引の対価として報酬を受け取るために請求書の発行は不可欠です。法律で定められた形式はないものの、基本的な書き方やビジネスマナー、個人事業主特有の源泉徴収、2023年10月から始まったインボイス制度への対応など、押さえるべきポイントは多岐にわたります。

この記事では、請求書の必須項目から、法律で定められた保存期間、実務でよくあるトラブルの回避策まで、個人事業主の方が請求書業務で迷わないための知識を解説します。

個人事業主の請求書の書き方・必須記載項目は?

個人事業主(フリーランス)の請求書には、取引の透明性を確保し、スムーズな支払いを受けるために記載すべき必須項目があります。請求書発行前に、以下の項目が漏れなく記載されているか必ず確認しましょう。

  1. 請求書の宛先
  2. 請求内容
  3. 消費税の表示
  4. 発行日
  5. 支払期日
  6. 発行者
  7. 振込先
  8. 特記事項
  9. 請求書番号

1. 請求書の宛先

請求書を受け取る相手方の名称を正確に記載します。会社名だけでなく、必要に応じて部署名や担当者名まで記載するのがマナーです。宛名を誤ると失礼にあたるだけでなく、社内での処理が滞る原因にもなるため、初回取引時には誰宛てにすればよいか必ず確認しましょう。

2. 請求内容

「何の対価として請求するのか」が第三者にも明確にわかるよう、提供した商品名やサービス名を具体的に記載します。「コンサルティング料として」のような曖昧な表現ではなく、「Webサイト制作費用」「記事執筆料(5本分)」のように詳細を記しましょう。

3. 消費税の表示

取引価格に含まれる消費税額を明記します。トラブルを避けるため、「本体価格(税抜)」「消費税額」「税込合計金額」の3つに分けて記載するのが一般的です。請求内容に軽減税率(8%)と標準税率(10%)の商品が混在する場合は、それぞれの税率ごとに小計を出し、消費税額を分けて記載する必要があります。

4. 発行日

請求書を発行した日付を記載します。

5. 支払期日

事前に双方で合意した支払日を「YYYY年MM月DD日」の形式で明確に記載します。支払遅延を防ぐための重要な項目なので、毎回必ず記載しましょう。なお、「下請代金支払遅延等防止法」では、下請取引において、親事業者は物品等の受領日(または役務提供完了日)から起算して60日以内で、かつできるだけ短い期間で下請代金の支払期日を定める義務があります。

参考:下請代金支払遅延等防止法|中小企業庁

6. 発行者

ご自身の氏名、または屋号と氏名を記載します。加えて、住所、電話番号、メールアドレスなどの連絡先も明記することで、請求書に関する問い合わせがあった際に取引先がスムーズに連絡できます。

7. 振込先

支払いを受ける金融機関名、支店名、口座の種類(普通・当座)、口座番号、口座名義を正確に記載します。手数料を相手方に負担してもらう場合は、「恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担いただけますようお願い申し上げます。」といった一文を添えるのが一般的です。

8. 特記事項

請求や支払いに関して、通常の取引とは異なる特別な条件がある場合に記載します。例えば、「分割払いの2回目(全3回中)」といった補足情報を記載するのに使用します。

9. 請求書番号

請求書一枚一枚を識別するための管理番号です。この番号があることで、取引先からの問い合わせ時に「No.202509-001の請求書の件ですが」と、特定の取引を即座に特定でき、双方の管理が非常に効率的になります。採番ルールに決まりはありませんが、「取引年月日+連番」など、自身でルールを決めておくと管理しやすくなります。

インボイス制度に対応した適格請求書の記載事項は?

2023年に施行されたインボイス制度に対応した適格請求書を発行する場合、上記の項目に加えて下記の記載が必須となります。

  • 登録番号
    税務署から通知された「T」で始まる13桁の番号です。
  • 軽減税率の対象である旨の表記
    軽減税率(8%)の対象品目がある場合に、その旨がわかるように「※」などを付けて明記します。
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
    10%対象と8%対象の合計金額と、適用税率(10%または8%)をそれぞれ記載します。
  • 税率ごとに区分した消費税額等
    10%対象と8%対象の消費税額をそれぞれ計算し、記載します。

参考:No.6625 適格請求書等の記載事項|国税庁

個人事業主が請求書を作成する方法

個人事業主が請求書を作成する方法には、いくつかの手段があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、取引量や業務スタイルに応じて選ぶとよいでしょう。

手書きで作成する方法

取引量が少ない場合は、文具店やインターネットで入手できる請求書用紙を使って手書きで作成することも可能です。ただし、書き間違いが生じやすく、修正や控えの管理に手間がかかります。

WordやExcelを利用する方法

無料のテンプレートを活用すれば、比較的簡単に見栄えのよい請求書を作成できます。デジタルデータとして保存しやすい点もメリットです。

マネーフォワード クラウドでは、個人事業主が使える請求書のExcel形式のテンプレートを無料で提供しています。ぜひご自由にダウンロードして活用ください。

会計ソフトを利用する方法

近年は、会計ソフトやクラウドサービスを使って請求書を発行するのが主流になりつつあります。取引内容を入力すれば自動で請求書が作成され、電子保存やオンライン送付にも対応可能です。インボイス制度への対応機能を備えたサービスも多く、効率性と法令遵守の両面でメリットがあります。

マネーフォワード クラウド請求書」は、個人事業主・フリーランス・副業の方にも多くご利用いただいているので、ぜひお気軽にお試しください。

\エクセル不要でラクに作成!/

個人事業主が請求書を発行する際の注意点

請求書を正しく作成するためには、単に項目を埋めるだけでなく、ビジネスマナーや実務上のルールを理解しておくことが重要です。ここでは、特に注意すべき6つのポイントを解説します。

1. 敬称を正しく使い分ける

請求書の宛名は、相手の法人格を正しく記載し、「御中」と「様」を適切に使い分けることがビジネスマナーの基本です。宛名を誤ると失礼にあたるため、正確に記載しましょう。

  • 法人・部署宛の場合:「御中」を使用します。
  • 個人宛の場合:「様」を使用します。

「御中」と「様」は併用しません。

2.「発行日」と「取引年月日」を明確に区別する

「発行日」は請求書を発行した日付、「取引年月日」は実際に商品やサービスを提供した日付を指し、両者は明確に区別して記載するのが望ましいです。

  • 発行日:請求書を発行した日付を記載します。
  • 取引年月日:請求内容の明細欄に、各品目の納品日やサービス提供日として記載します。

3. 金額・消費税の表記ルールを守る

請求金額は誰が見ても明確にわかるよう、3桁区切りのカンマを使用し、「税込/税抜」と消費税額を明記するのが基本です。

  • 金額表記:数字の前に「¥」を付けるか、後ろに「円」を付けるかに正式な決まりはありません。取引先の慣習に合わせましょう。また、数字は「100000」ではなく「100,000」のように3桁ごとにカンマで区切ります。
  • 消費税表記:原則として税込金額の表示が義務付けられていますが、取引先が経理処理しやすいよう、「本体価格(税抜)」「消費税額」「税込合計金額」の3点を記載するのが一般的です。
  • 端数処理:消費税計算で1円未満の端数が出た場合、切り捨て、切り上げ、四捨五入のいずれで処理するかに法律上の決まりはありません。トラブルを避けるため、事前に取引先と処理方法を確認しておくと安心です。

4. 発行者名義と口座名義を一致させる

請求書の発行者名義と、振込先口座の名義は必ず一致させてください。屋号での請求書に個人名の口座を記載すると、振込時に混乱が生じる可能性があり、入金遅延の原因になります。屋号名義で請求書を発行する場合は屋号付き口座を開設しておくと、事業用の取引が明確になり信頼性も高まります。

5. 源泉徴収の対象か確認し、正しく記載する

原稿料、デザイン料、講演料などの報酬を法人の取引先に請求する場合、あらかじめ報酬から源泉徴収税額が差し引かれて入金されるのが一般的です。

  • 請求書の記載
    請求書には、報酬金額、消費税、源泉徴収税額、そして最終的な差引支払額(請求金額)を分けて記載すると親切です。取引先が源泉徴収に詳しくないケースもあるため、対象業務の場合は事前に確認しておきましょう。
  • 計算方法
    源泉徴収税額(所得税+復興特別所得税)は、支払金額が100万円以下であれば、原則として「支払金額×10.21%」で計算します。ただし、報酬の種類(司法書士報酬等)や、100万円を超える部分については異なる税率(例:20.42%など)が適用されます。
  • 支払調書
    源泉徴収された場合、年明けに取引先から1年間の報酬額や源泉徴収税額が記載された「支払調書」が送られてくることがあります。確定申告で参考となるため、必ず保管してください。

参考:源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁原稿料や講演料等を支払ったとき|国税庁報酬・料金等の源泉徴収義務者|国税庁

6. 請求書への押印は角印が一般的

請求書への押印は法律上義務ではありませんが、商習慣として押印する会社もあり、信頼性や偽造防止の観点で採用されることがあります。ただし、近年は電子請求書や脱ハンコの動きも広がっており、必ずしも一般的というわけではありません。

事業で使う印鑑には丸印(代表者印)、銀行印、角印などがありますが、請求書や見積書といった日常的な取引書類には角印を使用します。発行者名の部分に文字が重なるように押印しましょう。

印鑑の種類については、次の記事で詳しく解説しています。こちらもご参照ください。

個人事業主が発行した請求書の保存期間は何年?

請求書の控え(写し)の保存期間は、個人事業主で通常は所得税法上5年が原則です。ただし、消費税課税事業者やインボイス制度対応の適格請求書発行事業者であれば7年の保存が義務付けられるケースもあります。

  • 所得税法青色申告の場合、原則5年間の保存が必要です。
  • 消費税法:課税事業者の場合、7年間の保存が義務付けられています。

どのケースにも対応できるよう「請求書は7年間保存する」と覚えておきましょう。電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。

参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

個人事業主の請求書発行でよくあるトラブルと回避策

請求書に関するトラブルは、事前の確認不足が原因で起こることがほとんどです。円滑な取引を継続するためにも、以下の典型的なトラブル例とその回避策を理解しておきましょう。

フォーマットの違いで再発行を求められる

大企業などでは、経理システムへの入力項目が厳密に決まっており、指定フォーマット(プロジェクト番号や発注番号の記載必須など)でないと受理されない場合があります。

初回取引時に、請求書のフォーマットに指定があるか、記載すべき必須項目は何かを必ず確認しましょう。「御社の請求書フォーマットはございますか?」と一言尋ねるだけで、手戻りを防げます。

請求書番号が重複し、支払処理が遅れる

複数の取引で同じ請求書番号を使い回してしまい、取引先がどの取引に対する支払いかを特定できず、経理処理がストップしてしまうケースです。

請求書番号は「取引年月日+連番(20250930-01)」のように、自身でルールを決めて重複しないように管理を徹底します。クラウド請求書ソフトを使えば自動で採番されるため、人為的ミスを防げます。

振込手数料をどちらが負担するのか不明確

民法では、弁済にかかる費用は原則として債務者が負担することとされています。そのため、振込手数料も支払う側が負担するのが一般的です。ただし、契約や当事者間の合意によって異なる場合があります。

トラブルを避けるため、請求書の特記事項に「恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担いただけますようお願い申し上げます。」の一文を記載しましょう。

個人事業主が作成した請求書の送付方法

個人事業主が作成した請求書は、取引先の指定や慣習に合わせて、郵送またはメールで送付します。どちらの方法でも、ビジネスマナーを守ることが信頼関係の構築につながります。

郵送する方法

郵送する場合は、以下の3点セットで送付するのが基本です。

  1. 封筒
    表面には宛名を、裏面には自身の住所・氏名を記載します。封筒の表面、左下に朱書きで「請求書在中」と記載すると、相手先で重要書類と認識してもらいやすくなる可能性があります。
  2. 送付状(添え状)
    「拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます…」といった挨拶から始まり、「何の書類を」「何枚」送付したのかを記載します。必須ではありませんが、同封するのが丁寧なビジネスマナーです。
  3. 請求書本体
    A4サイズの請求書は、三つ折りが一般的です。送付状を一番上にし、封筒の裏側から見て請求書の書き出し部分が右上にくるように折って入れると、相手が開封した際にきれいに見えます。

メールで送付する方法

メールで送付すれば、郵送コストや手間を削減でき、相手もすぐに受け取れます。送信時には以下の点に注意しましょう。

  • 形式は必ずPDFに変換する
    WordやExcelのファイル形式で請求書を送ると、編集可能であるため意図しない修正や改ざんがされる可能性があります。PDF化や電子署名などで保護して送付するのが望ましいでしょう。
  • 件名で要件を明確に伝える
    毎日多くのメールを受け取る担当者のためにも、件名は「【〇〇(自分の屋号)】2025年9月分請求書のご送付」など、用件と差出人が明確にわかるようにしましょう。

記載漏れや不備がないよう請求書を発行しましょう

個人事業主(フリーランス)であっても、請求書には様々な事項を記載する必要があります。記載漏れはトラブルの原因となるため、本記事を参考に、発行前に記載事項に間違いがないかを確認する習慣をつけましょう。また、発行した請求書の控えは、法律で定められた期間、適切に保存することが重要です。

手作業での請求書作成に不安がある方や、管理の手間を省きたい方は、「マネーフォワード クラウド請求書」のようなクラウドサービスの利用がおすすめです。フォームに沿って入力するだけで、インボイス制度にも対応した正確な請求書を簡単に作成・管理できます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事