• 更新日 : 2023年8月4日

領収書をスキャンすれば原本を破棄して良い?電子化の要件を解説

領収書をスキャンすれば原本を破棄して良い?電子化の要件を解説

電子帳簿保存法の改正による保存要件の緩和もあり、以前よりも領収書をスキャナ保存しやすくなりました。スキャナ保存の要件を満たせば、スキャンした領収書の原本は破棄しても問題ありません。

今回は領収書の原本の扱いからスキャン保存の要件、スキャンの方法まで解説していきます。

領収書をスキャンした場合の原本の扱い

以前は、電子帳簿保存法の要件を満たしたスキャナ保存であっても一定の領収書については原本の破棄が制限されていました。しかし2022年1月よりすべての領収書について、スキャナ保存をしている場合は最低限の確認を行ったうえですぐに破棄することが認められるようになりました。

つまり、電子帳簿保存のスキャナ保存の要件を満たして領収書をスキャンすれば、原本をそのまま保存しても、破棄しても問題ないということです。

電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の保存義務者に適用されるものですので、法人だけでなく、確定申告を行う個人事業主も対象になります。個人事業主もスキャナ保存の要件を満たして電子保存すれば、領収書の原本を破棄しても問題ありません。

電子帳簿保存法によるスキャナ保存の要件

領収書の原本を破棄しても良いと認められる電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件は、重要書類、一般書類、過去分重要書類で異なります。

重要書類は、契約書や領収書、請求書納品書などの資金やものの流れに直結または連動する書類をいいます。一般書類は、検収書や注文書など資金やものの流れに直結しないような重要度の低い書類です。過去分重要書類は、スキャナ保存開始前に作成・受領した重要書類をいいます。

それぞれの要件を簡単にまとめると、以下のようになります。

【電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件一覧】

要件
重要書類
一般書類
過去分重要書類
入力期間の制限
-
-
200dpi以上の解像度での読み取り
赤・緑・青各256階調での読み取り
グレースケール可
タイムスタンプ付与
△(代用可)
△(代用可)
△(代用可)
解像度・階調情報の保存
大きさ情報の保存

(受領したA4以下の
書類は不要)
-
ヴァージョン管理
入力者等情報の確認
スキャン書類と帳簿の相互関連の保持
見読可能装置の備付け
(ディスプレイなど)
グレースケール可
整然・明瞭出力
検索機能の確保
電子計算機処理システム開発関連書類の備付け
事務手続きを明らかにした書類の備付け
-
-
適用届出書の提出
-
-

参考:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】令和4年6月|国税庁

領収書のスキャナ保存については重要書類、過去分の領収書のスキャナ保存については過去分重要書類の要件を満たさなくてはなりません。

要件に合った領収書のスキャナ保存をするなら、入力期間内に一定の要件を満たす方法で読み取り(スキャンし)、原則としてタイムスタンプを付与する必要があることがわかります。スキャナ保存にあたり、原則として税務署への届出は不要ですが、過去にさかのぼって領収書をスキャナ保存したい場合は届出が必要な点に注意しましょう。

なお、2023年(令和5年)の税制改正により、以下の部分についてスキャナ保存の要件が緩和されます。2024年(令和6年)1月1日からスキャナ保存をする国税関係書類が対象となります。

  1. 入力者等情報の確認が不要になる
  2. スキャナで読み取るときの解像度・階調・大きさの情報保存が不要になる
  3. 帳簿との相互関連性が必要な書類が重要書類に限定される

領収書をスキャンする方法は?

電子帳簿保存法の要件に適したスキャンをするには、スキャナ保存の要件でも取り上げたように、解像度200dpi(ドット・パー・インチ)以上、赤・緑・青の階調各256階調以上(一般書類については白から黒までの(グレースケール)階調256階調以上)の要件を満たす機器を使用してスキャンします。

具体的な方法としては、次のような機器を使用したスキャンが考えられるでしょう。

  • スキャナを利用した保存
  • コピー機・複合機を利用した保存
  • スマートフォンなどのアプリを利用した保存
  • デジタルカメラを利用した保存

「スキャナ保存」ですが、スキャナ以外にも複合機やスマートフォンなどによる保存が認められていることがわかります。スキャナ保存といわれるのは、制度の創設当時、原稿台と一体になったもののみに限定されていた名残です。

領収書をスキャナ保存するメリット

原本保存からスキャナなどを利用したスキャナ保存に切り替えることで、次のようなメリットが考えられます。

  • 倉庫など領収書保管のためのコストが削減できる
  • システム上から領収書のデータを探すことができる
  • 災害などによる紛失リスクを低減できる
  • スマートフォンアプリなどでリモートでもやり取りできる
  • 帳簿との紐付けで監査や税務調査に対応しやすくなる

確定申告を行う個人事業主にとってもメリットはあります。原則として、青色申告者の場合は7年、白色申告者の場合は5年、領収書の保存義務がありますが、スキャナ保存を適用すれば原本を保存する必要がなくなるためです。領収書などの保存でスペースが圧迫されている場合は、スキャナ保存の適用を積極的に検討すると良いでしょう。

領収書をスキャナ保存する際の注意点

スキャナやスマートフォンアプリなどを利用した方法で領収書をスキャナ保存する際は、次の点に注意しましょう。

  • スキャナ保存を導入することでかえって作業が増えないように業務フローを設計する
  • スマートフォンアプリによる経費精算ではアプリの利用法をはじめ、精算方法をあらかじめ周知する必要がある
  • 領収書の使いまわしが起こらないよう体制を整える必要がある
  • データで受領した領収書は「電子取引」に該当するため、電子保存が必須となる

まず、会社でスキャナ保存を導入する場合は、経費精算時の領収書の保存や使いまわし防止について体制を整え、社員に周知しておく必要があります。

また、紙の領収書はスキャナ保存の要件を満たせば良いのですが、もともとデータで受領した領収書は電子取引にあたるため、電子取引による電子保存の要件を満たさなければなりません。電子取引については紙で受領したものと異なり、電子保存が義務化されているので注意しましょう。

スキャナ保存の要件を満たせば領収書の原本は破棄して良い

以前の電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件では、一定の領収書の原本は保存する必要がありましたが、現在はスキャンしたものと原本が同等か最低限の確認を行えば、すぐに破棄できるようになりました。

かさばる領収書をうまく保存し、領収書の管理体制を向上させるためにも、電子帳簿保存法の要件を満たすスキャナ保存への移行を検討してみても良いかもしれません。

よくある質問

領収書をスキャンした場合、原本は破棄しても良いですか?

電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たして電子保存をすれば、スキャンした領収書は原本を破棄して問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。

領収書をスキャンして保存するメリットは何ですか?

保管コストの削減、検索のしやすさ、災害などによる紛失リスクの低減、リモートでの対応のしやすさ、監査や税務調査の対応のしやすさにメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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