- 更新日 : 2024年10月22日
ミュージシャンの請求書の書き方を解説!テンプレートも
フリーのミュージシャンというと「華々しい表舞台の人」というイメージがあるかもしれませんが、実際には、個人事業主として経理や管理業務も行なわなければならず、音楽とは別の知識も必要とされます。例えば、演奏会や講演会のため遠方に赴いた場合には、食費や宿泊費、もちろん交通費もかかります。それらの費用を依頼者に請求するには、請求書を作成し、送付しなければなりません。仕事によっては出演料・衣装代・化粧代・ヘアメイク代なども発生するでしょう。請求書なくして支払う依頼者はあまりいません。
音楽を仕事として成り立たせるためには、請求書作成の知識が必須なのです。ここでは、フリーのミュージシャンが作成する請求書の書き方と注意点についてご紹介します。
目次
幅広い業務
ミュージシャンとは、実際、どのような人のことを言うのでしょうか。ミュージシャンと一言でいっても、実にさまざまな職業が含まれています。「歌手」「ギタリスト」「ピアニスト」「ドラマー」など楽器演奏者のほか、あらゆる音楽ジャンルの歌う人、歌う人をサポートするバックミュージシャンもミュージシャンと呼ばれることがあります。共通することは音楽を「職業」として、プロの仕事をして報酬受取る人たちです。
請求書を理解するための基礎知識
会社に属して給料をもらっているミュージシャン以外に、フリーランスや自分で事務所を経営している場合は請求書を発行します。請求書を書く前にミュージシャンの必要経費について知っておきましょう。
必要経費の線引き
依頼主への請求金額に含まれるのは、商品・行為に対する「対価としての代金」と、それを遂行するためにかかった「経費」の2点となります。経費には、依頼主に請求することのできるものと、税務上経費として計上するものとがありますので、どこで線引きすべきかを見きわめなければなりません。どこまでを経費として請求するかは、依頼主と契約時に決めておくべきことです。
ミュージシャンの主な請求項目
一般的なミュージシャンの請求項目には、以下のようなものが挙げられます。
1.演奏代・作曲代・編曲料
2.食費・交通費・宿泊費
こういった費用は、イベント出演のために遠征するといった場合に発生します。交通機関に制限はあるのか、宿泊費の上限はいくらなのか、といったことをあらかじめ依頼主に確認しておきましょう。
3.衣装代・化粧代・ヘアメイク代
テレビ出演・ステージ・撮影用の衣装・化粧代として購入し、かつ業務上でのみ使用するものが必要経費になります。このうちどこまで請求できるのかは依頼主との契約次第ですが、依頼された案件でしか使用できないもの(使い回しのできない衣装や小物など)は出来る限り請求できるように交渉しましょう。
4.指導料・講師料
出張指導の場合の交通費や別途スタジオを借りる場合の負担者など。これは事前に書面にて規定を作成しておきましょう。依頼者とのやり取りが簡潔になり、請求時のトラブル発生も防ぎます。
以上、4項目を挙げましたが、このうち、「1.演奏代・作曲代・編曲料」「4.指導料・講師料」は源泉徴収の対象となります。源泉徴収とはいったい何でしょうか?
源泉徴収制度とは
この場合の源泉徴収は、ミュージシャンへの仕事を依頼した者(依頼者)が、請求代金の支払い時に前もって税金分を差し引いて支払い、差し引いた税金は依頼者が直接国に納めるという形をとります。フリーのミュージシャンが請求書を送付する際に、源泉徴収分を記載しておくなら、依頼主が源泉徴収をして支払う際に間違いが少ないでしょう。
源泉徴収の対象になるもの
源泉徴収の対象となる収入項目のうち、ミュージシャンの業務に関わりが深いものを挙げてみます。
1. 演奏代・作曲代・編曲料
2. 指導料・講師料
3. 著作権の使用料
音楽著作権について
ライブやイベントで他人の楽曲を使用する場合、音楽著作権による使用料が発生します。著作権をミュージシャン本人が管理している場合は、利用料については本人と使用者で話し合います。一方、著作権管理事業者に管理を委託している場合は、管理事業者所定の手続き・使用料により楽曲の使用が可能です。この場合は管理事業者からミュージシャン本人へ使用料の分配がなされますが、やはり源泉徴収されます。(主な管理事業者は「JASRAC(一般社団法人日本音楽著作教会)」「JRC(株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス)」「e-License(イー・ライセンス)」となります。)音楽著作権も忘れることなく、請求書を手配するようにしましょう。
ミュージシャンの請求書作成にともなう注意点
基本的な注意点には、締日や支払い日は相手先に合わせたものになっているか、請求書の送付方法は郵送・FAX・メールのどれなのか、振込手数料の負担者は誰なのか、といった細かい点もあります。依頼主との信頼関係を築くためにも必要なことですので、事前にきちんと確認しておきましょう。細かい取り決めは請求書の備考欄(書き方例:青枠内)に記載すると親切です。
復興特別所得税にかかわる注意点
音楽業界では請求額をきりのいい数字にする「並び」という慣習がありました。源泉徴収した後の金額がきり良くなるように元々の代金を設定するというものです。源泉徴収税率が10%の時代には容易にできたことですが、平成25年からは所得税に復興特別所得税が加えられたため、税率が10.21%になりました。そのため、計算上、「並び」を使用することは難しいでしょう。
なお、復興特別所得税は令和19年12月31日までの時限措置です。その後の税率は変わる可能性がありますので、場合によっては「並び」が復活することもあるでしょう。(書き方例:赤枠内参照)
消費税にかかわる注意点
請求書を作成するにあたってもうひとつ気をつけておかなければならないのが、消費税の記入方法です。契約の際に報酬価格が「内税(税込価格)」なのか「外税(税抜価格)」なのかをしっかりと確認しておきましょう。また、内訳には軽減税率の対象とならない品目(10%)と対象となる品目(8%)の小計を分けて記載し、それぞれの消費税額を明らかにします。(書き方例:赤枠内参照)
*赤枠内が「消費税」「源泉徴収」欄になります。原則として、源泉徴収は消費税も含む総代金に関してかかりますが、報酬と消費税の区分が明確な場合は、報酬にのみ源泉徴収税がかかります。
まとめ
フリーのミュージシャンが作成する請求書の書き方や請求項目の具体例を紹介しました。請求するときに注意しなければいけないこと、どんな仕事を請求できるのか、契約時に依頼主と契約内容を確認し、正しい知識で正しい金額を請求しましょう。
参考:
・源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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