• 更新日 : 2022年10月13日

見積書と発注書が果たす役割を改めて確認しよう

見積書と発注書が果たす役割を改めて確認しよう

不動産やバイクを購入する前に見積もりをとったり、引っ越しなどの作業を委託する前に見積もりをとったりするなど、複数の取引先を比較し、選定するために発行してもらう見積書ですが、必ず発行しなければならない法的な義務はあるのでしょうか。

また取得した見積もりに対して購買の意志を相手に伝達するための発注書を発行しないと、契約は成立しないのでしょうか。見積書や発注書は、法的な側面でどのような役割を果たしているのかを解説します。

見積書が果たす役割

見積書は契約を締結する前段階で交わされる書類です。

商談内容を具体的な数値で表記した書類となり、発行した側には契約を促進させる効果があります。

そのため記載する内容は、
・有効期限
・納品までにかかる日数
・変動可能な金額
などが挙げられます。

見積書を発行する場合の注意点ですが、見積書を提示し契約が成立したあとに為替が変動したり、仕入先の原価が変更したりするようなことがあらかじめ予測される場合は、価格が変更する可能性があることを見積書に記載するようにしましょう。

また、価格が変更した場合の見積書を別に作成することによって、契約締結後のトラブルを未然に防ぐことにつながります。

見積書に有効期限を記載することによって提示した価格を保証するだけでなく、購買意思を誘発する効果を期待することができます。

当初の見積書に対して交渉を行ない取引内容が変更となった場合、交渉内容を反映させた新しい見積書を発行してもらうことも、トラブル回避の手段となります。

交渉内容を書面に残さずに発注してしまうと、提示された初回の見積書の内容と異なる内容で発注することになるため、意思疎通が上手く機能せず、契約が成立しなくなる可能性が出てきます。口頭で交渉したことは必ず書面で残すようにすることで、交渉をスムーズに進めることができます。

取引先によって見積書を発行してもらえない場合、見積書を発行してもらうための法的根拠を以て発行を要求することはできませんが、その相手と取り引きする価値があるかどうか、取り引きすることによってトラブルに発展しないかどうか、契約を締結してしまう前に一度検討してみましょう。

見積書を発行してくれる他の取引先を見つけたほうが、納品までのやり取りを気持ちよく行なうことができます。

発注書の果たす役割

売買契約や請負契約は民法上の契約種類のうち諾成契約に該当するため、原則として発注書や受注書などの書面は不要で、お互いの意思さえあれば契約は成立します。しかし、お互いの意志を可視化できる形で残すことができるという側面から、発注書や受注書といった書類を作成します。

どのような契約であったとしても、締結するためには「申込み」と「承諾」が必要になります。発注書は契約を成立させるための「申込み」という役割を果たし、受注書や注文請書は「承諾」という役割を果たしていることになります。

見積もりと発注

そのため発注書に記載する内容が、見積書と異なる内容であったとしても、注文を受けた受注側で承諾すれば契約成立となり、承諾しなければ契約不成立となります。

また、見積書の有効期限を過ぎてから発注書を以て申し込みを行なったとしても、受注側が承諾すれば契約は成立し、拒否すれば契約は成立しません。

見積書と発注書の発行義務は?

見積書は契約締結前や購買前に作成されるという性質があることから、発行を義務付ける法的拘束力はなく、商慣習によって作成される書類となります。しかし発行を義務付ける法的拘束力がないとはいえ、記載した内容を撤回するなどの行為が認められているわけではありません。

契約締結後に取引先の都合によって価格が変更された場合は、最終的に合意することになった見積書に記載された金額が対抗手段となり得ます。契約の内容や締結に至るまでのプロセスは案件によって異なるため、見積書を書面で残しておくことによってトラブルを抑止する効果を期待することができます。

発注書は申込方法によって作成しなければならない場合があります。入金確認後に商品が発送されるという契約内容であれば、発注書ではなく入金という手段によって注文を行なうこととなるため発注書を発行する必要はありませんが、発注書を送付することによって契約成立となる場合は、入金を先に済ませたとしても契約が成立することにはならないことも考えられます。

まとめ

見積書や発注書は契約を成立させるために必要な書類となります。

請求書領収書に比べて法的効力が弱いと思われがちですが、契約締結後に請負契約書や売買契約書が交わされなかった場合においては、最終的な合意金額を示す唯一の書類となります。

金額や作業工程の多い契約は必ず見積書や発注書を作成するようにするとともに、トラブルに発展したときに備えて適切に保存するようにしておくことが重要となります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事