- 更新日 : 2024年10月17日
インボイス制度が個人タクシーに与える影響まとめ
2023年10月から始まるインボイス制度は個人タクシーにとって留意すべき制度といえます。インボイス制度の影響で個人タクシー事業者は収入が下がるリスクがあるのです。
インボイスを発行できない個人タクシーは、運賃の消費税が経費で落とせなくなるため、会社員が利用を敬遠する恐れがあります。今回はインボイス制度が個人タクシーに与える影響や、対応方法について解説します。
目次
個人タクシーとインボイス制度の関わり
個人タクシーはインボイス制度の影響を大きく受ける業種です。インボイス制度とは消費税の仕入税額控除に関するものです。
企業は取引先から消費税の適用税率や消費税額の記載がある請求書や領収書等(インボイス)の提出を受けないと仕入税額控除を行えなくなります。
ここではインボイス制度が個人タクシーにどのような影響を与えるか、解説します。なお、インボイス制度の概要については、以下の記事も参考にしてみてください。
個人タクシーにはどんな影響があるのか
インボイス制度に対応していない個人のタクシー事業者は利用者が減り、売上が減る可能性があります。タクシー代金の消費税を仕入税額控除できないため、個人タクシーを利用する会社員が減るかもしれません。
インボイス制度では、仕入に要した消費税を控除する「仕入税額控除」の適用を受けるために、取引先から適用税率や消費税の合計額などを記載したインボイスの発行が必要です。
インボイスを発行できるのは消費税の課税事業者だけにとどまり、免税事業者は認められません。年間の売上が1,000万円以下の事業者は免税事業者になるため、個人タクシーの業者は免税事業者のケースが多いです。
会社員は免税事業者の個人タクシーを利用するのを避け、課税事業者のタクシーを使うことになるでしょう。
個人タクシーはどんな対応をしなくてはならないのか
免税事業者のままでは乗客が減る恐れが高いため、適格請求書発行事業者、つまり消費税の免税事業者から課税事業者へ変更する手続きが求められます。
インボイス制度がはじまる2023年10月1日から登録を受けたい場合、2023年9月30日までに納税地を所轄する税務署に対して、登録申請書を提出する必要があります。登録申請は窓口や郵送のほか、e-taxでも可能です。
免税事業者が新たに登録を受けるには、原則「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる必要があります。なお、適格請求書発行事業者への登録日が2023年10月1日から2029年9月30日までが属する課税期間内なら、消費税課税事業者選択届出書を提出せずとも登録を受けられます。
個人タクシーの収入はどうなる?パターン別に整理
インボイス制度の導入は個人タクシー事業者に影響を与える可能性があります。なぜなら従来通り免税事業者のままでは利用者が減る恐れが高いためです。また課税事業者に変更しても、消費税の負担分、利益が減るでしょう。
利益に影響を受けないケースも考えられますが、あまり現実的ではありません。インボイスによる個人タクシーの収入に対する影響をパターン別に解説します。
収入が変わらないケース
タクシーの利用者がインボイスを必要としなければ、免税事業者の個人タクシーを今まで通り使ってもらえるため、収入が変わらないでしょう。
インボイスを必要としないケースとは、タクシー利用者の会社員が所属する会社が免税事業者、もしくは簡易課税制度の適用、2割特例を受けている場合です。免税事業者はそもそも消費税の納税義務がないため、インボイスを必要としません。
簡易課税制度とは仕入税額控除の計算に、業種ごとに定められたみなし仕入率を利用する方法です。実際に支払った消費税の金額を明確にする必要がないため、仕入税額控除を受ける事業者であってもインボイスの発行を求めません。
2割特例とは、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合、3年間は売上にかかる消費税の2割のみ納付すれば良いという特例です。こちらも、簡易課税制度と同様に、実際に支払った消費税の金額を明確にする必要はありません。
また、規模の大きくない(基準期間における課税売上高が1億円以下)会社では、インボイス制度が始まってから6年間、1万円未満の支払いについてインボイスの保存が不要です(帳簿付けは必要)。
そのため、近距離利用の場合、この特例に該当する会社に勤めている会社員は、個人タクシーを今まで通り使うことになるでしょう。
収入が下がってしまうケース
まず免税事業者のままでは利用者が減る恐れが高く、収入は下がってしまうでしょう。会社は利益を多く出すために、なるべく多く経費にできる方法を推奨します。
仕入税額控除の適用を受けられないから、全社的な方針で免税事業者の個人タクシーの利用を避けるよう社員に周知するかもしれません。
また課税事業者になった場合でも、収入が下がる可能性は高いです。課税事業者は今まで支払う必要がなかった消費税を納める義務が発生します。
いずれにせよ、インボイスの導入はタクシー運転手の収入が下がる要因となり得るでしょう。
個人タクシーの運転手はインボイス制度の影響大
インボイス制度の適用によって、タクシー運転手は収入が減る恐れが高いです。利用者減を避けるためには課税事業者の登録が必要です。
マネーフォワード クラウドの「インボイス制度の登録申請」なら、適格請求書発行事業者の登録申請書をフォームに沿って入力するだけで簡単に作成できます。
しかし、課税事業者になった場合は消費税を納める義務が生じる ため、利用者が減らなくても収入は下がってしまうでしょう。
利用者が属する会社が免税事業者、もしくは簡易課税制度の適用を受けているなら個人タクシーの収入に影響は与えませんが、全ての利用者が該当するとは考えにくいです。
インボイスは個人タクシーの経営に打撃を与える可能性が大きいため、注意しましょう。
参考:インボイス制度の概要|国税庁
参考:免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A|公正取引委員会
参考:特集インボイス制度公表サイト|国税庁
よくある質問
インボイス制度とは?
仕入税額控除の適用条件が変更になる制度で、消費税の税率や納税額を記した適格請求書の発行が求められます。詳しくはこちらをご覧ください。
インボイス制度の導入で個人タクシーの収入はどうなる?
免税事業者のままだと利用客が減り、結果的に収入が減る恐れがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
リバースチャージ方式とは?消費税法改正で課税方式が変わった!
平成27年(2015年)4月の消費税法改正では新しく「リバースチャージ方式」という課税方式が一部の取引に適用されることになりました。 ここではこのリバースチャージ方式の仕組みを解説するとともに、消費税法改正などの他の内容についても簡単に説明…
詳しくみるインボイス制度で個人事業主の廃業を防ぐには?売上シミュレーションや対策を解説
インボイス制度の導入によって、個人事業主の廃業が増えると言われています。免税事業者との取引ではインボイスが発行されず、仕入税額控除が使えないためです。 インボイス制度では経過措置や補助金を活用して、適切な対策をとることが重要です。今回の記事…
詳しくみる適格返還請求書とは?必要なケースや書き方を解説【ひな形つき】
適格返還請求書(返還インボイス)とは、適格請求書発行事業者が発行する請求書等のうち、売上にかかわる返品や値引きを行う際に交付する書類です。この記事では、適格返還請求書の発行のタイミングや保存、書き方や注意点などを解説していきます。 適格返還…
詳しくみるインボイス制度・適格請求書等保存方式では領収書とレシートどっちが良い?
2023年10月1日より導入される「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」では、条件を満たせば領収書やレシートを簡易インボイスとして交付できます。どちらを利用しても制度上は問題ありませんが、実際のところ領収書とレシートのどちらがインボイス…
詳しくみるインボイス制度が運送業の個人事業主に与える影響とは?
インボイス制度は、仕入税額控除の観点で運送業を営む個人事業主にも大きな影響を及ぼします。免税事業者の場合、課税事業者にならなければ適格請求書を発行できません。 インボイス制度が開始する2023年10月1日に備え、運送業を営む方は自身が免税事…
詳しくみるインボイス制度が整体院や整骨院に与える影響まとめ
2023年10月から導入されるインボイス制度とは、所定の要件を満たした適格請求書を交付することで、受領した側において仕入税額控除が受けられる制度です。インボイス制度の導入は、さまざまな事業者に影響を与えます。 整体院や整骨院、鍼灸院なども影…
詳しくみる