- 更新日 : 2025年3月18日
請求書発行システムとは?主な機能やメリット、選び方まで徹底解説
企業の経理業務において、請求書の作成や管理は欠かせない業務の一つです。しかし、手作業による請求書の作成や管理には、多くの手間がかかるだけでなく、ミスのリスクも伴います。特に、取引件数が多い企業では、請求業務にかかる時間とコストが大きくなり、業務効率の低下を招くこともあります。
こうした課題を解決する手段として、多くの企業が導入しているのが請求書発行システムです。請求書発行システムを活用することで、請求書の作成や送付、管理、入金確認といった業務を自動化でき、業務効率の向上と人的ミスの削減が可能になります。また、近年の法改正や郵便料金の値上げ、リモートワークの普及などにより、請求業務のデジタル化が求められるようになっています。
本記事では、請求書発行システムの基本的な仕組みや必要性、導入するメリット、選定のポイントについて詳しく解説します。請求業務の効率化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
請求書発行システムとは
請求書発行システムとは、企業が取引先に対して発行する請求書の作成・送付・管理を支援するソフトウェアやクラウドサービスのことです。従来の紙ベースの請求書作成やExcelによる管理では、作業の手間やミスのリスクが高くなりがちでした。しかし、請求書発行システムを導入することで、請求業務の大部分を自動化し、業務の効率化と正確性の向上を実現できます。
請求書発行システムが必要とされる背景
近年、請求書発行システムの導入は企業にとって避けられない流れとなっています。その背景には、法制度の改正やリモートワークの普及など、さまざまな要因が関係しています。ここでは、請求書発行システムが求められる理由を詳しく解説します。
電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入
企業の請求業務には、法制度の改正に伴う対応が求められることが増えています。特に、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入により、請求書の電子化や適格請求書の発行が求められるようになりました。
2022年の電子帳簿保存法の改正により、電子データでやり取りした請求書は原則として電子保存が義務付けられました。これに対応するためには、適切なフォーマットでデータを管理し、監査時にもスムーズに対応できる環境を整える必要があります。
また、2023年10月から施行されたインボイス制度では、適格請求書を発行するための要件が厳格化されました。
請求書発行システムの多くは、これらの法制度に対応した機能を備えており、適格請求書の発行や電子保存を容易に行うことができます。そのため、法改正に伴う業務負担を軽減するためにも、請求書発行システムの導入が有効です。
郵便料金の値上げ
請求書の送付には、これまで多くの企業が郵送を利用してきましたが、近年の郵便料金の値上げにより、請求業務にかかるコストが増加しています。特に、大量の請求書を発行する企業にとっては、郵送費の負担が大きくなっています。
請求書発行システムを導入すれば、請求書を電子メールで送付することで、郵送費を削減できます。また、郵送代行サービスを活用することで、印刷や封入の手間を省きながら、コストを抑えることが可能になります。こうした電子化の流れは今後さらに加速すると考えられ、郵便料金の値上げ対策としても請求書発行システムの導入は有効です。
請求書発行システムの主な機能
請求書発行システムは、単に請求書を作成するだけではなく、送付、保管、入金管理、さらには他の業務システムとの連携まで多岐にわたる機能を備えています。これにより、企業の請求業務全体を効率化し、正確性を向上させることができます。ここでは、請求書発行システムの主な機能について詳しく解説します。
請求書の作成
請求書発行システムの基本機能として、請求書の作成が挙げられます。ほとんどのシステムでは、あらかじめ用意されたテンプレートを利用することで、簡単に請求書を作成できます。企業のロゴや社判を挿入したり、取引先ごとに異なるフォーマットを適用したりすることも可能です。
また、取引先の情報や請求内容をシステムに登録しておくことで、請求書作成時に自動入力が行われ、手入力の手間を大幅に削減できます。消費税や源泉徴収税の自動計算機能も搭載されているため、金額の誤入力を防ぐことができます。
さらに、一部のシステムでは、作成した請求書から見積書や納品書、領収書へ簡単に変換できる機能も備えています。これにより、同じ取引に関連する書類を一括で管理し、業務の負担を軽減できます。
請求書の送付
作成した請求書を取引先に送付する方法として、メール送信と郵送の両方に対応したシステムが一般的です。メール送信の場合、PDF形式で請求書を添付し、ワンクリックで送信できます。また、セキュリティ対策として、パスワード保護を設定したり、送信履歴を管理したりする機能もあります。
一方、紙の請求書を希望する取引先向けに、印刷から封入、発送までを代行する郵送サービスを提供するシステムもあります。これにより、企業は請求書の郵送業務にかかる手間を削減しながら、取引先のニーズにも柔軟に対応できます。
さらに、システムによっては、オンライン上で請求書を共有し、取引先がダウンロードできる機能を備えているものもあります。これにより、取引先の利便性を高めることができます。
請求書の管理
発行した請求書を適切に管理し、必要なときに迅速に検索できる機能も重要です。電子帳簿保存法に対応した請求書発行システムでは、法的要件を満たしながらペーパーレス化を進めることができます。
また、多くのシステムでは、取引先別、発行日別、請求ステータス別に請求書を検索できる機能を備えています。これにより、過去の請求書をすぐに見つけることができ、再発行や修正が容易になります。
さらに一部のシステムでは、請求書の変更履歴を記録し、誰がいつ修正したのかを追跡できる機能を提供しています。これにより、内部監査や外部監査に対応しやすくなります。
入金管理・消込処理
請求書の発行後、取引先からの入金を正しく管理することも重要です。請求書発行システムの中には、銀行口座と連携し、入金情報を自動で取得し、請求データと照合(消込処理)できる機能を備えたものがあります。これにより、未入金の請求書を自動で特定し、支払いの催促を行うことができます。
一部のシステムでは、入金の遅れが発生した際に、自動でリマインドメールを送信する機能も搭載されています。これにより、督促業務の負担を軽減し、入金の遅延を最小限に抑えることができます。
また、売掛金の状況をリアルタイムで把握できる機能もあり、キャッシュフローの管理をよりスムーズに行うことが可能です。
アラート・通知機能
請求業務の進捗をリアルタイムで確認できる機能も、多くの請求書発行システムに搭載されています。たとえば、送信した請求書が取引先に開封されたかどうかを確認できる機能や、未開封の場合にリマインダーを自動送信する機能が備わっていることがあります。
また、支払い期限が近づいた請求書について、アラートを出す機能も便利です。これにより、経理担当者は未入金のリスクを事前に把握し、早めに対応することができます。
他のシステムとの連携
請求書発行システムは、単体での運用だけでなく、他の業務システムと連携することで、さらなる業務効率化を図ることができます。特に、会計ソフトと連携することで、請求書の発行と同時に売上計上を自動で行うことができます。
また、販売管理システムや顧客管理システム(CRM)、基幹システム(ERP)と連携することで、取引先情報や受注データを自動で取り込み、請求書作成の手間を大幅に削減することが可能になります。
システム連携の方法としては、APIを利用したリアルタイム連携や、CSVファイルを活用したデータインポート・エクスポート機能などが一般的です。特に、クラウド型の請求書発行システムでは、各種クラウドサービスとの連携が容易になっています。
請求書発行システムを導入するメリット
請求書発行システムを導入することで、企業の経理業務が大幅に改善される点が注目されています。ここでは、請求書発行システムを導入することで得られる具体的なメリットについて解説します。
請求業務全体の効率化
従来の請求業務では、請求書の作成、印刷、封入、郵送、入金管理など、複数の工程が必要でした。これらの作業には多くの時間と労力がかかり、特に取引件数が多い企業では負担が大きくなります。
請求書発行システムを活用すれば、請求書の作成は取引データを入力するだけで自動化され、ボタン一つで発行できるようになります。また、送付もメール送信や郵送代行サービスを利用することで、封入や発送の手間を削減できます。さらに、入金状況の管理や未入金の督促もシステム上で一元管理できるため、経理業務全体の負担が軽減されます。
請求書発行のコスト削減
請求書の発行には、紙代、印刷代、郵送費、人件費など、さまざまなコストがかかります。特に、郵送を利用する場合は、封筒や切手代、発送作業の手間がかかり、コストがかさみがちです。請求書発行システムを導入し、電子請求書を活用することで、これらのコストを大幅に削減できます。
また、クラウド型の請求書発行システムを利用すれば、サーバーの管理やシステムのメンテナンスにかかるコストも不要になります。これにより、運用コストを抑えながら効率的に請求業務を行うことが可能になります。
手作業によるミスの削減
手作業で請求書を作成すると、計算ミスや入力ミス、取引先情報の誤入力などが発生しやすくなります。こうしたミスがあると、取引先とのトラブルの原因となり、修正作業にも時間がかかります。請求書発行システムを利用すれば、あらかじめ登録されたデータを自動で反映できるため、入力ミスを防ぐことができます。
また、消費税や源泉徴収税の計算もシステムが自動で行うため、計算ミスを防ぐことが可能です。さらに、適格請求書の発行機能を備えたシステムであれば、インボイス制度にも対応し、法的要件を満たした請求書を正確に作成できます。
取引先からの信頼性向上
請求書の発行ミスや遅延は、取引先との信頼関係に影響を与える要因の一つです。正確かつ迅速に請求書を発行し、スムーズな取引を実現することは、取引先の満足度向上につながります。
請求書発行システムを活用することで、取引先の要望に応じたフォーマットで請求書を発行したり、Web上で請求書をダウンロードできるようにしたりすることができます。また、請求履歴をシステム上で管理できるため、取引先からの問い合わせにも迅速に対応できます。こうした対応の迅速化により、取引先との関係をより強固なものにすることが可能になります。
セキュリティの強化
請求書には、企業の財務情報や取引先の機密情報が含まれるため、適切な情報管理が求められます。請求書発行システムを導入すれば、データの暗号化やアクセス制限、二要素認証などのセキュリティ機能を活用し、情報漏洩のリスクを低減できます。
また、システム上でアクセスログを管理することで、誰がいつ請求書を作成・修正・閲覧したかを追跡することも可能になります。これにより、不正アクセスやデータの改ざんを防ぎ、内部統制の強化にもつながります。
請求書発行システムの導入する際のポイント
請求書発行システムの導入にあたっては、事前にしっかりと準備を行い、自社の業務フローに適したシステムを選定することが重要です。ここでは、導入前に考慮すべき注意点やポイントを詳しく解説します。
自社の請求業務の課題を明確にする
請求書発行システムの導入を検討する際、まず最初に行うべきことは、自社の請求業務における課題を明確にすることです。請求業務のどの部分が非効率なのか、どのような作業に時間がかかっているのかを把握することで、導入後に期待できる効果が見えてきます。
たとえば、「請求書の作成に時間がかかっている」「取引先ごとに異なる請求フォーマットを使っているため、ミスが発生しやすい」「請求書の送付方法が紙とメールの両方で、管理が煩雑になっている」といった課題がある場合、それらを解決できるシステムを選ぶことが重要です。漠然とシステムを導入するのではなく、解決すべき課題を整理し、システム選定の基準を明確にすることが成功のカギとなります。
請求書発行システムに必要な機能を明確にする
請求書発行システムにはさまざまな機能がありますが、すべての機能が自社にとって必要とは限りません。導入後に「不要な機能が多く、複雑で使いづらい」と感じることがないように、必要な機能を事前にリストアップすることが大切です。
基本的な機能として、請求書の作成、送付、保管、入金管理などがありますが、さらに細かく見ると、定期請求の自動化、未入金時の督促メールの自動送信、銀行口座との自動連携、他の業務システムとのデータ連携など、より高度な機能を備えているシステムもあります。自社の業務フローに適した機能を選択し、必要のない機能が多すぎるシステムを避けることで、使い勝手の良いシステムを導入できます。
既存の業務フローとの整合性を確認する
新しいシステムを導入する際に注意すべき点の一つが、既存の業務フローとの整合性です。請求業務には、取引先との関係や社内の承認フローなどが関係しており、これらを無視してシステムを導入すると、逆に業務の負担が増えてしまうことがあります。
例えば、請求書の発行前に社内で承認プロセスが必要な場合、導入するシステムに承認ワークフロー機能がなければ、システムを使っても結局は別の手段で承認を取る必要があり、手間がかかることになります。また、既存の販売管理システムや会計ソフトと請求データを連携させる必要がある場合、連携が可能なシステムを選ぶことが重要です。
システムの導入によって業務フローがどのように変化するのかを事前にシミュレーションし、現場の担当者とも十分に協議した上で選定を行うことが望まれます。
取引先が電子化に対応しているか確認する
請求書の発行方法を電子化する場合、取引先が電子請求書に対応しているかどうかを事前に確認する必要があります。すべての取引先が電子請求書に対応しているわけではなく、従来の紙の請求書を希望する取引先も存在するためです。
電子請求書を導入した企業の中には、「取引先がPDF請求書の受領を認めておらず、結局紙の請求書を発行する必要がある」という課題に直面するケースもあります。そのため、システム選定時には、電子請求書と紙の請求書の両方に対応できるシステムを選ぶのが望ましいです。また、取引先への通知や説明を事前に行い、スムーズな移行を促すことも重要になります。
セキュリティ対策を確認する
請求書には取引先の情報や金額、取引内容などの重要なデータが含まれているため、セキュリティ対策が十分に整っているシステムを選ぶことが不可欠です。特にクラウド型の請求書発行システムを利用する場合、データの暗号化、アクセス制限、二要素認証などのセキュリティ機能が備わっているかを確認することが大切です。
また、システム提供会社の信頼性もチェックする必要があります。過去に情報漏洩の事例がないか、サーバーの運用体制はどのようになっているか、バックアップ体制は整っているかといった点も考慮することで、安全にシステムを運用することができます。
サポート体制を確認する
請求書発行システムを導入した後、システムの操作方法がわからなかったり、トラブルが発生したりすることがあります。そのため、導入後のサポート体制がしっかりしているかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
具体的には、電話やメール、チャットなどの問い合わせ窓口があるか、サポート対応の時間帯はどうなっているか、システムの使い方を学べるマニュアルやFAQが充実しているかといった点をチェックします。また、システム導入時に初期設定や操作研修を行ってくれるサービスがあるかどうかも確認すると、スムーズに運用を開始できます。
無料トライアルで使いやすさを確認する
多くの請求書発行システムでは、無料トライアルを提供しています。実際にシステムを試すことで、使いやすさや操作性を確認し、自社の業務に適しているかを判断できます。
無料トライアルを活用する際は、実際に請求書を作成・送付し、業務フローがどのように変わるかを検証するとよいでしょう。経理担当者が直感的に操作できるか、必要な機能が備わっているか、動作がスムーズかなどを確認し、本格導入の判断材料とします。
請求書発行システムを導入して業務を効率化しましょう
請求書発行システムは、企業の請求業務を効率化し、正確性を向上させるために不可欠なツールです。従来の手作業による請求業務では、時間とコストがかかる上、人的ミスのリスクが避けられませんでした。しかし、請求書発行システムを導入することで、請求書の作成から送付、入金管理までを一元化し、自動化することができます。
請求書発行システムの導入を検討する際には、自社の業務フローとの適合性や必要な機能、セキュリティ対策、サポート体制などをしっかりと確認し、適切なシステムを選定することが重要です。適切なシステムを導入し、活用することで、請求業務の負担を軽減し、より戦略的な業務に集中できる環境を整えることができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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