- 更新日 : 2024年10月17日
請求書に記載が必要な項目とは?適格請求書の必要事項も解説
請求書の作成にあたっては、消費税の仕入税額控除を受けるために一定の項目の記載が求められます。今回は請求書にどのような項目を記載すべきか、2023年10月から開始が予定されるインボイス制度で記載項目に変化があるかについて解説していきます。
目次
請求書に記載が必要な事項
請求書の書式に定めはありませんが、請求先の事業者が消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには、請求書に一定項目の記載が求められます。
なお、仕入税額控除とは、消費税の二重課税を防ぐ制度のことをいいます。仕入税額控除について詳しくは、下記記事で解説しています。
ここでは、仕入税額控除を受けるのに必要な請求書の5つの記載事項を、具体的な記載例と共に見ていきましょう。
請求者名
請求書等では、「書類作成者の氏名または名称」の記載が求められます。つまり、請求者である法人の名称または個人事業主の氏名などが必要ということです。
慣習として住所や請求書発行側の担当者名、電話番号、FAX番号、メールアドレスなどが記載されることがあったり、会社印が押されたりすることもありますが、仕入税額控除を受ける上でこのような項目は必須ではありません。
【記載例】
○○株式会社(法人の場合)屋号+氏名(個人事業主の場合)
取引年月日
取引年月日は、請求書発行者が課税資産の引き渡しや貸付けおよび役務の提供を行なった日です。請求書の発行日とは異なることがありますので注意しましょう。
商品の引き渡しやサービスの提供日と請求書発行日が同日だった場合はその日付を、1カ月など複数の取引をまとめて請求する場合は取引ごとの日付を取引年月日として記載します。
【記載例】
2023年4月1日(西暦で表記する場合)令和5年4月1日(和暦で表記する場合)
取引内容
請求者がどのような商品やサービスを提供したのか取引の内容を記載します。商品名や製品名など具体的に記載するのが一般的です。また、軽減税率導入後の区分記載請求書からは軽減税率対象の品目があればその旨を記載することが必要になりました。
【記載例】
取引金額
請求者が引き渡した商品やサービスの譲渡対価として受け取る額(取引金額)の税込価格も請求書に記載する必要があります。なお、区分記載請求書からは税率ごとに合計して取引金額を明記することが求められています。
【記載例】
合計金額 100,000円(8%対象8,000円 10%対象 92,000円)
請求書の交付を受ける事業者名
請求書の記載項目には「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」も求められます。誰宛てに請求しているものなのか明らかにするためです。
なお、請求者名と同様に請求先の住所や電話番号などの記載は求められていません。通常は、相手の法人名や個人名に敬称を付けて記載します。
【記載例】
○○株式会社 御中(法人の場合)
○○○○ 様(個人事業主の場合※屋号があれば屋号も併記することがあります。)
適格請求書(インボイス)に記載が必要な事項
2023年10月1日から開始が予定されている適格請求書等保存方式(インボイス制度)において、適格請求書発行事業者は適格請求書(インボイス)の交付が義務付けられることになります。インボイスとは、請求先に正確な税率や消費税額などを伝えるために一定の項目を記載した請求書をいいます。
適格請求書発行事業者である法人や個人事業主は、取引内容など従来の請求書に必要な記載事項に加え、いくつかの項目を追加して作成しなければなりません。先に挙げた項目に追加で必要な事項や具体例を解説していきます。
請求書発行者の登録番号
適格請求書発行事業者は登録制度となっています。登録を受けた発行事業者であることを示すために、適格請求書の発行から請求書を発行する事業者の登録番号の記載が必要になりました。
【記載例】
○○株式会社登録番号:T00…
軽減税率の対象である旨の表記
軽減税率が導入されてから適格請求書が導入されるまでの移行期間における区分記載請求書から記載が必要になった項目です。適格請求書の作成においても引き続き記載が求められます。「軽減税率」と記載してもよいですが、印を利用するなど簡易的な記載も認められます。
【記載例】
清涼飲料水 ※
タオルセット
※は軽減税率の対象
税抜価格または税率ごとに区分して合計した税込対価の額および適用税率
区分記載請求書では、税率ごとに区分して合計した税込対価の額の記載が求められていました。
適格請求書では、更に2つの変更点が適用されます。
まず、税率ごとに区分して合計した税込対価の額だけでなく、税抜対価の額も認められるようになったことです。以下の項目で解説しますが、適格請求書からは税率ごとに区分した消費税額等の明記も必要になったことから税抜価格の記載でもよくなりました。
2つ目の変更点は、税込価格を税率ごとに区分して合計する場合、金額だけでなく適用税率の明記も求められるようになったことです。消費税率もあわせて記載する必要があります。
【記載例】(税込価格を税率ごとに区分して合計するケース)
8%対象 10,000円
10%対象 40,000円
税率ごとに区分した消費税額等
適格請求書では消費税額の表示も求められるようになりました。消費税額は合算するのではなく、税率ごとに区分して記載する必要があります。
【記載例】
消費税額(8%) 800円
消費税額(10%) 4,000円
必須ではないが記載しておいた方がよい事項
ここまで、消費税の仕入額控除を受けるために法的に必要とされる記載項目について説明してきました。
ただし、請求書の発行にあたっては、法的に記載が求められていないものの、取引先とのトラブルを防止するためなどの理由から記載していた方がよい項目もあります。法人、個人事業主に共通して記載するとよい項目と書き方を紹介します。
書類名
書類名は、発行する書類がどんな書類なのかを示すものです。レイアウトが似た書類もあるため、書類名の記載がないと、受領した取引先は何の書類なのかすぐに判断がつきません。通常は「請求書」と書類の一番上に記載します。
請求書番号
請求書番号は、請求書の発行者が請求書を管理するために付与する番号です。請求書番号がなくても請求書を受領した側は困りませんが、問い合わせなどがあったときに請求書発行者が対応しやすい面があります。請求書発行日や請求者の名称の下など、請求書の上部に記載されることが多いです。
【記載例】
振込の期限
通常は、月末締め翌月20日払いなど契約時に取り決めた振込期限(支払期限)をもとに記載します。振込期限を記載することで、請求者はいつまでに振り込まれるか請求書からすぐにわかりますし、請求先はいつまでに振り込むべきかリマインドできます。請求額未払いなどのトラブル防止になるでしょう。
【記載例】
振込先の口座
事業者間の取引では口座振り込みで代金の支払いが行われるのが一般的です。請求先がスムーズに入金ができるように、請求書には、振込先の銀行名、支店名、口座の種別、口座番号、口座名義を記載しておくとよいでしょう。銀行コードや支店コードもあると親切です。
【記載例】
○○銀行(銀行コード:◯◯◯)○○支店(支店コード:◯◯◯)
普通口座 ◯◯◯◯◯
口座名義 カ)○○○◯
振込手数料を負担する側
請求金額の振り込みにともなう振込手数料は、請求額を振り込む側で負担するケースが多いです。しかし、契約上取り決めていなかったり、請求書に記載がなかったりすると、振込手数料の負担についてトラブルになることもあります。トラブルを避けるためにも振込手数料の扱いについては記載した方がよいです。
【記載例】
請求書のテンプレート
ここまで請求書に必要な記載事項や各項目の記載内容の例などを紹介してきました。それでは、請求書としてはどのように記載項目を反映させていけばよいのでしょうか。
マネーフォワードクラウド請求書では、請求書の書き方の見本として税理士監修の請求書のテンプレートを用意しています。ぜひご活用ください。
■請求書のテンプレート
なお、2023年10月1日からはインボイス制度の開始にともない、適格請求書発行事業においては適格請求書の発行が義務付けられます。インボイス制度に対応した税理士監修の請求書のテンプレートはこちらよりご利用いただけます。
■インボイス制度に対応した請求書のテンプレート
請求書の必要事項を押さえて作成しよう
請求書には消費税の仕入税控除を適用するために法的に必要な項目と、法的には必要ないもののあった方がよい項目があります。請求書を作成する際はすべてを網羅したうえで作成するようにするとよいでしょう。
表計算ソフトなどで一から作成するよりも、必要項目と、記載があった方がよい項目のどちらもある請求書のテンプレートを利用すると便利です。
よくある質問
請求書に記載が必要な項目は何ですか?
請求者名、取引年月日、取引内容、取引金額、請求書の交付を受ける事業者名の記載が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
適格請求書に記載が必要な項目は何ですか?
従来の請求書の必要項目に加え(区分記載請求書除く)、請求書発行者の登録番号、軽減税率の対象である旨の表記、税抜対価の額または税率ごとに区分して合計した税込対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の記載が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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