• 更新日 : 2023年8月4日

見積書に有効期限を書く理由は?期間の目安や超過時の対応を解説

見積書に有効期限を書く理由は?期間の目安や超過時の対応を解説

見積書には有効期限を書くことが一般的です。しかし、なぜ見積書に有効期限を書くのでしょうか。この記事では、見積書に有効期限を書く理由、および期限の目安や記載例、記載なしや超過した場合の対応方法を解説します。

見積書に有効期限を書くのはなぜ?

見積書に有効期限を書く主な理由は、①価格や条件などの変動に備えるため②顧客に早めの契約や発注を促すため、の2つです。

価格や条件などの変動に備える

見積書を発行してから受注するまでの期間が長い場合には、その間に業界の事情や社会的状況などにより原価が高騰するなどし、見積書の価格では赤字受注になるケースがあります。また、原材料の供給が途絶えて、納品が困難になるケースもあるでしょう。見積書に有効期限が記載されていれば、このような価格や条件などの変動に備えることが可能です。

顧客に早めの契約や発注を促す

顧客が契約や発注の決断をするためには、一般に決断のために必要な情報を収集したり、社内での確認を行ったりなどの準備が必要です。見積書に有効期限が書かれていれば、その期限に合わせて準備のスケジュールを立てることが可能となり、顧客の決断を促すことができます。また、単に迷ってしまって決められない顧客に対しては、見積書の有効期限は背中を押す効果もあるでしょう。

一般的な有効期限の決め方

見積書の一般的な有効期限は、2週間~6ヶ月が目安です。ただし、有効期限を設定した見積書は、発行後に撤回できない点に注意しましょう。

2週間~6ヶ月が目安

見積書の有効期限について、法的な決まりや制限はありません。会社の都合や業界の慣行などにより自由に決めることが可能です。ただし、一般的には、2週間~6ヶ月が目安とされています。

もちろん、有効期限を1年や2年にすることも可能です。しかし、上述した見積書に有効期限を書く理由を考えれば、むやみに長く設定することは現実的ではないでしょう。

有効期限を記載した見積書は発行後に撤回できない点に注意

見積書の有効期限は自由に決めることができますが、有効期限を記載した見積書は、発行した後、その期限まで撤回できない点に注意が必要です。これは民法の規定によります。

民法上、見積書の発行は「契約の申込み」に相当します。民法第523条に、「承諾の期間の定めのある申込み」として以下の規定があります。

(承諾の期間の定めのある申込み)

第523条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。(後略)

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

引用:民法|e-Gov法令検索

上の条文で「承諾の期間を定めてした申込み」とは、有効期限を記載した見積書の発行に相当します。すなわち、有効期限を記載した見積書は撤回ができないということです。

ただし、上の条文第2項にある通り、有効期限が過ぎた後には、その見積書は効力を失います。

有効期限の記載例

見積書の有効期限の書き方は、日付がはっきりと特定できればどのような方法でも構いません。記載例は以下の通りです。

  • 202◯年◯月◯日
  • 発行日より◯日間
  • 見積後◯ヶ月

有効期限の記載がない場合は?

見積書に有効期限を記載しなくても、法的に問題はありません。有効期限の記載がない見積書も正式な文書として有効です。

ただし、この場合には前述の「見積書の撤回」が問題となってきます。有効期限のない見積書は永遠に撤回できないのでしょうか?

民法第525条第1項で、「承諾の期間の定めのない申込み」について、以下のように規定されています。

(承諾の期間の定めのない申込み)

第525条 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。(後略)

引用:民法|e-Gov法令検索

上の条文によれば、承諾の期間の定めのない申込み、すなわち有効期限の記載のない見積書は、「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない」とされています。

すなわち、見積書に有効期限が記載されていなくても、永遠に撤回できないわけではありません。ただし、いつでも撤回できるというわけではなく、取引の内容や時期、業界の慣行、当事者の属性などを考慮して個別に判断される「相当な期間」が経過するまで、撤回はできないということになります。

有効期限が過ぎた場合はどうなる?

前述の通り、見積書の有効期限が過ぎればその見積書は効力を失います。したがって、期限後に先方が契約・発注の意思を示した場合は、見積書を改めて発行することが一般的です。

ただし、有効期限を過ぎても金額や条件の変更がない場合には、見積書の再発行をせずに契約・受注に進んでも問題はありません。民法第524条に「遅延した承諾の効力」として以下の規定があります。

(遅延した承諾の効力)

第524条 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

引用:民法|e-Gov法令検索

すなわち、有効期限が過ぎた見積書は、契約の申込みとしての効力は失われているものの、先方から遅れて承諾があった場合は、その承諾を「新たな申込み」とみなすことができるということです。

したがって、もし金額や条件の変更がないのなら、見積書の発行なしで契約・受注に進んで構いません。一方、もし変更があるのなら、新たな金額・条件を記載した見積書を改めて発行し、先方に再度検討してもらえば良いということになります。

見積書のテンプレート/ひな形

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見積書には有効期限を書いてトラブルを未然に防ごう

見積書の有効期限は、価格や条件などの変動に備えるため、および顧客に早めの契約や発注を促すために記載します。一般に2週間~6ヶ月程度が目安です。記載しなくても問題はないものの、見積書撤回のタイミングが不明瞭となり、トラブルの原因ともなりかねません。見積書は有効期限をはっきり記載し、トラブルを未然に防ぎましょう。


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