- 更新日 : 2024年10月17日
サインのみの領収書でも大丈夫?税務上の取り扱いを解説
手書きのサインのみで、印鑑なしの領収書を受け取ることもあるでしょう。サインのみの領収書であっても、そのまま処理して問題ありません。
今回は、税務処理上必要とされる領収書の項目や領収書への押印やサインについて解説します。
印鑑がなくサインだけの領収書でも税務処理はできる
受領した領収書に社印が押印されていることも多いでしょう。しかし税務処理上、印鑑は必須ではありません。
手書きのサインのみで押印がない領収書であっても、担当者印のみの領収書であっても、印鑑とサインの両方がなくても、経費として計上するには問題ありません。
領収書に印鑑が押されることが多いのは慣習や社会通念上によるもので、ハンコがあることで「正しく発行されたもの」だと認識しやすいからでしょう。
近年では行政においても押印廃止の流れがあります。もともと税務上は請求書等への押印を必要としていません。次の章で説明する領収書に必要な要件が満たされていれば、税務上の証憑として領収書の利用が認められます。
税務上必要な領収書とは
領収書は、取引の当事者同士の金銭のやりとりについて、実在性を証明するものです。経費に計上する際の根拠となりますが、領収書の記載項目は、「法人税法」や「所得税法」では詳細に規定されていません。
税務上必要な領収書の項目として参考になるのが、「消費税法」での請求書等の扱いです。ここでの「請求書等」とは、事業者が課税資産の譲渡につき交付する請求書や納品書、これらに類する書類とされています。取引と同時に発行される領収書も、これに類するものと考えられるでしょう。
したがって今後、領収書を「インボイス」として利用する場合には、適格請求書が求める事項を記載しなければなりません。また、請求書がインボイスの要件を満たしていれば、取引と同時に発行される領収書についてはこの限りではありません。
インボイス制度における適格請求書等で仕入税額控除の適用を受けるには、次の記載が必要とされています。
- 作成者の名称および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象である旨)
- 税率ごとに区分して合計した税抜きまたは税込み対価の合計額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 交付を受ける者の名称
ここで、押印が含まれていないことがわかります。近年では押印廃止の流れで行政庁が発行する領収書(受領証書)にも押印がないケースがありますので、印鑑やサインがなくても問題ありません。
なお、適格請求書を発行するためには事前に申請が必要ですので、詳細は下記をご参考ください。
参考:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁
領収書と経費精算の関係については以下の記事でも解説していますのでご参照ください。
領収書には押印とサインのどちらが適している?
行政を中心に押印廃止の流れもあるので、民間の取引においてもハンコやサインがない領収書を許容する動きが出てきています。しかし、領収書を受け取る取引先から慣習として社印や担当者印などを求められる場合もあるでしょう。押印を求められた場合は、柔軟に対応するのが良いでしょう。
社内で領収書に印鑑の押印やサインをする決まりがある場合は、それに従った対応をすることになります。外出先で領収書を発行するケースが多い場合は、印鑑を持ち歩かずに済む手書きのサインのみの対応に切り替えても良いかもしれません。
なお、領収書自体に印鑑やサインは必須ではありませんが、収入印紙を貼付する場合は、印鑑または署名により消印をする必要があるので注意しましょう。
領収書に収入印紙が必要なケースについては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
領収書はサインのみでOK!必要に応じて押印を
領収書自体に社印などの押印がなくても問題はありません。サインのみの領収書でも、取引内容や対価の額、取引年月日、発行者・受領者の名称などが記載されていれば領収書として扱われます。
ただし、取引先によっては慣習として押印を求められるケースもあるでしょう。その場合は求めに応じて柔軟に対処するのが良いでしょう。
よくある質問
押印がなく、サインだけの領収書でも経費精算はできますか?
一般的には、印鑑なしのサインだけの領収書でも経費精算できます。詳しくはこちらをご覧ください。
領収書にどのような記載があれば、税務上問題ないですか?
消費税法における請求書等の記載事項によると、作成者の名称、取引年月日、取引内容、対価の額、交付を受ける者の名称の記載があれば問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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