- 更新日 : 2025年11月13日
発注表とは?作り方や発注ミスを防ぐ管理術を解説
発注表は、発注内容や納期、支払い状況などを一元的に管理し、社内の発注業務を可視化・効率化するためのツールです。複数の担当者間で情報を共有するために活用されます。
業務の属人化やヒューマンエラーを防ぐ手段としても注目されており、2026年施行の下請け法改正に伴う記録保存義務への対応としても有効です。本記事では、発注表の基本から活用方法、運用管理のポイントなどを解説します。
目次
発注表とは?発注書との違いは?
業務における「発注表」と「発注書」は混同されやすいものの、それぞれ用途と役割が異なります。発注書は対外的な注文の意思表示に用いられ、発注表は社内で発注状況を一元管理するためのツールです。
発注表は社内で発注状況を一元管理するための帳票
発注表は、複数の発注案件の進捗を一覧で管理するための社内用帳票です。エクセルやクラウド上で作成され、発注日、納品予定日、支払日などを記録して社内で共有します。外部には渡さず、購買・経理・倉庫など複数部署で情報を確認できるようにするための管理ツールです。ヒューマンエラーや確認漏れを防ぎ、業務を効率化する効果があります。また、2026年1月から施行される中小受託取引適正化法により、発注記録の保存義務が強化されますが、発注表を活用することで記録管理の対応にも役立ちます。
発注書は社外への正式な注文意思を示す書類
発注書は、発注者が取引先に対して正式に注文する際に発行する書類です。「注文書」とも呼ばれます。品目、数量、納期、支払条件などを記載し、「この条件で発注します」という明確な意思を伝える役割を果たします。発行は法律上の義務ではありませんが、書面を交わすことで認識のズレや数量ミスなどを防ぎ、契約内容の証拠にもなります。多くの場合、受注側は注文請書を返送し、正式な合意として記録されます。中小受託取引適正化法の施行により発注内容の書面交付が義務化されるため、同法の対象となる取引を行う企業にとって、発注書の発行はさらに重要になります。
発注業務の基本フローと発注表・発注書の役割は?
発注業務は見積依頼から支払い完了まで、複数の段階を経て進行します。各ステップにおいて発注書と発注表はそれぞれ異なる役割を果たします。
発注の一般的な流れ
一般的な発注フローは、「見積依頼 → 発注(発注書発行) → 納品・検品 → 受領書発行 → 支払い」という順序で進みます。まず発注者が取引先に見積を依頼し、条件が合意されると発注書を発行して正式に注文を行います。受注者は注文請書で応答し、納期に従って納品を実施。発注者は納品物を確認し、問題がなければ受領書を発行し、その後、請求書に基づいて支払いを完了します。
この流れの中で、発注書は契約の成立とその内容確認を担う重要な書類です。発注時に相手方に交付することで、取引条件の明確化とトラブル防止につながります。
発注表で業務フローを管理できる
発注表は、この一連の業務フローを社内で一元管理するためのツールです。発注日や納品予定日などを時系列で記録しておくことで、関係部署が発注状況をリアルタイムで把握できます。
発注担当と検品、経理などの部門が分かれている場合、発注表があることで引き継ぎや情報共有がスムーズになり、手戻りや伝達ミスを防ぎやすくなります。クラウド管理などを活用すれば、部署をまたいだ業務連携の効率化にもつながります。
発注表を使うメリットは?
発注表(発注管理表)は、発注情報を可視化し、社内業務の正確性と効率を高めるために有効なツールです。ここでは、活用効果を整理します。
発注ミス・発注漏れの防止
発注表を使う最大の利点は、発注ミスや漏れの予防です。品名や数量、発注日、納品予定日などを一覧で記録することで、発注の抜けや数量の誤りなどに早期に気付くことができます。口頭やメールのみで発注している場合は記録が残らず、二重発注や未発注のリスクが高まります。発注表を通じて一連の流れを整理すれば、作業の抜けや曖昧な伝達を防ぎ、安定した発注業務が実現できます。
情報共有による業務効率化
発注表は社内の関係部署間で情報を共有するための基盤にもなります。エクセルで作成した表を共有フォルダやクラウドに保存しておけば、購買、検品、経理などの各担当者が発注状況をリアルタイムに確認できます。これにより、「納品済みかどうか」「請求書が届いているか」などの確認がスムーズになり、業務の手戻りや連携ミスを防げます。また、在庫管理や納期調整の精度向上にもつながるため、発注表は業務全体の効率と透明性の向上に寄与する重要な管理手段といえます。
発注表の活用がおすすめな業種は?
発注表は多くの業種で活用されていますが、「複数の発注先や納期管理が必要な業種」「部署間での情報共有が多い業務」でその効果が顕著です。ここでは、発注表の導入によって管理効率の向上が期待できる代表的な業種を紹介します。
【製造業】部品や原材料の多品目管理に最適
製造業では、製品を完成させるために多数の部品や原材料を異なる業者から調達する必要があります。それぞれの納期や数量が異なるため、手配ミスや納品遅れが生産スケジュールに直結します。発注表を活用すれば、品目ごとに発注日や納期、発注先を一覧で管理でき、調達業務の正確性とスピードを高めることが可能です。また、外注加工などの業務委託も含めて管理できるため、進捗把握にも役立ちます。
【小売・卸売業】仕入管理と在庫補充の精度向上
小売業や卸売業では、商品仕入れの頻度が高く、在庫状況に応じた柔軟な発注が求められます。季節商品や特売品など、タイミングを逃すと販売機会を失うリスクもあります。発注表を使えば、過去の発注履歴や納品予定日を確認しながら仕入れ判断ができ、在庫の過不足を防ぎつつ、販売計画との整合性も取りやすくなります。
【建設業・設備業】多現場・多案件の進捗を一覧で把握
建設業や設備工事業では、複数の現場で異なる資材・人材の手配が必要です。工期や作業工程ごとに発注タイミングが異なるため、進捗管理が煩雑になりがちです。発注表を案件単位や現場別に作成することで、誰がどこで何を手配し、納品済かどうかを明確に記録できます。結果として、資材手配の抜けや重複が防げ、現場の混乱を最小限に抑えられます。
発注表の記載項目は?
発注表は業務全体の見通しを支えるため、必要な情報を過不足なく記載することが求められます。ここでは、基本的な記載項目と作成時のポイントを解説します。
発注表に記載すべき基本情報
発注表には、発注内容の管理に必要な項目を体系的に記録します。代表的な項目は以下のとおりです。
- 発注番号
- 発注日
- 発注先(取引先名)
- 品名・型番などの商品情報
- 発注数量
- 単価・合計金額
- 納品予定日および実際の納品日
- 検収日(納品物を確認した日)
- 請求書の受領日・支払い予定日
- 担当者名
- 備考欄(納期変更や特記事項など)
これらの項目を網羅することで、発注から支払いに至るまでのプロセスを一目で把握でき、情報の確認・修正も容易になります。
業務に合わせて柔軟にカスタマイズを
企業や業種によって管理すべき情報は異なるため、発注表の項目は柔軟に調整できます。たとえば、在庫数やプロジェクト名、消費税額などが必要な場合は追加します。また、チェックボックスや入力ルールを取り入れることで、記入ミスを防ぐ設計も可能です。
クラウド型で運用すれば、複数担当者での同時更新や閲覧も実現でき、作業効率が大きく向上します。発注件数が多い企業では、専用システムやテンプレートの導入も視野に入れるとよいでしょう。
発注表を運用・管理するポイントは?
発注表を効果的に活用するには、作成するだけでなく、常に正確かつ最新の状態に保つ運用体制が不可欠です。部署間での共有や更新方法、データ処理の工夫を取り入れることで、ミスを防ぎ業務全体の効率が向上します。
情報は常に最新状態に更新する
発注表は一度作って終わりではなく、日々変化する取引情報をタイムリーに反映させることが重要です。発注内容や納期、数量、納品状況などに変更が生じた場合は、遅れずに反映することで、関係者が古い情報を参照してしまうリスクを避けられます。
また、担当者が交代する場面でも、正しく更新された発注表があれば引き継ぎがスムーズになり、発注ミスや確認漏れを防ぐことができます。更新のルールや担当範囲を明確にしておくと、運用が安定します。
社内共有の方法を整備する
発注表は購買担当者だけでなく、経理、検品、在庫管理など複数部署で活用されるため、共有しやすい環境を整えることが求められます。クラウドストレージ(GoogleドライブやOneDriveなど)に保存すれば、リアルタイムで閲覧・編集が可能となり、情報伝達の手間を減らせます。
Excel単体での運用では、同時編集ができずバージョン管理が煩雑になるケースもあるため、Excel Onlineなどのオンライン編集機能を活用することで、共有性と利便性が高まります。
データ量に応じた運用管理を行う
発注件数が増えると、エクセルファイルが重くなり動作が不安定になる場合があります。そのため、年度ごとにファイルを分ける、不要なデータは定期的に削除するなどの管理が有効です。
加えて、ピボットテーブルを使えば、取引先別・納期別の集計が容易になり、業務分析にも活用できます。入力ミスを減らすには、ドロップダウンリストや入力規則を取り入れるとよいでしょう。業務規模が大きくなってきたら、専用の受発注管理システムへの移行も選択肢として検討すべきです。
2026年施行の下請法改正が及ぼす発注管理への影響は?
2026年1月に施行される「中小受託取引適正化法(取適法)」は、従来の下請法の枠組みを大きく見直し、発注者側に新たな義務を課す法律です。ここでは、主な変更点と発注表への影響を解説します。
書面交付義務と記録保存義務が新たに課される
改正後の中小受託取引適正化法の最大の特徴は、発注時における書面交付義務が明文化される点です。これまでは、旧下請法において、親事業者と下請け事業者の間の取引について、資本金規模に基づく適用制限が存在していました。しかし、中小受託取引適正化法ではこの枠組みが見直され、資本金に加えて従業員数基準が新たに導入されることで、より幅広い委託事業者が規制の対象となります。
この改正により、個人事業主やフリーランスを含む中小受託事業者に対して、業務委託契約を行うすべての委託事業者は、契約内容(業務の内容・報酬額・納期・支払期日など)を明記した書面または電子記録を、速やかに交付しなければならなくなります。従来は任意であった発注書の発行も、今後は法的義務となります。
加えて、委託事業者には発注内容や支払いに関する記録を2年間保存する義務も課されます。曖昧な口頭発注や契約書の不備が重大なトラブルに直結するおそれがあるため、書面の整備と発注履歴の記録管理がこれまで以上に重要となります。
発注書・発注表の運用見直しが必要になる
新制度への対応として、発注者側は現在使用している発注書や契約書のフォーマットを見直す必要があります。これまで様式上省略されがちだった「支払期日」や「受領場所」なども明記する必要があるため、テンプレートの更新が求められます。
さらに、発注処理から納品確認、請求、支払いに至る社内フロー全体を再点検し、60日以内の支払い期限を守る体制づくりも欠かせません。
この際、発注表(発注管理表)を用いた内部統制が有効です。発注書を発行したかどうか、必要項目がすべて記載されているか、交付日と記録保存の有無などを発注表で一覧化しておけば、法令対応の漏れを防ぎやすくなります。チェックリスト機能や備考欄の追加によって、書面管理と発注業務の進捗を同時に可視化できるのは大きな利点です。
発注表と発注書を正しく使い分けて、発注管理を効率化しよう
発注表は社内の発注状況を一元管理するためのツールであり、発注書は社外に向けた正式な注文書類です。両者を正しく使い分けることで、ミスの防止や業務の効率化、情報共有の円滑化が実現します。2026年からは中小受託取引適正化法の施行により、書面交付義務や記録保存義務が法制化されるため、発注書の発行と発注表による管理の重要性はさらに高まります。業種や企業規模に応じて、発注業務を可視化・標準化し、法令対応と実務効率を両立させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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