- 更新日 : 2025年11月11日
電話で「発注をお願いします」は正しい?伝え方の例や口頭注文の注意点を解説
電話で「発注をお願いします」と伝えることは敬語として問題ありません。また、口頭での注文依頼も可能です。しかし、取引の証跡が残らないため、後の「言った言わない」といった問題や会計処理上の不整合につながるリスクもはらんでいます。
そのため、口頭での依頼とあわせて、メールや発注書といった書面での記録を残すことが、円滑な取引につながるでしょう。
日々の業務で「急ぎで電話で発注したい」「口頭で注文を受けたが、このままで良いのだろうか」といった課題に直面する担当者の方は少なくありません。
この記事では、正しい言葉の使い方から、口頭での注文でトラブルを未然に防ぐための具体的な対応策までをわかりやすく解説します。
目次
電話で「発注をお願いします」という言い方は正しい?
電話で「発注をお願いします」と伝える言い方は、ビジネスシーンにおいて一般的に使われており、一般的には問題なく通じます。 相手に注文の意思を伝える丁寧な表現として、多くの場合、失礼にはあたりません。
敬語として適切か
「発注をお願いします」というフレーズは、「発注」という名詞に、丁寧語の「お願いします」を組み合わせた言葉です。相手への依頼を示す丁寧な表現であり、取引先や目上の方に使っても失礼にはあたりません。ただし、状況や相手との関係性によっては、より謙譲的な表現を選ぶことで、さらに丁寧な印象を与えられます。
ビジネスシーンでより自然な言い方の例
より丁寧さや柔らかさを加えたい場合は、クッション言葉を使ったり、謙譲語を交えたりすると良いでしょう。状況に応じた言い換え表現をいくつか覚えておくと、コミュニケーションが円滑になります。
- 「〇〇(商品名)を発注いたしますので、よろしくお願いいたします。」
- 「〇〇(商品名)を発注します。お手続きをお願いできますでしょうか。」
- 「恐れ入ります、〇〇(商品名)を10個、発注させていただけますでしょうか。」
また、「発注」と似た言葉に「注文」があります。どちらを使っても間違いではありませんが、企業間の継続的な取引では「発注」、単発の購入やサービス依頼では「注文」が使われる傾向があります。迷った場合は「ご注文」を使うと、より広い場面で自然に聞こえるでしょう。
「〇〇を注文しますので、よろしくお願いします」という言い方も全く問題ありません。
「発注させていただきます」との使い分け
「発注させていただきます」は、相手の許可を得て何かをさせてもらう、というニュアンスを持つ謙譲表現です。「お見積もり内容で問題ございませんので、このまま発注させていただきます。」のように使います。
「発注をお願いします」の英語表現は?
英語で「発注をお願いします」と伝えたい場合、”We would like to place an order for…” という表現が最も一般的で丁寧です。“place an order” が「発注する」「注文を出す」という意味の決まった言い方になります。
電話など話し言葉で伝えたい場合
“I’d like to order 100 units of product A.”
(製品Aを100個、注文したいのですが。)
※”I would like to…”を短縮した、ややカジュアルですが自然な表現です。
メールなど書き言葉で丁寧に伝えたい場合
“We would like to place an order for 100 units of product A.”
(製品Aを100個、発注したく存じます。)
電話で発注依頼を受けたらそのまま受注しても大丈夫?
電話で「発注をお願いします」と依頼された場合、その場で受注すること自体は契約として成立し得ます。しかし、証跡が残らない口頭での契約は、後のトラブルにつながるリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
口頭での発注に伴うリスク
口頭での発注には、主に以下のようなリスクがあります。これらのリスクを理解し、対策を講じることが重要です。
- 認識の齟齬(そご):
数量、金額、納期、仕様などの条件で「言った言わない」問題が発生しやすい。 - 担当者の記憶違い:
人間の記憶は不確かなため、聞き間違いや思い込みが起こり得る。 - 正式な発注か不明確:
担当者レベルの口約束が、組織としての正式な発注であるかどうかがわからない場合がある。 - 証拠の不存在:
トラブルが発生した際に、契約内容を証明する客観的な証拠がない。
電話で注文を受ける際の必須確認項目リスト
口頭で注文を受ける際は、必ず以下の項目を復唱し、相手の了承を得ましょう。メモを取ることはもちろん、後述する書面での確認が不可欠です。
□ 会社名・部署名・担当者名
□ 発注される商品・サービス名
□ 型番・品番・仕様
□ 数量
□ 単価・合計金額(税抜・税込)
□ 希望納期
□ 納品場所
□ 支払い条件
□ 発注番号(もしあれば)
電話注文後のトラブルを防ぐための対応策
電話で注文を受けた後は、必ず書面で内容を確認するフローを徹底しましょう。
- 注文請書の送付:
電話で受けた内容を基に「注文請書」を作成し、メールやFAXで送付します。「先ほどお電話にて承りましたご注文内容は、こちらのとおりでよろしいでしょうか」と一言添え、相手に内容を確認・保管してもらいます。 - メールでの内容確認:
注文請書の発行が難しい場合でも、最低限、確認した項目を箇条書きにしたメールを送り、相手からの返信をもって確認の証跡とします。 - 発注書の送付を依頼:
最も確実なのは、相手方に正式な「発注書」の発行・送付を依頼することです。会社のルールとして、「発注書のない注文はお受けできません」と定めておくのも一つの方法でしょう。
電話で注文を受けた際の証拠となるものは?
電話などで「発注をお願いします」と口頭で伝えられた場合でも、双方の合意があれば契約は成立します。しかし、そのやり取りを客観的に証明する証拠がなければ、「言った言わない」のトラブルや、後々の経理・法務上の問題に発展しかねません。
会社の資産を守り、円滑な取引を維持するために、どのようなものが法的に有効な証拠となり得るのかを解説します。
発注の証拠として有効なもの一覧
口頭での発注を受けた際に、その内容を証明する証拠にはいくつかの種類があり、それぞれ証明能力の強さが異なります。
| 証拠の種類 | 証明能力 | ポイント |
|---|---|---|
| 発注書・注文請書 | 非常に高い | 契約内容が明記された正式な書類。最も確実な証拠。 |
| メール・FAXの履歴 | 高い | やり取りが記録として残る。注文内容の確認メールと相手の返信が揃えば強力。 |
| 通話の録音データ | 高い | 当事者の合意内容を直接証明できる。ただし、同意取得やデータ管理に注意が必要。 |
| 担当者の業務メモ | 限定的 | 日時や担当者名、内容が具体的であれば補助証拠になり得るが、客観性は低い。 |
なぜ客観的な証拠が不可欠なのか?
手軽な口頭でのやり取りだけでなく、これらの客観的な証拠を残すことが推奨されるのは、経理、内部統制、そして法務の3つの観点から極めて重要だからです。
1. 経理・内部統制の観点
経理部門や監査の視点では、すべての支出に「その支払いが正当である」という根拠(証憑)が求められます。
2. 法務・契約の観点
万が一、取引先とトラブルになった際に、自社を守るのが客観的な証拠です。
- 契約内容を証明する
「注文した数量が違う」「聞いた金額と異なる」といった認識の齟齬は、口頭でのやり取りでは頻繁に起こり得ます。通話録音や確認メールがあれば、契約が成立した時点での合意内容を明確に証明し、無用な紛争を避けられます。 - 法令遵守(下請法など)
特に下請法が適用される取引では、親事業者は下請事業者に対して、発注内容を明記した書面(3条書面)を交付する義務があります。口頭のみでの発注は、この義務に違反する可能性があるため、注意が必要です。
口頭で発注・受注を受けた場合も、その後に発注書・注文請書の取り交わしを基本とし、それが難しい場合でもメールでの確認など、必ず何らかの形で「記録に残す」業務プロセスを徹底することが、会社全体のリスク管理につながります。
メールで「発注をお願いします」と伝える際の文例は?
メールでの発注依頼は、内容が正確に伝わり、記録として残るため、ビジネスにおける標準的な方法です。件名、本文の構成、添付ファイルなど、いくつかのポイントを押さえることで、相手がスムーズに処理できるようになります。
【件名】一目でわかる件名の付け方
メールの件名は、受信者が多くのメールの中からでも内容を即座に理解できるよう、簡潔かつ具体的に記載するのがマナーです。
- 良い例:
- 【発注のお願い】商品A(100個)のご注文について(株式会社〇〇)
- 【〇月〇日納品希望】部品Bの発注依頼
- 悪い例:
- お願いします
- 発注の件
【文例】新規発注の場合
初めて商品やサービスを発注する際の文例です。見積もりを取得している場合は、その旨を記載するとスムーズです。
件名:【発注のお願い】〇〇(商品名)のご注文について(株式会社〇〇)
株式会社△△
営業部 〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇です。
さて、先日いただきましたお見積もり(No.12345)に基づき、下記の通り、発注をお願いできますでしょうか。
————————————
- 商品名:〇〇
- 型番:ABC-001
- 数量:10点
- 単価:¥5,000
- 合計金額:¥50,000(税抜)
- 希望納期:2025年11月15日(金)
- 納品場所:弊社〇〇倉庫
————————————
本メールをもちまして、正式な発注とさせていただけますと幸いです。
ご多忙のところ恐縮ですが、ご対応のほど、よろしくお願い申し上げます。
—
署名
—
【文例】追加・継続発注の場合
すでに取引のある商品を追加で発注する場合の文例です。前回の発注内容などに触れると、相手もわかりやすくなります。
件名:【追加発注のお願い】〇〇(商品名)のご注文(株式会社〇〇)
株式会社△△
営業部 〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇です。
先日納品いただきました〇〇(商品名)につきまして、追加で発注をお願いしたく、ご連絡いたしました。
つきましては、下記の内容にてご注文を承りたく存じます。
————————————
- 商品名:〇〇(前回同様)
- 数量:5点
- 希望納期:2025年11月20日(木)
————————————
ご不明な点がございましたら、お申し付けください。
引き続き、よろしくお願いいたします。
—
署名
—
【文例】急ぎでお願いしたい場合
納期を早めてほしいなど、急ぎの依頼をする場合は、件名に【至急】などを入れ、本文では急ぐ理由を簡潔に伝えることが大切です。
件名:【至急・発注のお願い】〇〇(商品名)のご注文(株式会社〇〇)
株式会社△△
営業部 〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇です。
急なご連絡となり大変恐縮ですが、
下記商品を至急発注させていただきたく、ご連絡いたしました。
————————————
- 商品名:〇〇
- 数量:12点
- 単価:¥5,000
- 合計金額:¥60,000(税抜)
- 希望納期:2025年11月27日(木)
- 商品名:〇〇
- 納品場所:弊社〇〇倉庫
————————————
急遽、社内イベントでの利用が決まり、上記の納期を希望しております。
貴社のご都合もあるかと存じますが、ご検討いただけますと幸いです。
もし上記の納期が難しい場合は、最短でいつ頃になるかお教えいただけますでしょうか。
お忙しいところ申し訳ございませんが、ご返信お待ちしております。
—
署名
—
発注のやり取りで知っておきたい法的知識は?
ビジネスにおける発注とは、民法上の「契約の申込み」にあたります。特に、下請事業者との取引においては、「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」が適用される場合があり、発注者側(親事業者)には特定の義務が課せられます。
発注書(注文書)の法的な位置づけ
発注書は、法的には「契約の申込み」の意思表示を証明する書面です。相手方がこれに対して注文請書を発行したり、実際に商品の発送を行ったりすることで「承諾」の意思表示がなされ、契約が成立します。
書面があることで、契約内容が明確になり、将来的な紛争を予防する効果があります。
下請法における親事業者の義務
資本金が一定額以上の親事業者が、資本金がそれより小さい下請事業者に製造委託や修理委託などを行う場合、下請法が適用されることがあります。下請法が適用される取引では、親事業者は以下の義務を負います。
- 書面の交付義務(3条書面):
発注に際して、直ちに下請事業者に給付の内容、下請代金の額、支払期日、支払方法などを記載した書面(発注書)を交付しなければなりません。 - 支払期日を定める義務:
代金の支払期日を、給付を受領した日(役務の提供を受けた日)から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければなりません。 - 遅延利息の支払い義務:
定められた支払期日までに代金を支払わなかった場合は、遅延利息を支払わなければなりません。
口頭での発注は、この「書面の交付義務」に違反する可能性があります。自社の取引が下請法の対象となるかを確認し、法令を遵守した対応を徹底しましょう。
参照:下請法|公正取引委員会、下請代金支払遅延等防止法|公正取引委員会
発注依頼は口頭でも可能、しかし書面での確認は必須
電話で「発注をお願いします」と伝えること自体は問題ありませんが、ビジネスを円滑かつ安全に進めるためには、必ず発注書やメールといった書面での証跡を残すことが不可欠です。口頭での依頼は、手軽さの反面、「言った言わない」のトラブルや、経理・法務上のリスクを常に抱えています。
発注する側は、電話で依頼した後すぐに確認のメールを送る、もしくは正式な発注書を発行する習慣をつけましょう。一方、発注を受ける側も、口頭で注文を受けた際は必ず注文請書を送付するか、メールで内容を復唱・確認し、相手からの了承を得るプロセスを徹底すべきです。
こうした一手間が、将来の大きなトラブルを防ぎ、取引先との信頼関係を強固なものにするでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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