- 更新日 : 2025年11月11日
受注発注とは?業務フローや課題、ミスをなくす改善策を解説
受注発注とは、商品やサービスの「注文を受ける(受注)」と「注文する(発注)」という一連の取引業務を指します。この業務の正確さが、会社の売上管理や顧客との信頼関係に大きく影響します。
バックオフィス業務において、電話での注文確認やExcelへの手入力に追われ、伝達ミスや確認漏れといった課題に直面することもあるでしょう。
この記事では、受注発注の基本的な流れから、よくある課題、そしてシステムを活用した改善策までをわかりやすく解説します。
目次
受注と発注の意味と違いは?
受注と発注は、商品を売る側(受注)と買う側(発注)の行為を指す、商取引における対の言葉です。取引のどちらの立場にいるかで呼び方が変わります。
受注とは「注文を受けること」
受注とは、顧客や取引先から商品やサービスの注文を受けることです。注文を受ける側、つまり「ベンダー」や「サプライヤー」と呼ばれる売り手側の立場で行う業務を指します。注文を受け付けた証として、後述する「注文請書(ちゅうもんうけしょ)」を発行する場合があります。
発注とは「注文すること」
発注とは、必要な商品やサービスを取引先へ注文することです。注文する側、つまり「バイヤー」や「顧客」と呼ばれる買い手側の立場で行う業務を指します。一般的に、発注の意思を明確にするために「発注書(注文書)」を作成し、取引先に送付します。
一目でわかる受注と発注の違い
受注と発注の違いをまとめると、以下の表のとおりです。誰が、誰に対して行う行為なのかを明確に区別しましょう。
| 項目 | 受注 | 発注 |
|---|---|---|
| 立場 | 売り手(ベンダー) | 買い手(バイヤー) |
| 行為 | 注文を受ける | 注文する |
| 主な発行書類 | 注文請書、請求書 | 発注書(注文書) |
受注発注業務のフロー(流れ)とは?
一般的な受注発注業務は、見積もりから始まり、発注、受注、納品、支払いと進みます。ここでは、一般的な取引の流れを6つのステップで解説します。
STEP1. 見積依頼と提示
買い手(発注側)は、購入したい商品やサービスの仕様、数量、希望納期などを記載した見積依頼書を売り手(受注側)に送ります。受注側は、依頼内容をふまえて価格や納期などを計算し、見積書を作成して提示します。
STEP2. 発注(発注書の送付)
発注側は、提示された見積書の内容に合意すれば、正式に発注書(注文書)を作成し、受注側に送付します。発注書には、発注日、商品名、数量、単価、合計金額、希望納期、納品場所などを正確に記載します。この発注書が「契約の申し込み」の証拠となります。
STEP3. 受注(注文請書の送付)
受注側は、受け取った発注書の内容を確認し、問題がなければ注文を受け付けます。この際、発注内容を承諾した証として注文請書を発行し、発注側に送付することがあります。注文請書が発注元に届いた時点で、法的には契約が成立したとみなされます。
STEP4. 商品・サービスの納品
受注側は、発注書や注文請書の内容にもとづいて商品を準備し、指定された納期・場所に納品します。物品の場合は、納品書を商品に同梱するのが一般的です。納品書は、発注側が注文内容と相違ないかを確認するための重要な書類です。
STEP5. 検収と請求書の発行
商品を受け取った発注側は、品名、数量、品質などが注文どおりかを確認する検収を行います。問題がなければ、受注側に検収完了を通知します。受注側は、検収完了の連絡を受け、取引の締め日に合わせて請求書を発行・送付します。
STEP6. 代金の支払い
発注側は、受け取った請求書の内容を確認し、定められた支払期日までに代金を支払います。受注側は、入金を確認して一連の取引が完了となります。入金の確認が取れたら、領収書を発行する場合もあります。
受注発注業務でよくある課題と人的ミスを防ぐには?
受注発注業務によくある課題として、「属人化」や「手作業によるミス」「在庫管理との連携不足」などがあります。
受注から発注までのフローには多くの手作業が伴うため、ミスや業務の停滞が起こりやすい傾向にあります。ここでは、代表的な課題と、それらを防ぐための改善策を紹介します。
課題1:業務の属人化とブラックボックス化
特定の担当者しか業務の進め方を把握していない「属人化」した状態は、業務の停滞や引き継ぎの失敗といったリスクを生みます。担当者が不在の際に対応が遅れたり、退職時にノウハウが失われたりすることは、組織にとって大きな損失ではないでしょうか。
個人の経験や勘に頼った業務は、組織としての対応力を弱めてしまうでしょう。
課題2:手作業による入力ミスや伝達漏れ
電話やFAXで受けた注文をExcel(エクセル)や販売管理ソフトに手入力する際、数量や品番の入力ミス、金額の計算間違いなどが起こりがちです。また、注文内容の変更や納期に関する連絡が社内の関連部署(製造、倉庫、経理など)へ正確に伝わらず、納品遅れや誤出荷につながるケースも少なくありません。
課題3:在庫管理との連携不足による機会損失
受注情報と在庫情報がリアルタイムで連携されていない場合、「注文を受けたのに在庫がなかった(在庫切れ)」という事態や、逆に「在庫があるのにないと思い込み、販売機会を逃す」といった問題が発生します。これは顧客満足度の低下に直結するだけでなく、本来は販売できたはずの機会を逃すことにもつながりかねません。
ミスを防ぐための具体的な改善策
これらの課題やミスは、業務プロセスの見直しと仕組み化によって防ぐことが可能です。
- 業務マニュアルの作成と共有:
誰が担当しても同じ品質で業務を遂行できるよう、手順やルールを明文化し、社内で共有しましょう。 - チェック体制の構築:
注文データの入力後は別の担当者がダブルチェックするなど、複数人で確認する体制を整えることで、ヒューマンエラーを減らせます。 - フォーマットの統一:
発注書や納品書のフォーマットを統一することで、確認作業がスムーズになり、記載漏れや見間違いを防ぎます。 - 受発注システムの導入:
受発注システムを導入し、手作業を自動化することが最も効果的な改善策の一つです。
なぜ正確な受発注管理が重要なのか?
受発注管理は、単なる事務作業ではありません。会社の経営基盤を支える、人事・会計部門にとっても極めて関連性の高い業務です。
正確な売上・仕入計上の基礎となる
会計部門にとって、受注データは「売上」、発注データは「仕入」を計上するための直接的な根拠となります。日々の受発注情報が不正確だと、決算時に正しい損益を把握できず、適切な経営判断の妨げになります。
会社のキャッシュフローに直結する
受注から入金までの期間(売上債権回転期間)や、発注から支払いまでの期間(仕入債務回転期間)は、会社の資金繰り、つまりキャッシュフローに大きな影響を与えます。納品や請求が遅れれば入金も遅れ、資金繰りが悪化する可能性があります。
人事部門から見ても、従業員の給与支払いの原資となるキャッシュフローの安定は、健全な組織運営に不可欠です。
内部統制とコンプライアンスの観点
適切な受発注管理を行うことは、内部統制の強化にもつながります。いつ、誰が、誰と、どのような取引を行ったのかを記録・管理することで、不正な取引や業務プロセスの不備を発見しやすくなります。
特に上場企業やその子会社においては、金融商品取引法(J-SOX法)で求められる内部統制報告制度の観点からも、整備された受発注プロセスが求められます。
電話やメールでの発注依頼は有効?
取引のスピード感が求められる場面では、電話やメールで発注が行われることもあります。法的には有効な契約とみなされますが、トラブルを避けるための注意が必要です。特に電話でのやり取りは、記録が残らないという大きなリスクを伴います。
電話での発注・受注のリスクと確認項目
電話による口頭での注文は、法的には有効な「申し込み」と「承諾」とみなされ契約は成立します。しかし、録音が無ければ会話の記録が残らないため、「言った・言わない」のトラブルに発展しやすいというリスクがあります。
電話で注文を受けたり、したりする際は、必ず以下の項目を復唱して確認し、メモに残しましょう。
- 会社名、担当者名、連絡先
- 発注日
- 商品名、品番、数量
- 単価、合計金額
- 希望納期、納品先
- 支払い条件
さらに、トラブルを避けるために、電話後に必ずメールやFAXで内容を記載した発注書(またはその代わりとなる書面)を送付・受領することをルール化するのが賢明です。
メールやFAXでの発注依頼(文例付き)
メールやFAXは、送受信の記録が残るため、電話よりも信頼性が高い方法です。メールは、後から検索・確認が容易である利点があります。メールで発注を依頼する際は、件名だけで内容がわかるようにし、本文に必要な情報を過不足なく記載しましょう。
【メール文例】
件名: 【発注依頼】〇〇(商品名)のご注文について(株式会社△△)
本文: 株式会社□□ 営業部 〇〇様
いつもお世話になっております。 株式会社△△の〇〇です。
さて、先日お見積もりいただきました下記の商品につきまして、正式に発注させていただきます。
- 商品名:
- 品番:
- 数量:
- 単価:
- 合計金額:
- 希望納期:
- 納品場所:
お手数ですが、本メールをもちましてご注文とさせていただきたく、ご手配のほどよろしくお願い申し上げます。 また、本注文の請書をご発行いただけますと幸いです。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
下請法における発注書の重要性
親事業者が下請事業者に業務を委託する場合、下請法第3条により、取引内容を明記した書面(3条書面)を遅滞なく交付する義務があります。口頭での発注自体は成立し得ますが、書面交付を怠ると指導・勧告等の対象となるため、発注書の交付・保存を徹底しましょう。
参照:下請法|公正取引委員会、下請代金支払遅延等防止法|公正取引委員会
受注発注業務を効率化するシステムとは?
手作業による管理に限界を感じている場合、受発注システムの導入を検討しましょう。システムを活用することで、業務の自動化と情報の一元管理が実現できます。
受発注システムで何ができるのか?
受発注システムは、Webサイトや専用のプラットフォームを通じて、発注から受注、請求までの一連の業務をデジタル化するツールです。主な機能には以下のようなものがあります。
- Web上でのカタログ・注文機能:取引先はWeb上で商品を選び発注できる。
- 受注データ自動取り込み:受けた注文は自動でデータ化され手入力の手間がなくなる。
- 在庫情報とのリアルタイム連携:現在の在庫数をシステム上で確認できる。
- 帳票(見積書、発注書、請求書など)の自動作成・送付
- 取引履歴の一元管理
Excel(エクセル)管理の限界とシステム化のメリット
多くの企業で使われているExcelやGoogleスプレッドシートは手軽ですが、以下のような限界もあります。
- 同時編集が難しい、または競合が起きる
- 入力ミスや計算式の破壊が起こりやすい
- データの蓄積による動作の遅延
- リアルタイムでの情報共有が困難
受発注システムを導入することで、これらの課題を解決し、「業務効率化」「人的ミスの削減」「迅速な経営判断」といった大きなメリットを得られるでしょう。
システム選定で失敗しないためのポイント
自社に合ったシステムを選ぶためには、以下の点を考慮しましょう。
- 業界・業種に特化しているか:
食品、アパレル、部品など、業界特有の商習慣に対応したシステムかを確認する。 - 既存システムと連携できるか:
現在使用している会計ソフトや販売管理システムと連携できると、さらに業務がスムーズになる。 - 操作性は良いか:
取引先や自社の担当者が直感的に使える、わかりやすいインターフェースか。 - サポート体制は十分か:
導入時やトラブル発生時に、手厚いサポートを受けられるか。
【関連】受注販売・受注生産とは?
「受注発注」と関連して、「受注販売」や「受注生産」という言葉もよく使われます。「受注販売」と「受注生産」は、注文を受けた後のアクションが商品を「仕入れる」ことか、製品を「製造する」ことかという点で区別されます。どちらも注文を受けてから動き出す点は共通していますが、それぞれ特定の販売・生産形態を指す言葉です。
受注販売:注文を受けてから商品を仕入れる販売形態
受注販売とは、顧客から注文(受注)を受けた後に、メーカーや卸売業者へ商品の仕入れ(発注)を行う販売方法です。在庫を持たずに販売できるため、在庫過多によるリスクを抑えられる点が大きなメリットです。アパレルや雑貨、予約商品などでよく見られる形態です。
受注生産:注文を受けてから製品を製造する生産形態
受注生産とは、顧客から注文を受けた後に、製品の製造を開始する生産方法です。顧客の細かい要望に応じたカスタマイズが可能で、見込みで生産する必要がないため、無駄な生産コストや在庫を抱えるリスクがありません。オーダーメイドの家具や住宅、産業機械などで採用されています。
正確で効率的な受注発注がビジネス成長を支える
この記事で解説したとおり、受注発注業務は、企業の売上や資金繰り、顧客との信頼関係を支える重要なプロセスです。その基本的な流れや違いを正しく理解し、自社の業務フローに潜む課題を見つけることが、改善への道筋となります。
手作業によるミスや属人化といった課題は、業務ルールの見直しや受発注システムの導入によって解決が可能です。正確で効率的な受注発注の仕組みを構築することは、バックオフィス部門の負担を軽減するだけでなく、会社全体の生産性を向上させ、持続的なビジネス成長を支えるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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