- 更新日 : 2024年10月17日
インボイス制度対応で失敗しないために!落とし穴と対策を解説。企業が見落としがちな重要ポイントとは?
インボイス制度の導入により、適格請求書等(インボイス)の発行が義務付けられ、取引の透明性向上が期待されています。
しかし、制度の導入に伴い、企業や個人事業主が陥りやすい落とし穴も存在します。これらの落とし穴に対する理解と対策が不十分であると、思わぬトラブルやコスト増加を招く可能性があります。本記事では、「インボイス制度対応の落とし穴」として、具体的な事例をいくつか紹介します。
目次
インボイス制度対応の落とし穴
1.登録番号が表示されているのに、消費税控除できない場合
媒介者交付特例の場合、消費税が控除不可能な場合があります。媒介者からのインボイスについては、正しく区分が付与されているかを重点的にチェックすることをおすすめします。
2.領収書を紛失した場合
残念ながらこのケースでは経過措置は使えず、100%控除不可になります。経過措置の適用には、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存も要件となっているため、紛失している場合はこの要件を満たせません。
※1特例が適用できない場合、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる
3.免税事業者との取引を禁止とした場合
免税事業者との取引を全面的に禁止することで、確かに税額控除額は増加しますが、トータルコストでは不利になるリスクも考えられます。例えば、B社のみと取引を認める場合、消費税控除額はA社よりも高いですが、税込金額がA社のほうが圧倒的に安く、消費税控除不能額を考慮してもA社のほうが有利となる場合があります。消費税控除額だけでなく、トータルコストを考慮して方針を決めることが重要です。
4.特例の活用について(公共交通機関特例、出張旅費等特例など)
特例が適用できる条件が複雑なため、全て適用する場合はプロセスが非常に複雑になる可能性があります。事業状況によっては全ての特例を適用しようとするのではなく、原則どおりインボイスを収集する案もご検討いただくとよいでしょう。
代表的な2つの特例
- 公共交通機関特例:3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
- 出張旅費等特例:従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額
適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除され、帳簿のみの保存による仕入税額控除が可能となります。
特例の適用パターン
特例は一見するとシンプルですが、公共交通機関特例が使える3万円をどの単位で判断するのか、どの移動手段であれば適用できるのか(タクシーや飛行機は適用不可)、といった判断ポイントが存在します。また、出張旅費等特例は「従業員等に支給する」ものであることが要件であるため、例えば法人カードで会社の口座から取引先に直接支払うものは適用対象外となります。
5.グループ会社間の立替精算について
その方法ではグループ会社でインボイスとして扱えない可能性があります。この請求の流れは「代理交付」に相当します。この場合、以下のいずれかの対応が必要です。
- 案1:精算書類+インボイスの写しをグループ会社へ提出
- 案2:親会社がインボイスを保存し、グループ会社にはインボイスの記載要件を満たした立替精算書を作成し提出
案1はシンプルですが、複数のグループ会社が存在する場合は写しを交付する手間が大きくなります。案2は写しを交付する必要はありませんが、元の役務提供者の登録番号や税額等を請求明細ごとに立替請求書に表示する必要があります。
まとめ
インボイス制度の導入に伴い、企業はさまざまな落とし穴に注意する必要があります。最初から完璧な対応は難しいため、徐々にブラッシュアップしていくことが重要です。ブラッシュアップのポイントは「ナレッジの積み上げ」と「テクノロジーの活用」です。従業員が自ら書き込めるナレッジ共有ツールを活用し、実務対応で得た知見を深めること、クラウドサービスを活用して工数を削減することが効果的です。
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ベテラン経理 松岡さんと考える インボイス制度対応の落とし穴
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