- 更新日 : 2025年11月13日
発注リードタイムとは?在庫管理を最適化する計算式と短縮施策を解説
発注リードタイムとは、商品や原材料を発注してから手元に届く(納品される)までの期間を指します。この日数がビジネスの効率、特に在庫管理やキャッシュフローに直接影響します。
「発注した部品がいつ届くかわからず生産計画が立てづらい」「在庫が多すぎて保管場所に困る、かといって在庫切れも怖い」といった悩みは、多くの経営者やバックオフィス担当者が抱える課題ではないでしょうか。
発注リードタイムの期間を正確に把握し、適切に管理することが、安定した事業運営につながっていくでしょう。
目次
そもそもリードタイムとは?
リードタイム(Lead Time)とは、ある工程が始まってから終わるまでの「所要期間」や「手配期間」を指します。ビジネスでは発注、製造、物流など様々な場面で使われる言葉です。例えば、「発注から5日間」のように、作業にかかる「期間」を示すのがリードタイムです。
また、「いつまでに」という特定の日時を示す「納期」とは区別されます。
ここで、リードタイムを把握する際は「暦日か稼働日か」「発注カットオフ時刻(例:当日15時以降は翌営業日扱い)」を統一することを強く推奨します。
リードタイムの種類
「リードタイム」と言っても、ビジネスの工程によっていくつかの種類に分けられます。
- 開発リードタイム:製品開発の企画・計画・立案を実施する期間。
- 発注リードタイム:製品を発注してから納品されるまでの期間。
- 納品リードタイム:業者が発注を受けてから納品するまでの期間。
- 調達リードタイム:製品を生産するために、原材料・部品などを仕入れる(調達する)ための期間。
- 製造リードタイム:製品の製造開始から完了までの期間。
- 配送リードタイム:生産が完了した製品を梱包・発送し、顧客に納品されるまでの期間。
これら全体の流れを指して「トータルリードタイム」と呼ぶこともあります。
発注リードタイムと調達リードタイムは同じ?
発注リードタイムは、調達リードタイムと同じ側面を指します。どちらも、企業が買い手として、商品や原材料、部品などをサプライヤー(仕入先)に注文(発注)してから、自社の倉庫や指定場所に納品されるまでの期間のことです。
リードタイムと納期の違い
リードタイムは、発注から納品までにかかる「期間」を指し、納期は、商品が納品される「具体的な日時(期限)」を指します。例えば、「発注リードタイムは5日です」「納期は10月31日の15時です」のように使われます。
また、リードタイムが「5日」とわかっていれば、10月26日に発注すれば10月31日の納期に間に合う、という計算が可能になります。
なぜ発注リードタイムの管理が重要なの?
発注リードタイムの管理は、在庫の最適化に不可欠なためです。この期間の把握が曖昧だと、在庫切れや過剰在庫を招きやすくなります。結果として、コストの増加、キャッシュフローの悪化、さらには顧客満足度の低下につながるおそれがあるでしょう。
在庫切れ(欠品)リスクを回避できる
発注リードタイムが正確にわかっていれば、「在庫がなくなる前に、いつ発注すればよいか」が明確になります。
もしリードタイムの把握が曖昧だと、発注が遅れてしまい、次の納品までに在庫が尽きてしまうかもしれません。在庫切れ(欠品)は、生産ラインの停止(機会損失)や、顧客への納品遅れ(販売機会の損失)につながる大きな問題になりかねません。
過剰在庫を減らし、保管コストを削減する
逆に、在庫切れを恐れるあまり、発注リードタイムを実際より長く見積もってしまうとどうなるでしょうか。必要以上に早い段階で発注をかけ、余計な在庫(過剰在庫)を抱えることになってしまいます。
過剰在庫は、保管スペースを圧迫し、管理の手間や保管費用を増大させます。また、食品や精密部品などでは、品質劣化や陳腐化のリスクも高まります。
キャッシュフローが改善する
在庫は、会計上は「資産」ですが、同時に「眠っているお金」でもあります。過剰在庫を抱えている状態は、本来なら他の投資や経費支払いに使えるはずだった現金が、モノとして滞留している状態です。
発注リードタイムを適切に管理し、在庫を最適化することは、無駄な仕入れを減らし、手元に残る現金を増やすこと、つまりキャッシュフローの改善につながるでしょう。
顧客満足度の向上(競争力強化)
自社が顧客に商品を届ける「納品リードタイム」は、自社が部品を仕入れる「発注リードタイム」の影響を受けます。
発注リードタイムを短縮・管理できれば、より迅速に製品を製造・供給できるようになり、結果として顧客への納品リードタイムも短縮できます。スピーディーな納品は顧客満足度を高め、他社との競争力を高める要因となるでしょう。
発注リードタイムはどう計算する?
発注リードタイムは、過去の実績(納品日-発注日)から平均値を算出するのが一般的です。この数値は、欠品を防ぐ「安全在庫」や、発注タイミングを決める「発注点」を計算するための基礎となる、必要な数値のひとつです。
発注リードタイムの計算式
発注リードタイムは、過去の実績から算出するのが一般的です。
発注リードタイム = 商品(原材料)が納品された日 - 発注した日
例えば、月曜日に発注し、同じ週の木曜日に納品された場合、リードタイムは「3日」となります。(※計算の起点を「発注日の翌日」とするか「発注日当日」とするかは、社内や取引先とのルールによりますが、一貫させることが重要です)
これを複数回記録し、平均値を出すことで、標準的な発注リードタイムとして設定します。
安全在庫の計算式
安全在庫とは、需要の変動や納品遅延など、不測の事態に備えて最低限保持しておくべき在庫量のことです。この安全在庫を計算する際、発注リードタイムが使われます。
一般的な計算式の一つは以下のとおりです。
安全在庫 = 安全係数 × 需要の標準偏差 × √(発注リードタイム + 発注間隔)
この式からもわかるように、発注リードタイムが長くなればなるほど、安全在庫として多く持たなければならない量(平方根に比例)が増えていく傾向があります。 (※安全係数は、どれくらいの欠品を許容するかで決める係数です)
発注点(いつ発注するか)の決め方
発注点とは、「在庫がこの数量まで減ったら発注する」というタイミング(在庫量)のことです。
発注点 = (1日あたりの平均使用量 × 発注リードタイム) + 安全在庫
例えば、1日に平均10個使う部品があり、発注リードタイムが5日、安全在庫を20個に設定している場合、 発注点 = (10個 × 5日) + 20個 = 70個 と計算できます。在庫が70個になった時点で発注をかければ、次の納品までに在庫切れを起こすリスクを最小限にできる、という計算ができます。
発注リードタイムを短縮するには?
発注リードタイムを短縮したい場合、まずは現状の把握から始めてみるのがよいでしょう。どの工程に時間がかかっているのか(ボトルネック)を特定します。そのうえで、社内の発注フローの見直し(システム化など)や、仕入先との情報共有・連携強化が、主な対策になってくるのではないでしょうか。
STEP1:リードタイムを可視化する
まずは、どの工程にどれだけ時間がかかっているかを把握することから始めます。
- 社内の発注承認に時間がかかっているのか?
- サプライヤー(仕入先)が注文を受けてから出荷するまでに時間がかかっているのか?
- 輸送(物流)に時間がかかっているのか?
原因となっている「ボトルネック」を特定しなければ、有効な対策を打つのは難しいでしょう。
STEP2:発注プロセスを見直す(システム化など)
もし社内の承認フローや、発注書の作成・送付(FAXやメール)に時間がかかっているようでしたら、大きな改善の余地があるかもしれません。
- 発注業務の標準化:担当者によるバラツキをなくす。
- システムの導入:在庫管理システムや購買システムを導入し、発注点を自動計算させたり、発注作業を簡略化したりする。
- EDI(電子データ交換)の導入:サプライヤーとの間で、受発注データを電子的にやり取りする仕組み(EDI)を導入し、手入力や確認の手間を削減する。
STEP3:サプライヤー(仕入先)と連携を深める
発注リードタイムの多くは、サプライヤー側の都合(生産計画や出荷体制)に依存する場合があります。
- 情報共有の強化:自社の生産計画や需要予測を早期に共有し、サプライヤー側も準備をしやすくする。
- 定期的な協議:リードタイム短縮に向けた課題を共有し、お互いに協力できることがないか(例:発注ロットの変更、輸送便の見直しなど)を話し合う。
- 仕入先の見直し:場合によっては、よりリードタイムの短い国内のサプライヤーに切り替える、あるいは複数の仕入先を確保する(マルチサプライヤー化)ことも検討します。
STEP4:在庫管理の方法を最適化する
発注リードタイムの把握は、在庫管理の最適化と密接につながっています。ABC分析などを用いて、管理すべき在庫の優先順位をつけることも有効です。
- ABC分析:在庫を重要度(金額や出荷量など)に応じてA・B・Cのランクに分け、Aランク(最重要)の品目から優先的にリードタイム管理や短縮交渉を行う。
発注リードタイム管理を効率化するツールとは?
発注リードタイムを適切に管理し、発注点を逃さないためには、在庫量を正確かつリアルタイムに把握し続ける必要があります。しかし、これを人の目や手作業(エクセル入力など)だけで行うのは手間がかかり、数え間違いや入力漏れといったヒューマンエラーも起こりがちです。
在庫管理システムやIoT機器の活用
こうした課題を解決するために、在庫管理システムやIoT機器を活用する方法があります。
- 在庫管理システム:
ハンディターミナルなどで読み取った在庫の入出庫データをシステムで一元管理し、リアルタイムな在庫状況を可視化します。 - IoT重量計(スマートマットなど):
在庫を重量計(マット)の上に置くだけで、残量を自動で計測・記録するツールです。あらかじめ設定した発注点を下回ると自動でアラートが飛んだり、発注システムと連携して自動発注を行ったりする機能を持つものもあり、発注漏れや手間を大幅に削減できるでしょう。
自社の管理体制や商材に合わせて、こうしたツールを導入することも、リードタイム管理の効率化につながるでしょう。
リードタイムに関する英語表現や言い換えは?
リードタイムは、英語ではそのまま「Lead Time」または略して「L/T」が使われます。日本語のビジネスシーンでは、「所要期間」「手配期間」「調達期間」などと言い換えられることもありますが、「リードタイム」という言葉が最も一般的に通じやすいでしょう。
英語では「Lead Time」
リードタイムは、英語の「Lead Time」をそのままカタカナ読みしたものです。海外の取引先とやり取りする際も「Lead Time」または「L/T」という略称で一般的に通じます。 (例:What is the lead time for this part? / この部品の発注リードタイムはどれくらいですか?)
ビジネスシーンでの「言い換え」表現
日本語のビジネスシーンでは、文脈に応じて以下のように言い換えられることもあります。
- 所要期間
- 手配期間
- 調達期間(発注リードタイムの場合)
- 納品までの日数
ただし、「リードタイム」という言葉自体がビジネス用語として定着しているため、そのまま使うのが最も誤解が少ないでしょう。
発注リードタイムを可視化し在庫管理を適正化しよう
発注リードタイムとは、発注してから納品されるまでの期間であり、これを正確に把握し、可能であれば短縮することが、在庫管理の適正化やコスト削減、キャッシュフローの改善に影響しやすいといえます。
まずは自社の現状のリードタイムを可視化し、どこに時間がかかっているのかを分析することから始めてみてはいかがでしょうか。そのうえで、社内プロセスの見直しやシステム導入、サプライヤーとの連携強化など、自社に合った管理方法を見つけていきましょう。
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