- 更新日 : 2025年11月13日
発注システム導入で情報シェアはどう変わる?中小企業向けクラウド型のおすすめや選び方を解説
受発注業務のデータを担当者間や会社間でどうシェアしていますか? FAXや電話、メールでのやり取りは、情報が属人化しやすく、入力ミスや確認漏れの原因にもなりがちです。
クラウド型の受発注システムを導入すると、リアルタイムな情報共有(シェア)が可能になり、こうした課題の多くを解決できます。特に中小企業や卸売業では、受発注処理のデジタル化による業務効率化が急務となっています。
この記事では、受発注システムをシェアするメリット、クラウド型が選ばれる理由、主な機能、選び方のポイントについて解説します。
目次
受発注システムで情報をシェアするメリットは?
クラウド型の受発注システムを導入する最大のメリットの一つが、関係者間でのスムーズな「情報シェア(共有)」です。これにより、アナログ業務特有の多くの課題が解消されます。あわせて権限管理(閲覧/登録/承認権限のロール設計)により、情報を開示しつつ誤操作・不正更新を抑止できます。
リアルタイムな情報共有と属人化の解消
クラウド型システムは、インターネット環境さえあれば、場所や端末(PC、スマートフォン、タブレット)を問わずにアクセスできます。営業担当者が出先から最新の受注状況や在庫を確認したり、バックオフィス担当者がテレワークで発注処理を行ったりできます。
従来ありがちだった「担当者しか状況を知らない」「FAXの確認が遅れた」といった情報の属人化やタイムラグを防ぎ、社内全体で常に最新の情報をシェアできます。
取引先とのやり取りも効率化
システムによっては、取引先専用のWeb発注画面を提供できるものもあります。取引先がその画面から直接発注データを入力すれば、受注データが自動でシステムに反映されます。
これにより、電話の聞き間違いやFAXの読み間違い、メールからの転記ミスといったヒューマンエラーを防げます。また、取引先も24時間好きなタイミングで発注でき、発注履歴をWeb上で確認できるため、双方にとって利便性が向上します。
なぜクラウド型の受発注システムが選ばれる?
情報シェアのメリットに加えて、クラウド型システムが選ばれる理由には、コスト面や運用面でのメリットもあります。
またベンダー側で法制度やセキュリティのアップデートが自動適用され、拠点分散や在宅でも同じ画面にアクセスできるメリットもあります。
導入や運用コストが抑えられる
オンプレミス型システム(自社サーバー設置型)は、高額な初期費用や専門知識を持つ人材による保守管理が必要でした。 一方、クラウド型はサービス提供事業者がシステムを管理するため、サーバーの購入や管理が不要です。
多くの場合、初期費用が低額で、月額利用料だけで使い始められるため、特にリソースの限られる中小企業にとって導入のハードルが低いといえるでしょう。
受発注業務が効率化できる
受発注業務には、受注データのシステム入力、発注書の作成、在庫確認、請求書発行など、多くの手作業が伴います。クラウド型受発注システムの多くは、これらの作業を効率化したり自動化する機能を備えています。
手入力作業が減ることで、入力ミスや確認漏れを減らし、担当者はより重要な業務に時間を使えるようになります。
受発注システムの主な機能やサービスは?
受発注システムには、日々の受発注業務を円滑に進めるための多様な機能が搭載されています。自社の業務フローに必要な機能が揃っているか確認しましょう。
受注機能
取引先からの注文を受け付ける機能です。従来の電話やFAXに代わり、Web上の専用ECサイト(BtoBカート)のような画面から、取引先が直接商品を選択し発注できるようにする機能が主流です。取引先ごとに表示する商品や価格を変更する機能(卸売業向け)を備えたものもあります。
発注機能
自社が仕入先へ発注(仕入)を行う機能です。過去の発注履歴からの再発注、承認フローの設定、発注書の自動作成・送信(メール・FAX)などが可能です。発注残の管理や納期管理をサポートする機能もあります。
在庫管理機能
受注データや発注データと連携し、在庫数をリアルタイムで管理する機能です。在庫が一定数を下回ったらアラートを出す機能や、複数の倉庫の在庫を一元管理する機能を持つシステムもあります。ただし、受発注システム単体では簡易的な在庫管理に留まる場合もあり、より高度な管理には専用の在庫管理システム(WMS)との連携が必要になるケースも多いでしょう。
請求・入金管理機能
受注データをもとに請求データを自動作成し、請求書の発行(郵送代行含む)やPDFでの送付を行います。入金データとの照合(消込)作業を効率化する機能を持つシステムもあります。
承認ワークフロー機能
承認ワークフローを可視化し、監査ログ(発注申請から承認、実行まで)の履歴を保存し、不正抑止と監査対応を容易にします。
会計システムなど他システムとの連携シェアは重要?
受発注システム単体でも業務は効率化できますが、会計システムや販売管理システムといった他の基幹システムと連携(データシェア)させることで、さらに業務がラクになるでしょう。
受発注システムを選ぶ際は、既存システムとスムーズにデータを連携(シェア)できるかも確認しましょう。
会計システムとの連携
受発注システムで作成した請求データや支払データを、手入力することなく会計システムに自動で取り込めます。これにより、経理部門の二重入力の手間がなくなり、月次決算の早期化にもつながります。
販売管理・基幹システム(ERP)との連携
すでに社内で利用している販売管理システムや基幹システム(ERP)と受発注データを連携させます。受発注システムを「フロント業務(受注窓口)」として使い、売上計上や債権管理などの「バックエンド業務」は既存の基幹システムで行う、といった棲み分けが可能になります。API連携やCSVファイルの入出力(インポート/エクスポート)に対応しているかも確認しましょう。
在庫管理システム(WMS)・ECカート連携
物流倉庫で利用する在庫管理システム(WMS)や、消費者向け(BtoC)のECカートシステムと連携できるかもポイントです。特にBtoBとBtoCの両方を展開している場合、在庫情報を一元管理(シェア)することで、販売機会の損失や過剰在庫を防げます。
中小企業に適した受発注システムは?
クラウド型の受発注システムは多種多様ですが、特に中小企業や、卸売業・商社、特定の業種では、選ぶべきシステムのポイントが異なります。自社の規模や業界特有の商慣行、既存システムとの連携をふまえて、最適なサービスを選びましょう。
中小企業が受発注システムを選ぶ際は、導入・運用コスト、操作のわかりやすさ、そして自社の業務(卸売、EC、製造など)に必要な機能が揃っているかがポイントです。ここでは、中小企業に適したクラウド型システムを、添付資料などを参考に紹介します。
アラジンオフィス / アラジンEC(株式会社アイル)
「アラジンオフィス」は、5,000社を超える中堅・中小企業への豊富な導入実績を持つ、業界特化型の販売・在庫・購買管理パッケージシステムです。食品、ファッション、医療、建材など各業種に特化したカスタマイズが可能です。その基幹システムと連携するBtoB-EC構築システムが「アラジンEC」です。
どのような会社向けか:卸売業・商社・メーカーなど、業界特有の商慣行があり、基幹システムと連携したBtoB-ECサイトを構築したい中小企業。
参照:アラジンオフィス|マネーフォワードクラウド 連携サービス
楽楽販売(株式会社ラクス)
高いシェアを誇るクラウド型の販売管理システムです。受発注管理はもちろん、案件管理、請求管理、顧客管理など、販売管理に関わる情報を一元管理できます。ノーコード(プログラミング不要)で自社の業務フローに合わせて柔軟に画面や機能をカスタマイズできる点が強みです。
どのような会社向けか:受発注管理だけでなく、販売管理業務全体を効率化したい中小企業から大企業まで幅広く対応します。
参照:楽楽販売|株式会社ラクス
BtoBプラットフォーム 受発注(株式会社インフォマート)
「インフォマート」が提供する、特に外食・流通業界で圧倒的なシェアを持つBtoBプラットフォームです。業界の商慣行(規格、単位など)に最適化されています。
どのような会社向けか:フード業界(外食、卸売、流通)の中小企業。取引先がすでに導入している場合も多く、導入がスムーズに進む可能性があります。
参照:BtoBプラットフォーム 受発注|株式会社インフォマート
楽楽B2B(株式会社ラクス)
BtoB-ECサイトの構築と、Web受発注業務の管理をまとめて行えるクラウドサービスです。「楽楽販売」で培ったノウハウを活かし、卸売業界特有の商慣行に対応した機能を備えています。
どのような会社向けか:BtoB専用のECサイトを立ち上げ、Web受発注業務を効率化したい卸売業・商社。
freee販売(freee株式会社)
「freee会計」とのシームレスなデータ連携(シェア)が最大の特徴です。見積書から受発注、請求書発行までを一気通貫で行い、そのデータが自動で会計システムに反映されます。
どのような会社向けか:すでに「freee会計」を利用している、または導入予定の中小企業・個人事業主。バックオフィス業務全体を効率化したい企業。
CO-NECT(CO-NECT株式会社)
シンプルな操作画面で、ITが苦手な人でも使いやすいと定評があります。Web受注だけでなく、FAXや電話、LINEで受けた注文も同じ画面で一元管理できるため、アナログ業務からの移行がスムーズに進められます。
どのような会社向けか:FAXや電話などアナログな受注業務が多く残っており、簡単な操作性を求めている中小企業。
COREC(株式会社COREC)
無料で利用できるフリープランが用意されており、コストを抑えて導入したい中小企業に適しています。オプションのAI-OCR機能を使えば、FAXや電話の受注内容を自動でデータ化でき、受注業務の負担を軽減します。
どのような会社向けか:まずは無料で受発注システムを試してみたい、スモールスタートしたい中小企業。
TS-BASE受発注(株式会社T’sシステム)
中小企業向けの受発注・在庫管理システムとして、多様なニーズに対応します。Webからの受注だけでなく、FAXや電話での受注も管理でき、在庫管理機能も備えている点が特徴です。
どのような会社向けか:受発注管理とあわせて在庫管理も行いたい中小企業。
ネクストエンジン(Hamee株式会社)
複数のECモール(楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングなど)や自社ECサイトの受注情報を一元管理できるシステムです。在庫連携や出荷処理も自動化します。
どのような会社向けか:複数のオンラインストアを運営しており、受注管理を効率化したい中小企業のEC事業者。
GoQSystem(株式会社GoQSystem)
複数のECモールの受注・在庫・商品情報を一元管理するシステムです。比較的低価格から利用できるプランが用意されています。
どのような会社向けか:コストを抑えてECの受注管理を自動化したい中小企業のEC事業者。
受発注システムを選ぶ際のポイントは?
数ある受発注システムの中から自社に最適なものを選ぶためには、自社の業種や必要な機能、システム連携、サポートの有無などを比較し、総合的に検討しましょう。
自社の業種・商慣行に合っているか
最も重要なポイントです。例えば、卸売業であれば複雑な価格設定やBtoB-EC機能、製造業であればEDI対応、食品業界であればロット管理や賞味期限管理など、自社の業種特有の要件を満たせるかを確認しましょう。
既存システム(会計・販売管理)と連携できるか
現在使用している会計システムや販売管理システムとデータを連携(シェア)できるかを確認します。CSVファイルの入出力だけでなく、API連携に対応していると、よりシームレスなデータ共有が可能になります。
機能に過不足はないか
多機能なシステムは魅力的ですが、使わない機能が多ければコストが無駄になるかもしれません。逆に、コストを重視しすぎて必要な機能が欠けていては、業務効率化につながりません。自社の業務フローを洗い出し、必要な機能の優先順位をつけましょう。
サポート体制は充実しているか
システム導入時や運用開始後にトラブルが発生した際、迅速に対応してくれるサポート体制があるかは重要です。電話、メール、チャットなど、どのようなサポート窓口があるか、対応時間(平日のみ、24時間365日など)も確認しておきましょう。
導入・運用コストは見合っているか
初期費用と月額費用(または年額費用)の総額を確認します。月額費用は、利用するユーザー数やデータ量、機能によって変動するプランが多いです。「無料プラン」や「無料トライアル」がある場合は、まずは試験的に導入し、操作性や機能性を確かめてみるのも良い方法です。
受発注システムの市場規模や市場シェアの状況は?
受発注管理システムの特にSaaS(クラウド)型の市場は、堅調な成長を続けています。
BOXILが2024年2月に実施した調査によると、2023年のSaaS型受発注管理システムの市場規模は、およそ1,286.7億円と推計されています。 さらに、EC市場の拡大や業務効率化のニーズを背景に導入検討企業も増えており、2025年には1,446.6億円規模に達すると予測されています。
市場シェアの状況
同調査によれば、受発注システムの市場シェアの上位は「楽楽販売(11.91%)」、次いで「BtoBプラットフォーム 受発注(5.80%)」、「freee販売(5.55%)」、「楽楽B2B( 4.93%)」、「基幹システム 基幹船(4.24%)」と続いています。 このデータから、上位の多くをクラウド型サービスが占めていることがわかります。
ただし、これらの数値はあくまで特定の調査に基づく参考値であり、最新の情報や異なる調査データも確認することが望ましいです。
参照:受発注管理システムのシェア・市場規模|BOXIL Magazine
発注業務の情報シェアで効率化をめざす
受発注システムの導入は、作業効率だけでなく、関係者間の情報共有を確実にし、業務全体の精度を高める手段です。
FAXやメール中心のやり取りでは確認漏れや伝達ミスが起きやすいですが、システム上でデータを一元管理すれば、社内外の関係者が同じ情報をリアルタイムにシェアできます。
さらに会計・販売管理システムとの連携で入力作業の重複を減らし、経理処理も正確になります。導入後は誤入力率・受発注処理のTAT・月次締め所要時間等のKPIを前後比較し、運用と設定を継続的に調整しましょう。
発注業務システムの導入時は、必要な機能や自社業務との整合性、サポート体制、他システムとの連携を重視して選ぶことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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